ガンパレードブーン


  
48:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/22(火) 21:03:04 ID:Pqdi5oXi0
  
( ^ω^)「・・・え?」

両目から放たれたレーザーは当然二本。
一本はツン機の肩部を貫き、もう一本は胸部、コクピット部分を完璧に貫通した。

(;^ω^)「っ!ツン!?ツン!!返事をするお!!ツン!!!!」
ツン「・・・・・・・・・・・・・」
('A`)「ちっ!野郎、最後っ屁を!!」
(;´・ω・`)「くっ・・・誰か動けるようになってないか!?」
(;゜∀゜)「まだ!無理!」
FOX「ちぃっ!各員は自衛に専念しろ!救助は指揮車で行う!行くぞフーン!」
( ´_ゝ`)「合点承知!」

(;^ω^)「僕のせいだお・・・僕のツメが甘かったせいで・・・ツン!!」

ビルからビルへ飛び移り、内藤はツンのもとへ急ぐ。

( ^ω^):(ツン・・・ツン!生きていてくれお!!)



  
51:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/22(火) 21:22:11 ID:Pqdi5oXi0
  
ツンの元へ急ぐ内藤をゴブリンの群れが追いかける。
雑魚故に害はなかろうと放置したのが裏目にでた。ゴブリンの一匹が投げた手斧が内藤の背中につきささる。

( ^ω^)「うっ!?・・・っく!」

バランスをくずし、地面に落下する。脚部の人口筋肉に血液を集中、着地。
脚部筋断裂、脚部動作不良60%。

( ^ω^)「ぐう・・ぁ・・・ツンを・・・助けにいくんだお・・・」

脚を震わせながら立ち上がる。すでに内藤のまわりはゴブリンに取り囲まれていた。

( ^ω^)「守るって・・・約束したんだお・・・ジャマを・・・!」

脚部動作不良部、全身とのバランス調整。血流速最大、予備血液全投入。
背面損傷部、血流カット。通常動作確保、さらに臨海突破、限界動作。安全ライン、レッドゾーン。動作残り時間3分。

( `ω´)「するなお!!!!!!」

爆ぜる。周りのゴブリンがいっせいに手斧を投げたとき、すでに内藤の姿はなかった。
ゴブリンが事態を認識する頃には、すでに群れの半数近くはただの肉塊とかしていた。
内藤はただ、はやかった。今までのどの瞬間よりも。その活力はツンのためだけに。



  
52:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/22(火) 21:30:10 ID:Pqdi5oXi0
  
ゴブリンたちは為すすべもなく撃破されていく。
終わってみれば、ものの30秒もかからずに20数匹のゴブリンはただの塵になっていた。

(;^ω^)「ツン!!!!」

内藤はようやくツン機のもとにたどり着いた。ツン機はレーザーを食らった衝撃で横たわっていた。
到着と同時に、ウォードレスが活動を停止する。
強引にウォードレスを脱ぎ捨てると、内藤はコクピットにかけよった。

(;^ω^)「ツン!無事かお!?返事をしてくれお!!!」

コクピットをあけると、血の匂いが充満していた。
ツンはレーザーの直撃こそ免れていたが、破損したコクピット内部の一部が腹部に突き刺さっている。
ぐったりと横たわっているツン。その足元は血の海だった。

( ;ω;)「・・・!!ツン・・・?そんな・・・」



  
54:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/22(火) 21:46:07 ID:Pqdi5oXi0
  
( ;ω;)「ツン!ふざけてるんじゃないお!ツン!!」

激しくツンの体を揺さぶる内藤。ガクガクと力なくされるがままのツンの体からは出血が続いている。

FOX「やめろ内藤!落ち着け!まだ生きてる!!殺す気か!?」
( ;ω;)「え・・・?」
( ´_ゝ`)「ほらほら、どいてくだせぇ!」

押しのけられる内藤。いつのまにか到着していたFOXとフーンは、手際よくツンを指揮車に乗せる。
その間に、簡単な止血がなされ包帯がまかれる。腹部以外にも、レーザーが近くを通ったのだろう、足に重度の火傷があった。

