( ^ω^)は駆動兵器を操るようです

27: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:37:23.87 ID:bpDMJrlb0




( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第9話





28: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:39:05.61 ID:bpDMJrlb0
 走れ…走れ…走れ!!!
ブーストを展開しながら、必死に霧の中を、どこまでも駆ける。

(;^ω^)「こうやって……相手との距離をとりつつ、最善の戦い方を考えるんだお……!!」

 この荒地は、非常に広くできており、どこまでが作戦範囲内かは、ブーンはおろか、クーさえも定かではなかった。
なので、気にせずVGのブーストを展開させることができる。

川;゚ -゚)「むぅ……。どこまで行くのだ……」

 トリガーを握り、クーもブーストを展開させる。やはり、移動が得意なVGより、機動面は劣っているのか、少しずつだが、距離をあけられていく。
そこで、クーはひとつの事を思いついた。

川 ゚ -゚)「こう直線的に逃げられると、これを使わずにはいられんだろう」

 腰に備えつけておいた、バズーカを構える。
パンツァードファウストという名前のそのバズーカも、荒巻による、武器への執着。
脇に抱えるような形のその細身のシルエットと、弾頭をそのまま本体にくっ付けたパンツァードファウストは、細身の駆動兵器用に開発された、重兵器である。

 ただ、戦争ではないので、弾頭の中身は、爆薬に代わり、電磁波爆弾が挿入されている。
炸裂すれば、その周囲の磁場が歪み、レーダーが効かなくなる、といったものだ。
もちろん、普通の爆薬以下ではあるが、ダメージはある。



29: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:41:01.10 ID:bpDMJrlb0
川L○-゚)「さあ……いくぞ……」

( ^ω^)「……?少し距離が開いてきたお……?」

 ブーンが疑問に思っていると、CPUの声が響いた。

――ロックサレテイマス。ロックサレテイマス。

(;^ω^)「な、なんだってー!!!」
川L○-゚)『ブーン。戦闘における直線的な動きは良くない。コレを機に胸に深く刻んでおくといい』
(;^ω^)「ど、どういう事ですかお……!!?」

 ブーンはたまらず後ろを振り返る。
が、やはり霧でどうにも見えない。レーダーも、クーの出すかく乱で場所が特定できない。
こうなると、ブーンにできるのは、いつ飛んできてもかわせる瞬発力を見せる事だ。

(;^ω^)「み、見えないお……!!でも……よ、よけてやるお……!!」

川L○-゚)「さあ、行くぞ……」

 なめらかに空中へとジャンプする。
ブーンを捕らえきった完璧のタイミングで、パンツァードファウストのトリガーを引いた。

(;^ω^)「……!!このかく乱のせいで弾が4つにも見えるお!!」

 ブーンのレーダーで見えている電磁波爆弾は、ブーン前面180度に4つ。
どれもバラバラの軌道を描いているように映っている。

(;^ω^)(勘なんかで、コレを回避しても何の力にもならないお……!!考えるんだお……!!考えるんだお……!!)



31: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:42:29.49 ID:bpDMJrlb0

――着弾マデ、6秒……5秒……。
心無くカウントするCPU。

 と、焦るブーンの頭に、先程のドクオとの会話が蘇る。

〜〜〜〜〜〜〜

('A`)『聞いてる限りじゃ、VGだけの機能も使っていないみたいだな』
( ^ω^)「フレキシブルアーム……かお?」
('A`)『そう。向こうが索敵かく乱してくる、そして、徐々に距離を詰めてくるんだから……』


('A`)『無茶苦茶でもいいから、フレキシブルアームを振り回せばいいんじゃないか?』
(;^ω^)「無茶苦茶……かお?」

('A`)『そうだ。距離を縮めてくるんだから、そのフレキシブルアームが届く距離に入った途端に、武器を何か展開して、ぶち当ててやればいい。
    決まった軌道、だから、ブーンへと向かってくる直前は、いつもブーン目掛け真っ直ぐ飛んでくるんだよ。そこを、狙ってやればいい』


(;^ω^)「な……なるほどだお。そんなことも思いつかないブーンは、駆動兵器乗り失格だお」


〜〜〜〜〜〜

 ということは、弾が4つ来ていたとしても、炸裂する直前は、たとえ視認できなくても、フレキシブルアームを鞭の様に撓らせて180度全て攻撃してやればいい。
できるだけ多くの領域に、腕を行き届かせれば――!!



