( ^ω^)ブーンたちは鈴の音を聞くようです
- 1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:47:16.84 ID:hQF2uVbGO
- ( ^ω^)ブーンたちは鈴の音を聞くようです
最終回
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:49:15.09 ID:hQF2uVbGO
- 第7話「ブーン」
もう見てられなかった。
地獄で焼かれたり拷問されてる人間は普段見てるのに、なんでこんなに気分が悪くなるんだ。
たった今の高校生を見てた時だってそうだった。なんか胸が痛い。
あいつらを苦しめてる元凶は俺の真横に居るってのに俺には何も出来ない。あいつらを救ってやりたいのに、俺に神は殺せない。
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:51:38.53 ID:hQF2uVbGO
- 「そろそろスピードアップするか。あと一週間で一億突破が目安だな」
そう言ってまたヤツは紙に書き足す。あの紙一枚で世界を好きに変えれるんだから困る。
俺はあいつに手出しは出来ない。あいつも俺に手出しは出来ない。これはきまりだ。
だけどなんとしても止めたい。下の世界で蟻のように蠢いてるあいつらを助けたい。
「ん?どこへ行く?」
急に立ち上がった俺にあいつは尋ねた。
「座りっぱなしで疲れた。少し散歩してくるわ」
俺はそう言うと下界へ降りた。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:55:57.35 ID:hQF2uVbGO
- 〜
クーは僕のことを好きだった。なのに、気づいてあげれなかった。クーが鈴の音を聞いてたことを知ってれば、もう少し気を使えただろうか。僕にそんな器用なことは出来ない。
『一生忘れない大親友か。それもいいな』
クーの消える瞬間の寂しそうな表情が目から離れない。
そして、ギコまで消えた。僕はまたしても何も出来なかった。励ますことも、慰めることもできず、ただ見ているだけだった。
そんな僕への罰だったのかもしれない。
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 22:58:23.86 ID:hQF2uVbGO
- それは夕飯のときだった。
「鈴の音による行方不明者は世界で1000万人にのぼると見られ……」
J( 'ω`)し「すごい勢いね」
( ^ω^)「このまま人類滅亡かお」
*(‘‘)*「鈴の音?」
妹が聞いてきた。ブーンとは8年も離れてる。両親も意外と元気だ。
J( 'ω`)し「聞いたら1日後にいなくなっちゃうの。よくわからないんだけど」
*(‘‘)*「私も鈴の音聞いたよ」
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:00:55.68 ID:hQF2uVbGO
- 沈黙が流れた。
そしてすぐ、カーチャンがヘリカルの肩をつかんだ。
J(;'ω`)し「それは本当なの?!いつ聞いたの?!」
*(;‘‘)*「さっき・・・・・・」
ヘリカルは自分が今どんな状況にあるかわかっていないようだった。
J( 'ω`)し「そんな・・・・・・」
カーチャンはその場に膝をついて、泣き出した。ヘリカルはおどおどしている。
そして、また、僕は何も言えない。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:04:17.13 ID:hQF2uVbGO
- 僕は黙って家を出た。ショックでもう何もやる気がない。ただふらふらしたかった。
外は真っ暗だった。行く宛も考えず、ふらふら歩いた。
神様は僕に恨みでもあるのか。だったら僕を消せばいい。なんで僕の大切な人ばかり消えなきゃいけないんだ。
歩いてるうちに涙が出てきた。プギャーも、ギコも、クーも消えた。今度はヘリカルまで。そして僕はまた何も出来ないんだ。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:06:12.33 ID:hQF2uVbGO
- どのくらいさまよっただろうか。暗い路地の向こうに人影が見えた。その人影が空から降りてきたように見えたのは涙のせいで見間違えたのだろう。
目を合わせないようにすれ違おうとしたが、向こうから声をかけてきた。
从 ゚∀从「泣いてんのかよ」
こんな時間にこんな所にいるだけでも怪しいが、風貌もだいぶ怪しい。全身真っ黒で金髪だ。ぱっと見では女に見えるがよく見るとわからない。
もしかしたら危ない人かもしれない。関わったら襲われるかもしれないがどうでもよかった。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:08:55.45 ID:hQF2uVbGO
- ( ^ω^)「悪いかお」
从 ゚∀从「別に」
何なんだこいつは。やっぱり頭のおかしい人に違いない。僕はそのまま通り過ぎようとした。
从 ゚∀从「助けたいか?」
足が止まった。
从 ゚∀从「妹を助けたいか?」
( ^ω^)「どういうことだお」
从 ゚∀从「俺に従えばオマエの妹を助けれるぞ」
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:12:38.80 ID:hQF2uVbGO
- 何を言っているんだ?なんで僕のやりたいことがわかるんだ?
