ノパ听)は奮闘するようです

3: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 22:45:05.92 ID:9ikglfGz0

ノパ听)<第八話!!


『また来てるよあいつwwwwww』


『うっぜーwwww調子に乗るんじゃねーよwwww』


『やっぱ昨日の卵投げだけじゃ駄目だったのかなwwww』


『じゃあ次はなにいってみよっかwwww』


『うーんwwwwwどうしようwwwwww』


『もうさwwwwくだらないことはやめて殴ってみよっかwwwww』


『うはwwwwwwgjwwwwwww』


『うぇwwwwwwうぇwwwwww顔は駄目だからねwwwwww』


『声がでかくてうるせーんだよなあいつ。まじ死ねよ』



5: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 22:48:16.75 ID:9ikglfGz0

(-A-)「ぐぅ……ぐぅ……」


深い眠りが、俺を誘う。だが、何をするのにも敵というものはいるようだ。

今にとっての俺の敵は目覚まし時計。
奴には何回も眠りを妨げられ、何回も敗北を喫した。

だから、今日こそはと思う。多少遅刻してもいい。だから今日こそは奴に勝つのだ。
にっくき目覚まし時計の野郎に!!


ジリリリリリリリ!!!


毎日規則正しくこの時間に鳴り響く。
今の時刻は七時だろう。だが俺は勝つのだ。

布団を頭からすっぽり被り、防音対策を練る。
これで幾分増しになった。あとは耐えるだけ。俺の忍耐力の問題だ。



7: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 22:50:21.70 ID:9ikglfGz0

もう気づいているだろうが、俺はもう起きている。

だが問題はそこではない。布団から出たら負け。
それが目覚まし時計と交わした約束なのだ。

負けない負けない負けない負けない。
今日こそは……!!


ノハ#゚听)「どくおおおおおおおお!!朝だぞおおおおおおおおおおお!!」


今日も負けてしまった。布団は見事に引き剥がされてしまう。
俺の敵はもはや目覚まし時計ではなく、ヒートであった。


ノハ#゚听)「聞こえてるかなああああああ?朝だぞおおおおおおおおおお!!」


あぁ……うるせぇ……。



9: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 22:52:39.79 ID:9ikglfGz0

('A`)「あのさぁ、もう少し優しく起こしてくれるかな?」

ノパ听)「ごめん無理!!」

(#'A`)ピキピキ


それを告げると、ヒートは部屋から出て行く。
残されたのは寝ぼけている俺と、地面に落ちている布団。

むきになった俺は、布団を拾い再び横になる。
今度の敵は目覚まし時計ではない。ヒートだ。

あのうるせぇ女に俺は勝つ。


そう誓い、俺は目を瞑るのであった。



11: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 22:55:12.56 ID:9ikglfGz0

数分後、階段を乱暴に駆け上がる音が聞こえてくる。

この足音はヒートだ。
大方、いつまで経っても降りてこない俺を起こしに来たのだろう。

リベンジマッチが始まった。


('A`)(俺は勝つ……)


布団を深くまで被り、体制を整える。だが奴は俺の予想斜め上をいった。


ノハ#゚听)「「「朝だぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」


凄まじい爆音ともとれる声が部屋中に響く。

そして無理やり引っ剥がされる布団。
防具がなくなった俺が見たものは、ヒートの右腕に握られている拡声器だ。


ノパ听)「やっと起きたか」


満足げにヒートは頷いた。



14: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 22:57:25.87 ID:9ikglfGz0

低血圧の人間は朝に弱いと一般的に言われているが、まさしく俺には当てはまっていた。

むしろ、ここまでされて怒りが爆発しなかった自分に驚いたくらいだ。
だが、俺の脳みそは怒りというマグマで溢れかえっている。

我慢の限界は、とうに超していた。


( A )「…る…えよ……」

ノパ听)「ん?なんか言った?」

(#'A`)「うるせえって言ったんだよ!!聞こえないのかこの馬鹿女!!」

ノハ;゚听)「……え?」


もはや、俺の口は止まることを忘れていた。
次から次へとヒートを傷つける言葉が出てくる。抑えることはできなかった。


(#'A`)「いつもいつもいつもいつも!!!!
    朝起こすときも学校のときもなにかことがあるごとにうるせえ声出しやがって!!
    少しは抑えようとしろよこの馬鹿女!!どうにかしろそのでかい声をよ!!
    でかいのは乳だけにしとけわかったかこのボケが!!」


言いたいことを言い終わり、やっと冷静になった俺。
そこで見たのは、涙を流すヒート。小さく、ごめんなさいと呟き返していた。



16: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 23:00:10.78 ID:9ikglfGz0

