( ^ω^)ブーンたちは鈴の音を聞くようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 22:30:57.50 ID:gbwYWtAwO
鈴の音を聞いたら、24時間後、この世から消える




第4話「兄者」



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 22:32:09.23 ID:gbwYWtAwO
第4話「兄者」


全校集会で、ぃょぅの追悼が行われた。
たまにグロ動画とか見ることあっても、目の前でクラスメイトが首から血を噴き出して倒れるのはキツい。クラスの何人かはカウンセリングを受けてた。
同級生殺害とか、本来なら大きなニュースになるはずだが、今の社会はそれどころではないようだ。
政府のお偉いさんが消え、世界中でテロや大量殺戮が起きている。日本でも変な宗教団体が出てきて毒ガスとかまきはじめた。
いったい世界はどうなっちまうんだ。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 22:34:31.03 ID:gbwYWtAwO
そして、こんな大変なときにも関わらず、俺の隣でパソコンをいじっているバカがいる。

(;´_ゝ`)「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

(´<_`;)「どうした、兄者!?」

(;´_ゝ`)「これを見ろ!」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 22:36:14.38 ID:gbwYWtAwO
兄者がパソコンのモニターを俺に向ける。そこには、兄者の大好きな声優のブログがあった。

『ブログ閉鎖のお知らせ』

どうやらその声優も鈴の音を聞いたようだ。残り人生24時間しかないのにブログにファンへの感謝を書くとは泣けるね。
兄者は感極まってか涙をこぼしている。ほんと、平和だな。
こんな平和な日常にまで鈴の音が入り込んでくるなんて思いもしなかった。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 22:39:25.83 ID:gbwYWtAwO
その日。
俺は用事があって買い物に出かけていた。新作のゲームソフトを買うためだ。鈴の音現象で発売見送りかと心配していたが、そんなことはなかった。
俺はソフトを持ってホクホクしながら家に帰った。
さっそく自分の部屋でプレイしようと思った。

(´<_` )「ん?」

何かおかしい。

部屋がやけにキレイだ。テレビのまえでこんがらがってたはずのコントローラーやゲーム機のケーブルはどこへ消えた?棚から溢れていたはずのソフトの山はどこへ消えた?



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 22:43:03.10 ID:gbwYWtAwO
自分の部屋でフィギュアを開封している兄者を見つけた。いつの間にそんなもの買ったんだ。

(´<_` )「兄者、俺のゲーム知らないか?」

( ´_ゝ`)「ああ、あれなら全部売った」

兄者は振り向きもせずに言った。

(´<_` )「は?それはもしかしてギャグで言ってるのか?」

( ´_ゝ`)「ギャグなわけないだろ。今日オークションで落札したこれが届いてな。10万近くした」

(´<_` )「その金のために俺のゲームを売ったのか?」

( ´_ゝ`)「いいじゃないか。ゲームなんてまた買えばいいだろ。おまえにも見せてやるから……」



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 22:46:09.76 ID:gbwYWtAwO
気がつくと、俺は兄者を殴り倒していた。

(´<_`#)「ふざけんなよ。兄者がそんな最低な人間だとは思わなかった。見損なったぞ」

兄者はゆっくり起き上がり、そして、俺を殴った。
口の中いっぱいに血の味が広がった。
つーかなんで俺が殴られなきゃいけないんだよ。悪いのは兄者だ。
兄者は黙って立って俺を見ている。その姿がさらにムカついたから、もう一発殴ってやった。
だが兄者は踏みとどまって、今度は俺の腹に蹴りを入れてきた。いったい何なんだこいつは。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 22:50:56.98 ID:gbwYWtAwO
10分ぐらい殴りあっただろうか。ついに兄者は起き上がらなくなった。

体中が痛い。右目の上が腫れて視界が狭い。

(#<_`メ)「二度と俺の前に現れんじゃねえ。次見たらぶっ殺すからな」

兄者は返事をしない。俺は兄者の部屋を後にした。

ベッドに横になった。なんで兄者があんなことをしたのかわからない。
頭に血が上っていたが、喧嘩の疲れからか一気に眠ってしまった。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 22:56:48.17 ID:gbwYWtAwO
翌日、兄者は部屋から出て来なかった。
一晩寝たら頭が冷えて、謝ったら許してやろうと思ってたのに。俺はひとりで朝食を食べて学校へ向かった。

( ,,゚Д゚)「弟者、どうしたんだよその顔!」

(#<_`メ)「階段で転んだ」

(;^ω^)「どんだけ激しく転んだんだお」

('A`)「兄者は?」

(#<_`メ)「……風邪ひいたってさ」


兄者と喧嘩したのは初めてだな。兄者がいない学校は久しぶりだった。考えてみれば、いつも一緒にいたような気がする。
隣の空っぽの席を眺めながら俺は思った。
帰ったらムリヤリでもいいから謝らせよう。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 23:04:12.64 ID:gbwYWtAwO
玄関に靴はまだあった。飯を食べた後もない。一日中部屋に籠もってたのか。

(#<_`メ)「おい兄者、出てこいよ」

ドアをノックするが、返事はない。

(#<_`メ)「いつまでふてくされてるんだよ」

ドアノブをガチャガチャやるつもりだった。だが、意外なことにドアは開いた。鍵はかかっていなかったようだ。

(#<_`メ)「兄者?」

部屋は昨日のまま変わっていなかった。開けかけのフィギュアの箱。ぶつかって倒れた棚。だが、そこには兄者はいなかった。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 23:07:19.46 ID:gbwYWtAwO
(#<_`メ)「どこにいるんだよ、アイツ」

