( ^ω^) ブーンはノックしているようです
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 02:15:52.67 ID:KNDeZUs20
ニ:どんどん
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 02:17:05.89 ID:KNDeZUs20
( ´ω`)
どうして?
そこは公園、夜のベンチ。
街灯に群がる小さな虫達でさえ愛しい。
僕の側には沢山のツンがいるのに。何故もこう寂しいんだ。
僕は心の底から彼女を愛していた。
しかし、彼女は僕を気持ち悪がっていた。
僕は僕の嫌われる要素を色々と考えたが、何一つ思い浮かばない。
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 02:19:31.65 ID:KNDeZUs20
- 顔は爽やかでジャニーズ系。
いや、奴らなど僕の足の裏にも及ばない。
身体は程よく肉がつき、筋肉馬鹿とは違って丸っこく、どこか安心感を与える身体だ。
そう、人は鋭く尖っているものよりは、柔らかく丸みを帯びたものを好む。
僕は人間から好かれる人間なのだ。
いつも笑顔を絶やさず、毎日ニヤニヤしているのに、何故なんだツン。教えてくれ。
いてもたってもいられなくなり、夜の町を走った。
100メートル20秒台前半の俊足を持った僕は、風を感じていた。
(;`ω´)
「あうっ!!」
「ギャッ、グッワ!!」
(;'A`)
余りに風を感じすぎて、通行人と衝突してしまった。
今回は自分も一通行人だったので、互いに大きな怪我は無かったが、
転がり倒れた僕は急に悲しみが込み上げ、その場で蹲っていた。
「大丈夫ですか?」
青年が僕に向けて手を差し伸べる。
別に一人でも立つ事が出来たが、彼の親切に甘んじて、青年の柔らかな手を掴んだ。
大とも小とも取れないサイズの手。温かかった。
単に僕の方が冷えていただけかもしれない。
しかし、徐々に青年の熱が僕へと流れていくのを、文字通りに肌で感じた。
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 02:23:21.87 ID:KNDeZUs20
- 自然と涙が出た。
人間はこんなにも温かい、幼稚園時代、ツンに絵を褒められた時と似ている。
この温もりを絵で表現できたら、冷たい紙と筆と絵の具で、温かさを出せたら。
青年は困惑していた。
突如ぶつかってきた男が、突拍子も無く泣き出したのだから。
「あの、えと、す……すいません!!」
謝らないでくれ、名も知らぬ青年。
非はこっちにある。必ずしも泣いている奴が被害者とは限らないんだぞ。
僕は放っといて、君はとっとと行ってくれ。
そう願っているのに、不思議と僕の両手は青年の肩を掴んでいる。
「謝るのは僕の方ですお……」
誰でもいい。人間に触れたかったんだ。僕の絵は冷たい、血が通っていない。
話を聞いてくれ、不運にも僕と衝突してしまった青年。
今は誰かと話がしたいんだ。こんな僕は、誰かと接したいんだ。
「僕、辛くて……風になりたくて……
愛してくれていると思っていた人はそうじゃなくて、
でも僕は今でも彼女を愛していて……それで一緒に暮らそうと思ったんだけど、
ツンは愛してなくて、でも僕はツンを愛していて……」
どう聞いても同じ事の繰り返し。
しかし青年は「うん、うん」と頷いてくれていた。
それがありがたかった。
いかん、また泣きそう。
上を向く余裕さえ僕に与えず、雫は垂れた。
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 02:26:49.30 ID:KNDeZUs20
- 「内藤さんの思いは、きっと彼女に届いている筈ですよ。
今は素直になれていないだけです。だって幼馴染ですよ?
