( ^ω^)ブーンが現実から逃げ切るようです

35:◆Brsj/lcRyc :2006/05/25(木) 06:49:04.23 ID:A28oRadp0
  
ツンが出して来た契約の内容は、かなり細かく多岐に渡っていた。
まあ、どれも突き詰めると、お互いの生活に対して不干渉、というのが基本になっている。

結局、ツンの勢いに押されて、ブーンは取引に応じてしまった。

その日は、そのままどこかへ去っていったツンだが、翌日朝一番に鍵屋を連れて戻ってきた。
ツンの作成した走り書きの契約書に、鍵の付けかえをするというのは確かにある。

世帯主として、ツンの部屋のシリンダーの入れ替えに立会い、鍵屋の契約書にサインしたブーン。


(;^ω^)「ちょwwwこのカバスターとかいうの、一、十、百、千、万・・・ちょwww」

ξ;゚听)ξ「べ、別に私が支払うんだからいいでしょっ!」


鍵屋も何だか困ったような顔をしていた。
ブーンの借家は、外見に比例して部屋のドアもボロい。
これはもう開錠するより、ドアを破壊したほうが確実に早いのだろう。

鍵は3本付いていたが、3本ともツンが受け取った。



36:◆Brsj/lcRyc :2006/05/25(木) 06:49:42.15 ID:A28oRadp0
  
それから1週間。

ブーンは何となくネトゲーしに行く気になれず、大体の時間は部屋に鍵をかけてゲームをして過ごした。

ツンは最初のうちに、ちょっとした家具や布団を、どこで買ってきたのか一気に持ち込んだ。
その後は、テレビもないはずだが、昼間時々ふらっと出て行く意外、ひっそり引き篭もっている。


( ^ω^)「お、ツンも買物かお?」

ξ゚听)ξ「コインランドリーよ」

( ^ω^)「お!そういえば、ブーンもそろそろ溜め込みすぎだったお」

ξ゚听)ξ「アンタねぇ・・・。あんまり溜め込むんじゃないわよ」


さすがのブーンも毎日、何だかんだでツンが隣の部屋にいるのだ。
顔を合わせることも多く、ちょっとした会話程度は、自然に出来るようになっていた。
時々会話の出来る相手がいる・・・というのはネット環境もない今、彼にとっても悪いものではない。



37:◆Brsj/lcRyc :2006/05/25(木) 06:50:30.45 ID:A28oRadp0
  
そんな感じだが、それ以上は契約どおり、お互い不干渉。
お隣さんに毛がはえた程度の関係だが、ブーンも生活の変化に関しては慣れた。
部屋には鍵もかけているし、ヘッドホンを引っ張り出して、アニメやエロゲも気にせずやれる。

