( ^ω^)は駆動兵器を操るようです
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:15:11.10 ID:XCO52m2L0
( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第6話
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:16:12.59 ID:XCO52m2L0
どこか、どこかおかしいとは思っていた。
クー中尉も、誰から無線が入ったとも言わなかった。
( ^ω^)「し、失礼します!!!」
フサギコの右後方に付き、直立する。
この白い部屋がどこか、黒く、ひずみ、ゆがんでいるように感じた。
長い沈黙。
いや、長かったであろうか……。
それすらわからないまま、僕は佇んでいた。
( ^ω^)「……」
('A`)「それで……自分達二人への話とは……?」
少しやつれているドクオが、堰を切ってフサギコへと話しかけた。
( ^ω^)「二人……?」
この二人というのは、おそらく僕の事であろう。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:17:10.38 ID:XCO52m2L0
ミ,,゚Д゚彡「お前たちは……何を感じた?」
フサギコはドクオの方をじっと見ている。
それはまるで、獅子のような瞳。野望に心馳せる猛獣のようであった。
ミ,,゚Д゚彡「この駆動兵器に体を預けて……何を感じた?」
何を……感じた。
あの、駆動兵器に乗って、戦闘機を手で潰して、戦車を踏んづけて……何を感じたんだろうか。
たとえ、何かを感じたとしても、それは、いい『それ』ではなく、悪い『それ』であることには間違いは無い。
ただ……。
ただ、感じたといえるものは、悪意。恐怖。死。
戦争という名の、悪意。
思い出すだけで、寒気が走り、鳥肌が収まらない、恐怖。
もう後にはひけない、自分を追う手から逃げて、逃げて……。
足を踏み外した途端に訪れるであろう、死。
( ^ω^)「自分は……余りにもおおきな、恐怖を背負いましたお」
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:18:04.98 ID:XCO52m2L0
('A`)「……自分は……」
俺は、何を感じた?
あの、駆動兵器に乗って、砲撃してくる戦車をボウガンで撃って、ラウンジの駆動兵器と戦って……負けて。
何を感じたんだろうか。でも、自分の今まで生きてきて、感じた経験の中で、何かの起爆剤になった。
感じたのは、恐怖。殺意。復讐。
背中を這う様な、絡まりついて取れない、恐怖。
一分、一秒でも早く敵を排除しようとする、針のように鋭く、刀剣のようなしなやかな、殺意。
そして、敗北の味を少しでも薄めようとする、復讐。
('A`)「……自分は、悔しさを……殺意を、抱きました」
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:19:39.97 ID:XCO52m2L0
二人の話を黙って聞いていたフサギコが口を開く。
ミ,,゚Д゚彡「そうか。お前達を乗せた甲斐があった」
ほめられるとは思っていなかった。
なにせ、初陣にて駆動兵器を大破、そして敵を逃がしてしまったのに、なぜ褒めるんだろう。
すると、胸のうち、なのであろうか……。
ミ,,゚Д゚彡「……私は、今の軍に不満、疑問を持っている」
('A`)「不満……ですか?」
ミ,,゚Д゚彡「お前たち末端兵士にこういう事を言うのは間違いかもしれんが……」
そういってフサギコが話し始めたのは、今のVIP軍の内部の腐敗。
いくら国民代表を国民全員で選出するといっても、所詮議会が裏で手を握っている。
そして、その軍を今動かしているのが、VIP軍総裁という立場の人物なのであるが、その側近を勤める人間が、議会からの天下りの末に就任している。
そして、この側近。
現在は年をとり、思考が衰えている状態の軍総裁をいいことに、軍総裁のブレインとなり、この軍事への介入をしている、とのことであった。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:20:49.11 ID:XCO52m2L0
ミ,,゚Д゚彡「そして、この人物。表向きには全く公表されていない」
( ^ω^)「軍人登記には乗っていない……ということですかお?」
ミ,,゚Д゚彡「その通りだ。そして、この人物の過去には、大きな不安因子がある」
ミ,,゚Д゚彡「最大の問題は、その人物が、元ν帝国軍参謀長官である、ということだ」
(;^ω^)(;'A`)「!!!」
驚いた。
VIP独立当時、様々な方法で軍人に対する過去は洗われたのである。
ν帝国軍からVIP軍へと移行するものに対しては、特に徹底的に行われた。
過去の戦犯暦や、反逆の恐れがあるものは、もちろん、軍の二等兵にすらなれなかった。
なのに、なぜ総裁側近までにも上のポジションへと上り詰められたのか、しかも表向きには公表されること無く――。
