ガンパレードブーン


  
78:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/02(金) 18:47:19 ID:kgQ8YeD10
  
その頃、芝村研究所。
白い白衣の男が自分のところに来たのは、今日の朝だったろうか。
手足が治るといわれて書類にサインしてみれば、あっという間にここにつれてこられた。
つれてこられて、すぐに手術を施された。
クローン培養だと聞いていたが、代えになる新しい腕と脚はすでに用意されていた。
そこから先はよく覚えていない。麻酔で寝てしまったようだ。

目が覚めたのは、3時頃だった。
失くしたはずの手足がある。しかも、動く。
痛みもなく、すぐにでも走れそうだった。
白衣の男がやってくる。

「いかがですか?新しい手足の感想は」
(´・ω・`)「良いね。今すぐにマラソンができそうだよ」
「さすがにそれは控えてもらわねばなりませんが、日常生活程度ならすぐにでも可能です」
(´・ω・`)「・・・すごいものだね、感謝するよ」
「いえ。それより、あなたの小隊の学校に幻獣がでました。とても強力な個体です」
(´・ω・`)「・・・みんなは無事かい?戦況は?」
「芳しくありません。その幻獣は・・・人間がなったものです。あなた方のクラスメートが」
(´・ω・`)「なんだって!?なんでそんな事が・・・いや、それよりも!誰だ、それは!?」

「勇美さん、と聞いています」



  
79:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/02(金) 18:48:00 ID:kgQ8YeD10
  
(´・ω・`)「・・・今、何て言ったんだ・・・まさかそんな・・・」
「・・・親しかったのですか?」
(´・ω・`)「・・・気になっている・・・子だった。元気で明るくて、僕によくかまってくれた。それが・・・」
「ふむ。それは何としても助けねばなりませんね」
(´・ω・`)「助けられるのか!?」
「あれはまだ完全に幻獣そのものになってしまったわけではありません。親しい者が説得すれば、あるいは・・・」
(´・ω・`)「・・・世話になった。もう行くよ」
「お待ちなさい」
(´・ω・`)「・・・止めないでくれ・・・!」
「止める気はありませんよ。ヘリを用意してあります、私も行きましょう」
(´・ω・`)「・・・用意が良いね。どうしてそこまでしてくれるんだい?」
「あなたの小隊の人に昔助けられましてね。芝村は借りは返すものなのですよ」
(´・ω・`)「・・・そう。それじゃ行こうか」
「はい、急ぎましょう。・・・フフフ、素晴らしい選択です。良い、実に良いぃぃぃぃ!!!!!」
(´・ω・`)「君は真面目な人なのか変態なのかわからないね」

ショボンと白衣の変態は研究所の屋上に用意された軍用ヘリに乗りこむ。
ヘリはすぐにでも飛び立てる状態だった。

(´・ω・`)「そういえば名前を聞いていなかったね。聞いてもいいかな?」
岩田「フフフ、よくぞ聞いてくれました!私のことはイワタマンとおよびください!あぁ、イワタマン〜イワタマン〜!!」



  
83:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/02(金) 19:05:56 ID:kgQ8YeD10
  
内藤は、強かった。
ついさっきまで竜におされていたのが嘘のように、竜を翻弄する。
竜は内藤においつけない。
内藤の拳は竜の硬い皮膚などないかのように、竜の内臓にダメージを与えた。
竜がその翼を広げて空に逃げても、内藤は翼があるかのように飛翔しそれを叩き落した。
竜がどんなに力をこめて攻撃しても、内藤にはかすりもしない。
内藤は、本当に強かった。