普通の友達なら、知り合って、徐々にお互いの心を開きあって、
次第に何でも許しあえる親友になっていく。
しかし幼馴染の場合はまた別では無いでしょうか。
人間は相手の良い所よりも悪い所に目が行ってしまう生き物です。
一緒にいる時間が長ければ長いほど、相手の短所ばかりに気付いてしまう。
それを指摘して、突きあっている間にも、恋は生まれる。
だけども、どこか照れ臭くなって素直になれないだけ……
アフリカではよくある事です」
('∀`)b
青年は微笑み、親指を立てた。
握った時とはまた違う、力強い拳だった。
合わせて僕も親指を立てた拳を突き出す。
真夜中に生まれた友情。
僕と青年は同時に振り返り、互いに背中を向けて歩き出した。
何時の間にか、夜は明けていた。
この国の夜も、僕の心の夜も。
僕の夜明けぜよ。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 02:28:30.89 ID:KNDeZUs20
- 僕は来た道を逆走する。
途中、粗大ゴミで捨てられていたリカンベントに乗って地を駆けた。
今、会いに行くよツン。愛に行くよ。
彼女はずっと照れていたんだ。
どうして、もっと早く気付いてやれなかったのか、こればかりは僕の尾行不足だ。
せめて同じ高校に行っていれば、一日中ツンを見守っていれたのに。
不甲斐ない、自分が。
そう思い、軽く頭を小突いた。痛みは爽やかな朝の風にさらわれた。
( ^ω^)
またも僕は参上した。ツンの住むマンションに。
彼女はまだ夢の中か、はたまた僕を追い返した事を悔やみ、寝ずに枕を濡らしているか。
「ツン――、僕が来てやったお――――!!
喜べお――――、僕は怒っていないお――――!!」
ドンドン、どんどん僕はドアを叩く。
「ツ――ン、寝てるのかお――――!?」
太鼓を打つようなリズムで、僕は存在をアピールし続けた。
騒々しいほどに僕は君を愛している。
近隣住民に通報されようと、この思いは終わらない。
__[警]
( ) (^ω^) うはwwwww終わったwwwwwww
( )Vノ )
| | | |
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 02:31:15.23 ID:KNDeZUs20
- ξ゚听)ξ ……。
彼女は口をあんぐりと開けて、呆然とこちらを見つめていた。
余りの申し訳無さに、僕は「ごめん、ツン」小さく呟いた。
「最低、死んで」
彼女の返事、本当に死にたくなった。
素直になれないってレベルじゃない。
これはまさか、考えたくは無いが、本当に嫌われている? この僕が、ツンに?
( ´ω`)
「……刑事さん」
酷い顔してるだろう? 一応生きてるんだぜ、俺。
パトカーの中、どうしようもない質問を隣の刑事にぶつけた。
「人に愛されたいんですけど、どうすればいいんだお?」
「死ねばいいと思うよ」
これがジャパンのポリスかい。
犯罪者の質問なんざ無頓着なのか何なのか、冷た過ぎやしないかい。
連行された先は、警視庁地下十五階特別拷問部屋。
一週間、何故か僕は鞭で叩かれ続けた。
意味わかんねぇ……とりあえず釈放はされたが、心と身体に癒えない傷が残った。
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 02:34:08.13 ID:KNDeZUs20
- 夜のベンチ。二度目。
立て掛けて置いた、僕のツン達はいなくなっていた。
嘘だ。心で何度そう思ったか。
一晩中探したが、とうとう彼女を見つける事は出来なかった。
「どこかに処分されたのかお……?」
朝、犬の散歩をしている老人に問い掛けてみた。
/ ,' 3「インドなら成田空港からいけますよ」
老人はボケていた。
すっかりと肩を落とし、僕はまたベンチに座り込む。
「お腹すいたお……」
金どころか財布も無い。
よく見たら上着も無い、ズボンも穿いていない。
僕が身に着けているのはボロボロのブリーフだけだった。
「何か売って金にするかお」
ツンの絵は、どうせ後々の伏線になるだろう。また巡り会えるさ。
割り切って僕は街に繰り出す。
『高額買い取り』のキャッチコピーに誘われて、僕は古本屋に入った。
ここで“それ”を手放すのは苦肉の策だったが、背に腹は変えられない。
僕はブリーフを売り払った。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 02:38:54.23 ID:KNDeZUs20
- ( ^ω^)〜♪
僕は上機嫌だった。
あのブリーフが千円になるとは思いもしなかったのだから。
全裸で向かったのはフリーマーケット。
僕の値切りテクは健在だった。元々そんなもん無かったが、頑張った結果だ。
200円で肌色の全身タイツを購入し、500円で適当な靴を。
残り300円は、コンビニでハーゲンダッツを買いました。
「思ったより似合うおwwwwwww」
腰をくねくねさせたり、ポーズをとってみたりした。
伸縮性に優れたポリエステルだ。ものすごいフィット感。
街中でもお構いなし、僕は自分の庭を歩いているが如く、堂々としていた。
人の目も気にせず街を探索していると、路上で見た事のある顔が映った。