不干渉なのはブーンにとっても好都合だった。

当初自分の領地に女の子が・・・というよりも、他人が・・・という感覚しかなかった駄目人間筆頭のブーン。
慣れれば思ったほどのデメリットはない。

そして・・・


( ^ω^)「ネット開通ktkr!」


ξ゚听)ξ「ちょっといい?」

( ^ω^)「お?ツン、どうしたんだお?」


回線工事業者が作業を終えて帰った後、ツンが部屋から顔を出した。



39:◆Brsj/lcRyc :2006/05/25(木) 06:51:05.91 ID:A28oRadp0
  
ξ゚听)ξ「私もノートPC買って来たんだけど、費用は出すから無線LANにしてくれない?」

( ^ω^)「む?nyかお?回線速度が激減するのは困るお?」

ξ;゚听)ξ「アンタじゃあるまいし、そんなのやらないわよっ」

( ^ω^)「だったら構わないお。引き篭もりにはネット環境が必須だお。気持はわかるお」

ξ#゚听)ξ「アンタじゃあるまいし、一日中PCにかじりつくわけじゃないわよっ」

(;^ω^)「ブ、ブーンだってたまにはテレビ見たりするお!まぁ無線LANは通販で買っておくお」


ξ゚听)ξ「はぁ・・・まあ、ありがと。後、ネットの料金だけど・・・」

( ^ω^)「nyやらないなら別に構わないお」

ξ゚听)ξ「それはお断りよ。半分払うわ」

( ^ω^)「そうかお?まあ把握したお」



40:◆Brsj/lcRyc :2006/05/25(木) 06:51:52.41 ID:A28oRadp0
  
ネット開通により、1週間ぶりのIRC。


( ^ω^)『ネット開通したお!2人とも久しぶりだお!』

(´・ω・`)『やあ。開通おめでとう。ここ1週間くらい、漫画喫茶にも行ってなかったのかい?』

( ^ω^)『お。マスターthx!ちょっと色々あったんだお』

(´・ω・`)『うん?まあ元気そうで何よりだね。今日あたり電話しようと思ってたんだけど』

( ^ω^)『お?何かあったのかお?』

(´・ω・`)『うん。いや、元気そうなら特に用はないよ』



41:◆Brsj/lcRyc :2006/05/25(木) 06:52:23.05 ID:A28oRadp0
  
('A`)『あー、ブーン乙。悪い、気がつかなかったわ』

( ^ω^)『お?ドクオ忙しかったのかお?』

('A`)『いや。あんまり暇だから、1人でブルース・ウィリス(日本語吹き替え)の声真似してた』

( ^ω^)『ちょwwwそれ似てるのかお?』

('A`)『いや、似てねぇ。それより元気だったのか?んー、ちっと心配したぜ』

( ^ω^)『元気だお!皆はどうだお?』

(´・ω・`)『僕は、まあ、いつもどおりかな』

('A`)『あー、俺も死なねぇ程度には』


ツンから、自分のことは口外しないという契約があったため、話す内容はいつもと変わらなかった。
実際隣の部屋を貸しているといっても、慣れた今では、奇妙だが大した事はない関係だ。
ブーンも、特別意識して隠している・・・という事はなかった。



43:◆Brsj/lcRyc :2006/05/25(木) 06:53:05.96 ID:A28oRadp0
  
( ^ω^)『ところで、無線LANを入れたいんだお。オススメなのはあるかお?』

(´・ω・`)『ん?ネトゲで2アカでもするのかい?ノートPC持っていたっけ?』


(;^ω^)““・・・これはまずい””


思わず軽い気持で尋ねてみたものの、返答に困るブーン。
パーフェクト超人クラスの引き篭もりだ、意識しなければうかつな発言もするし、アドリブもきかない。
どうレスしたものか迷う。


('A`)『あのネトゲか?やめとけやめとけ。こないだの糞パッチ以来、もう期待もてねぇぜ』

(´・ω・`)『そうなんだ?僕は今回手を出してなかったからね』

('A`)『あー、ショボン、それ、正解だわ』



44:◆Brsj/lcRyc :2006/05/25(木) 06:53:47.34 ID:A28oRadp0
  
ドクオがちょうど良いタイミングで口を挟んだが、それでもまだレスに迷うブーン。
とことんアドリブがきかないのが、彼のチャームポイントだ。


(´・ω・`)『うん。それでも必要なら、君のところの環境だと、コレなんかいいと思うけど』

('A`)『ブーン?どうした?回線の調子でも悪いのか?』


これ以上引っ張るのはさすがに不審だ。
ブーンは、多少強引にレスをすることにした。


(;^ω^)『ごめんだお!ちょっと急にもよおしてトイレ行ってたお!!!11』

('A`)『んー?ホント大丈夫かお前?』

(;^ω^)『どう見ても健康だお!本当にありがとうございましたお!!11』


その後、しばらくぎくしゃくしたレスを繰り返し、ブーンはその日、少し早めにチャットを落ちた。



45:◆Brsj/lcRyc :2006/05/25(木) 06:54:28.83 ID:A28oRadp0
  
翌日午後。
ブーンは、いつもどおり変な時間に目を覚ました。


( ^ω^)「ぅー、寝すぎたお」


昨日は結局、ショボンにオススメの無線LANを教えてもらったが、どうにも不自然だったように思う。
めったに反省するような事態が起きないブーンだが、流石に自分のうかつさがもどかしい。


( ^ω^)「お?ツンが出かけるのかお?」


1人つぶやく。
ツンの部屋のドアが開く音に気がついたが、そのまま玄関から出て行ったようだ。

ブーンもツンも、たまたまタイミングが合わない限り、相手に合わせて挨拶などしない。
タイミング良く顔が会えば、ちょっとした話をする程度。

かといって険悪といった事は、まったくないのだが。



46:◆Brsj/lcRyc :2006/05/25(木) 06:55:25.02 ID:A28oRadp0
  
【I wanna be a VIPSTAR・・・♪】


( ^ω^)「お・・・ドクオからだお?電話とは珍しい、ブルース・ウィリスでも披露したくなったのかお?」


これからPCを起動し、IRCにつなごうとしていたところだった。
ブーン達は3人とも、常にチャットをしているが、お互い電話を掛けることはめったにない。
ドクオの場合3ヶ月前の朝4時頃、内容は、板尾創路についてどう思う?などと意味不明な物だった。


