( 'A`)がポストペットになったようです
- 173: ◆SKMlSPfKqU :02/13(火) 01:46 jdaV+fYRO
(;´・ω・`)「……」
( ゚∀゚)「……」
二人は黙りこんでしまった。ジョルジュは椅子に座りショボンの様子を見ている。ショボンの決断を待っているのだ。冷酷とは違う、別の意味で冷静に見守っているのだ。
決めるのはジョルジュではなく、ショボンなのだから。
( 'A`)「…あの…」
ブラウザの中にいるドクオが口を開く。その表情は困惑に満ちており、口調も弱々しいものだった。
しかししっかりと、そして一つ一つの言葉をはっきりと紡ぎだしていく。
( 'A`)「事情はわからないが……主人、あんたの好きなようにすれば良いと思う…」
(´・ω・`)「ドクオ…」
( 'A`)「俺は生まれて間も無いが…あんたが悩んでいるのは見ててもわかる……変な話だが、俺も力になりたいんだ…この身が消えてしまってでも…」
( ゚∀゚)「……」
( 'A`)「そりゃ確かに怖いさ…消えてしまうのを受け入れるのは並大抵の事じゃないからな……それでも俺の心の…その、奥の方でな…声が聞こえるんだ…」
(´・ω・`)「……」
( 'A`)「『お前は主人に尽くせ…消えるその一瞬まで主人に尽くせ』ってさ……俺の声じゃ無いんだけど…確かに俺の声なんだ……だから…」
(´;ω;`)「ドクオ……僕は…僕はッ!!」
( 'A`)「そんな顔をしないでくれ…気持ちは痛い程わかる……覚悟は決めている」
( ゚∀゚)「…決まったな……ショボン、初期化の準備に入るぞ……」
椅子から立ち上がり、引き出しをあさるジョルジュ。
その心境は図りきれない。
ショボンはただ、ドクオに対して謝罪の言葉を述べる以外、それ以外にはなかった。
罪悪感と自らの軽率さを悔やむ、今はそれしか出来なかった。
(´;ω;`)「ごめん…ごめんよ……せっかく生まれてきたのに…せっかくまた出会えたのに……!!」
( 'A`)「気にするな……前任者は余程愛されていたんだな…なら俺は、その一部として…これからも側にいるさ…」
(´;ω;`)「うぐ…ぇ…」
( 'A`)「…俺は後悔しない…お前が再び笑うのならな……」
- 174: ◆SKMlSPfKqU :02/13(火) 02:09 jdaV+fYRO
初期化が始まる。
マウスのクリックと共にパソコンのHDDが働き始め、作業が実行される。待ち時間を示す画面がつき、全てを元に戻す行程が始まった。
ブラウザの中では、ドクオが笑顔でこちらを見ている。
ジョルジュは『こっち見るな』など冗談を飛ばし、場の空気を和らげようとしていた。
作業は滞りなく進み、いよいよ最終段階に入った。ここまで来てしまえば、もう後戻りは出来ない。
( ゚∀゚)「さあ…あと一分か……」
(´・ω・`)「ごめんね…こんな主人で…」
( 'A`)「…メモリに残ってる通りだな…ショボンは泣き虫だって……」
(;´・ω・`)「そ、そんな事は掘り返さないでいいよ…」
( 'A`)「はは…でも、それ以外にも少しだけ、データは残ってるよ…あんたらの事がね…」
( ゚∀゚)「へぇ…どんな事が残っているんだ?」
ドクオは二人を見渡し、満面の笑みでこう答えた。
( 'A`)「お前らは…かけがえの無い仲間だってさ…」
(´・ω・`)「ドクオ……当たり前じゃないか…君だって、今の君だってかけがえの無い仲間だよ…」
( ゚∀゚)「そうだぜ水臭い…今更かよ?」
( 'A`)「はっ、有り難いね…俺もお前らの事、大切ななk
その言葉を放つ前に、ドクオは再び小さな灰に姿を変えた。前ぶれも無い、ただ静かに元の姿へと戻っていく。そこに涙は無く、最後の最後まで、彼は笑顔でい続けた。
泣き顔を見たくない、その一心からなのかも知れない。