やがて竜は手足を砕かれ、ダメージは蓄積し、動けなくなった。
内藤は竜の戦闘力が失われたことを確認すると、竜に語りかける。

( ^ω^)「もうやめるお・・・別に君が憎いから殺すとか、そんな事はしないお。みんなで楽しく過ごそうお?」

竜の泣いているようにも、嗤っているようにも見える顔が動いた。
嗚咽にゆがんだようにも微笑んでいるようにも見える口が動く。

竜「私は・・・あの人を探しているだけなのに・・・!邪魔をする奴が憎い・・・!この世界・・・許せない!」

そして、竜は、彼女は求めた。
目の前の邪魔者を倒せる力を。あの人を探しにいける力を。
竜はもう、誰を探していたのかも忘れていたが。



  
84:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/02(金) 19:06:16 ID:kgQ8YeD10
  
ショボンと岩田をのせたヘリは、竜の上空についた。
はるか眼下の出来事をヘリのカメラで見る。
カメラの画像の中では、一人のスカウトがとんでもない機動で竜を翻弄していた。

(´・ω・`)「・・・は、速い・・・!誰だ、あれは・・・!?」
岩田「ふむ・・・いけませんね。電波が危険だと告げています」
(´・ω・`)「危険?あのスカウトがかい?」
岩田「いいえ、竜がですよ。あのスカウトは竜を撃破する気はないようですが・・・あれは普通の幻獣ではないですからね」
(´・ω・`)「・・・?殺す気がないんなら大丈夫じゃないのか?自爆でもすると?」
岩田「そこまでは言いませんが。命の危険を感じたら、あれは周りのリューンを取り込んで自己強化しかねない」
(´・ω・`)「・・・進化すると?それならやっぱりあのスカウトが危ないんじゃないか!」
岩田「いえ、それよりも・・・急激な強化はそれだけ幻獣に近づくという事です。そうなると勇美さんの意識が残るかどうか」
(´・ω・`)「なんだって!?くっ・・・はやく着陸できないのか!?」
岩田「無理ですね。危険ですから着陸は難しいでしょう」
(´・ω・`)「ならどうやって降りるんだ!!」
岩田「フフフ、良い質問です。ハラショー!そこでこのイワタマンの出番ですよ、素晴らしいぃぃぃ!!」

岩田は白衣を脱ぎ捨てる。岩田はいつのまにかウォードレスを着ていた。
その背中には、降下用のパラシュート。
岩田はショボンの体を素早く自分の体に固定すると、ヘリの扉をあけた。

(´・ω・`)「ちょっと・・・まさか・・・」
岩田「さぁ行きますよぉぉ!シュゥゥワッチィィィ!!!!!」



  
139:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/02(金) 21:02:18 ID:kgQ8YeD10
  
(´・ω・`)「・・・〜〜っっ!!」
岩田「良い!この感触、良いぃぃ〜!!」

岩田と岩田に固定されたショボンは、空気を突き破り地面に近づいていく。
岩田はどうかわからないが、ショボンは思った。とてつもなく恐いと。
なにせ通常の降下速度の数倍のスピードで落下しているのだ。
これではパラショートも意味がないのでは。

そんなことを考えているうちに、ヘリのカメラで見ていた辺りが見えてくる。
あのスカウトと竜・・・勇美は動いていないようだ。
その様子は何も変わらないように思えた。
あのスカウトには何も見えていないだろう。
こんな空高くから見ないとわからないくらい遠くから、赤い光が集まってきているのが。

岩田「・・・まずいですねぇ。急ぎますよ、ショボンさん」
(´・ω・`)「・・・死なない程度にね・・・」
岩田「ではいきますよぉぉ!イワッチブースター点火!精神コマンド加速っ!加速ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
(´・ω・`)「!?・・・ぉ・・・お!ちょ、加速が、地面、目の前、死・・・!!」

岩田の背中にあったパラシュートパックは、パラシュートではなかった。
岩田の掛け声で、背中にかついだパラシュートパックもどきが轟音と共に火を噴く。
凄まじい加速。小さな模型程度にみえた町並みが、あっというまに現実サイズになる。
ショボンは死を覚悟した。



  
148:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/02(金) 21:44:10 ID:kgQ8YeD10
  
