( ^ω^)は駆動兵器を操るようです

48: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 18:35:21.03 ID:bpDMJrlb0





( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第10話






49: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 18:36:11.15 ID:bpDMJrlb0

 どうすれば、この軍を乗っ取れるんだろう。
僕は、ずっと、ずっと考えていたんだ。そう、本当にずっとだよ。
砂を噛むようなゲリラ戦をしていたときも、食堂でみんなとご飯を食べているときも、ν帝国のスパイを、僕の大事な友達を厄介事に巻き込んだあのモララーの糞野郎を、ぶっ殺してやった時も――。
頭がおかしくなるんじゃないかな、ってくらい考えてる。

(´・ω・`)「……はい。自分が部屋へと銃声を聞いて戻った際にはもう……」

 いつまでも、何でこんな余慶なおしゃべりをさせられているだろう?
早く部屋へ帰らせてよ。僕は、もっと色んな事を画策しないといけないんだ……。

(´・ω・`)「はい……はい。では、失礼します」

 ……疲れたなぁ。
今日は、寝る時くらいは考えずに眠ろう。



おやすみなさい。お父さん。



50: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 18:37:26.15 ID:bpDMJrlb0
 それから何日か経って、やけに珍しく平和な昼下がり。

(´・ω・`)「何もする事がない一日も、いいもんだね」
( ゚∀゚)「そうだな。こんな日は、部屋に篭ってアニメでも見ることにするわ」

( ゚∋゚)「アニメもいいが、鍛錬も欠かすなよ」

( ゚∀゚)「わーかってるって!」

 あの国境会議から、僕たちは大きく変わってしまった。
ジョルジュは、会議の中からミルナ国民代表を救い出した功績で、一等兵へと昇格。

 ブーンとドクオは、駆動兵器隊、といったろうか、そこへと入隊して、あまり顔を合わせられなくなった。
クックルはいつもと何にも変わらないけど。

 ジョルジュがいそいそと宿舎へと戻っていくと、僕とクックルの二人きりになった。

(´・ω・`)「まあ、最近はいつも僕ら二人だよね」
( ゚∋゚)「うむ。まあ言えどもジョルジュは立場が上、少しは作戦内容の割り振りも違ってくるだろう」

 ショボンとクックルは、二人とも大人しい感じが功を奏したか、気が合うようだ。
お互い、少し人間関係に間をあけるタイプ。この距離感が、友人として付き合うのには心地いいのだろう。



51: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 18:38:08.46 ID:bpDMJrlb0

( ゚∋゚)「なんだ。ショボン。最近ずっと考え事でもしているようだが?」
(´・ω・`)「うん。まあね。色々ちょっとあってさ」

( ゚∋゚)「そうか。何かあったらまた言ってくれ」
(´・ω・`)「……うん」


 淡々とした会話が続く。
そこで、ショボンはふと思った。
クックルに、僕の考えたことを言おうかな、と。

(´・ω・`)「あのさ」

( ゚∋゚)「……なんだ?」

(´・ω・`)「今晩、ちょっと用があるから、少し僕の部屋にきてくれないかな?」



(;゚∋゚)「いや、あ……へ、部屋か?」
(;´・ω・`)「そ、そういう意味じゃないから安心してよ」

(;゚∋゚)「そ、そうか。では伺うよ」
(´・ω・`)「……ありがとう」



53: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 18:39:02.31 ID:bpDMJrlb0

 少しアレな感じで後ずさりをされたショボンであったが、クックルとの約束を取り付けた。
打ち明けても、クックルはショボンをいつものように見ているのだろうか。
打ち明けても、クックルはショボンを軽蔑しないであろうか。
いや、軽蔑などではない。とどのつまり、これは国家反逆の策略。軍内部に渦巻く黒い流れのひとつなのだ。

(´・ω・`)「……」

 ショボンが、宿舎に向かう途中には、広間に出るのだが、そこに置いてあるテレビから、あるニュースが流れてきた。そのニュースを偶然聞いたショボンは、非常に驚いた。
ニュースの内容はこうだ。
ミルナ国民代表が、責任を取り、自ら国民代表を辞任。野球チーム『アンカーズ』を脱退。軍への入隊が決定。

 広間にいる兵士たちも、驚きを隠せていなかった。
戦争を呼び起こすことになってしまった人物が、この軍に入ってくる。
これは、普通ではない。
戦争の原因となった人間が、入隊するなど、聞いたことが無かった。そんなもの、目の敵にされて、兵士たちにきつい仕打ちを受けるに決まっているではないか。

『なんでいまさらミルナ国民代表が?』
  『戦争を起こした引き金って認めてるようなもんじゃねえか……くそっ』
                      『今更どのツラさげてくるってんだ?』
  『しかし、責任を取って入隊、ってのは男らしいとは思うんだがな……』

 予想したとおり、賛否両論がすぐに巻き起こった。
ショボンとしては、このミルナの行動は、賞賛すべきものであった。今までのように、軍に責任を与えるだけ与えて、そのまま雲隠れするような国民代表は、何人もいた。
それだからこそ、戦争を引き起こしたとされる人物が、責任を取るということを褒めているのだ。



57: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 18:42:18.50 ID:bpDMJrlb0
(´・ω・`)「ミルナ元国民代表……か」

 ショボンは、不敵な笑みを浮かべながら宿舎へと戻った。
そして、夜になり、夕食を済ませたクックルが、ショボンの部屋へとやってきた。

(´・ω・`)「やあ」
( ゚∋゚)「来たぞ。それで、話とは一体なんだ?」

 椅子に腰掛け、寛いだ体勢のショボンが、クックルも椅子に座るように促した。
それを受けて、クックルも、ショボンと向かい合う形で椅子へと腰をかける。

( ゚∋゚)「ああ。すまんな」
(´・ω・`)「いや、いいんだ」

さあ、打ち明けよう。僕の考えを……。
もう、一人で抱え込むのも、いい加減疲れたんだ。


(´・ω・`)「じゃあ、本題なんだけど……、僕は……」
( ゚∋゚)「この軍を変えようとしている、又は、乗っ取ろうとしている、違うか?」
(;´・ω・`)「!!!!」