(´;ω;`)「……ごめん…」
( ゚∀゚)「泣いてる暇は無いぞ。あいつの覚悟を無駄にしない為にも…成功させるんだ…!!」
肩を落とし涙するショボンの肩を、優しく、そして力強く支えるジョルジュ。その目にはうっすらと涙がでているように思えた。しかし、彼はその感情を抑え込み、すぐに机に向かう。
(´・ω・`)「そうだ…泣いてばっかじゃ駄目なんだ……やるしか無いんだ!!」
ショボンは決意した。
全てを元に戻すと…あの日から全てをやり直すのだと…
例え犠牲があったとしても、やり遂げなければならないのだと…
- 176: ◆SKMlSPfKqU :02/13(火) 07:37 jdaV+fYRO
そして遂に再構築へと行程は移る。灰の中から必要な分だけのデータを取り出し、それを集積していく。断片的なデータを集積するには予想以上の手間がかかり、作業の遅延を招いた。
が、無事にその行程を終え、一つのデータが出来上がった。
二人はデータに『dokuo』と名付け、一先ずデスクトップにそれを保存する。
( ゚∀゚)「じゃあ…始めるとするか…」
(´・ω・`)「うん…」
そして最終段階に入る。
抽出したデータをHDDに保存している『ポストペット』のフォルダの中に転送する。他のデータも少しいじり、誤作動の起こらないようにする。
ここまで来たら、失敗は許されない。
( ゚∀゚)「これでよし…じゃあショボン、起動してくれ…!!」
(´・ω・`)「わかった…」
ショボンと席を替わる。ジョルジュはそのままショボンの背後につき、事の結果を静かに見守る。
パソコンに向かい、ショボンはマウスを操作する。カーソルをあるアイコンの上まで持っていき、そこで一旦停止する。
(´・ω・`)「……」
意を決してダブルクリックすると、アイコンに指定されていた一つのプログラムが静かに起動し始めた。最初は緩やかに、そして徐々に過去の記憶が読み込まれていき、それに呼応してパソコンも唸りをあげる。
時折聞こえる異音は何故か全てを否定しているかのような、抗議の声をあげ始めていたが、構わず作業を続行した。
そしてブラウザの中に、ショボンの選んだ体が具現化されていく。決して格好良く無く、どちらかと言うと情けないという形容のよく似合う、彼等の親友の姿。
膨大なデータによりパソコンが悲痛の叫びをあげるなか、それでもと願いながら最後のボタンを押す。震える指が、彼の不安を忠実に表していた。
('A`)
(´・ω・`)「……」
( ゚∀゚)「こい…帰ってこいよ…ドクオ!!」
- 177: ◆SKMlSPfKqU :02/13(火) 08:00 jdaV+fYRO
( 'A`)「うう…ん……」
視界が急に開けた。何が起こったのかもわからず、彼は重い瞼をこじ開ける。
長い間眠っていたような感覚と久々に体を動かした時のような倦怠感。見るもの全てが新鮮で、懐かしくもあった。
(´・ω・`)「ドクオ……どうなったの?」
( ゚∀゚)「わからん…成功したのなら…恐らく…」
見知らぬ二人がまじまじとこちらを見つめている。
いや、知らない事は無い。知っている。この二人の事やウザいテンションの奴、今時珍しいツインテールのツンデレ、全て記憶に残っている。
( 'A`)「ショボン…ジョルジュ……何してんだよお前ら…」
(´・ω・`)「!!!!」
( ゚∀゚)「…ッよっしゃあ!!!」
(´・ω・`)「ドクオ…!!平気なんだね?記憶もしっかりしてるんだよね!?」
( 'A`)「ああ?何を言ってんだよ馬鹿……あー、頭が痛い……何があったんだ?俺は確か海から帰ってから…」
( ゚∀゚)「……」
ドクオは頭を掻きながら、今の現状を把握しようとした。二人はその様子を黙って見守る。記憶は確実にある。あとはそれまでの経緯を話す必要があった。
