( ^ω^)は駆動兵器を操るようです

6: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:08:55.22 ID:bpDMJrlb0





( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第8話






7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/15(金) 17:10:13.00 ID:bpDMJrlb0
 
 そうだ、俺のせいで、戦争が始まってしまったんだ……。
今日も、また査問委員会の奴らに嫌味を延々と言われるのだろうな。

( ゚д゚ )「……はい。私が、クマーの挑発に……」

 俺は、踊らされていたんだ、クマーに。
所詮向こうは軍事交渉のプロ。
戦争屋は、やはり戦争を望むのだ。

( ゚д゚ )「今回の失態の責任を受け、私はこの国民代表を退き、入隊しようと思っています」

 軍に入っても、俺は陰で不平不満を言われながら生きていかないといけないだろう。
しかし、今はこうするしかなかった。
このまま逃げて、実家に逃げ帰ってぬくぬくと暮らすなど、俺の安いプライドでも許さなかった。
もう、VIPプロ野球界にも、俺の居場所などない。
こうなれば、砂を噛み締め、銃弾を体に浴びるような軍に入り、クマーの手下を一人でも多く殺してやろう……そう思った。

( ゚д゚ )「では、失礼いたします」

 辛酸など、いくらでも舐めてやる。
俺が、俺の手で、戦争を終わらせてやる。



8: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:11:02.91 ID:bpDMJrlb0
 
 そして、ミルナが軍への入隊を決意したのと同じ頃、ドクオとブーンは、フサギコへ『答え』を言っていた。

ミ,,゚Д゚彡「そうか。駆動兵器隊へと、入ってくれるのだな」
( ^ω^)「はいですお」
('A`)「……はい」

 もう、後には引かない、後ろは見ない、後悔はしない。
そう、決めたんだ。

( ,'3 )「二人とも、戦場に出てからと、戦場に出る前の目つきが全然違って見えるな。強く、逞しい目をしておるよ」
川 ゚ -゚)「これから、頑張っていこう」

( ^ω^)('A`)「はい!!」

ミ,,゚Д゚彡「では、私は司令部へと戻る。後の説明はバルケンにしてもらってくれ」

 そう言うと、フサギコは帰っていった。
説明によると、この駆動兵器隊には、人員が40人。
駆動兵器のメンテナンス、開発や、NRPの操縦員など、各々の部署から何人ずつかヘッドハンティングされた形になっている。



9: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:12:18.40 ID:bpDMJrlb0

( ^ω^)「それにしても、なんでブーン達が選ばれたのかが未だにわからないお」
('A`)「……そういえばそうだな。俺達がフサギコ殿に逆らっただけ、ってわけじゃあなさそうだし……謎だ」
 
 二人は、ロッカールームで順応スーツへと着替える。これを着るのは、あの国境会議以来だ。

( ,'3 )「着替えてきたか。では、今日は早速だが射撃訓練をしよう……と、言いたいのだが……」
('A`)「……?」

( ,'3 )「2CH−VBが、この前の戦闘にて大破してしまっているのだ。全修復には少なくとも、あと2週間はかかる。
           ドクオ二等兵には、いい機会だから、修繕の様子を観察し、把握したところで修繕作業に参加してもらう」

('A`)「了解!」

( ,'3 )「ブーン二等兵は、今までどおり、重力耐久訓練、クー少尉との演習を続けてもらおう」
( ^ω^)「了解ですお!」
川 ゚ -゚)「了解」

 こうして、二人の、次の戦闘へ向けての訓練が始まった。
ドクオは、まず自分の機体への理解を深め、どのような行動が一番作戦の成功へ近づくか、2CH−VBはどのようなことができるのか、そういったことを一つずつ学んでいった。

 それに対して、ブーンは、知識を得るにはまず体で覚える、といったところか。ノトーリアス時の強力なGにも耐えうる体を作ることを最優先した。
最初は、ノトーリアスによる初速のみで泡を吹き、痙攣していたブーンも、努力が実ったのか、意識を失わず、コントロールできるようになっていく。

 紛れもないそれは、ブーンを内側から力づけ、次の戦場への大きな力へと育っていった。



11: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:13:29.25 ID:bpDMJrlb0

川 ゚ -゚)『むう……ブーン、今日は少し動きが鈍いぞ』
(;^ω^)「す……っ、すみませんお……」

 ブーンが心身衰弱するのも無理はない。
毎日のように巨大な重力と戦わされ、それが終わればクーの2CH−VRとの実践演習。
実践演習というのも名ばかりで、クーは手加減というものを知らないのか、本気でブーンの緑を潰しにかかってきた。
 
そのたびに、ブーンは

(;^ω^)(実戦はもっと厳しいんだお……もっと……もっと厳しいんだお……)

 と、瞑想のごとく頭の中で繰り返していた。
演習の場所は、大きく、岩などの障害物が多い荒地を使用している。
霧が濃くかかっているこの場所で、レーダーを使った模擬戦闘を実施、空間把握能力を育てよう、といったところであろうか。