( ^ω^)「あの人・・・?誰を探してるんだお?」

竜はもう喋らない。下を向いて体を震わせている。
恐怖を感じているのだろうか。それとも幻獣化してしまった後悔か。
その、ある人とやらを探しにいけない怒りか。
内藤はそんなことを考えていたが、違った。
竜は喜んでいた。
自分の周りに力が集ってくることに。
今から、目の前の邪魔者を殺せることに。

竜「・・・あは、ははは・・・ふふ・・・くっくっく・・・!」
(;^ω^)「・・・?なんか・・・似たようなシーンをみたような気が・・・」

内藤は距離をとった。
傷ついた竜。笑い出した竜。
あの時はたしか、複座型に竜が銃を。至近距離で。

竜「死んじゃえーーっ!!」

内藤が気がつかないうちに集まっていた赤い光が、一瞬にして竜の右手にあつまる。
その右手は、銃の形をしていた。



  
152:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/02(金) 22:13:47 ID:kgQ8YeD10
  
竜の右手が振動する。
あれが発射されるまでに、射線から飛びのく。
できる。間に合う。
だが竜の右手の銃は、あの時の5121小隊の竜のものより速射性があった。

(;^ω^)「くっ・・・!避けられるかお・・・!?」
(´・ω・`)「うわぁああああああああ!?」
岩田「ィィィイワッチウィンーーーーーッグ!!!!」
(;^ω^)「!?」

竜の右手から放たれた赤い光条が迫る。
避けようとする内藤が、何かに体当たりされて横に吹っ飛ばされた。

( ^ω^)「な、なんだお!?」
岩田「フフフ、間一髪でしたねぇ、狐さん。コンコンコーン!イーヒッヒッヒ!」
(;^ω^)「な、なんだおこの変態は!?新手の幻獣かお!?」
(´・ω・`)「一応味方だよ・・・。死ぬかと思った・・・」
( ^ω^)「ショボン!?」
(´・ω・`)「やぁ、内藤。久しぶりだね。やたら速いスカウトだと思ったけど君だったのか」



  
160:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/02(金) 22:30:11 ID:kgQ8YeD10
  
( ^ω^)「ショボン、腕が・・・」
(´・ω・`)「ああ、直してもらえたんだ。ついさっきね」
岩田「フフフ、私に不可能はありません。世界一ぃぃぃぃぃぃ!!」
( ^ω^)「・・・で、何しにきたお、ショボン。ここは危ないお」
(´・ω・`)「説得にきたのさ。・・・あの子のね」

ショボンは竜のほうを見る。
竜もショボンを見つめていた。

(´・ω・`)「何してるんだい、勇美。そんなことしてないで帰ろう」
( ^ω^)「・・・!誰かと思ってたけど、勇美さんだったのかお・・・」

竜は戸惑っていた。
誰かを探していたのはわかる。だが、誰を探していたんだったか。
そもそも、何で探していたんだったか。

(´・ω・`)「動けるようになったら一緒に遊びに行こうと思ってたんだ。映画でも見にいかないかい?」

けど、探していたのはこの人ではなかったか。
この人に会いたかったのではなかったか。
けど会いたかった人は死んだのでは?もう会えないのでは?

竜:(あの人は死んだ?生きてる?私は・・・幻獣?人類の敵?もう会えない?・・・もう一緒にいれない楽しめない告白もできない遊びにもいけない話もできない何も何も何も何も何も・・・・!!)



