( ^ω^)ブーンが脱ヒキするようです

156:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 14:55:08.72 ID:ZlKrZOpwO
  

静かに目を開けると、やはりそこには白が広がっていた。
部屋は静かすぎて仕事場とは大違いだ、とぼんやり思った。

J('ー`)し「日曜日、ね」

いつの間にか日付は変わり日曜日。病院のベッドに寝ていることを確認すると自分が病人という事も実感する。
といっても幸い怪我は軽めで済んだらしいし、わりと早くに退院できるらしい。

J('ー`)し(早く仕事に復帰しなきゃ…)



157:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 14:56:03.86 ID:ZlKrZOpwO
  
コンッ コンッ


J('ー`)し「! どうぞ」

ガチャッ

(=゚ω゚)ノ「おはようございます。調子はどうですか?」

彼は名をモニュといった。
まだ20代の若い医者だが医療の勉強には熱心で、その若さで地位的には結構なものらしい。

J('ー`)し「お陰さまで今は大分元気です」

(=゚ω゚)ノ「そうですか…それは良かった」

J('ー`)し「私も早く元気になって仕事に戻らないと」

そう言ったカーチャンの顔は笑っていてもどこか疲れのようなものが見えている。
モニュはふと、カーチャンの横に置いてある花の束に目をやった。



158:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 14:56:51.63 ID:ZlKrZOpwO
  
(=゚ω゚)ノ「綺麗ですねぇ、花」

J('ー`)し「ええ、昨日仕事場の方から…」

(=゚ω゚)ノ「そうですか」

何の花だろうかは分からないが、モニュはただその黄色い花を見つめていた。

(=゚ω゚)ノ「それは良かった」

モニュは先程よりもニコリと笑った。

窓から射す朝日が眩しい



159:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 14:57:40.78 ID:ZlKrZOpwO
  
ξ゚听)ξ「…どう?」

( ^ω^)「……」

ツンが不安気な顔でブーンの顔を覗く。ブーンはそれに少しオドオドしながらも、しっかりと言った。

( ^ω^)「お、美味しいお…すごく」

それだけ聞くとツンはそっけなく「そう」、とだけ言うのだったが
口の端がつりあがっており、その嬉しそうな笑みを隠し切れていないようだった。



160:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 14:59:18.03 ID:ZlKrZOpwO
  
今日はカーチャンではなくツンの声で目を覚ました。
寝惚けた頭で自室から出ると、リビングから漂う何とも良い匂いに驚いた。

ξ゚听)ξ「はい、あーん」

(;^ω^)「いい、いやさすがにそれは…」

ξ゚听)ξ「病人なんだから無理しなくていいの」

病人、と聞いて熱の事を思い出すくらいなのだからもちろん今はなんともない。
昨日あんなに汗をかいたのが今は信じられないくらい、健康だった。



161:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 15:02:04.71 ID:ZlKrZOpwO
  
ξ゚听)ξ「…ブーン、今日はどうするの?」

(;^ω^)「どうするって……寝…」

また、寝るのか?
言いかけて自分で突っ込んでしまう。それじゃまた前と同じじゃないか。
カーチャンが怪我にあったというのに自分が何もしないのは少し気がひけた。

( ^ω^)「あ、いや、カーチャンのお見舞い行くお」

裏返った声でとっさに出た言葉。

ξ゚听)ξ「そう、ね。じゃあ皆で行こっか」

ツンは微笑んでそう言った。



162名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日: 2006/05/24(水) 15:11:57.67 ID:ZlKrZOpwO
  
その後、行くなら早めにという事でツンがドクオとショボンに連絡をした。
二人はいつもの事だが何の予定もなく、連絡するとすぐに駆け付けてくれた。

('A`)「じゃあ、行くか…」

ドクオはブーンを心配そうに見ていたが、ブーンは少し戸惑いながらも
さっさと靴を履いて玄関の扉を自ら開いた。強がりなのか、本当に大丈夫なのか。

(;゚ω゚)「さ、さあ行くお」

(;'A`)「ブ、ブーン、落ち着け。俺らいるし大丈夫だからさ」

(;^ω^)「…う、うん」

三人はブーンを挟むようにして家から一歩ずつ歩いていった。
なるべく自然を装うようなのかショボンはよく話題をふってくれた。

全部分かっているブーンは、感謝と、悪いような気持ちでゴチャゴチャだった。
視線は不思議と気にならなかった。



163:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 15:27:54.41 ID:ZlKrZOpwO
  
コンッ コンッ


J('ー`)し「? 先生かしら…どうぞ」

ガチャッ

J('ー`)し「!!」

( ^ω^)「か、カーチャン…」


カーチャンは目を見開き驚いた。この前の交通事故の時も内心驚いてはいたが
何よりブーンが自分のために来てくれたことを嬉しく思った。
外に出るのが今のブーンにとって勇気がいることだと、カーチャンも分かっていたから。