( ^ω^)「お前は誰だお?」
ブーンは口調を強めて聞いた。
从 ゚∀从「俺か?俺はハインリッヒ。神と双子で、悪魔だ」
話を聞こうとした僕が馬鹿だった。
从 ゚∀从「信じないか?」
( ^ω^)「当然だお」
从 ゚∀从「まあ見てろ」
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:14:27.59 ID:hQF2uVbGO
- ハインリッヒは手を前に出した。そして手のひらを下に向け、何か呟いた。
次の瞬間、ハインリッヒの手から湧き水のように砂金が流れ出した。
(;^ω^)「・・・・・・!?」
从 ゚∀从「いちおう神と双子なんだ。これくらい朝飯前だ」
ハインリッヒがまた何か呟くと、今度は夜空にものすごい量の流れ星が現れた。
从 ゚∀从「信じたか?」
こんな超常現象を見せつけられたら信じざるをえないだろう。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:17:41.24 ID:hQF2uVbGO
- 从 ゚∀从「今流行ってる鈴の音は、神が決めた。ヤツは苦しむオマエらを見て楽しんでる」
( ^ω^)「……それをお前は見過ごしてるのかお」
从 ゚∀从「見過ごしてるわけじゃない。俺には何も出来ないんだ。俺らは殺し合うことが出来ないように決まってる」
( ^ω^)「さっきの力で鈴の音を止めればいいお」
从 ゚∀从「残念ながら無理だ。世界の設定を変更できるのはアイツだけだ」
( ^ω^)「じゃあどうするんだお」
从 ゚∀从「殺す」
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:19:51.41 ID:hQF2uVbGO
- 从 ゚∀从「俺にはできない。だからオマエが必要なんだ」
( ^ω^)「・・・・・・」
僕が人を殺すのか?殺せるのか?
从 ゚∀从「心配するな。神っつっても天界じゃただの人間と変わらねえ。酒も飲んでるから無防備だ」
そういう心配をしてるわけじゃない。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:22:27.35 ID:hQF2uVbGO
- ( ^ω^)「神が死んだら、世界はどうなるんだお?」
从 ゚∀从「どうにもならない。ただ、天界と地獄は崩れ、新しく造り直される。俺も死ぬな。そしてオマエも」
( ^ω^)「僕もかお?」
从 ゚∀从「悪いが普通の人間が天界に行くということは死ぬのと同じだ。こっちの世界には戻れない」
(;^ω^)「・・・・・・」
从 ゚∀从「今すぐ決めろとは言わねえ。気が向いたら呼べ。やらなくてもいいぞ。やりたいヤツならいくらでもいるだろ」
そう言ってハインリッヒはスーッと闇に消えた。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:29:24.80 ID:hQF2uVbGO
- 僕はそのまま家に引き返した。
たった1人殺すだけだ。それで世界を救える。ヘリカルを救える。
僕は自分で何かをしたかったんじゃなかったのか?だったらやるしかない。
なのに、怖い。人を殺すのが怖い。死ぬのが怖い。そのことを考えると足が震える。
また僕は何もしないで終わるのか?それで悲劇の主人公気分でいるのか?そんなの嫌だ。でも、怖いんだ。僕は、臆病者だ。
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:31:45.05 ID:hQF2uVbGO
- 玄関の戸を開けた。家中に負のオーラが漂っているのを感じる。空気が思い。
カーチャンはリビングで寝ていた。泣きつかれたのだろう。顔には涙の後があった。
僕は2階のヘリカルの部屋を覗いた。ヘリカルはまだ起きていた。
*(‘‘)*「お兄ちゃん……」
ヘリカルは泣きそうな顔で僕を見た。
*(‘‘)*「私、消えるの?小学校の先生みたいに、急にいなくなっちゃうの?」
( ^ω^)「・・・・・・」
*(‘‘)*「イヤだ…消えたくないよ……消えたくないよ……怖いよ……」
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:34:00.40 ID:hQF2uVbGO
