ガンパレードブーン


26:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/26(土) 23:47:15 ID:iewYaDd90
  
熊本城の上空に軍用の輸送ヘリが到着する。
速水と舞を迎えに来たようだ。
内藤はヘリのほうに歩き出しかける。

(*‘ω‘ *)「待て。そっちには行かないほうが良い。そっちは行かずにすむ修羅の道だ。君は自分の居場所に戻るがいい」
( ^ω^)「・・・修羅になるのも良いかもしれないお・・・けど、今日は帰らせてもらうお」
(*‘ω‘ *)「うむ。いつか会うかも知れぬ。君の事は記憶しておこう、内藤」

ドクオを西洋型のコクピットに残し、内藤は熊本城を後にする。
長かった一日が終わり、内藤はVIP小隊にもどってきた。
整備用のテントにはいると、FOXが煙草をふかしていた。



  
33:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/26(土) 23:57:08 ID:iewYaDd90
  
FOX「遅かったな・・・内藤」
( ^ω^)「指令・・・まさか、ずっと待ってたのかお?」
FOX「部下の面倒は見んとな・・・ドクオはどうした?」
( ^ω^)「ドクオは・・・帰ってこないお」
FOX「・・・そうか」

FOX「帰還後、小隊員全員の昇進が決まった。熊本城攻防戦でお前には銀剣突撃勲章が贈られる」
( ^ω^)「・・・そうかお」
FOX「・・・VIP小隊はしばらく活動できん。ゆっくり休め」

FOX「それとな、内藤・・・準竜師がお前を呼んでる。明日迎えに来るそうだ」



  
39:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 00:14:04 ID:XtetprC20
  
翌日、準竜師に呼び出された内藤は、いくつかの勲章を授与された。
その中には、傷ついた獅子の勲章もあった。

ひろゆき準竜師「・・・用件は以上だ。ご苦労だったな」
( ^ω^)「・・・それだけですかお?」
ひろゆき準竜師「ああ、これだけだ。君が勝手にアーリィFOXを使用した事は見なかったことにしよう。何かあればまた連絡する。下がりたまえ」
( ^ω^)「・・・了解だお



  
40:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 00:14:38 ID:XtetprC20
  
10日ほどした後、内藤は病院にいった。
ツンの病室に行くと、見舞いに来ていたのだろう、整備員たちが帰っていく。
ツンは、意識を取り戻していた。

ξ゚听)ξ「・・・何よ、内藤。うかない顔じゃない?」
( ^ω^)「・・・そうかお?そんな事ないお、ツンが無事で嬉しいお」
ξ゚听)ξ「・・・ふん。そんな顔で言われてもね、説得力ないんだから。悪かったわね、意外に元気で!」
(;^ω^)「ちょ、本気で嬉しいんだお、安心したお。・・・うん、安心したお・・・元気で・・・」
ξ゚听)ξ「・・・内藤?ちょっと、どうしたのよアンタ。何か変よちょっと」
( ^ω^)「いや・・・ちょっと準竜師にヤボ用を頼まれて・・・緊張してるんだお」
ξ゚听)ξ「準竜師に!?なんであんたが準竜師なんかに・・・」
( ^ω^)「細かい事は良いお、ただどうしても言っておきたい事があって来たんだお」
ξ゚听)ξ「は?な、何よ、それ。なに映画のワンシーンみたいな事言ってんのよ?ま、まさか・・・こ、告白とか、するんじゃないでしょうね?冗談じゃないわよ!?」
( ^ω^)「・・・悪いけど、その通りだお。・・・大好きだお、ツン。ツンのためなら何でもできるお・・・」
ξ///)ξ「なっ・・・〜〜〜〜!!!」
( ^ω^)「・・・これで気が済んだお。それじゃ帰るお。お大事にだお」
ξ゚听)ξ「え?ちょ、ちょっともう帰るの?なんか土産でもおいていきなさ・・・!」

内藤はすでに病室の扉を開けていた。
内藤は最後に振り返り、どこか悲しげな笑顔を見せた。



  
41:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 00:15:23 ID:XtetprC20
  
ひろゆき準竜師「・・・別れはすませたかね?」
( ^ω^)「別れのつもりはないですお」

内藤は、ツンの見舞いにいく前日に再び準竜師に呼び出された。
内容は、極秘任務の言いわたし。
その任務内容は、よく意味のわからない物だった。

竜を相手に時間稼ぎをせよ

意味はわからなかった。ただ、竜という言葉から何故か、とてつもない力を感じる。
内藤は拒否したが、次の言葉で承知した。
竜が、尚敬高校の戦車隊を退け、VIP小隊の方角に進んでいるという言葉で。