( ・(エ)・)「応急処置おわりクマー。仮設本部、救護の準備たのむクマー」
FOX「よし急ぐぞ!内藤もこい、ウォードレスがないと足手まといだ!」
( ´_ゝ`)「皆少しずつ動けるようになってきたようですから、後は任せて下がってておくんなせぇ!」
( ;ω;)「!?わ、わかったお。俺はツンについてるお!」

けたたましい音を立てて発進する指揮車。
内藤は揺れる車内でずっとツンの手を握っていた。



  
55:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/22(火) 21:54:58 ID:Pqdi5oXi0
  
(´・ω・`)「なんとか・・・動けそうだね」
('A`)「ああ。指揮車も仮設本部に着いたみたいだな」

無線からは仮設本部の喧騒と、内藤のツンを呼ぶ声が聞こえてくる。

荒巻「私はいま暫く時間が要るようだ・・・」
(;゜∀゜)「同じく!同じく!」
('A`)至近距離で食らったからな」
(´・ω・`)「しばらくは僕たちで何とかするしかないみたいだね」
('A`)「あぁ・・・」

ドクオはそばにあったツンのハルバードを手に取る。
ラツンがイフルに装備変更するときに置いていったものだ。

('A`):(白兵戦か・・・昔を思い出して好きじゃないんだが・・・)

ハルバードを構えたドクオは一瞬動きをとめ、瞬きの間に近くにあった電柱2本を一閃した。

('A`)「そうも言ってられないし、な」



  
57:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/22(火) 22:12:44 ID:Pqdi5oXi0
  
敵はどんどん集まってくる。
放置していたミノタウルスが交戦ラインに入り、その後からも次々に幻獣が近づいてくる。

(´・ω・`)「弾がもてば良いんだけど・・・」

ガトリングを掃射。2対のガトリングから放たれる圧倒的な火力に、小型幻獣が殲滅される。
言葉とは裏腹に、ショボンは残弾を気にせずガトリングを振り回す。
残弾を気にする余裕があるほど、敵は少なくなかった。

('A`)「よっと、一匹。んでもって二匹」

ミノタウルスのパンチを半歩でよけ、ハルバードをふるう。
返す刃で背後のミノタウルスの腕を飛ばし、反動をそのままに頭部を蹴り飛ばす。
狙撃担当であるはずのドクオの動きは、洗練された舞のように流麗だった。

先行部隊が到着するまで後15分。
なんとしても生き残る。



  
60:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/22(火) 22:32:42 ID:Pqdi5oXi0
  
ショボンとドクオが奮闘している頃、熊本城に近づく影があった。
その影は遠くロシアの地から凄まじい速度で近づいてくる。
禍々しい黒い翼に黒い体躯。悪魔と呼ぶに相応しいその幻獣は、古くから戦っている古参には聞きなれた存在だった。
黒い悪魔は、もうすぐ熊本城にたどり着く。

その名を、チェルノボーグといった。



  
63:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/22(火) 22:43:54 ID:Pqdi5oXi0
  
( ・(エ)・)「幻獣、なおも増加クマー」
FOX「二機だけでは辛いか・・・荒巻、長岡、まだ動けないか?」
荒巻「歩行程度はできる。第二防衛線まで下がるか?」
( ゜∀゜)「こっちは!戦闘可能!!」
FOX「よし、全員第二防衛線まで下がれ。防衛線を1段階さげるぞ。あと10分だ、がんばってくれ」

