( ^ω^)ブーンの妄想が現実になったようです


1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/01(水) 00:54:13.42 ID:lQ5bXPf+0
いつもと変わらない教室で、いつもと変わらない退屈な授業。
だが突然、窓が割れ謎の男たちが飛び込んでくる。

そう、僕が密かに守護する、”彼女”を拉致しに来たのだ。
僕は応戦する。
”彼女”に迫る男を拳一発で吹っ飛ばし、”彼女”を抱いて3階から飛び降りる。
そして軽やかに着地し―――



3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/01(水) 00:54:49.65 ID:lQ5bXPf+0
(´・ω・`)「古典教師技、白墨ミサイル!!」
(;^ω^)「んふぉ!?な、なんだお!?」
(´・ω・`)「また寝ていたね、内藤。いい夢は見れたかな?」
(;^ω^)「・・・ショボン先生・・・」

教室を見回すと、クラスメイトが自分を見て笑っていた。
ここはVIP高校。何の変哲もない、普通の高校だ。
もちろん、変哲のある普通でない高校などこの世界にはない。
少なくとも、彼、内藤が日々妄想しているような出来事が起こるような高校は。

(;^ω^)「そ、そうだお!ツン!ツンは無事かお!?」
ξ゚听)ξ「・・・はぁ。また私がさらわれそうになったの?ホントあんた精神病患者みたいね」

うんざりした顔をして、隣の席の幼馴染が言う。
ツンと内藤は生まれた頃からの付き合いだ。それ以来、ツンは内藤の妄想癖にうんざりさせられていた。

ξ゚听)ξ「恥ずかしいからやめてって言ってるのにもう・・・はやく入院したほうが良いわよ」
(;^ω^)「いや、けどツンは狙われてて僕が守らないと・・・」
DQN「キメェwwwww」
DQN「また言ってるよwwwwオタクに守られたくねぇwwwww」
( ^ω^)「・・・」



5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/01(水) 00:55:53.26 ID:lQ5bXPf+0
これが内藤の日常だった。
お洒落もせず、外で遊びもせず、アニメを見てゲームをし、漫画やラノベばかりを読む、いわゆるオタクという人種。内藤はまさにオタクの見本のような奴だった。

幼馴染のツンに想いをよせ、彼女がピンチになった時に自分が颯爽と助けたり。
夜な夜な街で化け物退治をしてみたり。
実は国家の特殊機関の工作員だったり。
実力を隠して生活する拳法の達人だったり。

そんな妄想ばかりしている、イタい厨オタク。

( ^ω^) (・・・夢かお。けど嫌な予感がするお。ツンはこの僕が守らないといけないお。ツンがさらわれでもしたら世界が危ないお・・・)

内藤の妄想はもう、現実すら侵食している。
高校の、それも3年になってなお、こんな中学生みたいな事ばかり考えていた。

('A`)「おい内藤、飯くいに行こうぜwwwww」

そんなだから、今日もDQN達にいじられるのだ。



6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/01(水) 00:58:35.53 ID:lQ5bXPf+0
DQN「なぁ内藤、おまえマジでキモイよwwww」
DQN「ツンって誰に狙われてんの?www俺らも手伝ってやるから教えろよwwww」

内藤は、学食でDQN達に囲まれて食事をしていた。
DQN達はニヤニヤしながら内藤に質問している。

( ^ω^)「うるさいお。奴らはお前らが戦えるような相手じゃないお。首を突っ込まないほうが良いお」
('A`)「だから奴らって誰だっつーのwwwwお前ほんと昔からイタイなwwwww」
DQN「こいつ昔からこんななのかよwwwwキメェwwwww」
DQN「おいドクオ、お前小学校から一緒なんだろ?wwwwこいつん中じゃどういう設定になってんのよwwww」
('A`)「あー・・・簡単にいうと、人類に存亡の鍵を握るようなそりゃもうすごい力をもったツンを、普通人のふりして影ながら守ってる超強いナイト様が内藤、みたいな?」
DQN「うはwwwwますますキメェwwwwwてかこいつ普通人のふりなんかできんのか?wwww」
DDQN「ちょ、内藤ほんとは強いんだwwwwどんくらい強いか教えてくれよwwwwwヤムチャくらいか?wwwww」
('A`)「ばっか、ピッコロさんに勝てるくらいだよwwwww」
DQN「めちゃくちゃつえぇぇぇぇwww弟子にしてほしいwwwww」



7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/01(水) 01:01:41.59 ID:lQ5bXPf+0
( ^ω^) (・・・ふぅ。馬鹿ばっかりだお。お前らは何かあっても助けてやんないお?)