( ^ω^)「ちんぽっぽ・・・修羅の道とやらを進まなくても、俺には厄介事しかないみたいだお」



  
46:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 00:29:32 ID:XtetprC20
  
内藤は対竜戦の作戦本部にきていた。
作戦本部は、竜の進行ルートに設けられている。

( ^ω^)「内藤だお・・・しばしの時間稼ぎ、任されるお」
原「まさか・・・あなた、スカウト?てっきり腕の良い戦車兵がくると思ってたんだけど・・・。私達の戦車隊のうち2機がやられてるのよ?スカウト一人で何が出来るっていうのかしらね?」
舞「!・・・そなたは」
速水「あ、通りすがりさん。あなたが、助っ人してくれるの?」
( ^ω^)「また会ったお。思ったより早い再会だお・・・」

作戦本部という名称ではあるが、それは敗戦の砦のように見えた。
5121小隊の生き残りで構成されたその部隊には、戦車はたった一機しか残っていない。
その生き残った一機は、見覚えのある複座型だった。

内藤は5121小隊の指令に、詳しい説明を受けた。
5121小隊の一人が、突如見たこともない幻獣に変化した事。
迎撃に向かった士魂号2機が瞬く間に返り討ちにあい、戦車兵2名を失った事。
整備中だった複座型も応戦したが、逃げ切るのがやっとだった事。
残ったスカウトと複座型で、竜を撃破せねばならない事。

そして、もうすぐ竜がここに到着するという事。



  
54:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 00:56:33 ID:XtetprC20
  
内藤の任務は、複座型が完全に整備を完了するまでの時間稼ぎ。
また、竜に合流している幻獣の殲滅。
迎え撃つ戦力は、わずか4体のスカウト。

( ^ω^)「内藤だお。助太刀させてもらうお」
来須「・・・来須だ」
若宮「若宮だ。よろしく頼む!」
田代「田代香織だ。・・・アイツは強いぞ。気をつけろ」


3人とも激戦を潜り抜けてきたのだろう。
その3人には、生き残ってきた者だけがもつ存在感があった。
それ以降言葉を交わさず、敵に備える。

内藤は待つ。
30分たっても敵は現れない。
1時間たっても、まだ現れない。
1時間30分たった。敵は・・・すでに、目の前にまで迫っていた。



  
63:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 01:10:16 ID:XtetprC20
  
オペレーターの慌てた声が聞こえる。

瀬戸口「幻獣、既に戦闘圏内に侵入!くそったれ、これも竜の仕業か!!」

田代「ちっ!なんで気付かなかった!!」
来須「スカウト隊、迎撃に向かう」
( ^ω^)「まだ竜とやらはいないお?なら、今のうちに雑魚を片付けるお!」
田代「言われなくてもわかってるぜ!」
来須「先にいく・・・」
若宮「深追いはするなよ。目的は時間稼ぎだって事を忘れるな!」

スカウト達は散開する。
複座型の整備が完了するまでの間、現地点を守りきる。
各自はそれぞれ、敵を駆逐していった。



  
64:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 01:11:05 ID:XtetprC20
  
内藤が圧倒的な速度でゴブリンやヒトウバンなどの小型幻獣を蹴散らす。
生き残った幻獣は、田代の光る拳の前に沈んでいった。
ミノタウルスが視界の端で若宮と来栖の連携に倒れる。
スカウト隊は、順調に敵を減らしていく。

田代「あと何分で整備が終わるんだ!?」
原「あと3分!もうすぐ終わるわ、がんばって!」
若宮「この分なら守りきれそうだな」
来栖「・・・油断は禁物だ」
( ^ω^)「何か・・・いやな予感がするお・・・いや、気配、かお?」

整備車の周りでは、複座型の整備が終わろうとしていた。
整備車にのせられていた士魂号が立ち上がり、装甲が取り付けられていく。

舞「・・・まだか!」
原「あと2分!急かさないで!」

その側で席をたったオペレーターがいる。
瀬戸口だった。

瀬戸口「・・・気配が近い・・・間に合うか?」



  
69:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 01:32:23 ID:XtetprC20
  
来栖「・・・!?」
若宮「どうした、来栖?」
来栖「来るぞ・・・!」

来栖が跳躍する。若宮もそれに続く。
二人がいた交差点を、凄まじい熱量のレーザーがすぎさっていく。
あろう事かその馬鹿げた威力のレーザーは、交差点の先のビル何棟かを蒸発させた。

