( ^ω^) ブーンはノックしているようです

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 02:53:16.01 ID:KNDeZUs20













三:ばんばん、ばきっ













60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 02:56:13.04 ID:KNDeZUs20
夜は笑う。
がむしゃらに駆ける、こんな僕を。
暗闇、向かい風、不安が過ぎる。

進んでいるのかも分からない、僕はツンに近づけているのか?
あ、違う。
単純に僕のスタミナ不足だ。
そう言えば僕、体育のマラソンでは決まって後半は歩いていた。
煙草吸ってる連中より走れなかった。

畜生、リカンベントさえあれば……いや、乗り物に頼るな。
自分の足で、会いに行くんだ。
進め、姿なんて慎むな。他人の眼を気にしてどうする。
あ、僕全身タイツだった。

ああ、もう疲れたヤバイ。
ここでの疲労は非常に不味い、ツンに告白する体力を温存しなければ。

そうと決まれば
( ^ω^)ノシ「ヘイ、タクシー」
車はすぐに止まってくれた。

/ ,' 3

うーん、かなり爺ちゃんなドライバーだ。
どこかで見たような感じもするし、ゴホゴホと咳をしているのが気になる。
途中で死ぬんじゃないのか。どうせなら僕が降りてから昇天して欲しい。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 02:57:11.52 ID:KNDeZUs20
前言撤回、早く死んでくれ糞ジジイ。
さっきから犬を二匹、おばちゃんを三人、白バイ隊員を一人吹き飛ばし、
なおも走り続けている。
「止めてくれ」 願いは届かない。
耳が遠いのか、意味が理解出来ていないのか。
爺さんは狂ったようにハンドルを切り、アクセルを踏む。

(´・ω・`)「うわああああああああああああああああああ
(´・ω・`) ああああああああああああああああああああ
(´・ω・`) ああああああああああああああああああああ
(´・ω・`) ああああああああああああああああああああ
(´・ω・`) ああああああああああああああああああああ」

出た――――
一気に五人轢きよった――――
これはコミッショナーサイドも黙っちゃいないぜぇ――――

僕が唖然としていると、運転手いや犯罪者の爺さんが口を開いた。

「若僧……人生とは、こうやって突き進むのだよ」

気が付けば、タクシーはツンのマンション前に到着していた。
爺さんの仰っている事は意味不明だが、とりあえず格言のようなので、
分かった振りして降りた。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 03:01:01.47 ID:KNDeZUs20
さて、部屋の前だ。
扉の向こうにツンがいる。
喉が渇き、足が震えた。緊張というのか、不思議なものだ。
あれだけ自分で、絵で愛を表現してきたのに、
いざ彼女に思いを伝えるとなると、こんなにも身体が動かないのか。
「好きだお、ツン」
それを言うだけなのに。
まるで金縛りにあったかのように。
神様が、運命が、僕を邪魔しているかのように。

手足が動かない、声が発せないんだ。
おかしいよね、あれだけツンに付き纏っていたのに。

そうだ、落ち着け。
こういう時は素数を数えるんだ。
一本でーも人参〜
二足でもサンダル〜
三艘でもヨ〜ット〜
いかんいかん、何をやってるんだ僕は。


行け、寧ろ逝け、漢ブーン。
思い出せ、世話になった人々の叫びを。魂の声を。



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 03:02:51.56 ID:KNDeZUs20

「ギャッ、グッワ!!」――――――ドクオ

「死ねばいいと思うよ」――――――刑事

「インドなら成田空港からいけますよ」――――――老人

「うはwww王子wwwwwそれ通販で買った俺のガラスの靴wwwww」――側近

よし、行稼ぎも済んだ。
叩くんだ、ドアを。
目の前の扉の事じゃない。
彼女の心のドアを、僕の手で直接。

――――コンコン、コンコン

軽快なリズム、待つ事十秒、変化無し。
次、少し強く。

――――ドンドン、ドンドン

待つ事五秒、
外側からでも分かった。
内側のざわめきが。
ツンはいる。ただし一人じゃない、少なくとも彼女ともう一人いる。
嫌な予感がした。だが、ここまで来て逃げられるか。

――――バン、バンバン

今度は手の平でドアを打つ、待つ事一秒、もう限界だ。これより突入する。



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 03:05:31.08 ID:KNDeZUs20


『本当に愛してるなら扉の一つや二つ、蹴っ飛ばしてでも『好きだ』と言えよ!!』

( `ω´)「ウアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

炸裂せよ、奥義!
ジダン・ヘッドバット!!