内藤は何も言わず黙々と箸を動かしていた。
内心では、自分の高度な思考など理解できないガキだと馬鹿にしている。
内藤の言う高度な思考など、せいぜい妄想するかラノベ的な喋り方をするくらいだが。

ちなみに、内藤はこのDQN達から暴力を受けたことはない。
毎日いじられるだけだ。
高校がバイク通学のため、たまに一緒にバイクでレースしながら帰ろうと連れて行かれたり、カラオケに連れて行かれたり、ニヤニヤしながらゲーム貸してといわれたり、パソコンでエロ画像見せてくれと家に押しかけられたり。

つまりまぁ、ドクオとその仲間のDQN達は、DQNだが良い奴らだった。
ドクオは小学校から何だかんだと内藤をいじりながらも親しげに接してくれたし、その仲間のDQN達も内藤が違う組のDQNに苛められそうになったらネタにしつつも助けてくれた。
パシリに行かせる事もないし、それどころか自販機に行くときは連れて行こうとした。パンをついでに買ってきてあげる事すらあった。



9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/01(水) 01:03:03.38 ID:lQ5bXPf+0
ドクオも昔隠れオタで高校デビューだったし、他の奴らも苛めなどの曲がったことは嫌いだった。
高校デビューしてオタクを捨てても、オタクとは違う人種であるDQNだったとしても、イタいオタクを馬鹿にせずに立ち直らせようとする良い奴らだった。

内藤は、そんな事知らずに馬鹿にしていたが、だからといって、彼らを嫌ってはいなかった。



11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/01(水) 01:06:47.90 ID:lQ5bXPf+0
内藤は食堂でいつも通りいじられながら昼食をとり、教室にもどってきた。
一緒にもどってきたドクオとDQN達は机をくっつけ麻雀をはじめた。
内藤も誘われたが、断った。麻雀なんて出来ないし、低脳のやるものだと内藤は思っている。
女子がコイバナに花咲かせ、チーやらポンやらうるさい教室で、内藤は一人自分の机に突っ伏した。
いつも通り妄想が始まる。

( ^ω^) (ドクオも昔は一緒にラノベ読んでたのに堕落してしまったお。・・・けどきっと世間体を気にしてるだけだお、バイクの改造にはまってるって見せられたとき、ゲームに出てくるようなバイクにしてたお。きっとあのバイクで戦うに違いないお)

( ^ω^) (ショボン先生は僕を馬鹿にしないお。たまに話しに付き合ってくれるお。もしかしたら僕の正体に気付いているのかも知れないお。きっと何か裏があるお)

( ^ω^) (ツンは能力はとても強いけど不安定だお。奴らにさらわれちゃ能力が暴走するかも知れないお・・・)

(*゚ー゚)「内藤君、そろそろ授業はじまるわよ。次は音楽室に移動しないといけないから起きたほうがいいわ」
( ^ω^)「委員長かお。わかったお。どうもだお」
(*゚ー゚)「いいえ、どういたしまして」

( ^ω^) (しぃさん萌えだお。委員長だし。巨乳だし。家が神社だからきっと巫女さんだお。剣道部だから剣の達人かも知れないお)

友達数人と教室を出て行くしぃを見ながら、内藤はまだ妄想を続けていた。



12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/01(水) 01:12:03.00 ID:lQ5bXPf+0
その日も内藤の妄想のような事は起きず、ごく普通に放課になった。
ドクオ達にボウリングに誘われたが、断ってさっさと帰る。

