( ^ω^)は駆動兵器を操るようです

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:32:45.79 ID:XCO52m2L0


第2部「邂逅編」


( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第7話



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:34:07.98 ID:XCO52m2L0
 私は、物心のついた頃には、銃を握らされていた。
理由なんて持っていなかった。
ただ、のどが渇いたから手に取り口に運ぶ水のごとく、自然な事のように思っていたのだ。

川 ゚ -゚)「……」

 目の前に映る戦車、戦闘機、兵士を片っ端からなぎ倒し、粉砕し、爆破していた。
それが、私の心を埋めていた。
他に、することがなかったから……それ以外に、生きがいを覚えていなかったから……。
このVIPに来たのも、νと戦いたくて、銃で人を撃つのを正当化したくて参加した。
そんな安易な理由の連続で、私は今、駆動兵器に乗ることになっている。

 だが、どうしてだろう?
今、この状態は幸せなはずだ。人を殺す正当な理由が、戦争によって得ることができたのに、駆動兵器という力を手にしているのに、何かが足りない。
心のすきまが、何かを欲しがっているのだ。

 それが今、私にはわからない。
探しても、探しても、答えは見つからない……。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:35:13.60 ID:XCO52m2L0

―南部指令基地・食堂―

川 ゚ -゚)「Aをくれ」

 クーは、こういう考えの人間なのか、人と一緒にいるのを拒む。
いや、人と一緒にいるのは嫌いではない。嫌いではないのだが、どこか苦手、なのである。
しかし、そんな彼女でも、心を開いて接することのできる人物はいる。

从'ー'从「クー!こっちだよ」
川 ゚ -゚)「ああ。人が多くて見つけられなかった」

 クーの友人、ワタナベは、クー達が乗る駆動兵器を輸送する際に用いられるNRPの搭乗員。もともとは管制の人間であったが、駆動兵器を実践に配置するにあたって、人員不足の為に引き抜きにあった。
当初、誰も近寄らせないクーの空気が苦手であったが、一本筋の通ったその性格と、駆動兵器への思いやりを知って、クーへと接近し、親密になった。

从'ー'从「聞いたよ。クー」
川 ゚ -゚)「ん?何をだ?」
从'ー'从「フサギコ少将が、駆動兵器を本格的に導入するんだって?」
川 ゚ -゚)「ん。ああ。駆動兵器隊だそうだ」

 クーには、もう早々とフサギコから駆動兵器隊の事について知らされていた。
なにせ、今このVIP軍の勢力核になるのが、このクーと、2CH−VRなのである。
そして、駆動兵器が荒巻の手によって作られ、νから独立するのにも、クーは大きな活躍をした。
VIP独立の際も、今と同じように、軍側からクーの存在は隠蔽されており、本来なら中佐ほどの地位を与えられていてもおかしくはないのだが、目立たないため、隠し通すために、少尉という地位で収められている。



27: ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/08(金) 16:36:08.16 ID:XCO52m2L0

从'ー'从「まあ、私はNRPに乗っている人間だし、駆動兵器隊にはデフォルトで入れられているみたい」

 クーが思っているよりも、駆動兵器隊は大きい部隊になっているようだ。

川 ゚ -゚)「そうか。ワタナベは、こうやって危険な部隊に組み込まれるのは、嫌じゃないのか?」

 率直に聞いてみた。
私は、嫌な事などひとつも無い。戦いの場に身を置く、これはごくごく自然な事。
だからこそ、他人がどう考えているか気になった。
あの二人のように、国を思いながらも、恐怖を感じ、死を間際に生を感じる、みんなそういうものなのだろうか。

从'ー'从「嫌じゃないよ。私は」
川 ゚ -゚)「でも、好んで戦争に参加しているわけではないだろう?」

从'ー'从「そりゃあ、好んで戦争したいなんて事は思ってないよ。でも……」
川 ゚ -゚)「でも?」
从'ー'从「このVIPを守る一つの力になれる、って思ってるから、どこかでその力を表したい、自己の正義を貫くために……って、何言っちゃってるんだろ」

少しはにかみながら、スパゲティを口に運ぶワタナベ。



28: ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/08(金) 16:36:57.62 ID:XCO52m2L0