ついに、我慢できなくなったのかヒートは部屋から出て行く。

階段を降りる音の後に聞こえたのは玄関の扉を開ける音。
窓の外を見ると、ヒートは学校の鞄を持たずに走り抜けていった。
そして、ヒートが行く先は通学路の反対側。


('A`)「あいつ……。どこにいくつもりだ……?」


悪いことしたな……。ヒートは俺のために起こそうとしたのに。
そう思い扉を開くと、そこには鬼のような形相をしたカーチャンが立っていた。


J(#'ー`)し「ドクオ……」

('A`)「カーチャ……」


俺が言い終わる前に、カーチャンは俺の頬に張り手を飛ばす。
今まで受けてきたもので、一番痛いものであった。



19: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 23:03:33.41 ID:9ikglfGz0

J(#'ー`)し「なんで叩いたか……わかる?」


その声から、怒りが滲み見出ているのを聞き取れた。
こんなカーチャンは初めてだ。俺は呆然とカーチャンを見ることしかできなかった。


(;'A`)「………」

J(#'ー`)し「……まぁ、あんたには結局話さなかったしね……」


カーチャンは、自分を落ち着かせるために一回深呼吸をした。


J( 'ー`)し「これは私の独り言だと思いなさい。
      今から話すことは、ヒートちゃんがここにくるきっかけになった理由よ」


ぽつりぽつりと、カーチャンは語りだした。



21: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 23:06:30.14 ID:9ikglfGz0



下駄箱を開けると、生臭い臭いが鼻を突く。
見ると、上履きの中には生ゴミが詰められていた。

笑い声が聞こえてくる。その笑い声の先には、数人のクラスメイトたち。
大方、これらを入れた張本人なのだろう。その笑いが、深く心に突き刺さった。


このままじゃ履けない。
私はゴミ箱へと向かい、ゴミ箱に上履きの中に詰められた物を捨てる。

ぱらぱらと落ちていくゴミ。
ゴミ箱とは、不必要となった物が入れられる受け皿だ。


ならば。

ならば私は、誰かに必要とされているのだろうか?
ならば私は、いらないものなのだろうか?

……イヤだよ、怖いよ。
私だって、誰かに必要とされてるよね?



25: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 23:09:05.17 ID:9ikglfGz0

歩くたびに、嫌な感触が足を襲う。
ねちょりねちょりという音が気持ち悪かった。


教室に入ると、賑やかな雰囲気は消え去り、皆私に顔を向ける。
その眼はとても冷たい。私の心も覗かれているようだった。

なんで、なんで私をそんなに虐めるの?ただ、他の人より声が大きいだけなのに。
それだけで、私は虐めの標的にされていた。


椅子を引くと、画鋲が数個置いてあった。
なんとも古典的ないじめ。だが、なによりも心を切り裂く。

それを見て笑うクラスメイトたち。
その対象は明らかに私だった。



27: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 23:12:00.11 ID:9ikglfGz0

画鋲をどけようとしたとき、一人の女の子が近づいてきた。
その子は、私が一番苦手な女の子のつーちゃんだ。


(*゚∀゚)「なにどけようとしてるのよ。座りなさいよ」

ノハ;゚听)「……え?」

(*゚∀゚)「聞こえなかったの?座れって言ったのよ」


クラス中が盛り上がり、聞こえてくるのは座れコール。
私の味方は誰もいない。


(*゚∀゚)「ほら、みんなも座って欲しいみたいだよ」

ノハ;゚听)「で、でも座ったら危ないよ」

(*゚∀゚)「さ〜ね〜www私が座るわけじゃないしwww」


『座れ!!座れ!!座れ!!座れ!!座れ!!座れ!!座れ!!』


虐めをするときほど、人間がまとまるときはないと思う。
その迫力に圧倒された私は、座ってしまった。



30: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 23:14:38.16 ID:9ikglfGz0

ノハ;゚听)「い、いたい……ッ!!」

(*゚∀゚)「ぶひゃひゃひゃwww本当に座ってるよこいつwww」

「ありえねーwwww」

「馬鹿じゃないのあいつwwwww」

「死ねばいいのにまじでwwwwww」

「つーも人が悪いぜwwwww」


次々に聞こえてくる罵声。

私は、負けたくなかった。唯一の反抗手段の涙をみせないこと。
必死に私は耐え続けた。なにをされようとも必死に。

血は、少しずつ滲んでいた。



34: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 23:17:15.51 ID:9ikglfGz0

放課後。私が一番待ち望む時間。

荷物をまとめた私は、そそくさと教室から出ようとしたが、
扉には数人が待ち伏せていた。

皆、例外なくにやついている。……嫌な笑いだ。


(*゚∀゚)「あのさぁ、ちょっと付き合ってよ」

ノパ听)「…………」

(*゚∀゚)「なにその反抗的な眼。付き合えっつてるんだろーが」

ノハ;゚听)「っい、いたいいたい!!」


私は、髪を引っ張られトイレへ連れてかれる。
やはりそこにも、数人の女子が待ち伏せていた。



35: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 23:20:39.39 ID:9ikglfGz0

