□俺は(*゚ー゚)しぃの携帯電話のようです
- 79: 勇気を出して :2007/06/04(月) 23:00:05.70 ID:sv+ogU/N0
- (*゚ー゚)「ギコ君……w」
俺を取り出して、アドレス帳を開く。
アイツの電話番号を見ながら、口元を緩めていた。
(*゚ー゚)「今電話しよっかなぁー。やっぱまだ早いよねー」
一人で何かを呟いている。
その笑顔は、本当に可愛かった。
彼女が、ギコの家で俺に言ってくれた言葉。
その言葉を聞いて、俺は安心した。
俺の想いは、少しは届いていた。
はっきりとじゃないけど、なんとなく、届いていたんだ。
本当は、もっともっと伝えたいけど。
だけど、少しでも届いたことに、感謝しなくちゃいけないんだ。
- 80: 勇気を出して :2007/06/04(月) 23:02:51.87 ID:sv+ogU/N0
- (*゚ー゚)「せめてメールにしよーっと!」
彼女が、新規メール作成を開く。
宛先を決めないまま、まずは本文に取り掛かった。
(*゚ー゚)「なんて送ろう……w」
本当に嬉しそうだ。
互いに気持ちを伝えることが出来たんだから、当然か。
結局、しぃのメールを打つ手は中々進まない。
1分経った今だが、まだ1文字も打てない状態だった。
(*゚ー゚)「ん〜……」
彼女が、俺の画面をじっと見つめる。
そんなに画面ばっかり見てたら、事故に会うのに……なぁ……?
俺としぃの姿を、まぶしい光が包み込んでいた。
- 82: 勇気を出して :2007/06/04(月) 23:05:15.99 ID:sv+ogU/N0
- (;*゚ー゚)「!!!」
車だった。
夜の暗さに隠れていた俺たちに、車が突っ込んできたのだ。
『キキーッ』
金属がこすれる音を出して、車が停車しようとする。
だが、慣性の法則によって進み続ける車は、ただしぃのみを狙っていた。
(;*゚ー゚)「!!」
慌てて足を動かすも、中々動けないしぃ。
急げ、早く、間に合え、避け切れろ──。
『ドンッ』
- 83: 勇気を出して :2007/06/04(月) 23:08:55.22 ID:sv+ogU/N0
- 大分スピードの緩くなった車が、しぃに激突した。
その場に座り込むように、倒れるしぃ。
そして、鳥のように宙に放り込まれた、俺。
カシャン!と強い音を立てて、俺は地面に叩きつけられた。
その瞬間、俺の中の部品が、砕けるような感覚に襲われる。
完璧に、壊れた。
一瞬で、そのことが分かった。
電気が上手くながれておらず、もう電源が切れる直前だ。
遠くに倒れているしぃの方を見た。
運転手が中から出てきて、何やら呼びかけている。
だが、俺の視線はもう朦朧としていた。
彼女の顔が、全く見えない。
- 87: 勇気を出して :2007/06/04(月) 23:11:03.43 ID:sv+ogU/N0
- それから、しぃはスグに立ち上がった。
恐らく、大きな怪我はないのだろう。
良かった。
本当に、良かった。
そんなことを考えているうちに、今度は自分のことに意識が向いてきた。
完全に、銅線が切れ、電気が流れていない状態だ。
もう、俺は終わるのだろう。
きっと、このまま壊れて、廃棄処分だ。
別に、悔しくはない。
しぃに、少しでも想いが届いてると分かっただけで……。
それだけで……。
十分だと……。
- 90: 勇気を出して :2007/06/04(月) 23:14:06.06 ID:sv+ogU/N0
- ……。
俺は、しぃに、気持ちを、伝えられたのかな。
届いたのは、少しだけで、本当は、届いていないんじゃないのかな。
電気が通っていない状態、それなのに、不思議と脳は動いていた。
恐らく、微かに残る電気があるのだろう。
先ほど、しぃが開いた新規メール。
宛先を開き、俺は宛先入力を開始する。
続いては、本文。
もう、今すぐ意識を失っても仕方ない。
だけど、これだけは。
これだけは、伝えたかったんだ。
ずっと、ずっと、ずっと、ずっと。
ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、伝えたかった言葉がある。
- 93: 勇気を出して :2007/06/04(月) 23:16:26.09 ID:sv+ogU/N0
- 携帯の掟にしたがって。
俺は気持ちを出すことをしなかった。
出した瞬間、俺は、携帯界から抹消される。
機械が、意識を持ってはいけないんだ。
意識を、人間に見せたらいけないんだ。
それが、掟であり、絶対である。
だけど、それは言い訳にすぎなかった。
本当は、怖かった。
しぃに告白して、拒絶されることが。
人間と携帯という壁が、怖かったんだ。
だけど、伝えなければいけない言葉がある。
だから、伝えなければいけない言葉がある。
最後に、君に。
- 94: 勇気を出して :2007/06/04(月) 23:18:39.49 ID:sv+ogU/N0
新規メール 1通
差出人:sixi@vip.jp
宛先:しぃ(sixi@vip.jp)
題名:無題
本文:すき
- 95: 勇気を出して :2007/06/04(月) 23:19:36.44 ID:sv+ogU/N0
──────プツッ───……………
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