( ^ω^)ブーンがあの事件に挑むようです


752:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/27(月) 01:56:06.47 ID:AbTDNpa+0
内藤たちはニュー速市に帰ってきた。
それぞれの家の前でショボンの車から降ろしてもらう。
内藤は久しぶりの我が家で家族に色々と説明した後、ベッドにもぐりこんだ。
体に染み入った疲労が眠気に変わっていく。

( ^ω^)「うぼぁー・・・極楽だおー」

もし鮫島で町田二人組みの申し出を断らなかったらどうなったのだろうか。
その場合もこうして心地よく眠りにつけただろうか。
おそらく申し出を受け町田を継いでいた場合、気持ちよく眠ることも出来ずに、さっさと次の後継者を探して重荷を押し付けていただろう。
そもそも、初代の町田の思想と同じ考えをもつ人間が町田を名乗るべきだ。
それがどこかで狂ったから町田二人組みのような少しズレた者が出てきたのかも知れない。

( ^ω^)「ま、そんな事どうでもいいかお・・・zzz」



758:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/27(月) 02:22:59.67 ID:AbTDNpa+0
内藤は夢を見ていた。
男は捕まりそうになり、生贄を用意した。その生贄は捕まり、殺された。
その男は生贄が殺された後も活動を続けた。
止めるべきだったのに活動を続けた。それが信念に基づくものだったから。
理想の実現のためになら誰かを利用し、色々なものを消していった。
かの駅で邪魔なものを消した。その主犯を務めてくれた男も消した。
かの島に上陸した者を消した。都合の悪いログも消した。
アメリカで自分の起こした事件を嗅ぎまわっていた男を消した。
その男は永い間一人だった。
一人ではあったが、複数だった。複数の一人は入れ替わりを繰り返し、連綿と複数であり続ける。
そして、複数は捕まり続けた。
だけど決して、元々の一人は捕まらなかった。
その削除人は、最初に自分というものを消していたから。
そんな、意味のわからない夢を見ていた。

( ^ω^)「ぷひゅー・・・ふ・・・朝かお・・・。ふぁーぁ、わけわかめな夢みたお・・・」

その夢も朝日の中に消えていく。
夢というものは得てして奇妙なものだ。自分の持ちうる情報でさえあれば、どんな突拍子のない話でも組み立ててしまう。
おそらく夢のような想像力を日常から発揮できる人間が天才という奴なんだろう。

( ^ω^)「・・・いやー、朝からインテリチックだお。今日の朝ご飯はなんだお?」



760:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/27(月) 02:37:25.67 ID:AbTDNpa+0
( ^ω^)「うーん、トーストにみそ汁ってのはスタンダードなのか否か、それが気になるお・・・ハムハム、ズズー」

内藤家のいつもの朝食をありがたく頂きながら、内藤はプリントを眺めていた。
ショボンが別れ際に渡してきたプリントには、VIP高校の卒業式に出席できなかった内藤のために一人だけの卒業証書授与式を行う旨が書かれている。
場所がバーボンハウスなのが気になるがショボン個人の計らいなのだろう。
式の予定は今日。
とりあえず時間はいつでも良いらしいので今から向かおうかと思う。
少々早いが喫茶店でゆっくり寛ぎに行くと思えば問題ないだろう。
朝食を終えた内藤は玄関で、通学用のはき慣れた靴に足を通す。
内藤は出席できなかったが、もう卒業式は終わっているのだ。この靴を履いていつもの道を歩くことはもうないのだと思うと、感慨深いものがある。

( ^ω^)「・・・高校生活も終わっちゃうのかお。ぶっちゃけ進路なんか決めてないお」



764:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/27(月) 02:56:36.20 ID:AbTDNpa+0
(`・ω・´)「いらっしゃい!バーボンハウスへようこそ!」
( ^ω^)「おはようだおマスター。今日も元気だお」
(´・ω・`)「無駄に早いな・・・まぁ良いか、コーヒー飲み終わってこれ読み終えるまで待て」