  
161:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/02(金) 22:31:22 ID:kgQ8YeD10
  
竜は自分の感情と事態認識を放棄した。
つまり、訳がわからなくてヤケになり。
自分の思考のノイズを除去しようとした。

竜「あぁぁっ!!!!」

結果、竜はショボンに向けて右手の銃を放った。



  
166:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/02(金) 22:52:22 ID:kgQ8YeD10
  
( ^ω^)「っ!!」
(´・ω・`)「・・・!」
岩田「甘いですよ!イワッチバァリヤーーァァ!!」

もっとも早く反応したのは、ウォードレスをきた変態だった。
あろう事か、その変態のふざけた掛け声は、青い光を呼び寄せた。
5121小隊での竜戦で白い帽子のスカウトがみせた、青い光の壁が紡がれる。

岩田「フフフ、まさか聖銃をとめることになるとは思いませんでしたよ!さぁ、説得を続けなさい!あの子を許してあげなさい!」
(´・ω・`)「わ、わかった!」

(;^ω^):(これは・・・!こいつただの変態じゃないお!)

奇声をあげて笑いながら防壁を展開する岩田。
その笑い声とは裏腹に、顔は真剣そのものだった。
額に血管が浮かび、かみ締めた口から血が流れる。
長くは、いや、わずかな時間しか防壁は持たないだろう。

(´・ω・`)「やめるんだ勇美!ヤケになるな、落ち着くんだ!僕だ、ショボンだ!聞こえてるか!?」

防壁を形作る青い光が少しずつ散っていく。



  
172:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/02(金) 23:09:00 ID:kgQ8YeD10
  
その頃、街では避難活動が進んでいた。
人々が戦域から離れていく中、その中を逆にいく者がいた。

新井木「もう!なんなのよこの騒ぎは!幻獣がでたってどこによ!」
避難させてる人「君!危ないぞ、民間人ははやく逃げるんだ!」
新井木「ちょっ、離してよ!私は民間人じゃないんだから!ほら、私は5121小隊の新井木勇美十翼長!通して!」
避難させてる人「む・・・学兵か。だが危険なことにかわりはない、VIP小隊に任せるんだ」
新井木「VIP小隊?やっぱり・・・!友達がいるんだから邪魔しないでよっ!」
避難させてる人「あっ、コラ!戻って来い!」

新井木は避難誘導している兵士をふりきって走る。
友達といっても、街で偶然あってジュースをかけられてアップルパイを奢らせただけだが、なぜか嫌な予感がした。
新井木がVIP高校に近くにさしかかったとき、入院着であるいている人影を見つける。

新井木「あっ。あんた何してんの?危ないからはやく逃げないと!」
「あなたこそ・・・私はVIP小隊の者よ、民間人ははやく逃げなさい・・・!」
新井木「僕だって5121小隊員ですよーだ!あんたこそ何青い顔して偉そうな事言ってんのよ!」
「5121・・・?ちょうど良いわ、私をVIP高校までつれてって。行かなきゃ・・・!」
新井木「・・・ふーん。良いよ、訳ありって顔してるじゃん!君、名前は?」
ξ゚听)ξ「ツンよ・・・」



  
174:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/02(金) 23:13:23 ID:kgQ8YeD10
  
( ・(エ)・)「司令、誰かきたクマー」
FOX「なに?避難勧告がでているはずだぞ」
ξ゚听)ξ「私よ、司令・・・」
FOX「ツン?お前怪我はいいのか?・・・その人は?」
新井木「僕は5121小隊の新井木勇美!この人を連れてきたのよ、感謝してよね!」
ξ゚听)ξ「司令・・・あの幻獣は?どういうこと?」
FOX「・・・あれか・・・。あの幻獣は突如校庭に現れた。調査の結果・・・あれは我が隊の整備員、勇美十翼長であることが判明している・・・」
ξ゚听)ξ「・・・なんてこと・・・」
新井木「ちょっと、今なんて言ったのよ!勇美って聞こえたんだけど!?」
FOX「・・・知り合いかね?」
( ´_ゝ`)「司令、中継機器設置完了しやしたぜ。映像きやす!」

仮設テント内のモニターに映像が映し出される。
そこでは、最初見たときより縮んだ竜が巨大な生体レーザーを照射していた。
その先では、不思議な光の壁を築いて攻撃に耐える内藤とショボン、そして見たこともない奴がいた。
どうやらショボンは竜を説得しているようだ。