- ヘリカルの涙を見たとき、僕は決意した。大事な妹を泣かされて黙っておけるか。
( ^ω^)「大丈夫だお。ヘリカルは消えさせないお。お兄ちゃんが助けてあげるお」
そう言って僕はヘリカルを抱きしめた。
*(‘‘)*「ほんとう?」
( ^ω^)「ほんとうだお」
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:41:25.16 ID:hQF2uVbGO
- 僕は部屋に戻ってドクオに電話した。
('A`)「こんな時間になんだよ。喧嘩売ってんの?」
( ^ω^)「大事な話だお」
('A`)「・・・・・・なんだよ」
( ^ω^)「これからもう会えなくなるお。鈴の音を聞いたわけじゃないお。でも、ツンには言わないでくれお」
('A`)「は?どこに行くんだよ」
( ^ω^)「ちょっと神様ぶっ殺してくるお」
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:44:21.83 ID:hQF2uVbGO
- 僕はまた玄関に立っていた。ドアに手をかけようとしたとき、後ろから声がした。
*(‘‘)*「帰ってくるよね?」
( ^ω^)「……ああ、帰ってくるお」
僕は振り向かずに外に出た。目にたまった涙を見られたくなかった。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:47:21.00 ID:hQF2uVbGO
- 从 ゚∀从「また泣いてんのかよ」
( ^ω^)「泣いてないお」
从 ゚∀从「どっちでもいい。決めたんだな」
( ^ω^)「決めたお」
从 ゚∀从「これを使えよ」
ハインリッヒの手から黒い物体が現れた。僕はそれを受け取った。重い。それは拳銃だった。
从 ゚∀从「この世に未練はねえな?」
( ^ω^)「ありまくりだお」
从 ゚∀从「だろうな」
( ^ω^)「それが人間だお」
从 ゚∀从「行くぞ」
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:50:45.52 ID:hQF2uVbGO
- 体がふわっと浮いたかと思うと、いつの間にか真っ白な空間にいた。
「帰ってきたのか」
从 ゚∀从「まあな」
从∀・ 从「来客か」
神はそこにいた。
金髪でハインリッヒそっくりだが、着ている服は真っ白だ。
从∀・ 从「まあいい。祭は人数が多いほうが楽しいからな」
こいつ、祭って言いやがった。
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:53:12.41 ID:hQF2uVbGO
- ハインリッヒの顔を見た。ハインリッヒはゆっくり頷いた。
僕は神の後ろに立ち、静かに銃を構えた。あとは引き金を引くだけだ。
从∀・ 从「なんのつもりだ?人間」
神が気配に気づいて振り向いた。明らかに驚きの表情が顔に浮かぶ。
( ^ω^)「おまえを殺しに来たお」
从∀・ 从「なるほど。だが神である私を殺したら世界はどうなるかわからないぞ」
从 ゚∀从「はったりだ。天界と地獄が崩れるだけだ」
神はハインリッヒを睨みつけた。それからどこからともなく厚い本を取り出してめくりはじめた。
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:56:17.34 ID:hQF2uVbGO
- 从∀・ 从「君は……ブーン君か。わかった、こうしよう。君の妹は助ける。それに、君の大切な人には鈴の音は聞こえないようにする。どうだ?」
( ^ω^)「・・・・・・」
僕は指に力を入れる。それに気づいた神は恐怖の色を浮かべた。
从∀・ 从「じゃあさらに君にはこの紙をあげるよ」
そう言って羊皮紙を取り出した。
从∀・ 从「これさえあれば下の世界を思うままに操れる。好きなように変えれ……」
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/11(月) 23:59:41.28 ID:hQF2uVbGO
- 僕は引き金を引いた。銃声とともに神の肩から血が吹き出た
从∀・;从「ぎゃああああああああ!!!」