喫茶店バーボンハウスでは、まだ客のはいっていない店内でショボンがくつろいでいた。
店の中央のテーブルにわざわざコーヒーメーカーを持ってきて、おかわり自由、オレが王様的な雰囲気を醸し出している。
内藤はショボンの向かいの席に座りマガジンを広げた。
ちなみに取ってきたわけではなく、テーブルの上にあったマガジンだ。ショボンがもってきたのだろう。
バーボンハウスにある全ての雑誌がテーブルに山積みにされている。
この状況でなにも注文しないのはあまりにシャキンが可哀想なので、とりあえずコーラを頼む。
内藤とショボンは無言でページをめくり、店内にはつけっぱなしのTVニュースの音声だけが流れている。
構造欠陥偽装のニュースが終わり、次のニュースに切り替わった。

「昨晩から行方不明になっていた鹿児島漁協の船舶が洋上で発見されました。船内には人の姿はなく、警察は何らかの事故に遭遇したと見て捜査を―――」



781:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/27(月) 03:26:35.41 ID:AbTDNpa+0
(´・ω・`)「・・・今ひどいニュースを見た」
( ^ω^)「あーあー聞こえなーい・・・わきゃねーお・・・」

明らかに不吉な匂いのするニュースだ。
鹿児島県沖で漁船が行方不明で、しかも発見された時にはもぬけの殻。
TVに目を向けると、鮫島で見たあの船が映し出されている。
町田二人組を乗せていた漁船。
もぬけの殻というのだから、町田二人が逃亡したと考えるべきだろうか。

(´・ω・`)「あいつらが逃げたにしては・・・なぜ警官がいない。そもそも手錠をどうやって外したんだ?」
( ^ω^)「・・・警官が外さないと無理だお・・・公安の人はついてなかったのかお?」
(´・ω・`)「む・・・しまった、そうか・・・。公安がマークしているはずの町田に対して、あの警官は迅速すぎた・・・のか?いや、だが末端の巡査がたまたま動いただけかもという事もあるしな・・・」

あの警官が町田の協力者だったのだろうか。
しかしそれなら鮫島で内藤たちを襲えば良いのでは。警官だから拳銃を持っているだろうし、なにより内藤たちは気を抜いていた。
わざわざ連行する真似をしなくても簡単だ。

( ^ω^)「むぅ・・・抑止力としての警官がいるから町田は大人しかったんじゃ・・・それに海の上で姿を消すにしてもどうやって」
(´・ω・`)「抑止力、か。町田に対しての・・・つまり町田以外には警戒はなかった。町田以外であの船にいた人間・・・」
( ^ω^)「船の・・・持ち主・・・?漁師さん・・・なら、海の上で船を取り替える事も出来なくはないお」



784:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/27(月) 03:41:05.12 ID:AbTDNpa+0
(´・ω・`)「・・・はぁ。漁師か。もう、うん。ぶっちゃけ誰でも良い気がしてきたぞ。大体もう関係のない話だ・・・」
( ^ω^)「ちょ、そりゃそうだけど・・・むぅ。気にはなるけど確かに関係ないお・・・」
(´・ω・`)「だろう?そんな事より今日の晩飯を気にしたほうがずっと建設的だ」

あっさり頭を切り替えたショボンは再びマガジンに目を落とした。
内藤はまだニュースを見ていたが、確かに町田事件を追いかける必要がない今、そのことで頭を動かすのはカロリーの無駄だ。
もやもやは残るが、ある意味正論ではある。

( ^ω^)「はぁ。まぁ、分からなくもないお。ところで先生、卒業証書はまだ・・・」
(´・ω・`)「ん・・・あー何かもう面倒だな。ほれ、内藤。卒業おめでとう、これからもがんばれ、以上。わーぱちぱちぱち」