荒巻「承知!すまんが頼むぞ長岡、私は回復し次第復帰する」
( ゜∀゜)「了解!頑張る!」

('A`)「俺らも下がるか。行こうぜショボン」
(´・ω・`)「そうだね、退こう。第二防衛線には整備班がいるからね、弾を補給してくるよ」

荒巻はある程度長岡に担いでいってもらい、それから歩いて整備班のいる地点まで後退した。
ドクオとショボンはスカウトが後退する間殿をつとめ、ドクオ、ショボンの順に後退を開始する。

(´・ω・`)「弾切れか・・・」
('A`)「もういいぞショボン、後退しろ」
(´・ω・`)「了解。第二防衛線まで後退する」

( ・(エ)・)「!?こ、高熱源体、急速接近!!すごい速度クマ!」



  
64:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/22(火) 22:51:41 ID:Pqdi5oXi0
  
('A`)「んだとぉ!?」
(´・ω・`)「幻獣か?目視までの時間は?」
( ・(エ)・)「あ、あと・・・4秒クマ!」
('A`)「えらく速いなオイ!」


(´・ω・`)「っ見えた!?予備のアサルトライフルで迎撃する!」
(´・ω・`)「なっ・・・避けた!?なんだあのスピードは!!」
(´・ω・`)「クッ!このぉっ!!」
(´・ω・`)「ぐはっ・・・こ、こいつ・・・悪魔・・・か?」

爆音が鳴り響く。次いで聞こえてくるのは、無線のノイズ。
ノイズが聞こえてくるのはショボン機のチャンネルからだった。

('A`)「ショボン!?おい、やられやがったってのか!?」
( ・(エ)・)「し、ショボン機・・・反応ロスト・・・撃破されたクマ・・・」

(;'A`)「なんてこった。悪魔だと・・・?まさか・・・」



  
67:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/22(火) 23:01:02 ID:Pqdi5oXi0
  
その悪魔は、速かった。
熊本城につくと、すぐに敵を認識して接近、空中から急襲する。

最初の標的は、2対のガトリングをもった人型戦車だった。
ガトリングは弾切れらしく、その敵はガトリングを捨て腰に装着されてあったアサルトライフルを手に取る。
武器破棄、予備装備、標的ロック、急速射撃。
その動作はすばらしかった。悪魔が出会った人間の中でもかなり錬度が高いようだ。

まぁ、その悪魔にしてみれば些細な事だったが。

的確ですばやい反応から放たれたアサルトライフルの弾を、慣性の法則を無視したような機動で避ける。
人型戦車が悪魔を再捕捉する前に、悪魔はアサルトライフルを掴み取り、握りつぶす。

獲物を破壊され、人型戦車はすぐさま蹴りを繰り出してきた。
これも良い反応だ。乗っている人間は中々腕が良い。
わき腹に向かって繰り出された蹴りを左腕一本でうけとめ、悪魔は人型戦車を殴り飛ばす。
ビルにつっこみ、瓦礫に埋もれる人型戦車に、悪魔は容赦なく生体レーザーを放った。
ナーガなどとは比べ物にならない威力のレーザーに、人型戦車もろともビルが吹き飛ぶ。

その悪魔、チェルノボーグは思った。少し楽しかった、と。



  
71:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/22(火) 23:31:03 ID:Pqdi5oXi0
  
('A`)「・・・ショボンがやられた地点にいく」
FOX「・・・だめだ、許可できない。なにがあるかわからんぞ」
('A`)「生きてるかも知れないんでな・・・すまんな、指令」

ドクオはFOXの声を無視し、ショボンが撃破された地点に急ぐ。
自分の勘が正しければ、おそらくショボンは生きてはいないだろう。
いや、もしかしたら生きているかも知れない。脱出し、ウォードレスで逃げているかも知れない。
だがそれも自分が急行し、件の悪魔とやらを倒さなければ結果は同じだ。

ショボンが撃破された地点に到着する。
融解しかけた瓦礫にまみれて、無残に大破したショボン機を発見する。脱出できたかどうかはまだわからない。
近づいて確認しようとしたドクオは、誰かに、いや、何かに見られているような気配を感じた。