家に帰ると、すぐに部屋にこもりパソコンのまえに座った。
2chでスレを漁りながら、ワードを立ち上げる。
ワードのドキュメントの名前は、人物、装備設定集。
もう見た瞬間にアイタタタと思う名前だ。

その内容に、内藤の今日の妄想が書き加えられる。
パソコンを買った時からずっと妄想を書き込んできたため、その内容はかなりカオスな事になっていた。スレで表すと、32スレのまとめなし、くらいのカオスっぷり。
もはや内藤でも全内容を把握していなかった。

内藤は深夜の2時くらいまでネットを満喫した後、もそもそとベッドにもぐりこむ。
きっと夢では、活躍する自分が見られるだろう。

( ^ω^)「・・・はぁ。明日は何か起こりますように、だお」

内藤が寝る前に呟くその台詞は、今日でちょうど1000回目だった。
1000回も、非日常を望んだのだ。



14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/01(水) 01:15:55.11 ID:lQ5bXPf+0
( ^ω^)「いってきますお」

今日もつまらない一日が始まる。
自分にとって有意義な時間は、自分の部屋に篭っている時だけだと、内藤は本気で思っていた。
例外があるとすれば、毎日の登校だろうか。
いつも玄関で、ツンに会えるから。

( ^ω^)「おはようだお、ツン」
ξ゚听)ξ「おはよう、内藤。今日は変な事いわないでよ?」
( ^ω^)「別に変じゃ・・・いや、何でもないお。はやく教室にいくお」

下駄箱に靴をいれた後、内藤はツンに、自分がいかに変な言動をしているか軽く説教されながら教室に向かう。
その様子を少し後ろからドクオ達が見ていた。

('A`)「にしても・・・ツンもなんつーか、内藤を切らないよなぁ」
DQN「良いんじゃん?内藤ってイタいしツンみたいな娘がいないと目も当てらんねwww」
DQN「それ想像したら自殺もんだな。つーかそれなら内藤の言うとおり拉致でもされたらやばくね?wwww」
('A`)「やべぇwwwwそれはやべぇwwwwなんか黒服の集団がきたりしてなwwwww」
DQN「そんときゃ手伝ってやろうぜwwwww」



19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/01(水) 01:27:04.19 ID:lQ5bXPf+0
( ^ω^)「・・・?あれ?」
ξ゚听)ξ「どうかした?」
( ^ω^)「階段を上っても疲れないお???」
ξ゚听)ξ「そりゃそうでしょ。3階まで階段上ったくらいで疲れるってどんな体してんのよって話よ」

(;^ω^)「・・・」

おかしい。
内藤はいつも教室のある3階まで会談を上ると、軽く息があがっていた。
だが、今日はなんともない。
そういえば、鞄もいつもより軽いような気がする。中身は同じなのに。
内藤は教室についてすぐ鞄をおき、トイレにいってみた。

(;^ω^)「こ、これは・・・!」

トイレの鏡の前で制服をはだけると、自分ではない自分がいた。
薄っぺらかった胸板は頑強な筋肉に覆われ、まったいらだった腹筋は見事に割れている。
途端に、視界がぼやけた。眼鏡をはずしてみると視界がクリアになる。0.1に満たない視力が、回復していた。
腕をまくると、枯れ枝のようだった腕が見違えるほどに逞しくなっている。

夢にまで思い描く、理想の自分がそこにいた。



20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/01(水) 01:31:16.14 ID:lQ5bXPf+0
('A`)「・・・内藤の野郎なにニヤニヤしてんだ?果てしなくキモいんだけどよ」
DQN「なんか良い事あったんじゃね?」
DQN「メガネはずしてんのはじめて見たな。コンタクトにしたらマシになるって言った事あったけど、すまん、ありゃ嘘だった」


( ^ω^) (やっぱり本当の僕はこうじゃないとだお。うはww力こぶすげぇwwwww)


(´・ω・`)「よーし授業はじめるぞー。・・・って、どうした内藤、嬉しそうだな」
( ^ω^)「へ?いやいや、何でもないですお?www」
(´・ω・`)「・・・?そうか。それじゃあとりあえず教科書だして。今日は78ページからだ」


( ^ω^) (ん?鞄の中にグローブが・・・。こんなの知らないお??)