ショボンはマガジンを読みながら、傍らの鞄から適当に卒業証書を差し出してきた。
受け取った内藤に口で拍手を送りながらも、手はぺージをめくる。
軽く感動の授与式を期待していた内藤は、どうにもやるせない気分になった。
卒業証書を持ってきた鞄に入れると、鞄の中で携帯が震えていた。
震え続けているあたり、誰かからの電話のようだ。携帯を開くと、ツンという名前が表示されている。

( ^ω^)「もしもし?なん・・・」
ξ゚听)ξ「なーいーとーうー!見た?ニュース見た!?ちょっと、もうあれよ、まだだったのよ!」
( ^ω^)「OK。時に落ち着くお、ツン」



786:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/27(月) 04:04:13.74 ID:AbTDNpa+0
ξ゚听)ξ「落ち着いてらんないわよ!ねぇ、どう思う?私的には警官か、もしくは漁師が怪しいんじゃないかと・・・」
( ^ω^)「今ちょっとその話したけど、良く考えれば捕まってる町田以外には警官と漁師しか居ないんだから、そりゃそのどっちかが怪しいに決まってるお」
(´・ω・`)「はっは、そりゃそうだ」

一度関係ないと考えてしまえば、客観的に物事を捉えられるようになる。
内藤は今まであくまで客観的な立場からの主観で町田事件を捉えていたが、今になってようやく真に客観的に考えられるようになっていた。
そもそも、単純に考えれば判ることこそが真理なのかも知れない。
昨日までは何故町田が後継を残すのか等と考えていたものだが、大雑把に考えてしまえば簡単なことだ。
単純に捕まりそうだから後継とするのか、もしくは自分の身代わりに出来るから。
まぁ、そんなところだろう。

( ^ω^)「ん・・・?ということは、町田が身代わりに後継者を乱造してるとすれば・・・町田ってのは今も・・・」
ξ゚听)ξ「身代わりに・・・?そうか・・・偶然あの町田二人組みが私たちを囮に使おうとしたように、先代の町田も同じことをしていたのなら・・・!」
(´・ω・`)「おいおい、何か物騒な話してないか?頼むからもう首は突っ込むなよ・・・」

白熱するツンと、それに半ば引っ張られる内藤。
ショボンには内藤の声しか聞こえていないが、ツンのテンションが上がっているのは伝わってくる。
もう厄介ごとにならないように神に祈りながら、ショボンはコーヒーを飲み干した。



100:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/31(金) 23:39:22.21 ID:+LQaeFUz0
ξ゚听)ξ「うーん・・・だめね、エンジンかかっちゃった。今からそっち行くわ」
( ^ω^)「いや、来なくて・・・切れたお」
(´・ω・`)「・・・はぁ。あんまり首突っ込むと消される、なんて全然怖がってないなアイツは」

とはいえ、そういう人間こそが町田事件に近づけるのだろう。
鮫島事件に近付く者は公安に消される、という噂はある意味第一関門として機能しているようだ。
噂といっても、実際に公安は動いていたわけだが。
そのせいで貴重な情報を提供してくれたタカラも―――。

(´・ω・`)「・・・タカラ、だと?」
( ^ω^)「ん?どうしたお先生」
(´・ω・`)「・・・内藤。タカラは誰に殺されたんだ・・・?」

タカラは公安に殺された。そう言おうとして、内藤の口が止まる。
内藤たちは実際に公安に遭遇し、あまつさえショボンは公安の女のことを知っている。
公安は政府の下にある組織だ。それ故にアメリカでの内藤たちの動向等を察知しタカラを消した。
そう考えていたが、政府の組織がそうあっさりと自国民を消すだろうか。
それに鮫島事件に近付いた人間が公安に消されるのならば、内藤たちも消されるはずだ。



103:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/31(金) 23:48:58.35 ID:+LQaeFUz0
(´・ω・`)「だが俺たちは消されるどころか、内藤がいなくなった時には公安の一人が警備につきさえしていた」
( ^ω^)「じゃあタカラは・・・誰に?まさか町田がアメリカにも?」
(´・ω・`)「わからん・・・だが国外逃亡までしていたタカラを消すのは公安としても労力の無駄のはずじゃないか・・・」
( ^ω^)「とすると飛行機の中にいた公安の人も偽者・・・?」
(´・ω・`)「いや、あれは本物の公安みたいだぞ。少佐が部下が世話になったと言っていたからな」

飛行機の中でショボンが取り押さえた公安の人間。
内藤たちは今まで、自分たちを消すために飛行機に乗っていたのだと思っていた。
だがもし違うとすると、なぜあの飛行機に乗っていたのか。
偶然ではない。喫茶店で公安の女は自分からあの飛行機内の公安の話を振ってきた。
つまり、なんらかの任務で飛行機に乗っていて、それを公安の女は把握していたという事になる。
公安の任務で、アメリカ帰りの飛行機。
別件の可能性もあるが、おそらくは町田事件関係。タカラ目当てだったのではないか。

( ^ω^)「タカラの保護、または接触が目的だったのかお?」
(´・ω・`)「だが、それは叶わなかった。タカラが何者かに消されたために、情報を渡された俺たちに接触を・・・」
( ^ω^)「・・・それなら、何でつーさんに接触しなかったお・・・?公安なら妹の存在くらい知っているはずだお」



105:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/31(金) 23:59:51.04 ID:+LQaeFUz0
(´・ω・`)「む・・・つーが言うにはタカラは戸籍なんかも処分して・・・いや、それもおかしいか?」

戸籍を処分していたとしても、公安はタカラを見つけ出している。
となれば、当然その捜査の途中で妹であるつーの存在も、つーが情報を持っている可能性も浮き出てきたはずだ。後手に回していたとしても、タカラが殺されたのならばつーに接触するはず。
だが、つーはそんな事は話さなかった。

( ^ω^)「・・・タカラはアメリカで、情報は全部話したと言ったお。けど、実はまだ続きがあって、つーさんはその続きを知っていて・・・」
(´・ω・`)「・・・つーを疑っているのか?内藤・・・」
( ^ω^)「・・・いや・・・けどまぁぶっちゃけ怪しくなって・・・いやいやいや・・・」
(´・ω・`)「・・・たが確かに怪しい、ような気がしてきたな・・・」

怪しいという前提で考えれば、確かに怪しい。
内藤がいなくなった時点で偶然ショボンと合流したこと。
そこで偶然タカラの妹で、タカラが隠していた情報をもっていたこと。
あげく、今まで鮫島事件に興味があるような気配がなかったドクオまで連れてきたこと。
そして、内藤にはもう一つ気に掛かることがあった。

( ^ω^) (僕を襲ったのは二人組み・・・つーと・・・ドクオも、
二人組み・・・だお)



133:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/32(土) 03:43:46.81 ID:mV2/xUE10
(´・ω・`)「・・・そういえば喫茶店でダディと会った時にも、偶然現れたな」
( ^ω^)「・・・いや、まぁ、きっと偶然だお。友達を疑うなんてのは・・・」

たしかにドクオとつーを疑うのは気分が悪い。
しかし疑って掛かると、それはそれで一つの説が成り立つ。
内藤たちが町田事件を調べ始め、公安がそれを利用し、ビデオ回収の罠に使った。
それを察知した町田たち。つまりつーとドクオは、偶然を装って喫茶店バーボンハウスへ現れ、内藤たちの話を盗み聞くことが出来る席に座った。
その会話から罠であると感付いたのか、つーとドクオはビデオの罠を回避し公安をかわした。
その後、知りすぎた内藤たちを消そうと手始めに内藤を襲い、鮫島に送る。次に狙う予定だったのかも知れないツンが内藤を追い鮫島に向かい、その手間は省けた。
あとは鮫島にショボンを連れて行って三人を消せば、町田事件の不気味さをさらに増しつつ、障害を取り除くことが出来る。