若宮「ぐ・・・!なんという熱量だ・・・!」
来栖「聖銃・・・」
若宮「逃げるぞ、来栖!」
来栖「・・・いや、竜をかく乱する。お前は逃げろ」
若宮「な、何だとぉ!?待て、来栖!」

来栖が走る。目指す先には、竜がいた。
竜が構えていた右手をさげる。その右手はまるで銃のようだった。
銃のような右手が、みるみる変形していく。
右手は大きな瘤のようになり、その瘤から、いくつもの赤い眼が浮かび上がった。
その無数の赤い眼から、レーザーが発射される。

来栖「・・・!」



  
72:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 01:43:04 ID:XtetprC20
  
若宮「来栖!・・・えぇい、勝手な真似しやがって!俺と来栖で竜の注意を引き付ける!内藤、田代は雑魚を頼む!!」

若宮は来栖の後に続く。来栖は、レーザーを避けて近くのビルに隠れていた。
ミラーボールのようにレーザーをはなつ竜の右手を攻略するのは困難だった。
だが、それで良い。竜をこの場に留める事が出来れば。
若宮も来栖にならい、建物の影に隠れる。

だが、竜は知能が高かった。
当然だ。もとは、人間なのだから。

ののみ「ふぇぇ、なっちy・・・竜、方向転換、こっちに向かってくるのー!」
若宮「・・・ちっ!」
来栖「行かせん・・・!」

若宮と来栖は同時に走り出す。
狙っていたように、竜は振り返り拡散レーザーを放った。



  
73:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 01:43:35 ID:XtetprC20
  
若宮「ぬぅぅっ!なめるなぁ!」
来栖「・・・!」

練達した動きで、拡散レーザーを避ける。
熟練のスカウト二人は、無数のレーザーを潜り抜け竜にたどり着いた。
若宮が跳躍する。
来栖は右肩、若宮は左肩に着地した。

若宮「やるぞ、来栖!」
来栖「・・・!!」

同時に、頭部へ渾身の右ストレート。
ミノタウルスの頭さえ粉砕する二人の正拳は、わずかに竜の外郭をへこませるのみに終わった。
そのへこんだ外郭に、赤い眼が浮かび上がる。
その赤い眼は間髪いれずにレーザーを放った。



  
76:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 01:56:24 ID:XtetprC20
  
若宮「!?・・・ぐ・・・ぁ・・・!」
来栖「・・・若宮!」

腹部の3分の1程をもっていかれた若宮が力を失い、地面に落下する。
かろうじてレーザーを避けた来栖は、落下していく若宮を受け止め、竜から距離を取ろうとする。
逃がすかとばかりに降り注ぐレーザーの雨。
若宮を抱えたまま、来栖は逃げることも出来ずに回避を続けた。

若宮「・・・うっ、ぐ・・・ゴホッ!く、来栖!俺を捨てろ・・・!やられるぞ・・・!」
来栖「・・・!むぅ・・・!」
若宮「く、来栖!」

来栖の右脚をレーザーが貫く。
膝をついた来栖に、数本のレーザーが迫る。

来栖「・・・リューンよ・・・!!」

来栖に向かっていたレーザーは、青い光の壁に阻まれる。
その青い防壁は、竜のレーザーを防ぐと同時に、跳ね返す。
跳ね返ったレーザーのいくつかがが竜に直撃した。



  
81:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 02:06:46 ID:XtetprC20
  
自らの放ったレーザーを返撃されても、竜はなんらダメージを負わなかった。
来栖は歯を食いしばり、防壁を張り続ける。

来栖「若宮・・・!今のうちに下がれ。お前ならその程度では死なん・・・!!」
若宮「ば、馬鹿野郎!ぐふっ、はぁ・・・はっ・・・置いて行けるか・・・!」
来栖「居ても邪魔だ。下がれ!」
若宮「・・・ちっ・・・。死ぬなよ、来栖・・・」