('A`)「・・・来るか」

つぶやいた後、跳躍する。
つい先程までドクオがいた場所は、高出力の生体レーザーで削り取られていた。



  
73:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/22(火) 23:42:07 ID:Pqdi5oXi0
  
('A`)「めんどくせぇが仕方ねぇ!仇はとってやるぜショボン!」

敵をターゲットサイトに捕捉、ロックして攻撃、などという無駄なことはしない。
着地後、レーザーが発射された場所に二足で到達し、ハルバードを横薙ぎに振るう。
ハルバードは空を切ったが、ドクオは確かに感じた。自分の一撃を何かが避けた気配を。
ハルバードを振るった反動を利用し、限界まで機体を屈ませ、回転する。
背後で感じた気配への足払い。
背後の気配は、間一髪でそれをかわす。
気配とドクオが対峙する。

('A`)「へっ。やっぱりこいつか・・・。ロシアで原発事故を引き起こした化け物が相手とは・・・つくづくめんどくせぇ」

黒く禍々しい翼。長身細身の体躯に、するどい爪、強固な手甲状の肘骨。胸で赤く輝く幻獣特有の眼。
そして、どこか人間に似た知性さえ感じさせる鋭い双弁。

ドクオはハルバードを構える。 黒い悪魔は動かない。
腰を落とす。 黒い悪魔は動かない。
奔る。 悪魔が動く。

縮地、肉薄。神速の斬撃は、肘骨で防いだチェルノボーグを弾き飛ばした。



  
77:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/23(水) 00:01:11 ID:ReJ6ipAh0
  
黒い悪魔は、不思議がっていた。
なぜ、あのレーザーが避けられたのか。
なぜ、新しい敵はすぐさまこちらに向かってきたのか。
なぜ、背後に回ったのにすぐ対処されたのか。
なぜ、自分に匹敵するかも知れない程の機動を、たかが人間の操る人型戦車が出来るのか。

黒い悪魔は笑っていた。表情こそ変わらないが、確かに笑っていた。
さっきの人間も中々強くて楽しかったが、こいつはもっともっと強い。楽しい。
こいつと遊んだらさぞ面白いだろう、と。

新しい敵がハルバードを構える。 さぁ来い。
新しい敵が腰を落とす。 どんな攻撃を繰り出す?
新しい敵が奔る。 速い。

反応。避ける。無理。不可能、迅い。横から何か来る。不味い。防御。
防いだ肘骨が派手に欠ける。斬撃こそ防いだが、殺しきれない膂力に弾き飛ばされる。

アハハハハ、こいつ、楽しい。



  
79:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/23(水) 00:21:10 ID:ReJ6ipAh0
  
爪と斧槍が火花を散らす。
二本の腕から繰り出される鋭い爪撃を、神がかった斧槍捌きで打ち落とす。
一進一退。足をとめた攻防は続いた。

ドクオは士魂号の性能を凌駕した動きを繰り返す。
コクピット内ではアラームが鳴りっぱなしだった。

('A`)「あーめんどくせぇ!めんどくせぇからさっさとやられちまえよ幻獣さんよぉ!!」


繰り出す。
薙ぐ。振り下ろす。突き刺す。
それらは敵のもつハルバードに全て打ち落とされた。
その度に爪が欠ける。肘骨が砕ける。肉が裂ける。

楽しいなぁ。楽しいなぁ。こんな時間がずっと続けばいいのに。
黒い悪魔はまた笑った。



  
81:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/23(水) 00:25:36 ID:ReJ6ipAh0
  
「ぐ・・・痛ぅ・・・」

暗く狭いところにいる。前面の壁?はかなり崩れているらしく、所々から光が差し込んでいる。
ここはどこだろう?なんでこんな所にいるんだろう?
僕は・・・?