( ^ω^)「疑うなんてのは・・・ダメ、だお・・・」

さらに、タカラだ。
公安に消されたとばかり思っていたが、それも確度が失われてきた。
もちろん、つーとドクオがわざわざアメリカまで行って殺してきたとは言わない。
だが、もしも万が一。タカラも町田側の人間だったら。
何故内藤たちに情報を渡したのかはわからないが、町田側の人間だとすると誰が殺したのかはわかる。おそらく、タカラは自殺したのだ。役目を終え、公安を煙に巻くために。
町田側の人間だからこそ、あのタイミングで都合よくつーが妹役で出てくることも出来る。

( ^ω^)「・・・」



135:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/03/32(土) 04:15:16.74 ID:mV2/xUE10
( ^ω^)「・・・いやいや。あんな事件に巻き込まれたから頭が休まってないみたいだお。それはさすがにねーよ・・・」
(´・ω・`)「なんなんださっきから?」
( ^ω^)「なんでもないお。ちょっとツンに影響されてるみたいで・・・変なことを考えてしまうお」

思考を振り払おうとする言葉とは裏腹に、内藤の脳は稼動し続ける。
つーとドクオが町田の人間だとしたら、鮫島でなぜ動かなかったのか。
あの日、内藤とツンが鮫島から出れた日。
つーとドクオはショボンに協力するという自然な形で鮫島に上陸し、内藤とツン、ショボンという消したい人間を集めた上に、町田二人組とつー、ドクオが揃うという理想的な形で、鮫島には役者が揃っていたはずだ。
後は消すだけだったろうに何故そうしなかったのか。

( ^ω^) (・・・警察・・・あれは本物?もし本物の警官だったんなら、動けなかった理由も・・・なら、無人になって発見された船とかは・・・まさか・・・)

鹿児島からの帰りで、車に乗ったのは内藤とツン、ショボンだけだ。
つーとドクオは気を利かせて内藤たちを先に帰らせ、自分たちは後で電車か何かで帰ると言っていた。
そして、重要な参考人であるはずの町田二人組は、公安の手に渡る前に洋上で姿を消した。
今までの仮説とはまた違った説。
既に把握できないような段階になった町田事件への考察に対して、内藤はひとつの答えを出した。

( ^ω^)「・・・やっぱさっき言ったとおり気にしないでおくお。もう関係ないお」
(´・ω・`)「結局はそこに落ち着くか・・・だが、もう一山くるみたいだぞ」

内藤がようやく思考を切り替えたというのに、ショボンが指差した向こうに、自転車を漕ぐツンの姿が見えた。
生まれて始めて内藤は、意中の相手を見て顔をしかめた。



272:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/03(月) 00:44:14.00 ID:fct7/i5D0
ξ゚听)ξ「それで私的には漁師や警官が怪しいとするともう町田っていうのは国家的な・・・そう、参議院と衆議院みたいな関係で・・・」
( ^ω^)「先生、そろそろ昼だお。ランチただになったりしないかお?」
(´・ω・`)「俺に聞くな」
ξ゚听)ξ「・・・ちょっと内藤聞いてんの?」

喫茶店にツンが現れてから数時間、ツンはずっと話し続けていた。
町田事件の鍵である鮫島事件以下都市伝説の組み立て方、その真相についての推理から始まり、今や町田事件イコール政府内での二分勢力による主権争いへと発展している。
実際そうだとしたら数々の事件が少しばかりショボい訳だが、知られていない大きな事件があった可能性もないわけではない。
ないわけではないが、可能性は低いというかぶっちゃけありえない。