川 ゚ -゚)「みんな、守りたい、表したい何かがあるから戦争に身を投じる……ということか?」
从'ー'从「みんなそうだと思うよ?このVIPを守りたい、とか、もうνのいいとおりにはさせない。とかね」

川 ゚ -゚)「……そうか。すまない、昼食の途中にこんな変なことを聞いてしまって」
从'ー'从「普段は静かなのに、今日はいろいろ言うからびっくりしちゃったよ」

 そうか。そうだったんだな。
みんな、なにか守りたいものがあるから、戦争をするのか。
ワタナベは、自分がVIPを守っているという事を証明するため、そういった理由を胸に秘めている。

 それが、私には無い。
私にも、理由があれば、このどこか隙間の開いた気持ちを治める事ができるのだろうか?
答えはわからない。
ただ、その理由を見つければ、私の中で何かが変わる、いや、変えることができる。
波紋を立てるわけではないが、穏やかな水流に一石を投じて、今まで届かなかったところまで、水を行き渡らせるのだ。

川 ゚ -゚)「じゃあ、バルケン殿のところへ行ってくるよ」
从'ー'从「うん。今日も頑張ってね」
川 ゚ -゚)「ああ」

 
 何かを、見つけよう。
戦う理由を、見つけよう。



29: ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/08(金) 16:38:34.34 ID:XCO52m2L0

―VIP・ニーソク国境付近―


(´・ω・`)「定時連絡。国境付近東ブロック。問題なし」

『了解。引き続き警備を続けろ』

(´・ω・`)「ラジャ」

 通信機を切り、一息つく。
あの国境会議からというもの、一日に一度は何かしら問題が起きている。
まあその問題というのも、電波障害であるとか、そういった些細なものであるのだが。

( ・∀・)「ショボン。交代の時間だ」
(´・ω・`)「はい。では基地へと戻ります」

 部屋を出ようとするショボンを、モララーが止めた。

(´・ω・`)「……どうかしましたか?」
( ・∀・)「いや、あの…ドクオによ、感謝してる、っていっといてくれねぇか?」

(´・ω・`)「感謝……ですか?」
( ・∀・)「ああ……。あの時、ドクオがフサギコ殿に物言いしてくれなかったら、俺も撃たれてたかもしれなかった」
(´・ω・`)「そうですか。では、言っておきます」

( ・∀・)「あ、ああ。頼んだよ」



30: ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/08(金) 16:41:11.65 ID:XCO52m2L0
 この人は――。
いまさら何を言っているんだ。
一等兵が二等兵に謝ることを恥ずかしがるだなんて、そんなちっぽけでちんけで安物のプライド……無い方がいい。

(´・ω・`)「……」

 ショボンが、モララーへと怒りを募らせていた。
と、その時、ショボンたちの無線へと連絡が入った。

『ν帝国のスパイとおぼしき者が一名。国境付近東ブロックへ軍用バイクで逃走した模様。付近の兵士は警戒。
              帝国軍人の特徴は、切れ長の目、黒髪、背丈は175cm前後と見られる。繰り返す――』

(;´・ω・`)「ス……スパイ!?」

 とっさにライフルを構え、周囲を見回す。
だが、周りは一面荒れ果てた土地で、バイクは見かけない。
普段、このニーソクとの国境は人員を割いてはいない。ニーソクとは敵対していないので、νやラウンジの国境のように、何十人もいないのである。

 そして、今この東ブロックにいるのが、ショボンとモララーのみ、そして、国境をまたいでニーソクの軍人だ。
敵がなぜこのようなところへ逃亡したのかは知らないが、ここが手薄というのはわかっていたのであろう。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:43:43.03 ID:XCO52m2L0

(;´・ω・`)「とりあえず、モララー殿のところへと戻ろう」

 周囲を警戒しつつ、国境警備の建物へと向かう。
建物といっても、掘っ立て小屋のようなもので、二階立てなのだが、一階部分に部屋はなく、二階部分にひとつ監視用の部屋があるだけの粗末なものだ。
まあ、それほど資金に余裕は無いので、守る必要度が高くないものに資金をあてないのはいい事である。

 ゆっくり移動しながらも、ライフルに気をそそぎ、不備等無いか確認を怠らない。
そして、階段を上り、監視部屋の扉を開けると、スパイと見られる男が、モララーの首へとナイフをあてていた。