(´・ω・`)「!?僕は・・・生きてるのか?・・・ぐぅっ!?」

激痛。ショボンは自分の体を見渡す。
右足、ある。左足、ある。右腕、ある。左腕――ない。
それと、所々に重度の火傷。裂傷。殴り飛ばされた時の衝撃で肋骨も折れたようだ。
おそらく、長くはもたない。

(´・∀・`)「ぁ・・・ハ、ハハ・・・これじゃ、気がつかないほうが、良かったじゃないか・・・」

その時、レーザーで焼け焦げた胸部装甲が崩れ落ちた。
コクピットに大きな穴が開き、視界が広がる。
そこでは、自分を撃破した黒い悪魔のような幻獣とドクオ機が戦っていた。



  
86:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/23(水) 00:38:02 ID:ReJ6ipAh0
  
(´・ω・`)「あの幻獣・・・あれと、戦えるのか、ドクオ・・・」
(´・ω・`)「ドクオの奴あんなに強かったのか・・・けどあの動き・・・士魂号の性能を超えている」

あの動きでは、じきに士魂号は動けなくなる。
死に体に鞭打って、なんとか立ち上がる。幸い、脱出時に使うために置いてあったカトラスとバズーカは無事だった。
コクピットの前壁を蹴り崩し、フラフラと地面に降りる。

(´・ω・`)「ハァ・・・ハァ・・・多分、このために・・・眼を覚ましたんだな、僕は・・・」

片腕でバズーカを構える。瓦礫を三脚代わりにし、照準を黒い幻獣に合わせる。
片腕では弾の補充はできない。チャンスは一回。
自分が死ぬ前に、ドクオのためにあの幻獣に隙を作らなければ。



  
92:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/23(水) 01:04:11 ID:ReJ6ipAh0
  
('A`)「・・・動きが鈍くなってきやがったか?」

何合目かもわからない打ち合いの後、ドクオは呟いた。
すでにドクオの機体は限界を超えていた。目の前の幻獣に今すぐ勝って帰りでもしないと、この機体は使い物にならなくなる。
そろそろ決着をつけたい所だった。

('A`)「そう簡単にはいかんだろうがな・・・」

いまだ敵幻獣に致命傷は与えられていない。
ドクオは半歩間合いを広げ、ハルバードを構える。
このハルバードもそろそろ限界だ。これ以上の戦闘は自分に不利になるだけ。
戦闘事態はやや優勢だが、コンディション的には大劣勢だった。
しかし、チャンスは唐突に訪れる。

半歩分間合いを開き、ドクオ、黒い悪魔共に動きがとまった時。

(´・ω・`)「!今だ・・・!」

ショボンの放った一撃が、正確に黒い悪魔の片目を破壊した。



  
94:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/23(水) 01:13:56 ID:ReJ6ipAh0
  
('A`)「!?勝機!」

黒い悪魔がわずかに怯んだ瞬間を、ドクオは見逃さなかった。
悲鳴を上げる機体を無視し、最大限の機動を行う。
ほんのわずかな隙に、長かった勝負はあっけなく決する。
ドクオの渾身の一撃はチェルノボーグの体を袈裟に両断し、二撃目で首を刎ねた。


黒い悪魔は集中していた。目の前にいる楽しい人間に。
それ故に、大した弾速もないバズーカ弾如きに片目を持っていかれた。
一瞬だけ、目を瞑り顔を手で庇い、体を丸めようと条件反射が起こりかける。
その隙を人間は見逃さなかった。

明らかに致命的な一撃を食らう。 あぁ、良いのもらっちゃった。
返す刃が迫る。 まだ来るんだ?用心深いなぁ、楽しいなぁ。

この人間とずっと遊んでいたいなぁ。

そこで、黒い悪魔の意識は途切れた。



  
136:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/23(水) 08:05:53 ID:ReJ6ipAh0
  