( ^ω^)「もしもし、ドクオかお?」

('A`)【あー、悪い、ちっと今いいか?】

( ^ω^)「お、超暇だお!あ、ちょっと待つお、誰かきたお!」


ブーンは、電話を布団の上に放り出し玄関に向かった。


('A`)「おー、半年ぶりくらいか?んなわけで、邪魔するぜ」

(;^ω^)「ちょwwwいきなりwwwどっかで見たパターンだお!」



47:◆Brsj/lcRyc :2006/05/25(木) 06:56:02.95 ID:A28oRadp0
  
('A`)「悪い、ショボンと話してな。お前の様子が何か変って、ちっと気になった」

( ^ω^)「あ、いや、何か変だったかお?」


('A`)「あー・・・さっき出てったの、誰?」

(;^ω^)「や、げ、幻覚じゃないかお?」

('A`)「俺、そういう症状は患ってねぇよ?ホントよ?」

(;^ω^)「か、彼女とか、そういうのじゃないから安心するお、ドクオさん」

('A`)「ん?そんなの、わざわざ言われねぇでもわかるけどな」

(;^ω^)「ちょwwwドクオ、マスターの時とはだいぶ反応が違うお!」

('A`)「まあ、ブーンだしな。で、誰?」



48:◆Brsj/lcRyc :2006/05/25(木) 06:56:32.75 ID:A28oRadp0
  
どう答えたものか固まるブーン、短い静寂をやぶったのは再び玄関の開く音だった。


ξ゚听)ξ「・・・新聞屋には見えないわね。お取り込み中?」

('A`)「あー、俺?ブーンのダチ。嬢ちゃんこそ誰?」

ξ゚听)ξ「別にアンタに関係ないでしょ」

('A`)「ん?そりゃまあな。嬢ちゃんの事はどうでもいいや。ブーン絡みだから聞いてる」


(;^ω^)「あぅ、その・・・」

ξ゚听)ξ「そう。ただの宗教勧誘よ。忙しそうだから出直すわ」


('A`)「へぇ?最近の宗教の勧誘は、人の部屋に住み着くのか?」



49:◆Brsj/lcRyc :2006/05/25(木) 06:57:30.49 ID:A28oRadp0
  
ツンの表情が一瞬だけ動く。


('A`)「あー、嬢ちゃんがいつからいるか知らねぇけど、ブーンが俺に何か言ったわけじゃねぇ」

ξ゚听)ξ「・・・それくらいの事はわかるわよ」

('A`)「・・・ブーンの事は、結構わかってるか。っつうか、ブーンは嬢ちゃんの事知らねぇんだろ?」

ξ゚听)ξ「ええ。確かに、ほとんど知らないでしょうね」

('A`)「まあ、ブーンの人間性に今の様子、嬢ちゃんに関しては、大体予想はつくな」

ξ゚听)ξ「コイツの友達なら、確かに予想は出来るかもしれないわね」

(;^ω^)「ど、どういう事だお?さっぱり把握できないお?」


('A`)「あー、ようするにこの嬢ちゃん、家出人、ついでにたぶん未成年・・・ってところじゃね?」



50:◆Brsj/lcRyc :2006/05/25(木) 06:58:07.39 ID:A28oRadp0
  
(;^ω^)「ちょwwwマジかお!」

('A`)「ブーンのとこに、今いる経緯はわからねぇけどな」

ξ゚听)ξ「まあ、そういう予想は出来るでしょうね。で、何か?」

('A`)「んー?何かって言われても別にな。いいんじゃね?ブーンにリスクを説明してるならな」

ξ゚听)ξ「意味不明ね。例えそのとおりだったとしても、リスクなんてないと思うわよ」


急展開に付いていけず、あたふたするブーンだったが、そこでまた扉が開いた。


(´・ω・`)「リスクはあるよね」



51:◆Brsj/lcRyc :2006/05/25(木) 06:58:46.87 ID:A28oRadp0
  
(;^ω^)「ちょwwwマスターまで来たのかお!」

(´・ω・`)「うん。済まない。少し前には外にいたんだけど、タイミングがね」

ξ゚听)ξ「今度も新聞屋には見えないわね。また友達?」

(´・ω・`)「そういう事。宗教家のお嬢さん。少し中で、リスクについて話せないかな?」


ツンは少し考え込んでいたが、やがて了承したのかゆっくりと頷いた。

ブーンの自室で4人が向かい合う。


ξ゚听)ξ「で、どんな話?私、そんなに暇じゃないんだけれど」


少しイラついたようにツンが切り出した。
ショボンとドクオは変に無表情で、ブーン1人が不安そうにしている。


(´・ω・`)「うん。少し落ち着こう、宗教家のお嬢さん。否定も肯定も無言もいい。まずは聞いて欲しい」


第2話 完



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