( ^ω^)「二分勢力が云々だとしたら町田事件はなんのために起きたんだお?ビデオ売ったり人消したりするよりもっとこう・・・なんかあるお」
ξ゚听)ξ「フ・・・そこで2000年5月以前の自衛隊機のスクランブルや警察の警戒強化、鮫島代議士絡みの事件が出てくるわけよ。そうすれば真実味が・・・」
( ^ω^)「あーそれはすげー。もう良いじゃないかお、ツン。町田事件はもう僕たちには関係ないお。それより今日のランチセットはAかBか、それが重要だお」

実際ランチセットなどどちらでも良いが、内藤はもう町田事件の事を考えたくなかった。
内藤たちは随分と近づいたのだろうが、それでも謎がありすぎる。
ありすぎる疑問はあらゆる仮説の可能性を内包し、身近な人でさえ怪しく思えてくる。
都合のよすぎる展開で登場したつーとドクオ、挙句、疑おうとすればツンさえ疑えてしまう。
しかもその疑問に答えが出たとしても、内藤には何の得もない。
片足どころか両足を突っ込んだが、犬にかまれたと思って忘れるのが一番懸命だと内藤は判断した。



276:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/03(月) 01:04:25.44 ID:fct7/i5D0
ξ゚听)ξ「そりゃ真実がわかっても別に得はないけど・・・気になるのよねぇ・・・」
( ^ω^)「気になるのはわかるけど、触らぬ神に臭い蓋だお」
ξ゚听)ξ「むぅ・・・最初はノリノリだったのにつまんない・・・はぁ〜、ロマンがないわぁ」

ため息をついて、ツンはランチセットAを注文する。
内藤もそれにならいBセットを注文し、ショボンはテーブルに積み重なった雑誌をせっせと本棚に戻しはじめた。
昼飯時になると客もはいってきて、ようやく喫茶店らしい雰囲気が出てくる。
近くの工事現場のおっちゃんや隠居したおじいさん、外回りのサラリーマン等が入店する中で、内藤が今あまり会いたくない友人の姿が見えた。

('A`)「ちっす」
(*゚∀゚)「あらら、内藤君たち何気に常連ねー」
( ^ω^)「・・・こんにちわだお」

普段と変わりない様子で、ドクオとつーはいつかのように内藤たちの隣のテーブルに座る。
日常の光景なのに、ツンと談笑するつーが別人のように狡猾に思えてしまう。
雑誌を読んでいるだけのドクオにさえ、何か得体の知れない企みがあるような。
もう考えまいと思っても、ドクオとつーが町田側の人間だとする仮説が頭の中で組みあがっていく。
内藤はその考えを振りほどけずに、昼食を終え立ち去っていくドクオとつーの後を一人で追いかけた。



280:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/03(月) 01:20:34.62 ID:fct7/i5D0
内藤がついてきていることを知っているだろうに、ドクオとつーは振り向きもしない。
たわいない会話を続けながら歩くドクオとつーに、内藤の疑惑は膨れて言った。

( ^ω^) (・・・気付いているはずだお。なんで何も話しかけてこないお?)

喫茶店バーボンハウスの周りはどちらかというと寂れている。
人気も少なく、昼間から外を歩いている者はいない。
ドクオとつーは喫茶店の近くのとおりにある駐車場に止めてあったバイクに乗ろうとして、ようやく内藤に気がついた。

('A`)「あ?内藤?・・・なにしてんだお前?」
( ^ω^)「・・・いや、ちょっと話でもしようかなぁと・・・」
(*゚∀゚)「・・・?」

ドクオとつーはいつもと何も変わらない様子だった。
内藤がそれでも自らの疑惑をぶつけたかったのは、一重に自分の考えを否定したかったからだろう。
友人にかける言葉ではないと思いながらも、内藤は口を開いた。

( ^ω^)「かなり良くないこと聞くけど・・・ドクオ、町田のこと知ってるんじゃないかお?いや、というよりも、ドクオが・・・」
('A`)「・・・俺が?まさか町田なんじゃないかってのか?」



288:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/03(月) 01:40:19.38 ID:fct7/i5D0
( ^ω^)「・・・そうだお。そう考えれば辻褄があう気がするんだお・・・そう考えてしまう自分がいるお。それを確かめて、安心したいんだお」
('A`)「あーその、お前・・・なんだ、ノイローゼか?なんつーかかんつーか、大分キてるなぁ・・・」

呆れたような顔で、ドクオは先を促した。
内藤がぶつける疑問に答えようとするが、答えにくそうだ。
例えばなぜ都合よくドクオが鮫島事件に興味を持っていたのかと聞かれても、そんな事を言われても、と答える。
ドクオ本人からすれば、そんな事を言われても興味があったものは仕方がないとしか言いようがない。

( ^ω^)「それにあの日、ドクオたちは僕とツンを車に乗せて後から・・・そして、船は洋上で・・・」
('A`)「んな事言われてもなぁ・・・普通に俺たちはバスで帰ったし、船がどうこう言われてもぶっちゃけんなこた知らねぇって」
(*゚∀゚)「考えすぎよ内藤君。もし本当に私たちが町田な人だったら、今頃内藤君海の底とかじゃない?」
( ^ω^)「う・・・確かに、鮫島で消すのが自然だろうし・・・うむむむぅ・・・考えすぎかお?」
('A`)「もう良いじゃん、誰でも。害がなけりゃほっとけきゃ良いんだって」
( ^ω^)「・・・まぁ、そうだお。どうかしてたお、まだ疲れてるみたいだお・・・ごめんお」

喫茶店から今までで膨れ上がった疑惑が急速に晴れていく。
さも当然のように返されては、自分の考えすぎだったと痛感する。
適当にフォローしてくれたドクオを見送って、内藤は喫茶店に戻った。
どこか釈然としないが、憑き物が落ちたような感じはする。
もう気にしないと、内藤は何度目かわからない決心をした。



293:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/03(月) 02:03:32.33 ID:fct7/i5D0
(´・ω・`)「わかったから落ち着け、ツン。だんだんSFチックになってるぞ・・・」
ξ゚听)ξ「だから先生、きっと町田思想っていうのは秘密結社の世界征服計画で・・・」
( ^ω^)「・・・まだやってたのかお」

喫茶店では昼食を食べ終え元気を取り戻したツンが、ショボンに新説を語っていた。
ツンの新説は荒唐無稽の域に達していたが、内藤の考えもそれと似たようなものだったのかも知れない。
好奇心というのは本当に恐ろしい。少しの材料と無限の可能性があれば、どんな話でも作り出せてしまう。

( ^ω^)「本当に怖いのは人の想像力だお。くわばらくわばら・・・」
(´・ω・`)「なんだ、悟ったな内藤」
ξ゚听)ξ「その想像力が事件解決に繋がるのよ、内藤」
( ^ω^)「まぁ結局推理しても町田思想てのがわからないと手詰まりってのに変わりないお。ツンも諦めようお」
ξ゚听)ξ「う・・・わかってるわよ、それくらい・・・だから楽しんでるのに」

結局、推理を繰り返してもそこにたどり着く。
答え合わせのためには町田思想の具体的な中身という採点ペンが必要だ。
それがわからない以上、推理は推理でしかない。
ツンもそれをわかっているから、飛躍した推理を楽しみながら展開していたのだろう。

(´・ω・`)「思想ね・・・お前らが町田を名乗れば分かってくるかもしれんな」



306:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/03(月) 02:42:32.49 ID:fct7/i5D0
( ^ω^)「・・・はい?」
ξ゚听)ξ「私達が町田を名乗る?」
(´・ω・`)「そうしてりゃいつか本物が教えてくれるかも分からんし、自分で気付くかも知れんぞ?」
( ^ω^)「またそんな爆弾を・・・やめてほしいお、先生」
ξ゚听)ξ「興味はあるけどさすがに犯罪者になろうとは思わないわ」
(´・ω・`)「・・・そうか、いや冗談だよ。本気にするなよ?」
( ^ω^)「さすがに本気にはしないお。先生もツンに当てられたのかお?」
(´・ω・`)「ツンの話を聞いてると頭がやられてなぁ・・・困ったもんだ」
ξ゚听)ξ「なによそれ、私が変な人みたいじゃないの・・・」