('A`)「ふぅ・・・手こずらせやがって。にしてもあの援護射撃、ラッキーだったな」
('A`)「じゃ、あばよ。ロシアの化け物」

露散していく黒い悪魔に今にも折れそうな程痛んだハルバードを突き立てる。
それは墓標だった。強敵への無意識の畏敬を込めた。

バズーカが発射された方角は、ショボン機の撃破地点のほうだった。
士魂号の望遠モニタには、瓦礫にもたれかかり親指を立てるショボンが写っている。

('A`)「へへ、まさか生きてやがるとはな。しぶとい奴だぜ、ショボン」

ショボンの所に歩を進めようとした時、聞きなれた着弾音が聞こえた。
そう、聞きなれた、自分のライフルの着弾音。
背面カメラには、自分を狙撃した機体。硝煙ののぼるライフルを構えたツン機が見える。

('A`)「・・・アン、ラッキー・・・」

腰部への直撃によって、ドクオ機の人工筋肉は機能を停止した。



  
141:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/23(水) 08:11:00 ID:ReJ6ipAh0
  
(´・ω・`)「な・・・ドク・・・オ、・・・くそ、まだ動け、僕の体・・・!」

座り込む形で動きをとめたドクオ機に駆け寄る。駆け寄るといっても、歩く事しか出来ないが。
少し近づいた所で、ドクオ機の頭部が吹っ飛ぶ。
破片が飛んできて、ショボンのすぐ近くに落ちた。

(´・ω・`)「うぅっ・・・!」
('A`)「ショボン!なにやってんだ逃げるぞ!」
(´・ω・`)「ドクオ!良かった・・・脱出できてたんだね・・・」
('A`)「!!お前・・・腕が・・・それにひどい怪我じゃねぇか!」
(´・ω・`)「あぁ、そうなんだ。僕はもう長くはもたない。このカトラスをもっていくと良い、はやく逃げるんだ」
('A`)「馬鹿野郎!一緒に逃げよう、だろうが!」
(´・ω・`)「ダメだよ・・・もう、気を失いそうなんだ・・・僕をおいてはやく皆の所へ・・・」
('A`)「おい!?・・・ちっ、本当に気絶しやがった!」

ショボンのカトラスを腰にさし、ショボンを担ぐ。
左腕はレーザーで持っていかれたのだろう、幸い火傷によって血は止まっていた。

('A`)「ったく・・・置いていったらよー。何のためにめんどくせぇ思いしてここまで来たのかわかんねぇじゃねぇか!」



  
189:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/23(水) 13:04:51 ID:ReJ6ipAh0
  
( ・(エ)・)「ドクオ機・・・反応ロストだクマー・・・」
FOX「あの馬鹿め!言わん事じゃない!!」
( ´_ゝ`)「どうしやす?もう荒巻と長岡以外は戦闘できないって事になりやしたが」
FOX「防衛線を第三まで下げる。荒巻、動けるか?」
荒巻「あぁ、長く待たせた。もう大丈夫だ」
FOX「よし、整備班は第三防衛線まで下がれ。荒巻、長岡は現地点で遅滞戦闘!」
荒巻「心得た。今までの遅れ、取り返してくれる!」
( ゜∀゜)「了解!了解!」
(,,゚Д゚)「整備班、了解!残った資材、負傷者全部ひっくるめてケツまくって逃げます!」
(*゚ー゚)「もうちょっと言い方があるでしょうに・・・指令はどうするんです?」
FOX「私は・・・ドクオ、ショボンを助けにいく。クマーは整備班に同行、そこからオペレートしてくれ」
( ´_ゝ`)「やれやれ、言うと思いやしたよ。お付き合いしやしょうかね」
FOX「すまんな、フーン。急ぐぞ!」