腹部は、ウォードレスの筋肉を収縮させ止血した。
若宮は痛みを無視し、肉体を酷使する。
来栖に少しでも負担をかけないように、急いで交差点まで戻り曲がり角を曲がった。
来栖は若宮が下がった後でも動かない。
いや、動けなかった。レーザーに貫かれもはや炭化した右脚は、足として機能していなかった。



  
85:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 02:21:56 ID:XtetprC20
  
田代「うらぁぁっ!よっしゃ、次!」
( ^ω^)「今ので最後だお、僕は竜と戦ってる二人を助けに行くお、タシロはどうするお?」
田代「だからよぉ・・・その発音で呼ぶなっての!俺は田代だ、タシロじゃねぇ!!」
(;^ω^)「わ、わかったお。拳を下げるお。・・・で、どうするお?」
田代「そりゃほっとく訳にもいかねぇからな。アタシも覗きにいくさ」

内藤と田代は、竜の元へ向かった。
田代に先行した内藤が竜の元に到着した時、来栖が吼えた。

来栖「ぅ・・・ぅうおぉぉぉぉぉおっ!!!!」

来栖の展開する防壁が輝きを増す。
来栖はもう限界だった。防壁を展開する力さえ尽きる前に、一矢報いてみせる。
防壁を形作る青い光が腕に集まる。
内藤はビルの上からその光景を見ていた。どうしようもなく不吉な予感が内藤を襲う。
間に合わない。たとえ、アーリィFOXでも。



  
98:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 02:53:02 ID:XtetprC20
  
来栖の突き出した腕に集った青い光が、一条となって撃ち出される。
その光は迫るレーザーをかき消し、竜に迫る。
竜ははじめて攻撃に対して身構えた。
竜が回避行動に移る直前、青い光が竜の肩口を削り取った。

竜「―――――――!!!!!!!」

竜が吼える。それは怒りの為か、痛みの為か。
輝きを増した竜の右手から、今まで以上のレーザーが放たれた。
そのレーザーの雨はビルを無数に穿ち、舗装道路を吹き飛ばし。
来栖の体を貫いた。
胸を、腕を、脚を、赤い光条がつらぬいていく。

来栖「・・・フッ」

体中を穴だらけにされながら、アポロニアの精霊戦士は笑った。
リューンが流れていくのが見えたから。
自分に向かって空を駆ける男に、青い光が流れていく。
来須は、意識を手放す前に仲間たちの顔を思い浮かべる。
自分を先輩と呼ぶ、元気な少女の姿が浮かんだ時、少し申し訳ない気になった。



  
109:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 03:36:44 ID:XtetprC20
  
( ^ω^)「・・・!!」

内藤は、ほんのわずか、間に合わなかった。
来須の体を抱きかかえ跳ぶ前に、来須は数条のレーザーに貫かれる。

( ^ω^)「すまんお・・・いま少し、俺が速かったら・・・」

内藤はそっと来須の体を横たえる。
内藤のまわりを、来須に付き従った青い光が舞っていた。
ドクオに渡された青い光の使い方を、来須の青い光が教えてくれる。

( ^ω^)「・・・後は、任せるお」

整備車の側に設置されたオペレーティング用のコンソール。
その上で、味方を表す青い光点が一つ消える。

舞「来須っ・・・!」
速水「・・・」
原「複座型、いけるわ!急ぎなさい、あなたたち!」

複座型が立ち上がる。筋肉に火がはいり、火器管制システムが作動する。
複座型は、何も武器をとらずに跳んだ。
虚空にかざした手に、燃える剣が現れる。
マジックソード・ムルブスベイヘルム。火の国の宝剣。



  
110:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 03:37:22 ID:XtetprC20
  
火の国の宝剣。
それは阿蘇の神々が打ち上げたただ一振りの剣。
炎を纏うその剣は、幻を切り裂く魔法の剣。

炎を従え、複座は駆ける



  
116:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 04:06:02 ID:XtetprC20
  
田代「おら!おら!おらぁぁぁ!!」

田代の光る拳が、迫るレーザーを打ち砕く。
レーザーが途切れた瞬間、内藤が飛び出す。

( ^ω^)「光よ、力を貸すお!!」

竜に向かって疾走する。
ただの疾走。そしてそれは内藤の最高の技。
青い光が内藤を加速させる。
アーリィFOXの速度と、、内藤の速度、それに加えて青い光。
その速度はもはや絶技の領域だった。
超絶的な速度から放たれる突撃。それは青い光に守られていた。