( ;+∀・)「くっ……ショボン……」
<;ヽ`∀´>「ちっ……!!もうきたニダか……!!」

 モララーは鈍器で顔面を殴られたのか、口から血を流し、そして、スパイとおぼしき男に人質にとられていた。

<;ヽ`∀´>「こうなれば……こ、この男を失いたくなければ、逃走用のジープを用意しろニダ!!!!」
( ;+∀・)「……」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:44:52.90 ID:XCO52m2L0

(;´・ω・`)「ぐ……と、とにかく落ち着け!!用意するように連絡を送る、だからその人を殺すな!!!」
<;ヽ`∀´>「えらくものわかりがいいニダね。手早く用意するニダ!!」
( ;+∀・)「お前!!何言ってるんだ!!」

 そう。
これは、間違った対応。
人質にとられていたとしても、人質の命を優先して、このVIPの情報を外に漏らすようにするのは、大きな間違い。
本当は、人質の生死など気にも触れない。

(;´・ω・`)「モララー殿!すぐに解放させますから!!!」

( ;+∀・)「おい!!お前……ぐぅっ!!」
<ヽ`∀´>「お前は少し黙ってろニダ!!」

 こいつが馬鹿で本当によかった。
僕のしようとしている事を『二人とも』わかっていないようだ。
いや、もしかしたらモララーは気づいたかもしれないかも。



 でも……。
バレなきゃ、いいよね。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 16:46:17.68 ID:XCO52m2L0

(;´・ω・`)「そっちの方にある窓を見てくれ。ジープが着いたはずだ」
<ヽ`∀´>「ニダ?えらく早いじゃないかニダ」

 そういって、モララーを人質にとりながら、少し離れた窓を覗き込みに言った。
そして、ショボンはとっさにライフルを構える。

<;ヽ`∀´>「……!!!!!」

( ;+∀ )「な……お前……」

 モララーが、壁に血と内容物をぶちまけ、倒れた。
ショボンは、ソレを見てニヤリとする。そして、ソレを見て、ν帝国のスパイは戦慄を覚えた。

<;ヽ`∀´>「お……お前!!!なにしてるニダ!!!仲間じゃないのかニダ!!?」

 明らかにパニックへと陥っているスパイを見て、ショボンは興奮を抑えられないでいた。
自分は今、自国の兵士を殺し、今から、他国の兵士を殺す。
自分の中の『二つ』のやるべきことを果たそうとしているのだ、興奮せずにはいられない。

(´・ω・`)「君は、バイクを使い、この監視部屋へと逃げこんだ。そして、このモララーと鉢合わせる。
         突然のことに驚く二人は、取っ組み合いの末、君は、この部屋においてあった、このライフルを手にする。」

 そう言いながらスパイへとじりじりとにじりよるショボン。
ブーンたちといつも一緒にいるショボンとは、まったく顔つきが違った。



34: ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/08(金) 16:47:25.64 ID:XCO52m2L0
<;ヽ`∀´>「ひっ……っ!!」

(´・ω・`)「そして、君はモララーを殺害する。『モララーの持っていた事になっているこのライフル』でね。
           そして、その銃声を聞いてかけつけた僕は『そこに汚く倒れている奴の持っていることになっているライフル』で、君を殺す。」


(´・ω・`)「そう、そのライフルが、この壁にかけてあるライフルだ」

 壁に手をかけ、ライフルを持ち帰る。
恐怖におののいているニダーを嘲笑するように、構える。

(´・ω・`)「これが、僕の、今思いついた二つの任務」

(´・ω・`)「任務、ごくろうさま」
<;ヽ`∀´>「く……狂ってるニダ……っ!」

『司令部!!!応答してください!!』
        『こちら司令部、どうした』
  『さきほどの通信にあった、ν帝国のスパイを殺害しました……しかし……』
 
      『監視部屋に駆けつけた際、モララー一等兵がライフルにて射殺されていた模様……』
『……了解。その場へ救護班を送る。その場を少し警護しておくように』
    『了解……』


(´・ω・`)「……これくらい、しないとね」


( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第7話「内なる希望と野望の目覚め」完



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