 クックルは、ショボンの言うことをあっさりと言い当てた。
なぜ、なぜわかったのだろうか。ショボンが、焦り、疑問に思っていると、続けてクックルが話し出した。

( ゚∋゚)「……そうなんだな。ショボン」
(;´・ω・`)「う……、いや……」
( ゚∋゚)「はっきりとした返事が欲しい。そうなんだな?」
(;´・ω・`)「あ……ああ、そうさ。後者だよ」



58: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 18:43:40.19 ID:bpDMJrlb0

 あっさりとした問答が続く。
いや、淡々と話をしているのは、クックルだけだ。
そのクックルの落ち着きが、逆にショボンへと焦りを与えていた。

( ゚∋゚)「やはり、俺の見込んだ通り、と言っていいだろうか……」
(´・ω・`)「……?」

( ゚∋゚)「ショボンも俺に打ち明けてくれたんだ。俺もショボンに打ち明けないといけない」
(;´・ω・`)「な、なにを……?」

( ゚∋゚)「聞いて、くれるな……?」



 クックルとのこの会話。
ショボンには、とても大きく、ショボンが考えるものよりも、とても邪なものであった。



59: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 18:44:25.94 ID:bpDMJrlb0

 少し時間軸を戻し、VIP南部指令基地演習棟。
ドクオのVBが治った事と、クーのVRが修繕されるまでの休暇が重なってか、久しぶりにゆっくりしている二人がいた。

( ^ω^)「この演習棟にも、こんな大きな展望台があったなんてしらなかったお!」
('A`)「展望台じゃなくて、これは管制塔だろ?邪魔になったら怒られるから早く戻るぞ」

 二人は、半日あいたので、この演習棟を周って見ることにした。
といっても、他の兵士たちはみんな作業中だ。邪魔をしちゃいけない。

( ^ω^)「VBの調子はどうだお?」
('A`)「ああ。修理は終わったぜ。俺の不手際で潰したようなもんだから、修理してくれる人たちには頭があがんねぇや」

( ^ω^)「修理してくれなくても、ブーンたちは二等兵、誰にも頭なんかあがんないお!」
('A`)「まあな」


 二人たわいない話をするも、どこか心の不安が見え隠れしていた。
精神的に弱いのが、この二人の似ている点、というのであろうか……。
兵士としては、まだメンタル面で十分では無い。
しかし、バルケン達の目には、それを補う何かが、しっかりと映りこんでいた。



60: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 18:46:08.04 ID:bpDMJrlb0

('A`)「――なあ、ブーン」
( ^ω^)「なんだお?」

('A`)「戦争って、何なんだ?」
( ^ω^)「……?」

ベンチに腰をかけながら、ドクオはブーンへと問いかける。
最近ずっと頭から離れなかった、一つの疑問を問いかける。

( ^ω^)「……戦争、かお」
('A`)「ずっと、頭からコレが離れねぇんだ」


( ^ω^)「きっと……戦争は、回避できない人間の性(さが)だお」


 ドクオは意外に感じた。
ブーンから、こうもすぐに自分の頭を納得させてしまう答えが出てくるなんて……。

( ^ω^)「昔から、人間は欲しい物は奪ってきたお。獲物とか、縄張り。今となっては国の領土だお。
        でも、人は奪われるのを嫌うお。奪われると、仕返しをしたくなるお。歴史は、ずっとずっとそれの繰り返しなんだお」

( ^ω^)「ブーンは、そう思ってるお」


 また、この真っ直ぐした目をする。
俺は、この目に弱いんだな。力強い、このブーンの眼差しに憧れを抱いている。



61: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 18:46:53.72 ID:bpDMJrlb0

('A`)「はは……。ブーンらしくねぇけど、いい答えだな」
( ^ω^)「……実は、トーチャンからの受け売りなんだお」


('A`)「……褒めて損したよ」

 バッと立ち上がるドクオ。
背伸びをして、一つ大きなため息をついた。


('A`)「……よしっ!じゃあ、戻ろうぜ!!」
( ^ω^)「そうするお!」


 そうして、二人の穏やかな休息が終わりを告げた。
そこへ待ち受けているのは、まさに風雲急。駆動兵器と駆動兵器の魂のぶつかり合い。
国と国との、醜い争い。
人と人との、心の交差、入れ違い。



62: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/15(金) 18:47:42.38 ID:bpDMJrlb0
 何が、人をそうさせるのか。

川;゚ -゚)「……もっと、もっと力を……」

黒髪を、心と共に束ねた女は、さらに強靭な力を欲し――。

(・(エ)・)「ふん……。VIP?ニーソク?ラウンジ?全て手中に収めてやろう」

影を長く持つ者は、大陸全土を手にかけることを企み微笑む。

从 ゚∀从「あの男……。まだ生きてんのかな……」

刃のように鋭い心を持つ女は、良敵への思いを胸に秘め――。

ミ,,゚Д゚彡「……もう5年、か……」

鉄の心を持つ男は、その心の穴をつつく。


 今、各々の思いという一陣の風が吹き、大きな竜巻へとその姿を昇華させた。
そして、残酷にも二人の背中へとその風が突き刺さる。


 二人の兵士の目には、何が見えているのか、何を見据えているのか――。
駆動兵器の鼓動が、少し大きく聞こえた。


( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第10話 「センソウって、なんですか?」 完



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