ξ゚听)ξ「な、内藤・・・!」
新井木「い、岩田ぁ!?なにやってんのあの変態!・・・っていうか、まさかあれが勇美!?」



  
176:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/02(金) 23:23:26 ID:kgQ8YeD10
  
(´・ω・`)「・・・くっ!勇美!」
岩田「ぐ・・・ごふっ・・・フフフ、そろそろ限界です、ね・・・!」
(´・ω・`)「だ、だめなのか・・・!?」

岩田が血を吐き、防壁が薄れていく。
この防壁が消えたとき、自分たちは消し飛ぶ。跡形もなく。
そうなれば当然説得は失敗し、探し人を自分が殺したこともわからない竜は永劫に見つからない探し人を探し続けるだろう。
そんな結末は認められない。

( ^ω^):(・・・この防壁・・・白い帽子の人もやってたお。あの人の青い光は俺の中に・・・なら!)

( ^ω^)「俺にも出来るはずだお!」

内藤の体を包む青い炎が展開する。
その炎にすら見える高密度の青い光は岩田の今にも消えそうな防壁を再構築した。

岩田「・・・これは・・・フフフ、素晴らしい・・・実に良、い・・・」
( ^ω^)「・・・助かったお。あとは任せるお。なんとしてもショボンは守るお・・・!」
岩田「フフフ、任せましたよ、狐さん・・・」

岩田は防壁を内藤に渡し、意識を手放す。
崩れ落ちた岩田を見て、内藤は岩田への認識を改めた。

( ^ω^):(立派な戦士だったお。あとは任せるお・・・変態!!)



  
248:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/03(土) 01:14:49 ID:2Sy3H+ME0
  
( ^ω^)「さぁ・・・気張るお・・・!」

ショボンは懸命に説得を続けている。
竜には言葉が届いているだろうか。
ショボンがいくら声をかけても、赤い光条は弱まらない。
いや、それどころか少しずつ強くなっているように思える。
内藤は防壁を維持する。

竜に変化は見られない。
だが、内部では勇美と幻獣に別れようとしていた。
むしろ、二人の勇美といったところか。
ショボンが生きていることを認め、今すぐに駆け出していきたい勇美。いまさら戻れないと泣く勇美。
ショボンの説得は無駄ではない。
無駄ではなかったが、良い結果に進んでいるかどうかは別だ。
ショボンの説得により竜内部での勇美の葛藤はまし、その葛藤から逃れようと竜は暴走する。
そして、ショボンは決定的な一言を発した。

(´・ω・`)「君の事が好きなんだ!頼む、帰ってきてくれ!!」



  
252:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/03(土) 01:26:18 ID:2Sy3H+ME0
  
それが本当に決定的だった。
竜の中で、勇美は今まで以上に狼狽した。

竜:(好き?ショボンさんが?私を?嬉しい・・・私も・・・好きだった・・・)
竜:(けど、私はもう幻獣。戻れない。好きって言ってもらえてももう、戻れない。悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい――!!)

竜の放つ赤い光条が、爆発的に威力を上げた。
自らの命すら削るほどの勢いでその奔流は内藤に迫る。

( ^ω^)「!!・・・なっ!これは・・・た、耐えられないお・・・!?」

すでに内藤とショボンのまわりは綺麗に吹き飛ばされている。
次は、自分たちだろうか。



  
256:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/03(土) 01:38:03 ID:2Sy3H+ME0
  
(;^ω^)「くっ・・・だめ、かお・・・!」
ξ゚听)ξ「なにやってんのよ内藤!!男なら諦めるんじゃないわよ!!」
( ^ω^)「ツン!?なんで・・・後ろにいるのかお、ツン!?」
ξ゚听)ξ「そうよ!ちょっと見にきてみればなによその様は!あんたが諦めたら私まで死んじゃうじゃない!!」
( ^ω^)「そ、そうだお・・・俺は・・・ツンを、みんなを死なせるわけにはいかないお・・・!」