( ^ω^)「精霊ブーーーーーーーン!!!!!!!」

それはもはや流星。
内藤の体当たりで、竜の巨体が宙に舞う。



  
118:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 04:10:10 ID:XtetprC20
  
宙に舞う竜の体に、無数のミサイルが飛来する。
響く爆音。大したダメージはないが、ミサイルの爆煙は一時的に竜の視界とレーザーを奪った。
竜に肉薄した複座の振るう宝剣が、竜の外郭を切り裂く。

舞「待たせた!後は任せるが良い!」
速水「来るよ、舞!」

複座が竜と対峙する。
切り裂かれた外郭が再生しようとするが、宝剣の炎に阻まれる。
竜の豪腕をよける。伸びきったその腕は、複座の一撃で断ち切られた。



  
148:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 12:11:17 ID:XtetprC20
  
複座は、間合いを離さなかった。
間合いを離すと、拡散レーザーが襲ってくる。
スカウトよりはるかに巨大な士魂号では、あの攻撃は避けれない。
故に、複座は接近戦に徹した。

( ^ω^)「正しい判断だお。優勢だお」
田代「おい、内藤。あたしは整備車に戻る。いつ敵がくるかわかんねーからな、お前はどうする?」
( ^ω^)「俺は・・・見届けるお。それに、もし幻獣がでたら雑魚を掃除するヤツがいるお」
田代「・・・そうか。無茶はするなよ」

走り去っていく田代の反対側で、竜が鳴く。
その体は無数に斬り刻まれ、両腕を失っていた。
竜は膝をつく。
常に再生していた傷口が、再生をやめる。
竜の首筋にある傷口から、肉を割り人の体が浮かび出てきた。



  
150:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 12:16:35 ID:XtetprC20
  
速水「・・・刈谷君・・・」
舞「・・・気を散らすな、速見。あれは幻獣だ」

( ^ω^):(あれが・・・竜になったっていうヤツかお。普通のメガネ野郎だお・・・)

刈谷は腰から上を覗かせ、苦悶の表情を浮かべる。
竜の体が痙攣しだす。

刈谷「速水君・・・今だ、僕ごとこいつを倒せ・・・!」
速水「!?」
舞「・・・どういう事だ・・・!」
刈谷「今・・・この幻獣が傷ついた隙に何とか意識を取り戻して出来てたんだ・・・!僕が再生を抑えているうちにはやく!」
速水「・・・な・・・け、けど!」
舞「・・・取り込まれていただけ、だというのか・・・!?」



  
158:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 12:38:41 ID:XtetprC20
  
複座は躊躇していた。
狩谷は自分の意思で人類の敵になったと思っていたが、幻獣にのっとられただけだったのか。
疑念が浮かぶ。

竜は少しずつ再生を再開する。
きられた両腕がわずかにだが、くっつきはじめていた。

狩谷「くっ・・・長くは抑えていられない・・・!は、はやく・・・!」
舞「・・・くっ!」
速水「狩谷君、なんとか分離できないの!?」
狩谷「無理なんだ・・・だから早く・・・くっ・・・」



  
159:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 12:53:03 ID:XtetprC20
  
速水と舞は気付かなかった。
ほんの少しくっついた竜の右腕が、鈍く光り始めたことに。
その形が瘤状ではなく、銃の形をしていたことに。
そして、内藤も気付けなかった。
右腕の銃は、内藤からは死角になっていた。

狩谷「・・・くっ・・・くく、はははははは!!ほぅら、長くは抑えられないって言ったのに!馬鹿だなぁ!早くしないから時間切れになっちゃったじゃないかぁ!!?」

竜は爆発的に再生し、その右腕を複座に向けた。



  
285:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/27(日) 23:51:50 ID:XtetprC20
  
舞「避けろ速・・・!?」

横に跳ぶ。
視界に広がるのは、今まで見たこともないような、真の赤。
竜の右手、聖銃・天照から放たれたその光は、すべてを穿つ破滅の光。
その赤い光は複座の左腕を一瞬で消滅させ、その熱気は複座の体躯に大きなダメージを与える。
衝撃で吹っ飛んだ複座は、ビルに叩きつけられる。

速水「ぐぅ・・・!舞、大丈夫!?」
舞「ぅ、ぁ・・・」
速水「舞!?舞!!」
舞「くぅ・・・大丈夫、だ。さっきので、肋骨が少々折れたがな」
速水「あぁ・・・よかった・・・おどかさないでよ」
舞「そんな事を言っている場合ではないぞ。これでは・・・勝てん」