川 ゚ -゚)『では、もう一度。メンテナンス終了後にな』
( ^ω^)「了解ですお!」
川 ゚ -゚)『手は抜くなよ。バルケン殿にはパイロットが死ななければいいと言われているからな』
 
 クーは少し笑いを含みながら言った。
ブーンにすれば、そんなの冗談ではすまない一言であったのだが……。

(;^ω^)「(遺書を……遺書を書きたいです……)ケ、ケガしないように善処しますお」
川 ゚ -゚)「うむ。よろしい。では、演習棟へと戻るぞ」



12: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:15:40.00 ID:bpDMJrlb0

 2CH−VGは、2CH−VRの基本的構造、AIを引き継いでいる。
Rの改良点をGに振り分け、細かい仕様を変更しているのだが、実際の駆動兵器としての役割は大きく違うものである。
2CHーVRは、当初、2CH−VBの前衛サポートとして作られたのである。
遠距離からの超火力、光線兵器等を使えるBに変わり、俊敏な動きをして敵へと接近、殲滅をするR。これが荒巻の考案した『駆動兵器』のある形である。

 2CH-VGと、2CH-VRの大きな違い。
それは、伸縮性のアーム、そして、超機動装置ノトーリアスである。
開発が進んでいくにつれ、荒巻達研究チームは、ある事に気づいた。
それは、ヴィプクロメタリウムの構成細胞に、ある一定の電圧を加えると、伸縮性をもつものがある、ということであった。

 そこから、この伸縮性を何に生かすかの試行錯誤が始まった。
まず、導入予定にあがったのが、関節部分への挿入。これにより、従来の大型ロボット産業に無かった、より人間らしい関節駆動を実現。
この案は、すぐに現駆動兵器へと導入された。
その延長上にあがったのが、全方向伸縮性腕部。所謂、フレキシブルアームである。
このフレキシブルアームのテスト機体へと目が向けられたのが、ブーンの乗る2CH-VGであった。

 だがしかし。
ブーンは、全くこの機能を使いこなせていないのである。
うまく使いこなせれば、後方からの攻撃からにも素早く対応でき、なぎ払う形で多数の敵へ同時攻撃を仕掛ける事もできる。
素早さと掛け合わせることにより、何倍にもその力を膨らませることができるのである。



13: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:16:36.34 ID:bpDMJrlb0

川 ゚ -゚)(ふぅむ……)

 クーとしては、フレキシブルアームを使いこなせるように、ブーンをこの視界の少ない独特の荒地に連れて来た、というのもあった。
しかし、ここへきて数日。
ブーンの進歩が見られない事に、クーは不安を募らせている。いつ始まり、召集がかけられるかもわからない戦争にとっては、一分一秒が大事である。
今はこう平和、ではないが、安全に訓練を行える日々が続いているので、何の問題も無いが、こう不安要因が多いと……。

川 ゚ -゚)(テコ入れが必要……だな)

ゴゥン……ゴゥン……

駆動兵器の鼓動を聞きながら、ブーンは考え事をしていた。
クー少尉に、どうすればいい戦い方をすることができるのか……。

( ^ω^)(霧をうまく使うお……岩をフェイクに……)

 ブーンなりに、色々な戦闘パターンを考える。
戦争というものは、生きるのを止めた奴より、考えるのを止めた奴が早く死ぬ。
ということは、猛獣のように貪欲でありながらも、ずるく、賢く戦わなければならない。

 と、そこへドクオから通信が入った。



15: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:19:18.25 ID:bpDMJrlb0

('A`)『ブーン』
( ^ω^)「ドクオかお。どうしたんだお?」
('A`)『いや、お前がどうしてるかバルケン殿に聞いたら、この回線を使って通信しろって言われたんだ』

( ^ω^)「そうだったのかお。ブーンは今、クー少尉と実践演習してるお」
('A`)『クー少尉と実践演習か……えらく大変そうだな』
(;^ω^)「3,4回は……死にそうに……」
('A`)『……』


( ^ω^)('A`)『……』


('A`)『ま、まあその、俺もこうやって駆動兵器の修繕をしてるんだが、後3日くらいで調整が済んでそっちへ行けそうだ』
( ^ω^)「そうなのかお!俄然やる気がでてきたお!!」

 そして、少しの時間であるが、友との久しく落ち着いた会話を楽しんだ。
どのような演習をしているか。駆動兵器の構成は現代兵器とは比べ物にならないくらい複雑である、など、たわいない話の中にも、物騒な内容がちらほらその姿を覗かせていた。

('A`)『で、今戦っている場所が、その霧の多い荒地ってことか』
( ^ω^)「そうなんだお……。いつも、駆動音にごまかされてクー少尉の攻撃をかわせないんだお」



16: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:20:56.25 ID:bpDMJrlb0
 
 ――どこから、どこから攻撃してきてるんだお……?
ブーンの駆動兵器を取り囲むように、加速音が聞こえてくる。
車輪が出している音、なのであろうか。四方を塞がれたような感覚に襲われる。