教科書を出そうと鞄を開けると、見慣れない指貫グローブがはいっていた。
特撮のヒーローがつけそうな、ヒロイックなデザインのグローブだった。



22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/01(水) 01:39:21.07 ID:lQ5bXPf+0
( ^ω^) (・・・このグローブどこかで見たような気がするお?)

(;^ω^)「あ!こ、これ、守護手甲ホライゾンだお!?」 
(´・ω・`)「白墨ミサイル!」
(;^ω^)「!」

突然叫んだ内藤に、いつも通りチョークが投げられる。
いつもは気がついたら当たっているチョークが、今日はゆっくり飛んできた。
とりあえず避けてみる。

(;´・ω・`)「お・・・?んん?外したか?」
('A`)「ちょwwwww」
DQN「避けたwwwwねーよwwwww」

チョークが教室の壁にあたって砕けた頃には、クラスメイト全員が内藤を見ていた。
内藤は、調子に乗った薄ら笑いを浮かべている。

( ^ω^)「・・・騒ぐな騒ぐなだお、一般ピーポーどもwwwww」
DQN「なんか内藤が調子のってるんだけどwwww」
('A`)「たまたまチョーク避けたくらいでどんだけ調子のってんだよwwwww」
ξ゚听)ξ「みっともないわね」



24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/01(水) 01:53:04.44 ID:lQ5bXPf+0
(#^ω^) (こいつら・・・今僕が何したかわかってるのかお?)

ただ単に飛んできたチョークを避けただけだが、内藤はかなり調子に乗っていた。
体育の球技ではボールが来ないことをひたすら祈り、マラソン大会の前日は雨降り坊主を作るような真性の運動音痴の内藤からすれば、今のチョークを避けたという事は銃弾を避けるのに匹敵する偉業だったのだ。

(´・ω・`)「はいはい静かに。内藤も突然叫ぶな、うるさいから。まったく、チョークが一本無駄になってしまったよ・・・」
生徒「先生、教科書わすれたー」
(´・ω・`)「仕方ないな、隣の子に見せてもらいなさい」
('A`)「先生、俺も忘れたんだけど」
DQN「俺も」
DQN「そういえば俺も」
(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」
('A`)&DQN「ちょwwwww」

内藤が心中でブツブツ言ってることなど知る由もなく、授業は再開された。
ちなみに、内藤も教科書を忘れていた。



29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/01(水) 02:07:50.52 ID:lQ5bXPf+0
( ^ω^) (まぁいいお。低脳な俗物どもは置いといて、今はこのホライゾンだお)

( ^ω^) (これは僕の専用武器で、僕のクオリティをエネルギーに変換するんだお。その一撃は岩をも砕くお!)

ξ゚听)ξ「内藤、あんた何ボーっとしてんのよ。いつものことだけど。教科書かしてあげるから机よせなさいよ」
( ^ω^)「む・・・わかったお。ありがとうだお、ツン」
ξ゚听)ξ「べ、別にあんたのためじゃないわよ!あんたの机半分使わせてもらうためよ!」
( ^ω^)「照れなくて良いお、僕と一緒に愛の方程式を解くお」
ξ゚听)ξ「・・・キメェ」
( ^ω^)「・・・」

ツンは、普通に嫌そうな顔をして配られてきたプリントに目を移した。
内藤も自分のプリントを見る。
微分・積分のプリント1と書いてある。まったく理解できなかった。
プリントにへたくそな萌え絵を落書きしながら、内藤は妄想のスイッチをいれた。

( ^ω^) (このグローブさえあれば敵が来ても大丈夫だお。いつでも来るお、ツンは僕が守るお!)

(´・ω・`)「プリントでわからないことがあったら質問するように。特に問い4はテストに出るから良く理解する――ん?」

その時、教室の窓ガラスが派手に割れた。



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