33: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:43:43.05 ID:bpDMJrlb0

(;^ω^)「こうなったら……行くしかないお!!!」

金具が外れるような音が、いくつも響き、ブーンの操るVGの腕が、まるで、人間の肩の関節が抜けたかのようになった。
ダラリと地面に垂れたその腕を、ブーンは振り回す。

 そして、着弾時間。
VGのフレキシブルアームは、見事パンツァーファウストを捕らえ、破壊した。
しかし、直撃を避けたというも、強烈な電磁波と光が、ブーンを襲った。

(;^ω^)「うおっ……!まぶしいお……!」
 
そこへ、クーからの通信が入った。

川 ゚ -゚)『ブーン。フレキシブルアームを使えるようになったのか』

(;^ω^)「は、はい!!ドクオからの助言を受けて使えるようになったんですお……」
川 ゚ -゚)『ふむ。それはいい事だ。では、こっちから仕掛けるぞ!!』

 パンツァーファウストに気をとられ過ぎていた。
霧があっても視認できるほど、クーはこちらへと接近していた。



34: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:44:39.62 ID:bpDMJrlb0
川 ゚ -゚)『赤色の牙を屈服させてみろ!ブーン!!』

 体勢を低く持ってくる2CH-VR。今にも飛び掛ってきそうな状態に、少し距離をあけようと、ブーンは後ろへと飛んだ。

(;^ω^)「もう……負けませんお!!!」

 ピッタリとくっつくように、クーも追いかけ飛んだ。

川 ゚ -゚)『口だけでは、兵士は務まらん!!』

 大きく両鉤爪を振りかぶり、ブーンへと振りかざした。
それを、ブーンはブーストの加速力を付けた、左脚部で弾き飛ばす。
体勢を崩したクーは、地面へと叩きつけられた。

川;゚ -゚)「……っ!!」

 ノトーリアスを展開したブーンは、大きく上昇する。

(;^ω^)「ぐぐっ……!!ふ、フォルテセスタス展開!急ぐお!!!」

――了解。両腕部、フォルテセスタス展開。

 この、フォルテセスタス。通常のナックルダスター、メリケンサックと違い、大振りの武器になっている。
普通は、小型サイズで、素早い攻撃を仕掛けることができるのが、ナックルダスター、メリケンサックなのであるが、このフォルテセスタスは『強勢』というForteが付いているように、破壊力、重量を重視されている。
相手を殴るのではなく、ほとんど、相手に叩き付けるというイメージの方が正しい。



35: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:46:00.72 ID:bpDMJrlb0
 
 そこで、安直ながらブーンは考えた。
叩き付けるなら、もっと勢いをつけてやればいい、と。

(;^ω^)「CPU!!フォルテセスタス出力最大!!!」

――了解。フォルテセスタス、出力最大。

耳鳴りがする程の強烈な電子音と、細かい振動と共に、フォルテセスタスのビームコーティングが激しく光を放つ。
そして、大きくVGは仰け反る。限界まで腰を反らすと、バチン、バチン、と、フレキシブルアームを展開させた。

川 ゚ -゚)「ふん。そんな大振りな攻撃、私には当たらないぞ……?」

 VRの体勢を立て直そうとするが、機体が言うことを聞かない。

川;゚ -゚)「……?ど、どうかしたのか?」

 トリガーを引くが、腕と脚が動かない。どうなっている?
――少し、間が空いてから、どういう状況なのか、クーは理解した。
罠にハメられた。
この私が……。

川;゚ -゚)「……くそっ……!!」

 そう。
ブーンは、巧妙、という訳ではないが、罠を仕掛けていた。
その罠の仕組みは、こうだ。



36: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:47:46.85 ID:bpDMJrlb0

 ブーンは、クーとの実践演習の前に、あるポイントに、フライキャッチャーという名前の、電磁トラバサミを仕掛けていた。
元々は、ν帝国が開発した、戦車用の電磁トラバサミである。
元々、トラバサミというのは、狩猟用に使用される罠の一種で、動物の足に喰らいつき、逃げようとすると、さらに脚に食い込み、逃げられなくなる、といったものだ。
そのトラバサミを、軍事用に転換、開発したものが、このフライキャッチャーである。
このフライキャッチャーは、敵の進行方向上に仕掛けて、センサーに触れると可動する。
戦車などの、大型兵器のキャタピラの本体を挟み込み、動けなくした上で、歩兵に突撃させる足がかりとしたものであった。

 そこに、ブーンは目をつけた。
ある意味、戦車と同様に駆動兵器が引っかかるか、大きな賭けであったが、このフォルテセスタスの攻撃法を考案した以上、これ以外、ブーンには思い浮かばなかった。

 そして、実践演習前に罠を仕掛ければ、後はそのポイントまでクーをおびき寄せればよかった。
そのまま地面に落ちたのが功を奏したか、両腕、左足を巻き込んで引っ掛けることができたようだ。


川;゚ -゚)「……まずいな」


( ^ω^)「クー少尉!!いきますお!!」

 強烈な反動と共に、地面にいるVRへと、フォルテセスタスが振り下ろされた。
フレキシブルアームの各腕関節に付いているミニブーストが、より加速を促す。



37: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:50:43.29 ID:bpDMJrlb0

 轟音と共に、フォルテセスタスが、VRの両腕を砕いた。
両腕だけでは留まらず、その下にある荒地の地面にも大きく、深い傷を入れる。
瓦礫と共に、灰色の煙を吐き、VRはその場に沈んだ。