こと町田事件に関しては軽く変人だ。
内藤の突っ込みに反応したツンと内藤によってバーボンハウスは俄かに騒がしくなる。
朝から随分長い間喫茶店に居座っていたこともあり、内藤とツンは店を出ることにした。
二人はショボンとシャキンに見送られて帰路につく。
春休みが終われば、内藤とツンには新しい生活が待っている。
こうして喫茶店に来るのも、もしかしたら最後かもしれない。

( ^ω^)「そうだお、今から忙しいはずだお・・・町田事件なんて忘れようお」
ξ゚听)ξ「・・・そうね、たしかに忙しいもんね。気になるけど・・・」



308:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/03(月) 02:58:36.87 ID:fct7/i5D0
(`・ω・´)「・・・良かったのか?骨を折ったんだろう?」

客のいなくなった喫茶店バーボンハウス。
カウンターでコップを磨きながら、独り言のようにシャキンは呟いた。
言葉を向けた相手は、もっとも真実に近い二人。
手駒を増やそうと事件に巻き込み、それを助けつつ町田という好奇の罠に嵌めようとしていた者と、その同胞。

(´・ω・`)「まあな・・・けどま、興味が尽きなければいつかはこっちに来るだろう。思想を知るためにな」
(*゚∀゚)「ふふ・・・私たちもしらない物を餌に釣ろうなんて可笑しな話ね」

町田思想などという物を知っている人間が本当にいるのかはわからない。
だが、人の好奇心は尽きないものだ。そして事実不可解な事件も起きている。
その謎を解くことが無意味だと分かっていながらも、人は謎を解きたがる。
そのために、謎に扮する。それが町田の1つの形とも言えるだろう。
その昔事件を起こした人物と、その思想を受け継いだ人物。
そうして続いてきた事件に魅かれ、謎を解こうとした者。
それぞれの思いが絡み合い、それは現実に事件を起こし続けるような、決して小さくない力となった。
だから魅かれた者はかつての事件を模倣したり、情報を小出しにして新しく興味を持つ人間を作る。
かつて自分たちがそうされたように。

(´・ω・`)「わかってはいるが・・・人の業という奴だろうな」



309:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/03(月) 02:58:56.14 ID:fct7/i5D0
内藤とツンはそれぞれ新しい生活に忙殺された。
内藤は就職し上司にこき使われ、ツンは大学にはいり勉学にいそしんだ。
季節は夏に差し掛かり、ツンは大学の夏休みを利用して地元に帰ってきた。
その足はバーボンハウスへ向かう。
おそらくあの喫茶店では今日もかつての担任が寛いでいるだろう。

ξ゚听)ξ「・・・内藤には悪いけど、どうしても我慢できない。バカね、私って・・・」

喫茶店のドアを開けた先には、いつものようにコップを磨いているシャキンと、真ん中のテーブルでコーヒーを飲んでいるショボン。
そして、ショボンの向かいに座るつーの姿があった。

ξ゚听)ξ (ショボン先生とつーさんの二人組みなんて珍しいわね・・・)

その日、町田を名乗る人間が一人増えた。
好奇心故に謎に近づき、さらに謎の根源に扮する。
こうしてさらに町田事件は難解になり続け、誰もが忘れない限りこの日本からなくなることはない。
だからいつか、どこかの掲示板に再びあの書き込みがあるだろう。

鮫島にいる、と。









310:蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/03(月) 03:01:03.32 ID:fct7/i5D0
怒られるだろうから先に謝っとく。ごめん。
怒涛の急展開でアメリカに行ってきます。
どれくらい滞在するかわかんないから終わらせておきたかったんだ、後悔も反省もしている。
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