(;'A`)「あれ?…俺は死んだんだよな?なのに何故まだ生きてる……何故まだ体があるんだ…?」
(´・ω・`)「…実は……」
ショボンはドクオに経緯を説明し始めた。全てを詳しく説明する事は出来なったが、必要な情報を与える事は出来た。
ドクオが消えた事、データの入っていた灰の事、新しいドクオの決意、そして今に至るまでの出来事を、ゆっくりと説明した。
(´・ω・`)「…そういう事なんだ……それでドクオはまた、今こうして僕達と…」
( 'A`)「ショボン…お前…」
(´・ω・`)「……」
( 'A`)「舐めてんのか?お前…ふざけんなよ!!誰が復活させろって言ったよ!?」
(´・ω・`)「…え…?」
(#'A`)「ふざけんな…誰が生き返せって言ったよ!?お前…俺の期待をどれ程裏切れば気が済むんだよッ…!!」
- 178: ◆SKMlSPfKqU :02/13(火) 21:03 jdaV+fYRO
(;´・ω・`)「ちょ…期待をって……僕はただ、また二人で…」
(#'A`)「それが余計な事だって言ってるんだよ!!俺は言ったよな?『新しいドクオも大事にしてやれ』って……なのに何でこんな事をした!?」
( ゚∀゚)「ドクオ…ショボンも悩んだんだ……」
(#'A`)「ジョルジュは黙ってろ!!いいか?俺はお前だから…お前なら仲良くやっていけると信じて、新しいドクオに託したんだ……なのに!!お前は自分の考えだけでそのドクオを消したんだ!!俺の意志を蹂躪したんだよ!!!」
それでもドクオの怒りは収まらなかった。今までドクオはショボン相手にここまで怒った事は無かった。怒る必要も無かったのだ。
その彼が感情を露にして、ぶつかってきている。
(#'A`)「お前の気持ちは嬉しいよ!!俺だってお前らと一緒に過ごしたかった……でも、それはやっちゃ駄目だったんだよ!!」
(´・ω・`)「……」
( 'A`)「誰にだって死は等しく来るんだ…それは避けて通れないんだ!!なのにお前は…お前は!!!!」
スピーカーが音量に耐えきれず、音割れが始まる。しかし同時に音に湿り気が混じり、騒音も少しは和らいでいる。
ショボンはただ黙って話を聞いていた。自らの業、それが招いた目の前の現実、心の奥では分かっていても、それを抑え切れなかった。
その事をただ悔やみ、静かに耳を傾ける。
(´・ω・`)「ドクオの言いたい事はわかる……僕のした事…それは許されない行為だってのはわかってる……でもッ!!」
( 'A`)「……」
(´;ω;`)「それでも僕は…あの日を捨てたくなかった!!皆で過ごした日々を…皆で遊んだ毎日を…無くしたくなかったんだ!!」
( ゚∀゚)「ショボン…」
(´;ω;`)「僕は…なんと罵られても構わない……だけどこれだけは、譲れないんだッ!!!」
ショボンの悲痛な叫びだけが響きわたり、こみ上げる思いは水滴となり、空へと舞い上がる。
大気に溶けこむ事も無く、地面に落ちる事も無く、涙はその場にとどまり、元の場所へと帰る。
濡れた袖を隠す事無く話し続けたショボンは、全てを吐き出した。消えたあの日から心に抱えていた思い、その全てを。
- 179: ◆SKMlSPfKqU :02/13(火) 21:25 jdaV+fYRO
静かだった。
お互いに気持ちを吐き出し、全てを語った二人には、もう言葉は必要無かった。人の思いはそれぞれ違う、しかしそれを超える事が出来るのも、また人間なのだと、二人は学んだのだ。
( 'A`)「まったく…エゴの塊だな…お前は……」
(´・ω・`)「ドクオだって変わらないよ……人の意見を全く聞かないし…」
( 'A`)「…うっせぇ」
二人は腰をかけ、他愛もない話をしていた。それすらも今は必要で、愛しいものなのだ。
( ゚∀゚)「さて、もう喧嘩は終わって…結論は出たか?」