ミ,,゚Д゚彡「これには一概とはいえないものだが……軍内部にν帝国のスパイがいるという可能性がある」
(;^ω^)「と、ということは……この戦争もですかお?」
ミ,,゚Д゚彡「さあな。それはまだ詳しいことが出ていない以上わからない」
('A`)「でも、そんなスパイが軍内部にいるとするなら……この、自分たちが乗った駆動兵器の情報も……?」
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:21:47.78 ID:XCO52m2L0
少しパイプ椅子に腰をかけなおし、腕を組むフサギコ。
その沈黙が、質問への肯定になっているということが、二人にはわかった。
ミ,,゚Д゚彡「……現に、ラウンジにも駆動兵器があるということが確認された」
('A`)「……はい」
ドクオは、あのときの事を思い出す――。
パイロットの名前……たしか、ツーといっただろうか。
('A`)「フサギコ少将殿」
ミ,,゚Д゚彡「……なんだ」
('A`)「ラウンジはどうして、この戦争に介入してきたのですか?」
ミ,,゚Д゚彡「あいつらの考えなど私にはわからん。
ただ、どうやらラウンジにも、根っからの戦争好き、国民の血など気にしない奴がいるのであろう」
ミ,,゚Д゚彡「もちろん私も、国民の血など蚊ほども気にしていない。
だが、どこに正義があるかわからない戦争など、自慰よりも無駄な行為だ」
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:23:02.58 ID:XCO52m2L0
('A`)「……」
正直、フサギコ少将の言っていることには、腹が立つ。
しかし、蚊ほども気にしていない、などと断言されると、どこか清清しさをも感じた。
ミ,,゚Д゚彡「まあ話が長くなってしまったわけだが、私がここにわざわざ来るということは、何かしら頼みたいことがある、ということをお前たちはわかっているだろう?」
( ^ω^)('A`)「……はい」
ミ,,゚Д゚彡「その用件というのはな……」
フサギコは、椅子の足元においてあった書類を取り出し、二人に手渡した。
ミ,,゚Д゚彡「お前たち、それにクー少尉を含めた三人に、私が組んだ駆動兵器隊への所属を頼みたいのだ」
( ^ω^)「駆動兵器隊……ですかお?」
('A`)「どういった部隊なのですか?」
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:23:56.93 ID:XCO52m2L0
- フサギコの話によると、駆動兵器隊というのは、フサギコ直属の親衛隊のようなもの。
そして、その主力となるのは名前の通り、この駆動兵器である。ただ、大きく違うのは、その予算のあてがわれ方である。
駆動兵器班は、その軍には存在しない部隊である。
なので、その空白の部隊に、巨額の資金が投じられて、行き先不明の資金が存在する、といったことは許されない。
では、その出資先はどこであるか……ということになる。
資金の出先は、フサギコのコネクションであるVIP軍御用達の武器商連合。フサギコは元は武器商人出身であったから、パイプは太く、資金援助も容易い、といったところであろうか。
( ^ω^)「軍には存在しない……?」
('A`)「ということは、私たちは表向き、軍人では無くなるということですか?」
ミ,,゚Д゚彡「そういうわけではない。
ただ、所属はそのままこの南部指令基地に置くが、実際はこの大陸全土を転々とすることになるだろう」
あまりにもフサギコの説明が淡々としすぎていて、ブーンとドクオは流されそうになっていた。
よくよく考えてみると、駆動兵器に乗って、大陸中を駆け回り、戦争をしろ、といわれているのである。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:25:04.31 ID:XCO52m2L0
- ミ,,゚Д゚彡「この勅令は、断ってもよい。断った後の出世、対応などに変化は無いと約束する」
ミ,,゚Д゚彡「ブーン、ドクオ二等兵各々が経験したものを見込んで、私はお前たちに決めたのだ」
( ^ω^)「フサギコ少将殿が……」
ミ,,゚Д゚彡「この答えは、明日の監視業務終了後、演習棟で聞こう。それまで、じっくり考えてくれ」
腰をあげると、フサギコは部屋から出て行った。
それを敬礼で見送る。
そして、ドクオは、ブーンが目に涙をためているのに気づいた。
('A`)「おい。どうした?」
( ;ω;)「いや……ドクオが目を覚ましたって、安心したら涙がでてきたんだお……」
('A`)「あ、ああ……。すまなかった、みんなに心配かけていたみたいだな」
( つω^)「いや、生きていればいいんだお」
生きていれば、か。
死んでいれば、どうなっていたんだろう……少しだけ、頭をよぎる。
俺がいない世界。
だとしても、何の支障もなく回る世界が思い浮かんだ。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:25:46.53 ID:XCO52m2L0
- ('A`)「ああ……」
ブーンは、この申し出を受けるのだろうか?
