( ^ω^)は駆動兵器を操るようです

59: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 21:20:52.67 ID:EagyJmYX0


( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第14話



60: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 21:21:38.76 ID:EagyJmYX0

 正直、驚いた。
僕と同じ志をもつ人間をいるだなんて。
いや、これはいいチャンス。クックルもこちらへと歩み寄ってくれているんだ。拒む意味などどこにもない。

( ゚∋゚)「聞いて、くれるな……?」
( ´・ω・`)「……うん」

 そう言って、クックルが話し出したのは、クックルの過去の生い立ち。僕達には、語ることが無かった、暗い過去。

( ゚∋゚)「俺は、研究所で生まれた、所謂、試験管ベイビーという奴だ」

 話には聞いていた。
ν帝国時代に行われていた人体実験のことを。
元々のVIPの独立にも、このような非人道的な実験、殺戮が行われていた、ということも含まれている。
一切に廃止されたという事はニュースでも報道されていたのだが、実際にその、実験で生まれた人間が目の前にいるなんて、俄かにも想像しがたいことであった。

(;´・ω・`)「う、噂には聞いていたよ。今も何人か"生存"している、ってことはね」
( ゚∋゚)「そう。その何人かの中の一人が、俺だ」

 人体実験、所謂、改造人間作りの成功率は、およそ0.25%と言われている。
成功したとしても、すぐに死んでしまうというケースが多く、今も生存しているといわれている人間はごくわずか。
そして、軍によって隔離されていたり、身柄を隠蔽されていたり、というケースが多い。



61: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 21:22:33.08 ID:EagyJmYX0

( ゚∋゚)「もう一人、ここには軍人として所属している奴がいるようだが……まあそれはおいておこう」
(´・ω・`)「そ、それで、その生い立ちと、このVIPへの反逆へ至る経緯を教えてくれないかな……?」

( ゚∋゚)「ショボンは、この世界に生まれてきてよかったと思った事はあるか?」

(´・ω・`)「……。何回かは、思ったこと、あるよ」
( ゚∋゚)「俺には、それが一度も無い」

 望まれて、生まれた命。
親の愛情の塊として生まれた、命。
それこそ、人間の本能として、親の期待に応じようと、奮闘する。
生きる意義が生まれるのである。

 だが、俺は違う。そう、クックルは言う。
親の愛情を知らない人間は、どうすれば、生きる意義を見つけることができる?
意義が無ければ、生きていることへの喜びを見出せない。理由が無いと、人は行動を起こせない。

( ゚∋゚)「そこで、俺は怒りの末、思いついたのだ」


( ゚∋゚)「俺の人生を作った奴に、地獄を味合わせてやろう、とな」



63: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 21:24:29.42 ID:EagyJmYX0

 端的に言う、復讐。
どう厳正な判断によって作られた軍であっても、上層部がν時代に軍と関わりが無くとも、なんらかの功績があった人間。
独自にクックルが調べたところによると、あの研究所の人間も多数この軍に所属しているのだ。

 その人間へ、復讐をする。

( ゚∋゚)「今は、まだ夢物語と言われてもしょうがない。だが、俺は着実に実現へと土壌を固めている」

 ショボンにとっては、まさに夢のような計画。
国を乗っ取りたい、ただその一心なのである。

(´・ω・`)「……僕も、この国が欲しい」
( ゚∋゚)「俺は、復讐を遂げる為に、この国が欲しい」

 お互い、のぞむべきモノが一致する。
答えは、二人の微笑みに出ていた。

(´・ω・`)「何か、いい案はあるの?」
( ゚∋゚)「ああ。仲間がいる。何回か話はでているが、情報部のワカッテマス。あいつは俺の理解者だ」
(´・ω・`)「……わかった。楽しみにするよ」

  そして、ブーンやドクオ、そしてクーが、駆動兵器に搭乗し、命を擦切らせるような戦いを繰り広げている時も、その裏でゆっくりではあるが、ショボンとクックルの計画は進んでいた。ショボンの部屋で、ワカッテマスを含めて策略を練る。