(;^ω^)「どこだお……どこだお……」

 V-Rifle1を構え、キョロキョロとした動きを見せる2CH-VG。
それをあざ笑うかのように……いや、試すかのように、その駆動音は距離を縮めてくる。
レーダーを見るも、向こうの索敵妨害か、点が無数に存在し、判別できない。

 ブーンの焦りが、体にナイフが刺さり、にじみでる血のごとく沸いて出てくる。
と、その瞬間、霧が晴れたかのように目の前に火花と光が散った。

(; ω )「ぐぅううっ!!!」

 2CH-VGが吹き飛んだ。
加速のついたクーの操る2CH-VRによる、強烈なタックル。
吹き飛ばされたVGは茶色の肌をした岩に叩きつけられた。めり込んだせいか、機体が言うことを聞かない。

(;^ω^)「……くそっ!」

三つのメインカメラを持つVRが、VGを視界に捕らえる。
独立したようにサーチするそれは、まさにアンラ・マンユのよう。神話に現れる脅威の力。敵を逃がさぬ、揺ぎ無い心の表れ。



17: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:22:30.12 ID:bpDMJrlb0

川 ゚ -゚)『こんな調子じゃ、ラウンジにすぐやられてしまう……ぞ!!』

 三つ目の残光が、美しく靡く。
ブーンの操るVG目掛け、右腕の鉤爪を振りかざす。

川 ゚ -゚)『……ふんっ!!!』

地面にめり込んでいるVGの腰装甲板に、鉤爪を滑り込ませ、そのまま引っ張り、えぐり飛ばした。
バキバキと音を立て、VGは瓦礫と共に地面へと放り出される。

(; ω )「……はっ……はっ……」

――腰装甲、剥離ニヨリ耐久値低下。バランサー安定値、3%低下。

 心無い声で、CPUが声を発する。
聞こえているのか、もう聞こえていない、一人の世界にいるのか――。
毎回、このような事が続く。

 ライフルも、もうどこかへ落としてしまった。
霧が濃くて、視認することができない。次は、次の攻撃は、どのようにしたらかわせるのだろうか……。

( ^ω^)「ま……守ってちゃ駄目だお……。攻めなきゃいけないお……!!!」



19: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:24:06.36 ID:bpDMJrlb0
 
 体をひねらせるように、勢い良く体勢を立て直すVG。
土煙をあげ、眼光を鋭く光らせる。

( ^ω^)「フォルテセスタス!展開だお!!」

――了解。両腕部、フォルテセスタス展開。

 バシュッ、という音をあげ、VGの両腕に、扇状の少し多きく、光粒子を薄くコーティングしたメリケンサックのような武器が現れる。
それを強く握り、クーの方を向かい構えた。

(;^ω^)「VGは、VRと同じ格闘戦を主とした駆動兵器……。向こうができて、こっちができない事なんてないんだお!!」






('A`)『で、その後は一方的に格闘戦を展開されて、沈められた、ってわけか』
(;^ω^)「な、なんでわかったんだお」
('A`)『お前なぁ……。クー少尉と比べて、何が〔向こうができて、こっちができない事なんてない!〕だよ……』

 ドクオの言うことは、至極まともな事で、実戦経験の違いが大きくでているのに、その答えは愚かだ。ということであった。
そして、もうひとつ。



20: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:25:41.55 ID:bpDMJrlb0

('A`)『聞いてる限りじゃ、VGだけの機能も使っていないみたいだな』
( ^ω^)「フレキシブルアーム……かお?」
('A`)『そう。向こうが索敵かく乱してくる、そして、徐々に距離を詰めてくるんだから……』



(;^ω^)「な……なるほどだお。そんなことも思いつかないブーンは、駆動兵器乗り失格だお」
('A`)『そんな事はないだろ。俺も実践演習みたいに、実際に動かす身になれば思いつかねぇよ』
( ^ω^)「そ、そうなのかお……」

 すると、ドクオの後ろの方から、声が聞こえた。

『ドクオさん!バルケン中尉が探してますよー?』
('A`)『は……はい!すぐ行きます!……ってことだ。じゃあ、もう少しでそっち行けるから、死んだりするんじゃねえぞ!』

 そう言って、ドクオの回線は切れた。
ブーンは、ドクオの言っていた、索敵かく乱、視界の欠如の回避方法、反撃方法。

 よりも、後ろの女性の声が気になって仕方が無かった……。

( ;ω;)(ちくしょう……!!!ちくしょぉぉぉぉぉ!!!!)

 声にならない声は、駆動兵器の中でこだまする。
その空しい叫びとは別に、クーとの『本気の練習』への時間が、刻一刻と迫っていった。
湿気の多く、霧が視界を奪うこの独特な気候を持つ荒地で、クーとの一戦が、また始まる――。


( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第8話「感覚を失った森」 完



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