( `ω´)「ツン――――、好き好き大好き愛してる――――――――!!!!」

説明しよう、“ジダン・ヘッドバッド”とは、頭突きである。以上。
あえてドクオの名言の『蹴り』を使わず、『頭』を使ったのがミソですね。
ジダンとも掛けてますね、非常にうまいです。



……痛い。流石、今の住宅は頭突き程度で壊れやしないよね。
でもツンの部屋には入れたよ。僕、正座してるけどね。
目の前にタオルを巻いたツンと、全裸のおっかない兄ちゃんがいるけどね。
うん、コウノトリ召喚の儀式をしていたみたいなんだ。
そこにタイミング悪く僕が……ね。本当、そりゃ怒るよね。

(#゚Д゚)

うーむ、こりゃ一筋縄ではいかないぞ。てか、ツンの鎖骨綺麗だなー。描きたい。
「オイ、変態タイツストーカー」
「は、はいですお!!」
勢いのある良い返事だ、なんて褒められる訳が無い。
未来が見えます。半殺し……いえ全殺しにされている僕が見えまっする。金剛君。



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 03:07:33.46 ID:KNDeZUs20
「アンタ……」
「ツン……ゴメンだお、でも聞いて欲しいお、僕は、僕は……君の事が……」

ずっと、君の事が。

「好きでしたお」
「いや、私は嫌いだけど」

即答、早い。
流石だよ、ワープスピードだ。
ストリングスを短くする事で、ヨーヨーの描く円を小さくし、
通常よりも早いスピードのループを生む……多分そんなんだった(うろ覚え)。

「そういう事だ。部外者は死んで貰うぞゴルァ」

……死、までは行かなくとも間違いなく顔は酷く整形されるだろうな。
殴られるのか、ツンの恋人みたいな男に。
好きな女の幸せを祈ってやるのが男、よく言うが、気に食わない。

男だって幸せになる権利がある。
女が幸せだから自分も幸せ? そんな馬鹿な。悔しいに決まっているじゃないか。

「受けて立つお!!
 ただし、僕が勝ったらツンはありがたく頂くお!!」

「なんでだよwwwwwwwwwwwwてか勝負なのかゴルァwwwwwww」

「私の為に争うのは止めて!!(一度言ってみたかった台詞、不本意だが、この機を逃すと一生言えなくなりそうなので、一応言ってみた)」



77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 03:12:06.56 ID:KNDeZUs20
勝者・恋人の人。
パンチ一発で僕はノックダウンした。
だが倒れても僕はただで起きない。
一瞬の隙を計り、足払いをお見舞いした。
男は派手に転ぶ、僕はしてやったりという顔をする。

マウントポジション。
僕は男を何度も殴った。何度という回数では言い表せないほどに。

憎い、ただ憎いんだ。
ツンの何を知っているんだ、この男は。
何を知った上で、ツンの身体に触れているんだ。

( ;ω;)

「ツン……僕じゃ駄目なのかお……?」

もう動かない男を傍らに、僕はツンへと目線を向けた。
静かに立ち、静かに距離を詰めていく。

「近づかないで!!」

台所から包丁を取り出し、僕を威嚇する。
そんなもの向けて欲しくないよツン、
君に刺されるのなら本望だけど、死んだら愛せないじゃないか。
だから、そんな物騒な物捨ててよ、ツン。

「ねぇツン……」「来ないで!」
「ツン!!!」「いやぁ!!!」



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 03:14:59.19 ID:KNDeZUs20
ただ、抱きしめたかった。

僕の愛は、そんな刃渡り15センチの刃物なんかに負けないという証明をしたかった。


例えば赤い林檎
彼は自身の色を嫌っている


そうだな。
今の僕も、今の色が好きじゃない。

肌色の全身タイツは真紅に鈍く輝き、
僕の顔はみるみる内に青ざめていく。見なくても分かる。自分の身体だ。


ツン。


こんなバッドエンドはいやだな。
ごめんね。
僕の単純な脳細胞じゃ、この状況を最善のものにするには、この方法しかないんだ。



僕の両手は震えるツンの首を掴み、一気に力を込めた。

徐々に冷たくなっていくツン。

僕は彼女の腹を、彼女の持っていた包丁で裂いた。



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 03:17:00.32 ID:KNDeZUs20
君と僕の赤が混じり合う。

絵を描こう。

最後の絵を、君の元で。









一枚の画用紙。

そこに描かれた、最後の絵は、全てが赤く染まっている。

僕と君だけを閉じ込めた。

この赤は、やがて黒へと変貌する。

それは僕らだけの世界を作るんだ。



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/21(月) 03:19:00.92 ID:KNDeZUs20












扉は開いた。
         やっと会えたね。








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