| ポエム安いよー
| ('A`)
/ ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄□□□□
あの時の青年である。
見た所、自作の詩を売っているようだ。
「安いよー……最新版出たよー」
しかし全く人が寄る気配が無い。どちらかと言うと避けられている。
あまりに可哀相なので、僕は立ち寄る事にした。
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 02:40:57.83 ID:KNDeZUs20
- ('A`)ノシ「あっ、内藤さん。お久しぶりですね」
名前を覚えてくれていた。何か嬉しい。
改めて名前を聞くと、その青年は鬱田史郎、略してドクオというらしい。
略……なのか? とにかく、今も昔もその名前で呼ばれていたんだとか。
ブルーシートいっぱいに並べられている色紙と詩集。
その痛々しいポエムの数々を今日は紹介しよう(今週のザ・ワイド)。
例えば赤い林檎
彼は自身の色を嫌っている
他の色を吸収し
赤だけを選び反射しているから
鏡に映る僕の姿
心の底では嫌っている
ドクオ
(;^ω^)
アイツはナイフを舐めている
コイツはアイツを嘗めている
ソイツはアイツを舐めていた
夜のアイツを舐めていた
コイツにナイフが刺さった ドクオ
(;^ω^)
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 02:44:08.05 ID:KNDeZUs20
- 彼女が落としたガラスの靴
王子は夜な夜な匂いを嗅いだ
王子の側近はある日こう言った
「うはwww王子wwwwwそれ通販で買った俺のガラスの靴wwwww」
Go to the hell
Go to the hell
このビチ糞の社会を叩き割ってしまえ
There is no heaven
There is no heaven
透明な世界の日々に誰か皹を―――――― DOKUO
(;^ω^)
「ドクオの職業は詩人なのかお?」
彼、よく見れば中々体つきは良い。
ガテン系とまではいかなくても、程よく引き締まっており、逞しさが感じられる。
そんな青年が平日の昼間から道端でポエムを売っているとは、これいかに。
「これで食っていけたら最高なんすけどね。
本職はコンビニの深夜バイトです、22:00〜6:00時給850円。
自分、弁護士目指して法科大学院、所謂ロースクールに行ってたんですけど、
最近ついに投げ出しましてwwwww今に至るんですよwwwwww」
ハハハ、とドクオは軽く笑って見せた。
未練の一つも無い、清々しい笑顔だ。
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 02:45:40.84 ID:KNDeZUs20
- 「内藤さんは、それから彼女と元気でやってるんですか?」
「ドキン!」
「胸の鼓動を肉声で表した人を始めて見ました」
「実は、かくかくしかじか……」
「それじゃ分かりませんよ、省略しないで下さい」
「あの件の後、すぐに彼女の元に向かったお……
でも、何度ドアを叩いてもツンは出なくて、通報されて、鞭で打たれて……」
「鞭!?」
「僕……薄々気付いていたかもしれないお。
ツンは僕の事を好きじゃない。だから冷たいんだお
僕は、僕はこんなにもツンを愛しているのに!!」
「……それ、彼女は知っているんですか?」
「それって……なんだお?」
「あなたが彼女を好きだという事ですよ!
内藤さん……あなたはずっと彼女の絵を描いていた
だけど、彼女に一度でも『好きだ』と告白しましたか!?
していないでしょう?
それなのに、愛してる愛してるって何を偉そうにほざいてるんです!?
絵を描いてるのは単なる自己満足、あなたはまだ彼女に愛を伝えていない!」
「自己……満足……?」
「ストーカーと一緒ですよ。何を伝えるわけでもなく、彼女を目で追うだけの存在。
ドアを叩いても出ない? ふざけんなよ青二才。
本当に愛してるなら扉の一つや二つ、蹴っ飛ばしてでも『好きだ』と言えよ!!
待ってりゃ向こうから勝手に出迎えてくれるなんて在り得ねぇんだよ、この豚カツ!」
「君、どんどん口が悪くなっているお……」
言葉の千本ノックが僕を襲う。
受け止める守備力も無い自分が悔しい。
強烈な打球の一発一発が、ろくでなしの心を撃ちつけた。
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 02:48:15.61 ID:KNDeZUs20
- 苦しかった、でも。
「ありがとう、ドクオ」
涙を拭って、また溢れて、また拭って。
はっきりと見えた視界の先には、あの時と同じ、親指を立てた青年が居て。
僕はまた、振り返って。
二度と過ちは繰り返さない、そう胸に誓って。
('∀`)「走れ!!」
⊂二二二( ^ω^)二⊃「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
※全身タイツです。
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