左腕がなく、体中の装甲は熱で溶け、各部間接が溶けた装甲のため動作不良を起こしている。
火の国の宝剣は左腕ごと持っていかれた。簡単に失われたりはしないだろうが、手元にないのなら意味はない。
・・・負ける。



  
290:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/28(月) 00:14:19 ID:o1c1+2Vp0
  
舞「おのれ・・・!」
速水「だめだ・・・!膝が動かない!」

狩谷「あっはっはっは・・・馬鹿だね、本当に。僕が顔をだしている間に僕を殺せばよかったのに。まさか本当に僕は幻獣に取り込まれてるだけだとでも思ったのかい?」
( ^ω^)「・・・なら、そうさせてもらうお」
狩谷「!?きたか、ハエめ!」

竜の胸から覗く狩谷に、狐が迫る。
狩谷は竜の奥深くに隠れようとするが、内藤ははやかった。
アーリィFOXの腕力で殴られ、狩谷の頭が洒落にならない回転をする。
それは常人なら3回死んでもお釣りがくるほどの光景だった。
そして、次の光景は、常人が3回気絶してもお釣りがくる。
首が千切れるほどに回転しぐちゃぐちゃになった狩谷の頭は、時間をもどしたように逆行し元通りになった。

狩谷「ハハ、そう簡単には死なないんだよ・・・!」



  
310:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/28(月) 02:36:20 ID:o1c1+2Vp0
  
竜は自分の胸のあたりにいる内藤を、両の拳で殴り潰そうとする。
内藤はビルまで跳躍し回避した。

( ^ω^)「・・・つくづく化け物だお・・・」
狩谷「化け物?よしてくれよ、そんな低俗な分類は。もっとあるだろう?この超越的な力に対する賛辞がさぁ!」
( ^ω^)「ふん。超越的な力・・・そんな事はうしろの気配に気付いてから言うお」
狩谷「・・・うん?後ろの気配?」

振りむいた竜の前い立っていたのは、西洋の騎士。
盾の代りに笛を持ち、2本の角。
巨大な髑髏がはめ込まれている顔を持つ銀色をした士魂号重装甲西洋型。
ただ一機の絢爛舞踏用士魂号。

瀬戸口「絢爛たる舞踏とその踊り相手・・・舞踏は踊り相手を許さなかった。今回のループも絶望に終わる・・・」
瀬戸口「ならば希望は次に託そう。絶望の中でなら、俺は全ての幻を狩り尽す」

(;^ω^):(ちょ、なんか小難しい事いってるお。さっさとやれってんだお)



  
318:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/28(月) 04:10:46 ID:o1c1+2Vp0
  
狩谷「なんだかわからないけどね・・・とりあえず死んでいいよ、君」

竜が無造作に右手をあげる。
あげきった時、右腕はなくなっていた。

狩谷「・・・あ?」
瀬戸口「・・・リューンよ、言祝げ」

青い光が狩谷に集まり、狩谷の両目が破裂する。
次に竜の体、各部の筋肉が断裂し血を吹き上げる。

狩谷「・・・っ!?目が!!目がぁぁぁぁ!!!!」
瀬戸口「・・・しょせんはかませ犬、か。でてこい、黒幕」

今までの死闘が嘘だったように、あっけなく竜が崩れていく。
崩れていく竜の影。影は光にうつる。
崩れていく竜の赤い光からでた影法師は、平面の影から立体化した。
竜の影から現れたそれは、黒いロングコートに仮面をつけた男の姿になる。それは影法師。
竜の影にして先導者。ループを起こす者の別の形。



  
319:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/28(月) 04:14:07 ID:o1c1+2Vp0
  
( ^ω^)「影が・・・な・・・なんだお、あれは・・・?」

瀬戸口「さぁな。それは誰も知らないさ。・・・ループってのはな、誰かがそのループの結果に満足しなかったから、やり直してるんだ」
瀬戸口「どっかの誰かが勝手に俺らの世界をいじくってるのさ。まぁ、そいつにも目的があってやってるんだろうが・・・迷惑な話だ、俺らにとっちゃな」