( 'A`)「ああ…結論というよりは…判決だな…」
(´・ω・`)「…」
( 'A`)「ショボン…今回お前はやっちゃならない事をした……俺はそれを許す事は出来ない…」
(´・ω・`)「うん…わかってる……」
( 'A`)「けどな…」
( ゚∀゚)「?」
( 'A`)「許せないのに…胸の奥で声がするんだよ…『主人は悩んだ…傷付き、自己嫌悪もしている……もう許してやってくれ』ってな…」
(´・ω・`)「…!!」
( 'A`)「俺の声じゃないんだが…でも、俺の声なんだよ……体の中に溶けているもう一人の俺が…そう言うんだ……」
胸を押さえ、鼓動を確かめる。それは幻聴だったのかも知れないが、確かに鼓動が聴こえてくる。
ほんの数分過ごしただけの、ショボンとジョルジュにとってかけがえのない仲間の鼓動が…
( 'A`)「…ショボン…」
(´・ω・`)「…なんだい?」
( 'A`)「次は無いからな…」
(´・ω・`)「次とか関係無いよ……ドクオはドクオだった…今になって分かったよ……過去のドクオとかじゃ無いんだ…ドクオでないと駄目なんだ!!」
( 'A`)「へっ…一丁前な事言いやがって…」
( ゚∀゚)「じゃあ一先ず言っておくか…!!」
( ゚∀゚)「おかえり、ドクオ」
(´・ω・`)「…おかえり」
(*'A`)「ふん……ただいま…」
- 180: ◆SKMlSPfKqU :02/13(火) 21:48 jdaV+fYRO
(´・ω・`)「…本当について来るの…?」
( ゚∀゚)「当たり前だろ!?お前だけじゃ頼りないっての!!」
( ^ω^)「ショボンさんは根性無しだからだおwwwww」
(´・ω・`)「…ぷち殺すぞピザメン…?」
あれからいくつかの季節が過ぎていった。
街は白く染まり、吐き出した息が形を成して空へと舞い上がっていく。
三人は過疎区駅の改札で、いつものようにふざけながら話をしていた。
( ゚∀゚)「大体お前…あっちに行く方法知らないだろ?三回も乗り継ぎしないといけないんだぜ?」
(´・ω・`)「知ってるよ…ぐぐって来たから……」
( ^ω^)「それでも心配だお……ショボンさんはチキンだからおwwwwwwwwww」
(´・ω・`)「…そろそろ本気でぷち殺すぞピザニート…」
和気藹々とした雰囲気の中、ショボンは電車の切符を買った。行き先は遠い街『雑草』…あかねの住んでいる街だった。
( ゚∀゚)「まあ、わからなくなったら何時でも電話してこいよ?お前の頑張り次第じゃ…」
(*^ω^)「一皮剥ける事も可能だおメメタァ!!!!」
……
(#)ω^)「…正直すまんかったお……」
(;゚∀゚)「ま、まあ頑張れよ…迷ったら本当に…」
ジョルジュの言葉を遮り、ショボンは言い放った。心配は嬉しかったが、大丈夫だと。
(´・ω・`)「…だって…」
( 'A`)「ナビゲーション機能付きのドクオさんがついてるんだぜ?迷う事なんてあるわけがない…」
ショボンの持っている携帯から、いつもの声が聴こえてきた。あの日からお互いをパートナーと認め合い、再び二人は新しい生活へと進んでいく。
その為の小旅行なのだ。
(´・ω・`)「そろそろ時間だね…行こうか?」
( ゚∀゚)「土産忘れんなよ!!おっぱい饅頭頼んだぜッ!!!」
(*^ω^)「気を付けて行ってくるんだおwwwww応援してるおwwwwwwwwww」
(´・ω・`)「はは…いってきます!!!」
( 'A`)「帰ってきたら土産話、たっぷり聞かせてやるよッ!!!」
そして二人は旅に出る。
あての無い、先の見えない旅へと。
しかし恐れる事は無い。
こんなにも暖かい仲間が居るのだから…
おわり
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