( ´_ゝ`)「・・・生きてると思いやすか?あの二人」
FOX「あの程度で死ぬ程ヤワな奴は我が隊にはおらん。今頃士魂号をおりて逃げ回っているだろうさ」

すでに第二防衛線までさげた仮設本部にも敵が集まってきていた。
長岡と荒巻があけた穴から、指揮車が飛び出していく。
ナーガのレーザーを避け、ゴブリンを跳ね飛ばしながら、指揮車は敵の真っ只中、ショボン機撃破地点に向かった。



  
194:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/23(水) 13:23:06 ID:ReJ6ipAh0
  
FOX「・・・それにしても、小隊指令にあるまじき行動だと思わんか?」
( ´_ゝ`)「部下を助けに行くってのは美徳ですが、指令としちゃ好ましくありやせんねぇ」
FOX[うむ、そうだな。私は指揮官向けではないからな、本当ならまだスカウトをやっていたかったよ」
( ´_ゝ`)「・・・どんな獣も老いるもんですよ、古狐。老いたと判断されるもんです」
FOX「・・・そうだな、私はもう口を出すくらいしか出来んのかもしれんな」
( ´_ゝ`)「まぁ自分はそういう指令、嫌いじゃありませんがね」

指揮車は走る。
敵にかまわず、ひたすら最短ルートを駆け抜ける。
あともう少しでショボン機撃破地点に到着しようという時に、それは現れた。
胸と肩に空いた穴。見覚えのあるその士魂号は指揮車の前に立ちはだかると。
弾の切れたライフルをぶん投げた。



  
200:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/23(水) 13:44:31 ID:ReJ6ipAh0
  
( ´_ゝ`)「げっ」
FOX「げっ、じゃない!避けんか!」

士魂号の怪力で投擲されたライフルを寸での所で避ける。
ライフルは舗装された道路を容易く突き破り、地面を削り取った。

( ´_ゝ`)「な、なんだありゃ?寄生型か?士魂号に取り付きやがった!?」
FOX「とりあえずあれだ、逃げるぞ!指揮車であれの相手なんかしたくもない!」

全速で逃げる指揮車。士魂ゾンビの股をくぐり、脱兎のごとく逃げ出す。
のろい動きで旋回し、おいかけてくる士魂ゾンビ。

( ´_ゝ`)「けっ!当然ですが追ってきやすねぇ!」
FOX「なんとか撒くんだ!・・・!あそこだ、あれに逃げ込め!」

FOXが指差したのは地下駐車場への入り口だった。
ちょうど曲がり角を曲がった後だったので、士魂ゾンビはこちらの動きが見えていない。
地下駐車場へ身を隠すと、士魂ゾンビはそのまま通り過ぎていった。



  
228:1 ◆NcZOHhe0jA:2005/11/23(水) 14:33:58 ID:ReJ6ipAh0
  
FOX「・・・いったか」
( ´_ゝ`)「寿命が縮みますねぇ」

('A`)「・・・FOX?指令か?」

FOX「ドクオ!?こんな所にいたのか!」
('A`)「ああ、俺もあの士魂号から逃げてきたんだ。何か武器はないか?あいつを倒さにゃここを出れん」
FOX「うむ。自慢じゃないが私の指揮車には携行火器は一切積んでいない。諦めろ」
(;'A`)「・・・あんた何しにきたんだ?」

さすがにループを繰り返し、過去に絢爛舞踏を獲得したドクオでもカトラスで士魂号と戦う気にはなれなかった。
ドクオと意識を失っているショボンを指揮車に載せ、どうやって整備班のところに戻るか話し合う。

FOX「なに案ずるな。私の家系にはこういう時、伝統の戦術があってな」
( ´_ゝ`)「ほう。頼もしいじゃねぇですか」
('A`)「・・・で、それは?」

FOXは指をたて、大真面目な顔で言った。

FOX「それは――――逃げる」



  
233:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/11/23(水) 14:53:13 ID:ReJ6ipAh0
  