俺はブツブツ独り言を呟きながら家中を探したが兄者はいない。
外でブラブラしてんのかな。靴はあったけど。裸足で傷まみれの顔で外歩いてたら確実に通報されるな。そのうち交番から引き取り願いの電話が来るかもしれん。
俺はパソコンをいじりながらぼーっとしていた。
兄者がいないとこんなに退屈なのか。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 23:15:39.47 ID:gbwYWtAwO
しかし夕方になっても兄者は帰って来ない。少し心配になってきた。捜索届でも出すか?いや、出した直後帰ってきたら恥ずかしい。
俺はもう一度兄者の部屋に入った。財布はある。自転車もあったから遠くへは行ってないはずだ。

ふと、机のはじっこに日記帳を見つけた。アイツ、日記なんて書いてたのか。
パラパラめくってみる。大したことは書いてない。いついつのコミケに行ったとか、新しいアニメの感想とか、そんな感じだ。
そして、2ヶ月前で途切れている。どうせ飽きたんだろう。だらしないヤツだ。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 23:18:50.47 ID:gbwYWtAwO
俺は日記帳を机の上に戻そうとして、あることに気づいた。最後のページに何か書いてある。
それは昨日の日付だった。

( ´_ゝ`)『私が長く書いてきた日記も、今日で終わろうとしている。読者の方々、今までつき合ってくれたことに感謝している』

コイツ、読者がいると想像しと書いてたのか。気持ち悪い。

( ´_ゝ`)『最後の記録が暗い話になってすまないが、たったさっき、弟者と喧嘩をした。私が弟者のゲームを売り払ったというのが原因だ』



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 23:21:15.02 ID:gbwYWtAwO
( ´_ゝ`)『もちろんそんなことするはずがない。弟者のゲームは押し入れに隠した。そのうち見つけるだろう』

振り返って押し入れを開けてみた。そこには俺のゲームが、キレイに整頓されてしまってあった。

( ´_ゝ`)『私はちょうど今日届く予定だった品物を、その金で買ったと嘘をついた。弟者は当然私を殴った。計画通りだが、さらに計画を確実なものにするために、弟者を殴り返した』

(#<_`メ)「・・・・・・」

あれは全てワザとやっていたのか?だったら何のために?



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 23:24:13.90 ID:gbwYWtAwO
( ´_ゝ`)『私を倒した弟者は、捨て台詞を吐いて部屋を出て行った。次弟者の前に出たら殺されるらしい。ちょうどいい。私だって殺されたくはない』

体が震える。さっきからしていた嫌な予感は、確実なものに近づいていった。
俺は夢中でページをめくった。

( ´_ゝ`)『弟者にはすまないことをした。だが、これで弟者は私のことを嫌いになったはずだ。二度と私を見たくないだろう。これで心おきなく消えれる』

微かに文字が震えているような気がする。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 23:28:02.60 ID:gbwYWtAwO
( ´_ゝ`)『実は私は今日、鈴の音を聞いた。明日の今頃には、私はこの世界から消滅してるだろう。だから、弟者を悲しませない為に今回の計画を実行した。我ながら素晴らしい計画だと思う』


嫌な予感というものは当たる物だ。
何が素晴らしい計画だ。もっと気が利くのを考えろよな。なんか目が熱いのもたぶん兄者のせいだ。

( ´_ゝ`)『残念ながらそろそろお別れの時間のようだ。私は残りの短い人生を私の一番好きな場所で過ごそうと思っている。誰も知らない、秘密の場所だ。
それでは、さようなら。良い人生を』



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 23:33:49.24 ID:gbwYWtAwO
日記はそこで終わっていた。俺は日記を机に置くと、部屋を飛び出した。

誰も知らない秘密の場所。俺は知っている。
ガキのころ、俺が母者の大切な花瓶を割ってしまったとき、兄者は必死で隠れる場所を探してくれた。一日中ずっと2人でそこにいた。いつまでも兄者は俺のそばにいてくれた。『秘密の場所』だ。

俺はベランダの柵に足をかけ、手を伸ばした。子どものころはやっとのことで登ったが、今はあっという間に登れた。
今さら行っても、兄者に会えるとは思っていない。
でも兄者が最後にいた場所に、なぜか自分もいきたかった。



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 23:40:46.70 ID:gbwYWtAwO
俺は『秘密の場所』についた。なんてことはない。ただの屋根の上だ。懐かしいな。一日中2人で空を見てた。
地平線に夕日が沈む。兄者にもこの景色を見せてやりたかった。
俺は煙突に手をかけた。煙突には、俺と兄者が彫った名前がある。

『1996.06.28 兄者 弟者』

俺はその下に、新しく何か彫ってあるのを見つけた。


『ごめん弟者』



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 23:45:41.28 ID:gbwYWtAwO
あのバカ兄者が。最後の最後まで手のこんだことしやがって。

(#<_`メ)「ごめん」

そう呟いて、俺はしばらく、涙で滲む夕日を眺めていた。


今までいつも一緒だった。だから、またすぐに会えると思ってた。
でも、いくら待っても、兄者は帰ってこないし、俺が鈴の音を聞くことはなかった。



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/28(月) 23:47:38.67 ID:gbwYWtAwO
第4話終わり



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