( ^ω^)「誰も死なせないお!ハッピーEND以外認めないお!」

青い防壁をはるのは、光に包まれた青い狐。
その目は単眼、なぜなら未来しか見ていないから。
その装甲は漆黒。それは黒すぎて青く見える。
その青く見える装甲に、空色の紋様が浮かび上がる。
それは青にして空色の魔術回路。
アーリィFOXの体に刻まれたその魔術回路は、防壁に再び力を与えた。
まだいける。

(*゚ー゚):(私のプレゼント・・・役にたったみたいね、内藤君)



  
261:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/03(土) 01:52:01 ID:2Sy3H+ME0
  
防壁をもちなおした内藤に通信がはいる。
ドクオだった。

('A`)「内藤、やばいぞ。竜は自分の身なんか考えずに聖銃を撃ってる。このままじゃ下手したら死んじまうぜ」
(;^ω^)「・・・一難さってまた一難だお・・・」
('A`)「聖銃をなんとかしろ。助けたいならな」
( ^ω^)「無茶いうお・・・」

( ^ω^):(・・・俺にできるかお?)
???:(出来るとも)
( ^ω^):(!?だ、誰だお!?)
???:(私を忘れたかね・・・まぁいい。自分の力を信じてみるのだな。君なら出来る)
( ^ω^):(・・・力を、貸してくれるかお?)
???:(微力ながら)

( ^ω^)「よし、やるお!全人口筋肉ホットからヒート!!」
(´・ω・`)「内藤!?なにをする気だ!」
( ^ω^)「あの右手を何とかするお!ショボンはそこを動くなお!!」



  
262:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/03(土) 01:52:55 ID:2Sy3H+ME0
  
( ^ω^)「いくお!光よ集まるお!!」

アーリィFOXの全筋肉に火がはいる。
制御系に無尽に光がはしる。
その黄金色の光は、どこかの誰かの力添え。
その黄金色の光は、熊本城ではじめて発動した時より増えていた。
そう、まるでどこかの誰かが、二人になったように。



  
263:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/03(土) 01:53:37 ID:2Sy3H+ME0
  
VIPPERS - SYSTEM ver0.87

...nu ru po

GA!!

"おけおけwwwwwwwwおまえら突撃wwwwwww”

それは、7つの世界でただ一つ、VIPクオリティをもつプログラム。
諦めなどはVIPクオリティに必要ない。
さらにもう一つ。黄金色の光が文字を綴る。
それは本来1つしかなかったもの。最初の介入者。

−OVERS−SYSTEM Ver1.00.−

…………boot

OK

“我は赤を経て青に戻りし希望なり。我は幸せのみを切望する!”

それは7つの世界でただ一つ、夢をみるプログラム。
内藤の脳裏で、いつか見た影法師が微笑んだような気がした。



  
273:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/03(土) 02:13:03 ID:2Sy3H+ME0
  
内藤は駆ける。
内藤は空を飛べるとさえ信じていた。
熊本城から帰ってきて家のベッドで眠りについていた時、小神族の一人が頬に触れたのを知っている者がいるだろうか。
その小神族は、鳥の異名をもっていた。その加護は、飛翔。
目には見えないが内藤の背に力翼が展開する。
内藤は、空を飛んでいた。

遠くで見ていた小神族が笑う。

ハトリ「ズームインっ!がんばれ、青い狐さん!」



  
280:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/03(土) 02:43:30 ID:2Sy3H+ME0
  
歌が聞こえる。
それは内藤のために歌われる歌ではなかった。
内藤一人のためではなく、竜を、皆を思う歌。
皆が皆のために歌う、星の歌。


I wanna be a VIP STAR

君をもっと夢中にそれなんてエロゲ?

テラワロス VIP STAR 腕を広げブーンをさせてあげよう君だけに


( ^ω^)「皆が歌ってるお・・・!きっといけるお!」


I wanna be a VIP STAR 君をもっと夢中にそれなんてエロゲ?