 地面へと着地したVG。
すぐにVRを瓦礫から出し、ブーンはクーへと通信した。

(;^ω^)「クー少尉!!これほど威力が出るとは思っていませんでしたお……」
川;゚ -゚)『いや、これでいいんだブーン。まあ、死ぬかとは思ったよ』
(;^ω^)「す、すみませんでしたお……」

川;゚ -゚)『あ、謝らなくてもいいんだが……』

 バチバチと音を立てている両腕部分を気にせず、VRは立ち上がる。
両腕が、綺麗に千切れるほど、その威力はすさまじいものであった。

叩き潰すという説明では無く、何か大きな力で引きちぎったような印象。
クーは、自分の駆動兵器の両腕を吹き飛ばされたことよりも、ブーンの成長を喜んでいた。



38: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 17:52:01.74 ID:bpDMJrlb0

川 ゚ -゚)『ブーン』
( ^ω^)「は、はいですお!!」



川 ゚ -゚)『君は、私を負かしたのだ。これからは、胸を張ってVIPの駆動兵器乗りと、自分の事を冠すればいい』



 どこか、うるっときた。
戦争をして、敵を殺して褒められたことはある。
でも、自分が強くなって、褒めてもらったことは、これが初めてだ。

( ^ω^)「ありがとうございますお!!!」
川 ゚ -゚)『うむ。では、基地へと戻ろう。こうあっさり負かされた事を報告すれば、バルケン殿に叱られるかもしれないな』

 少しクーが微笑み、今日の実践演習は終了した。
次回は、クーのVRが修繕されるまでは、無いようだ。



40: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 18:02:31.38 ID:bpDMJrlb0
そして、ブーンの兵士としての素質は、一人だけにより開花しつつあるわけではないものの、着実に、着実に、育っていった。



('A`)「ふむふむ……。じゃあ、この駆動部分への電極は……ということですね?」
( ,'3 )「そうだ。中々ドクオは筋がいいな」

('A`)「あ、ありがとうございます!!」
( ,'3 )「もうすぐで、君の駆動兵器は全快する。それからはもっと頑張ってもらわないといけない。頼んだぞ」

 ポン、と肩を叩くバルケン。


('A`)「イエス!サあっ!!!」

 バッと立ち上がり敬礼をしようとしたが、上にある足場のパイプに頭をぶつけて、そのまま倒れてしまった。

( A )「……」

( ,'3 )「……」



41: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 18:03:23.12 ID:bpDMJrlb0

 そのころ、ν帝国では、自国には無い兵器、駆動兵器についての会議が行われていた。
ν帝国にとっては、VIPとラウンジ、双方の持つ駆動兵器が、非常に邪魔である。
駆動兵器を抜いた戦力では、ν帝国が大きく差をつけているのに、駆動兵器を入れて計算しなおすと、ν帝国が圧倒的に不利になってしまうのだ。

(・(エ)・)「このままでは、駆動兵器とかいう驚異的戦力で打ち負かされてしまう、そうは思わんかね?」

( ◎□◎)「それはそうでしょう。あの荒巻博士の一大発明。このまま野放しにはしちゃおれませんよ」
 ν帝国幹部。モルモロ。

∴∵(・)∴∵(・)∵∴「……でハ……どうスるのダ……?」
 ν帝国軍1部隊長、タナシン。

(・(エ)・)「聞くところによると、コピーの一人がVIPにて駆動兵器のデータを入手し損ねたようではないか」
( ◎□◎)「ニダーコピーの事ですか?まあアレは捨て駒ですし、なんら問題は無いかと……」

 会議の内容が、煮詰まって進行しない状態に陥った、その時。

『僕が、作りましょうか?駆動兵器――』

(・(エ)・)「……!お前は……」
∴∵(・)∴∵(・)∵∴「……」
( ◎□◎)「おお!お前が重い腰を上げるとは……」


 大統領室のドアを開き、一人立っている男。
ボサボサの髪に、汚らしい白衣を着た、現ν帝国の博士長。



42: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 18:04:07.17 ID:bpDMJrlb0

(-_-)「荒巻博士には、負けず劣らずの物……いや、それよりすばらしい物を作ってさしあげますよ……ふふふ」
 
 癖であろうか、ニヤニヤと厭らしく笑う男だ。

(・(エ)・)「ふん。珍しく頼もしい事を言うではないか。では、ヒッキー。お前に特別資金を調達する。駆動兵器を作れ」

(-_-)「……荒巻博士……。負けはしませんよ、負けは……」
(・(エ)・)「では、更なる情報収集を元に、ニダーコピーをラウンジ、ニーソク、VIPへと送っておけ」

( ◎□◎)「了解」

(-_-)「もう『元』はあるんだから……ふふふ」



 不穏な流れが、ν帝国より伝わる。
謎の博士、ヒッキー。帝国の参謀、モルモロ。帝国軍長、謎の男タナシン。
悪の因子が、胎動を始めた。



( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第9話「Booby trap」 完



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