(*゚∀゚)「うひゃひゃひゃwwwお前、前からうざかったんだよねwww」


つーちゃんは、言い終わると同時に腹部を殴りつけてきた。
それをきっかけに、みんな一斉に私に暴力を振るう。

まるで、サンドバックのように殴り、蹴られ続ける私。
開放されたのは数分後だった。



ボロ雑巾のようになった私は、トイレだというのに床に倒れこむ。
服はボロボロになり、ところどころ破けていた。


ノハ;凵G)「私が……私がなにをしたっていうの……」


私は泣いてしまった。
そして、次の日から学校に行くことはなくなっていた。



37: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 23:22:55.62 ID:9ikglfGz0

不登校になってから一週間が経った。

この一週間、部屋から出ることも無くなり、いわゆる引きこもりになっていた。
親も心配なのか、毎日毎日扉の向こう側から喋りかけてくる。

その愛情が、私の心に響いた。


「ねぇヒート。ひとつ、提案があるんだけど……」


いつになく慎重な声色。
いったい、何を言い出すのだろうか。私は耳を研ぎ澄ます。


「幼い頃、いつも遊んでいたドクオ君のこと覚えてる?」


……ドクオ。
毎日のように泥んこになり、暗くなるまで遊んでいたともだち。
小さかったときも虐められていた私は、よくドクオに助けてもらった。

しかし、なぜ今その話題を出すのだろうか。


ノハ--)「……覚えてるよ」



39: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 23:25:26.17 ID:9ikglfGz0

「あなた……ドクオ君の家で暮らしてみない?」


なにを唐突に。


「今思えば、あの子と遊んでいたあなたが一番輝いていたわ。
あのときのあなたは、笑顔を絶やさない日なんてなかった」


たしかに……そうかもしれない。
ドクオがいなくなってから、私は笑顔から遠ざかってしまった。


「あの子なら、きっとあなたを守ってくれるとおもう。
いつも笑顔だったあなたを、きっと」


ノハ--)「ドクオは……一緒に住んでも良いって言ってるの?」

「もちろんよ。お母さん、ちゃんと話をしたんだから。
ドクオ君とお母さんにお礼をしなきゃね」



43: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 23:28:05.67 ID:9ikglfGz0

私の心に、もう迷いはなかった。

これからすることは逃げるのと同じなのかもしれない。
だけど、だけど。私は新しいスタートを踏みたいのだ。

あのとき、いつも私を守ってくれたドクオと一緒に。


ノハ--)「……お母さん…」

「なに?」

ノパ听)「私、ドクオと一緒に暮らすよ!」


あの日以来、初めて部屋から出た私。
開いた先には、泣いている両親がいた。私のことを想ってくれる両親が。


「ヒート……。私たちはあなたを守れなかった。駄目な親でごめんね…」

ノハ;凵G)「お母さん…お父さん…。そんなことないよ!!私、頑張るから……!!」


その日は、家族で暗くなるまで泣いた。
その週の休みの日に、私はドクオの家に引っ越す。新しいスタートを踏み出すために。



45: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 23:31:01.52 ID:9ikglfGz0

J( ;-;)し「わかった!?ヒートちゃんはあなたに守ってもらいたくてここに来たのよ!!
      ここに来るまでどんなに辛い思いをしてきたかあなたにはわからないでしょ!?」


全てを話し終わったカーチャンの目からは、涙がたくさん出ていた。
いや、カーチャンだけではない。それは俺もだった。


J( ;-;)し「あなたは幸いにも友達に恵まれてきたわ!!それは喜ばしいことであり恵まれていた!!
      でもね、ヒートちゃんはあんたが笑っている間に身を摩りながら日々を暮らしてきたのよ!!
      そのヒートちゃんがあなたなら救ってくれると思ってここまできた!!なのにあんたが…!!」


カーチャンは、もう一回俺の頬を叩く。
それは、俺の身体だけではなく心にも重く響いた。


J( ;-;)し「なのにあんたがあんたが傷つけてどうするのよ!!馬鹿!!短小包茎!!
      わかったなら探してきなさい!!」


俺は涙を拭う。こんな顔では、ヒートに会う資格がないと思ったから。



48: ◆I40z/j1jTU :2007/06/14(木) 23:33:25.59 ID:9ikglfGz0

('A`)「カーチャン。俺、ヒート探してくるよ」

J( ;-;)し「はやくいきなさい!!馬鹿!!短小包茎!!」


扉を開く。そこは、どこまでも続く道。
でも俺にはわかる。ヒートがこの広い世界のどこにいるかが。

きっと、あそこにいるはずだ。


('A`)「カーチャン、行ってくるそれと……」


('A`)「俺は包茎じゃない!!」


俺は走り出す。ヒートを探しに。



('A`)<第八話終わりだ。



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