J('ー`)し「!…お友達も一緒に…」

('A`)「あ、どうも」


三人は軽く頭を下げた



166:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 15:52:54.57 ID:ZlKrZOpwO
  
病院の静けさは相変わらずだったがブーンにはそれが良かった。
やはり外の空気というのは慣れないもので、室内はとても安心する。

( ^ω^)「あ、カーチャンこれ…」

J('ー`)し「あらあら」

ブーンは花の束をカーチャンに渡した。
カーチャンの横に置いてあった黄色い花の束と比べれば小さなものだったが
ブーンが渡した花も鮮やかで、とても綺麗に見えた。

( ^ω^)「み、皆が選んでくれたんだお」

ブーンは三人に目をやり微笑んだ

J('ー`)し「そう…わざわざありがとうね」



178:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 17:54:06.74 ID:ZlKrZOpwO
  
カーチャンはブーンが渡した花を見て弱々しく微笑んでいた。

J('ー`)し「…ありがとうね。ごめんね、カーチャンもすぐ元気になるから…」

( ^ω^)「無理する事…ないお。僕は大丈夫だお」

( ^ω^)「み、皆がいるから」

少しの沈黙。
ただ、心地悪くはない沈黙が少し流れた。ツンの顔に目を向けると優しく微笑んでくれた。
ドクオやショボンもまた、ブーンに優しく微笑みかけるのだった。



179:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 17:54:49.87 ID:ZlKrZOpwO
  
( ^ω^)「じゃあ…そろそろ帰るお」

J('ー`)し「ええ…皆もありがとうね」

三人はまた軽く頭を下げる。

(´・ω・`)「じゃあお大事に」

ξ゚听)ξ「また、皆で来ます」

そうして四人は真っ白な扉を開け、病室から退室した。
ブーンが最後に振り返るとカーチャンは渡された花を見つめて弱々しく笑っていた。



181:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 17:56:10.84 ID:ZlKrZOpwO
  
帰り、時刻は夕方5時を回ったところ。
何の会話もなく、行きと同じくブーンを挟んで四人は病院から出て帰り道を歩いた。
歩いているうち、家よりも先に目に入ったのは学校だった。

( ^ω^)「……学…校…」

ブーンは一人立ち止まり、金網越しに古びた校舎を見つめた。



182:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 17:57:12.04 ID:ZlKrZOpwO
  
('A`)「……」

それに気づいたドクオも足を止めブーンの隣で校舎を見つめた。
さすがに日曜日なので人の気配はないが、ブーンはどこか懐かしいその校舎に目を奪われていた。

( ^ω^)(カーチャンが怪我をして…入院して……僕は何もできないのかお…)

ブーンの拳を強く握った

ξ゚听)ξ「…ね!今日行ってみない?」

(;^ω^)「えっ?」

ブーンは突然の呼びかけに少し怯えたように声を出した。

ξ゚听)ξ「学校!」



ブーンだけじゃなく、ドクオやショボンにもその言葉の意味は分からなかった



183:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 17:57:46.73 ID:ZlKrZOpwO
  
(´・ω・`)「…今日は日曜日だよ、ツン」

(;^ω^)「ていうか…も、もう夕方だお…」

ξ゚听)ξ「そんなこと分かってるわよ!」

じゃあその笑顔でする提案はなんなんだ。ブーン達は心の中で呟いた。

('A`)「まあ、ちょっと話してくれや」

ドクオが落ち着き払ってそう言うと、ツンは説明を始めた



184:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 17:58:33.94 ID:ZlKrZOpwO
  
( ^ω^)'A`)´・ω・`)「夜の学校??」

三人は揃って同じ言葉をぶつける。

ξ゚听)ξ「そう、楽しそうでしょ!」

意気揚々と説明してくれるのはいいが、内容には色々と呆れるものがある。
夜の学校に忍びこむなんてどこぞの小学生がするような発想じゃないか。


('A`)「…うん、いいんじゃないの」

(´・ω・`)「僕も賛成ー」

(;^ω^)「ええっ!?」

ξ゚听)ξ「じゃ、今日の夜9時ブーンの家集合!持ってくるものは適当に!」


何だか、光の速さでへんてこな計画が進んでしまった。



185:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 18:02:47.80 ID:ZlKrZOpwO
  
三人それぞれ自宅へと帰ってしまった。
どこかワクワクしてみえる三人とは対照的にブーンは放心状態だった。

(;^ω^)「……」

気づくと家の前に立ち尽くしていた。ツンのあの計画は本当に実行するのだろうか?
考えていても何も分からないと思い、ブーンは重い足取りで自宅へと入っていった。



186:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 18:13:18.29 ID:ZlKrZOpwO
  
一方でショボン宅

さっさと着替えをすませたショボンは少し考え事をしていた

(´・ω・`)「夜の学校かあ…面白そうといえば、まあそうかな」


ツンの真意は、どうなんだろう。
ブーンを外に慣れさせるためこんな事を言い出したのか?
それともただ以前のように、四人でいる時間が欲しいだけなのか?