地下駐車場の入り口から、勢い良く指揮車が躍り出る。
近くにいた士魂ゾンビ、その他の幻獣がいっせいに追いかけてきた。

(#'A`)「結局無策なんじゃねぇかこのダメ指令!」
(;´_ゝ`)「あちゃー追っ手の数が増えちまった。しゃーねぇ!飛ばしやすよ!」
FOX「うむ、頼むぞフーン!お前の運転なら逃げ切れると信じている!」

ドクオは指揮車備え付けの機銃に取り付き、追いかけてくる幻獣を撃ち続ける。
フーンは悪路をものともせずに必死で運転。
そして、FOXは指令席で腕を組んでいた。

その頃。皆存在を忘れていたが、ようやく熊本城戦域に先行部隊が到着した。



  
238:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/11/23(水) 15:01:03 ID:ReJ6ipAh0
  
瀬戸口「はーい、みなさんのお耳の恋人、瀬戸口くんでーす。なんて、今はそんなこと言ってられないか。こちら5121小隊。VIP小隊、貴隊の奮戦に敬意を。後は我々に任せて後退されたし」
( ・(エ)・)「こちらVIP小隊、待ちかねたクマー。現在整備班は第三防衛線に後退。我が小隊のスカウトが2人第二防衛線で遅延戦闘中クマ。我々は指揮車とスカウトが第三防衛線に到達するのを待って撤退するクマ」
瀬戸口「了解。これより5121小隊は防衛ラインを第二まで押し上げる。並びに貴隊の兵士の後退を支援する」

FOX「聞いたか?」
(#'A`)「あ?何かいったか?こっちは忙しいんだよ!!」
( ´_ゝ`)「!電柱が倒れてやがる!ちょいと跳ねますよ!!」

倒れた電柱に強引前輪を乗り上げ、指揮車がわずかに空を飛ぶ。

( ´_ゝ`)「で、指令。なんですって?」
FOX「・・・いや・・・何でもない」

荒巻「聞いたな、長岡!先行部隊がきたぞ!」
( ゜∀゜)「後退!後退!」
荒巻「うむ!となれば、この包囲を崩さんとな・・・!」

(,,゚Д゚)「前線に向かっていく・・・あれが5121小隊か。黄金剣翼突撃勲章、通称アルカナ勲章を受章したエースのいる部隊・・・」
(*゚ー゚)「よく整備されてるいい機体だわ。・・・きっとあの複座がアルカナね」



  
242:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/11/23(水) 15:09:34 ID:ReJ6ipAh0
  
荒巻と長岡は今まで敵の包囲の中逃げ回り時間を稼いでいたが、その間に包囲は厚くなっていた。
既に弾薬はつき、荒巻はカトラスを振るっている。
二人はなんとか撤退する方角の一角を切り崩そうとするが、数の力に苦戦していた。

荒巻「さすがに数が多いな・・・!」
( ゜∀゜)「多勢に!無勢!」
女「おぉぉぉらぁぁっ!!!!」
男「・・・」

突然ゴブリン数匹が殴り飛ばされる。
同時に機銃掃射による援護射撃。包囲の外からの攻撃は、電撃的に幻獣を駆逐していった。

田代「無事か!?あたしは5121小隊のスカウト、田代香織百翼長だ!ここは引き受けるからさっさと後退しろ!」
来須「来須だ・・・貴君を援護する」
荒巻「!VIP小隊の荒巻だ!援護に感謝する、タシロ殿!」
( ゜∀゜)「ありがと!タシロ!」
田代「良いからさっさと後退しろ!」
荒巻「すまん、タシロ殿!恩に着る!」
( ゜∀゜)「がんばれ!タシロ!」

田代「・・・何故か・・・あいつらに苗字で呼ばれるとムカツキやがる・・・」
来須「・・・(苗字すら呼ばれなかった)」

田代香織は、光る拳でゴブリンを粉々に打ち砕いた。



TOPに戻る次のページ