これ以上、ブーンがこの駆動兵器に乗る必要は無い。
元はといえば、俺がフサギコ少将にはむかった、とばっちりのようなものなのだから。
('A`)「なあ、ブーン」
( ^ω^)「ブーンは、駆動兵器に乗るお」
ドクオが本題を切り出す前に、ブーンは答えを出した。何も迷いは無い、そういう声、顔であった。
('A`)「もう……降りろよ。ブーン」
( ^ω^)「……」
乗らない、とは言わないブーンに、ドクオは苛立ちを隠せなかった。
なぜそこまで命を捨てたがるのか……ブーンのことが、わからない。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:26:33.25 ID:XCO52m2L0
- (#'A`)「……もうお前が駆動兵器に乗る必要はないんだよ!!わざわざ命を危険に曝しに戦場へ行ってどうするんだよ!!」
( ^ω^)「……そう言うなら、ドクオが、降りろお」
(#'A`)「……なんだと?」
( ^ω^)「悔しさを、嘲笑を、叱咤を……全部、体に受けて生涯を暮らせお」
(;'A`)「……」
( ^ω^)「悔しさは無いのかお?ドクオは、あの白のラウンジにやられて、ここまで怪我をさせられて……悔しくは、ないのかお?」
俺は、ブーンの言うことに反論できなかった。
自分は軍人で、死ぬようなことは何回もしてきた。いつでも死ぬ覚悟だってできてる。
でも……。
でも、恐怖はぬぐえなかった。
その自分が、悔しい。
(;'A`)「……く、悔しいに、決まってるだろ」
( ^ω^)「悔しいと感じれば、それは立派な動機になるお。
ブーンは、ドクオを危険に合わせた力の無さや、ノトーリアスを使用しただけで気絶しそうになった自分の弱さが悔しいお」
('A`)「……俺も、あの白に負けたのが……悔しい」
( ^ω^)「なら、二人とも答えは決まってるお!」
('A`)「で……でもよ……」
( ^ω^)「じゃあ、ブーンは部屋へ戻るお」
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:27:45.37 ID:XCO52m2L0
- ドアノブに手をかけ、背中をむいた状態で止まるブーン。
( ^ω^)「……もう、ブーン達みたいに、戦争で親を失った子を見るのは嫌なんだお。わかってくれお」
('A`)「……」
ブーンがいなくなった治療室は、点滴と、機械の音しかせず、生気の無い部屋になった。
ドクオは、ブーンの気持ちが一番わかる、そう思っていた。
しかし、ドクオの考え以上に、ブーンは強く、大きくなっていた。
('A`)「……駆動……兵器」
力の入らない手で、拳を作る。
震える拳は、みっともなくて、情けなくなった。
この2週間とちょっとで、俺の環境は激変した。ただの軍の捨て駒二等兵から、駆動兵器乗りへと……。
('A`)「変化に追いつけてないのは、俺かもしれない…」
何を考えるでもなく、ドクオは目を瞑る。
余計な事は考えなくてもいい……んだよな。
俺はただ、ブーンへの償いのために、ブーンを守ろう。
それで、いいんだよな。
川 ゚ -゚)「……ふぅ」
( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第6話 「俺が乗るって言ってんだ!!」
第1部 「開戦編」 完
戻る