後者だろうな、と声には出さず苦笑するショボン。

(´・ω・`)「戻れるかな…」

ふと、整頓された机の上に置いてある大切に保管された一枚の写真に目を落とす。
写真に写っている、まだ幼い四人の男女は楽しそうに笑っていた。



187:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 18:20:22.70 ID:ZlKrZOpwO
  
――ドクオ宅

('A`)「まず懐中電灯だな。あとは食いもんとプレステ2……いやプレステはいらないか」

荷物を詰め込んでいた…



――ツン宅

ξ゚ー゚)ξ「必要なものはドクオが持ってきそうだし、軽装で大丈夫だよね」

まだ7時だというのに着替えをすまし既に準備万端である。

ξ゚ー゚)ξ「…楽しくなるといいなあ」

ただ、無理にでも思い出をつくりたかっただけだった。
四人でいる時が楽しくて仕方なかった頃みたいな、思い出が。



189:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 18:27:24.39 ID:ZlKrZOpwO
  
(;^ω^)「あうあう……よく分かんないけど大変な事になったようだお」

自分の家を歩き回るなんて初めてだ。ジッとしてられない。そわそわする。
不安のような期待のような、自分ではよく分からないものが自分をそうさせている。
夜の8時。外は完全に闇で覆われている。聞こえるのは車の走る音だけ。

(;^ω^)「持ってくものって何だお…食べ物かお?」

勝手に出る独り言を抑えられず、一人興奮するブーン。
その間にも約束の時間は迫ってきていた。



220:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 21:14:06.99 ID:ZlKrZOpwO
  
ピンポーン


(;^ω^)「…9時ぴったりに来たお」

ブーンは時計から視線を外し、肩に小さなリュックを下げて玄関へと急ぐ。
ブーンは意識していなかったが、もうその足が震えたりする事はなかった。


ガチャッ


(´・ω・`)「9時ジャスト!」

ξ゚听)ξ「なんか緊張する〜…」

扉の前にいた二人が自分と同じく軽装だったことに安心しつつ、辺りを見回す。
外に不安はあるものの、やはり夜の外は落ち着くものがある。

(;^ω^)(夜だったのは大きな救いだお…)

辺りは依然、暗闇に包まれている。



222:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 21:15:13.11 ID:ZlKrZOpwO
  
('A`)「おーい」

街灯に照らされてうっすら見えた。ドクオがこちらに歩いてくる。
よく見ると肩にやたらと大きなバッグを下げているが…。

ξ;゚听)ξ「ちょっと…何よその荷物」

(;´・ω・`)「君は修学旅行にでも行くつもりかい」

('A`)「まあ、行くからにはそれなりの準備はしなくちゃな」

と、笑いながら言う彼だが大して重要なものは入ってなさそうだ。

とにかく四人は歩き出した。

今回はブーンを挟むようなこともなく、自然に、下らない話をしながら。



223:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 21:16:09.54 ID:ZlKrZOpwO
  
――校門前

校門は当然固く閉ざされていた。ブーン以外の三人はその事に頭を掻いている。
しかしブーンは目の前の風景をまじまじと見ていた。門の両脇に生えたピンク色の木々。

( ^ω^)(暗くてよく見えないけど…桜だお…)

思えばもう季節は春になっていたのか。
改めて家にいた時間の長さを実感しつつ、ただその景色に見とれていた。

( ^ω^)(…………。)

ブー…

ブーン!ブーン!

(;^ω^)「え?あ、ああ…何だお?」

('A`)「門閉まってるからさ、上から行こう」

上?

疑問の表情を浮かべるとドクオは校門に足を絡め登りはじめた。
ショボン・ツンも同じく校門に足をかける。まあ当然といえば当然のやり方だ



224:1 ◆uqMngwBgZo :2006/05/24(水) 21:17:11.50 ID:ZlKrZOpwO
  
ブーンも同じように校門を登ろうと奮闘する。ドクオに手をさしのべられ、無事登りきる。

(;^ω^)「ふう、やっと潜入成功だお」

ξ゚听)ξ「あはは、何かスパイみたいw」

ツンが笑うと、ブーンも自然と笑ってしまった。

(´・ω・`)「さあ、中へ入ろう!」



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