神は肩を押さえてその場に転げ回った。
( ^ω^)「人をなんだと思ってるんだお」
从∀・;从「考えたことないね……」
もう一発、逆の肩に撃ち込む。
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/12(火) 00:02:27.22 ID:h7BuHfP7O
- 从∀・;从「ああああああああああああ!!血がッ!!痛いィィ!!」
( ^ω^)「じゃあ知っとくといいお。これが『痛み』だお」
从∀・;从「私を殺すのか?」
( ^ω^)「殺すお。死んでも足りないお」
从∀・;从「私は神だぞ?神が楽しむためなら少しの人間ぐらいどうってことないんだ」
開き直りやがった。
从∀・;从「想像したことがあるか?何千年もこんなつまらないところにいるんだ。私にも娯楽が必要なんだよ」
心臓の少し横に銃弾を撃ち込む。
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/12(火) 00:07:24.93 ID:h7BuHfP7O
- 从∀・;从「がッ・・・・・・はッ・・・・・・」
( ^ω^)「想像したことあるかお?死が近づいてくる恐怖だお。クーもギコも、みんなこの恐怖を味わったんだお」
从∀・;从「ハァ゙ーッ……ハァ゙ーッ……」
(#^ω^)「お前のそのくだらない娯楽のために何千万人が涙を流したんだと思ってるんだお!何千万人が傷ついたと思ってるんだお!」
最後に一発。神はそのまま、ピクリともしなくなった。
- 62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/12(火) 00:10:57.70 ID:h7BuHfP7O
- 从 ゚∀从「終わったか……」
空間が急に歪んだ。
从 ゚∀从「悪いな。オマエを戻せてやれなくて」
( ^ω^)「いいお。僕はもう人殺しだから、生きてちゃだめだお」
从 ゚∀从「偉いな」
視界がみるみる崩れてく。ハインリッヒの体はすでに半分崩れて消えていた。
.,:゚∀从「あと1分もねえな。このあと、新しい神と悪魔が選ばれる。今度はまともなやつだといいな」
自分の体も消えていくのに気づいた。
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/12(火) 00:14:16.53 ID:h7BuHfP7O
- .,:";:从「じゃあな。俺の人生、すげぇつまんなかったけど、最後にオマエと一緒に世界救えてよかったぜ」
.,:;'ω^)「ハインリッヒのおかげで妹は助かったお。ありがとうだお」
返事は返ってこなかった。
プギャー、クー、ギコ。そっちに行けるといいお。
ドクオ、ツン。僕らの分も頑張って生きてくれお。
ヘリカル、嘘ついてごめんだお。ブーン、帰れないけど泣いちゃだめだお。
白い空間は崩れ、視界は黒に変わった。
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/12(火) 00:16:53.56 ID:h7BuHfP7O
- 〜
学校の帰り。私とドクオはブーンの家を訪れた。
ブーンが学校に来なくなってから4日。なぜか鈴の音の消失者はぴたりと止んだ。少し気になる。
ドクオは何を聞いても教えてくれないから、無理やり連れてきた。
玄関のチャイムを鳴らして、出てきたのはブーンの妹だった。
ξ゚听)ξ「ヘリカルちゃん、ブーンがどこに行ったか知らない?」
- 77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/12(火) 00:21:01.26 ID:h7BuHfP7O
- 彼女は笑って答えた。
*(‘‘)*「お兄ちゃんはすごいんだよ!
ξ゚听)ξ「何が?」
*(‘‘)*「みんなを助けたんだよ!きっともうすぐ戻ってくるよ!」
('A`)「・・・・・・」
ξ゚听)ξ「そっか。」
やっぱりブーンだったんだ。ブーンが止めてくれたんだ。そんな気がしてたんだ。
ブーンを怒鳴っちゃったな。ブーンが帰ってきたら、謝らないとだな。
終わり
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