从 ゚∀从从'ー'从ハインリッヒと渡辺さんは仲良しなようです

  
115: ぁゃιぃ医者(石川県) :2007/04/14(土) 16:40:50.18 ID:YM0IqxRB0
  
【あれれー、体操服がないよー?】

渡辺は、身体が小さくてどんくさいから、昔は苛めに会うことが多かった。

「あれれー、体操服がないよー?」

無いのではない……隠されたのだ。
え? どうしてそんなことがわかるかって?

簡単なことだ。

俺が、隠したんだから。



  
116: ぁゃιぃ医者(石川県) :2007/04/14(土) 16:42:02.00 ID:YM0IqxRB0
  



小学生って、好きな子苛めるの大好きだよな。
俺の心理も、たぶんそうだった。というか、渡辺にちょっかいを出していた連中は、大抵そうだったのだろう。
そういう意味では、渡辺はすごく愛されていたのだ。

いや、そう考えるのは、そうしないと今でも俺の胸が、罪悪感で押しつぶされそうになるからなんだが……。



  
117: ぁゃιぃ医者(石川県) :2007/04/14(土) 16:42:57.89 ID:YM0IqxRB0
  
苛めは、意外とあっけなく終末を迎えた。
グループのリーダー格だった俺が謝ったから、集団心理でみんなちらほらとやめていったのか、それとも、苛めがかっこ悪いと気付いたのか…。

「辛かっただろう」

「ごめんな、渡辺」

あいつは、泣いた。私のお腹にうずくまって、みっともなく、お腹から声を出して。
そして、泣き止んで、真っ赤な目を擦りながら言った。

「……うん、もう、いいよ……わかってくれたら」

「殴ってくれ……」

「へ?」

「俺がしたみたいに……俺のこと、殴ってくれよ!!」


自分でも、バカだったと思う。
でも、あの頃の俺の頭じゃ、このくらいの償いしか思いつかなかったのだろう。
俺は、暴力くらいしか能が無い、典型的ないじめっ子だったから。



  
118: ぁゃιぃ医者(石川県) :2007/04/14(土) 16:43:20.47 ID:YM0IqxRB0
  


「……それは、できないよぉ」

「な……なんでだよ! 俺は……俺たちは、あんなに酷いことしたんだぞ?!」


にこっと笑って、渡辺は言った。


「だって……」


「そんなことしたら……ハインリッヒと、友達になれなくなるもん……」


その一言で、俺がどれだけ救われたか。



  
119: ぁゃιぃ医者(石川県) :2007/04/14(土) 16:43:50.67 ID:YM0IqxRB0
  
あれから、俺と渡辺は無二の親友になった。
相変わらず俺は短気なままだが、渡辺のお陰で随分と成長できた気がする。気のせいかもしれないが。

逆に、今、俺の傍から渡辺がいなくなってしまえば……。
そう思うと怖くてたまらない。

だから……俺は、渡辺に気持ちを伝えることができないでいるんだ……。
一人じゃ何も出来ない、暴力でしか自分の身を守れない、愚か者だから。



  
122: ぁゃιぃ医者(石川県) :2007/04/14(土) 16:47:39.13 ID:YM0IqxRB0
  



从'ー'从 おはよー、ハインリッヒー!

从 ゚∀从 遅いぞー!



いつか、自分の中で昇華しきれない何かが爆発しそうになることを恐れながらも、
俺は、ずっとこの位置にいるのだろう……。
渡辺なしでも生きられる強さと、ほんの少しの勇気を持てるまでは。



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