テラキモス VIP STAR 腕を広げブーンをさせてあげよう

I wanna be a VIP STAR 君をぎゅっと抱きしめてあげるからうぇwwwうぇwww

ギガワロスVIP STAR うはwwwおkwww把握www魔法をかけてあげよう君だけに

( ^ω^)「精霊!ブーーーーーーーーーーン!!!!!!!!」



  
285:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/03(土) 03:00:56 ID:2Sy3H+ME0
  
内藤は飛ぶ。
青い光に包まれた流星は、すでに流星の域を越えて赤い光条を引き裂いていく。
それはもはや青い彗星。
迸る青い光とそれに引き裂かれる赤い光が、紫に空を染める。
空に輝く紫のオーロラを、希望を望む鬼と一匹の猫がみていた。

瀬戸口「紫か・・・夜明けの色だ」
ブータ「青と赤が交ざった平和の色・・・美しいな」



  
290:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/03(土) 03:27:09 ID:2Sy3H+ME0
  
内藤は聖銃の光を切り裂き、竜にたどり着く。
空を飛ぶ内藤は、迎撃に振るわれた竜の翼を空高く舞って回避する。
そのまま急降下。

( ^ω^)「精霊っ!」

彗星を形作っていた青い光が、すべて内藤の腕に集まる。
狙うは聖銃。竜の右手。

( ^ω^)「空中ブーンチョップ!!!!」

聖銃は竜から切り落とされた。
聖銃に全てを注いでいた竜は、すでに死に体。
力なく崩れ落ちる。

(´・ω・`)「勇美!!」



  
291:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/03(土) 03:28:22 ID:2Sy3H+ME0
  
ショボンが駆け寄ると、竜は後ろに下がる。
竜は、怯えていた。

(´・ω・`)「・・・勇美・・・」
竜「あ・・・あ、ぅ・・・うぅ・・・」

その時、内藤の通信機から大音量で怒声が流れた。

新井木「こっっのダイ馬鹿ぁ!!なにやってんのよあんたは!素直になるんじゃなかったの!?」
竜「っ!!」
新井木「あんたみたいなウジウジしたのが僕と同じ名前だなんて嫌んなっちゃうよ!もう知らないからね!」

竜は思い出す。
素直に気持ちを伝えようとショボンの見舞いに行こうとした感情を。
病院についたらショボンはいなくて、死んだと思っていた。
だが、生きていた。
なら、なにを拒絶することがあるのだろう。正直に駆け寄れないんだろう。

だって、私は幻獣だから。



  
296:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/03(土) 03:40:22 ID:2Sy3H+ME0
  
"だからどうした”

自分と同じ名前の少女に言われた言葉を思い出す。
全ての希望は、だからどうしたと抗う事から始まる。

幻獣になったからといってどうしたというのだ。
ならば戻れば良いではないか。
だが、どうやって・・・

(´・ω・`)「勇美・・・」

そっと抱きしめられる。
禍々しいこの体を。人類の敵である幻獣の体を。
抱きしめてくれている。
ショボンの体温が伝わってくる。それはとても暖かくて、優しかった。

勇美:(・・・ショボンさん・・・!ショボンさんショボンさんっ!私、一緒に過ごしたいよ・・・ショボンさんと、一緒にいたいよ・・・!)