( ^ω^)「?何の話かわからないお。けど、それは輪廻って奴じゃないかお?だからそれをしているのは神様って事じゃないかお?」

瀬戸口「どうだろうな・・・その好き勝手やってる奴らにとっちゃ、案外ただのゲームなのかも知れないぜ?」
瀬戸口「そして厄介なのは、繰り返されるループの中に、たまにイレギュラーが出るって事さ。んでもって、それがこの影だ」
瀬戸口「俺の知り合いの電波がどうとか言ってる変態はチートって言ってたな。飽きた奴は、赤い軍勢も操ってみたくなるもんだ、ってな。・・・イレギュラー。こいつのせいで、毎回同じ事の繰り返しに絶望した奴が希望をもっちまう。今回は何か違う、ってな」

( ^ω^)「・・・」

瀬戸口「だがな、今回のループは無駄じゃなかった。はじめて、その神様やら何やら知らないが、介入してくるヤツが増えたのさ。いつも一人だったのに今回は二人になっちまった」
瀬戸口「そいつが介入してんのがお前さんさ。だから、その介入してる奴がハッピーENDを望めば、このループも終わるかもしれないな」

瀬戸口「だからよ、見せてやろうぜ、その介入してる奴によ。俺らはバッドENDなんざ見飽きたってな。そろそろハッピーEND見せやがれってな」
瀬戸口「今回のループはバッドENDだがよ、次はハッピーENDかも知れないからな」



  
320:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/28(月) 04:14:52 ID:o1c1+2Vp0
  
影法師「そうか・・・介入者がいるのか、私のほかに、OVERS-SYSTEMが」
( ^ω^)「な・・・幻獣が喋ったお・・・?」
影法師「私は幻獣ではない。私はただのプログラムだ。ただな、私はハッピーENDなど望んでいない。そんなに大団円が見たいのなら、私を倒してお前の中の介入者の意志を残せば良かろう」
瀬戸口「ほう?なんでそんな事を教える?お前さんはループを繰り返したいんじゃないのか?」
影法師「・・・私は一人遊びに飽きたのだ。私以外の介入者がいるのなら、その者と今一時戯れても良かろう・・・」
瀬戸口「たとえお前さんが負けて、ループが終わったとしても?」

影法師「そうだ。私は待っていたのかもしれんな、私以外の介入者に巡り合うのを。さぁ・・・私が真のラスボスだ。かかってくるが良い。見事私を討ち果たし、ハッピーENDへの道を開いて見せろ!」



  
415:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/28(月) 22:40:34 ID:o1c1+2Vp0
  
それが合図。
瀬戸口は、剣鈴を振り下ろす。
影法師は揺らぐようにかわした。地面を穿つ剣先が竜の残骸を飛び散らす。

影法師「・・・ふむ。士魂号を使うのはサイズ的に反則だな。士魂号は使用禁止とさせてもらおう」
瀬戸口「・・・!?おい、ちんぽっぽ?」
(*‘ω‘ *)「・・・ダメだな、動けん。神経伝達が完全に遮断された」
瀬戸口「・・・生身の戦闘がお望みか・・・」

瀬戸口はカトラスを手に取り士魂号を降りる。
影法師、内藤、瀬戸口。最後の戦い。
影法師に憑く本物のOVERS-SYSTEMは、笑った。
こんな展開ははじめてだった。はじめてだから、楽しかった。

もし自分に勝てたら、セーブ地点から真面目にハッピーENDを目指してみよう。
どこからかそんな声が聞こえた気がした。



  
416:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/11/28(月) 22:43:01 ID:o1c1+2Vp0
  
内藤と瀬戸口が交互に攻める。
影法師は蹴りをかわし、剣撃をかわし、正拳を打ち込む。
吹っ飛ぶ内藤。
地面に手をつき一回転、着地。瀬戸口がカトラスを突き出す。
影法師はカトラスを2本の指で受け止めた。

影法師「赤よ赤。指と指の隙間、間隙にて万事分裂せり」

影法師の指が赤く光り、指に挟まれたカトラスに伝播する。
カトラスの刀身は粉々に砕けた。

瀬戸口「!?・・・ラスボス、ね・・・」
( ^ω^)「隙ありだお!」

カトラスの破片が散る中、内藤が肉薄する。
影法師は蹴りをカトラスと同じように指でとめる。いや、とめようとした。
繰り出された蹴りは指の直前で止まり、軌道をかえ影法師の顔面を横合いから薙いだ。
影法師がよろめく。いや、ゆらめいた。



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