  
297:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/03(土) 03:46:16 ID:2Sy3H+ME0
  
(´・ω・`)「良いんだよ、帰ってきて。一緒に遊びに行こう・・・チケットはとってあるんだ」

竜の体が崩れていく。
赤い瞳は涙をながし、その赤い輝きは失せていく。
翼は空に溶けて消えていき、やがて見えなくなった。
体は柔らかく肌色にもどっていく。その姿はもう人間に戻っていた。
竜は、戻った。竜は自分自身を責め、それを愛する人に許された。
大きな瞳に涙をため、勇美はショボンに縋る。

勇美「ショボンさんっ・・・!私、私、ショボンさんのお見舞いに行ったのに、いなくってっ・・・看護婦さんがね、死んじゃったって、親族にしか言えないって・・・!だから・・・だからぁ・・・!」
(´・ω・`)「すまない、心配させたね。もう大丈夫だから、安心するんだ・・・」

大団円だった。
いつのまにか集まってきたVIP小隊のメンバーと新井木が、二人を見守っていた。

新井木「へへっ、やれば出来るじゃん、勇美。さすが私と同じ名前の女の子!」
岩田「フフフ、ハッピーENDですか、良い、素晴らしいぃぃぃ!!」


(*゚ー゚)「あらあら・・・若いって良いわねぇ・・・フフ」
('A`)「・・・これでループも終わる、か。で、整備班長さんよ、あんた結局何者なんだよ」
(*゚ー゚)「私?・・・実はね、私は魔法使いなの。だから何でも知ってるのよ。魔女っ子って奴?」
('A`)「・・・いい年して何いってんだあんたは・・・」



  
299:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/03(土) 03:54:41 ID:2Sy3H+ME0
  
FOX「む・・・ドクオが吹っ飛んでいったようだが・・・」
( ´_ゝ`)「何やってんすかねぇあいつは・・・」
( ・(エ)・)「何はともあれ良かったクマー」

( ゜∀゜)「良かった!良かった!」
荒巻「うむ・・・見せつけよるわ。どうだ、長岡。久しぶりに今夜・・・?」

ξ゚听)ξ「・・・よくやったじゃない、内藤。・・・ちょっとだけ、かっこよかったわよ」
( ^ω^)「ツン・・・ツンのおかげだお。ツンの励ましがなかったら今頃死んでたお・・・」
ξ゚听)ξ「ば、ばっかじゃない!?別にあんたのためじゃないわよ!まだ死にたくなかったからよ!フン!」

(,,゚Д゚)「やれやれ・・・イチャイチャしやがって」
(*゚ー゚)「・・・なによ、あなたもしたいの?私は良いわよ、別に?」
(,,゚Д゚)「・・・その、帰ってからな」

('A`)「こいつらは・・・帰るか・・・」
FOX「・・・そうだな」
( ´_ゝ`)「一人身は辛いですねぇ・・・」
( ・(エ)・)「ほんとだクマー。さっさと帰って酒でも飲むクマー」



  
300:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/03(土) 04:03:45 ID:2Sy3H+ME0
  
みんな何だかんだいって帰っていく。
内藤とツン、ギコとしぃも遅れて去っていった。
みんな、ショボンと勇美を二人にしてやりたかった。

去り際に内藤とツンが声をかえる。

( ^ω^)「ショボン、俺達は先に帰るお。さっさと服を着せてやるお、目のやり場に困るお」
ξ゚听)ξ「ちょっと内藤、余計なこと言ってんじゃないわよ・・・さっさと帰るわよ!」

内藤はツンに引っ張られて去っていった。
冷静に考えると、勇美は裸だ。
裸の勇美と抱き合っている自分もまた、病院着のような薄着一枚。

頬を赤くし、それでも離れない二人を、青い光が祝福していた。
これで、ループは終わるだろう。
なぜなら、希望は人類の手に戻ってきたから。
それは小さい希望の種だが、やがて人類に広がっていくと信じている。

(´・ω・`)「・・・帰ろうか。その、今更だけど・・・勇美って呼び捨てにしていいかい?」
勇美「・・・はい。ショボンさん。・・・もう一人にしないでくださいね・・・」



  
301:1 ◆NcZOHhe0jA :2005/12/03(土) 04:04:32 ID:2Sy3H+ME0
  
はい終わり終わり。
あー最後は安いメロドラマみてーだぜ。
んじゃみんなおやすみだお( ^ω^)ノシ



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