( ゚∋゚)「まず、俺達ができる最短のルート。これを話しておこうと思う」
( <●><●>)「自分が説明するんです。今後、大きな戦闘が起きる予定が、三つあるんです」
(´・ω・`)「……予定?」

( <●><●>)「そうです。予定、なんです。その大きな戦闘の一つ目、それが今度のν帝国建国記念式典です」



65: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 21:27:32.60 ID:EagyJmYX0
 ワカッテマスの説明によると、VIP内部では、ν帝国、ラウンジに合わせて、大規模な空爆を行う模様だという。
一般人を巻き込むのには躊躇いがあるが、もう向こうが核の所持を認めている以上、こっちもなりふり構ってはいられない。
というのが、VIPの建前だという。
VIPとしては、核云々に限らず、早急に戦争を終わらせたいというのがある。
なので、式典に合わせ空爆を行い、その勢いで、帝国の重要人物をまとめて葬り去ろう、ということである。

(´・ω・`)「……思ったより、腐ってきているね」

( ゚∋゚)「ふん……。そんなこと、とうにわかりきっていたことだ。この戦争、どこにも正義などない」

( <●><●>)「その空爆の後には、駆動兵器による強襲が行われるんです。
           VIPの上層部としては、その大規模空爆を皮切りに、帝国の首都まで占拠したい、というのがあるんです」

 このワカッテマスという男、どこまで知っているのだろうか。
情報部でも、それほど地位があるわけでもなく、いってみれば僕達二等兵のようなものである。

 ショボンが、そう頭の中で想像を膨らませていると、大きな目をこちらへ向けて、ワカッテマスがある写真を見せてきた。
それには、国境会議時のVRとラウンジ駆動兵器の戦闘が写っていた。

( <●><●>)「おそらく、この駆動兵器も式典に来るんです。ラウンジとνが手を組む可能性は、こちらからしても非常に確立の高いものなんです。」



66: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 21:29:07.24 ID:EagyJmYX0

(´・ω・`)「それで、僕達にできることは?」

( ゚∋゚)「ラウンジの駆動兵器を、奪還する」

(;´・ω・`)「ど、どうやって……!?」

( <●><●>)「奪還方法は、もうわかってます。私達三人でも、できるくらい簡単な事なんです」

( ゚∋゚)「まあ、詳細はまた次の機会にでも話そう。私達は間違いなくその戦場へと駆り出される。それが、3回の内の、1回のチャンスだ」



そして、大陸に吹く心地よい風が、湿気を持った、不快な風に変わる頃。
兵士達ほぼ全員を集めた、大規模集会が行われた。
もちろん、その内容は、ν帝国建国記念式典に乗じた、大規模空爆。そして、帝都への進行である。



69: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 21:30:41.81 ID:EagyJmYX0
ミ,,゚Д゚彡「諸君。よく聞いて欲しい」

 フサギコの、熱の篭った声が、基地内に響く。兵士達は、耳を傾け、気を集中させる。
ブーンやドクオも、駆動兵器としての出動があるので、同じようにしてその場にいた。

ミ,,゚Д゚彡「諸君達は、帝国を恨んでいるか?憎んでいるか?
        私は、いつでも喉を掻っ切ってやりたいほどの憎悪が、帝国にある。
          それはなぜか。今の、ニーソクへの進行、そして『死の光』の悲劇をもう一度繰り返そうとしている愚行。
                          許せぬ悪が、目に余ってしまっている。」

 兵士達の目も、自ずと力が入り、志を高く持っている事はすぐにわかった。
ジョルジュや、ミルナも、帝国への怒りを募らせる。

( ゚д゚ )(……クマー。許しはしない……)

 硬く拳を作り、フサギコの言葉を聞き逃さないようにする。

ミ,,゚Д゚彡「我々は、元はν帝国の一国民であった。だが、今はその母国へと牙を向けている。
               我々が生まれ育った、土地を、風習を、全て焼き払おうとしているのだ。
                      だが、悔やむ事は何一つ無い。我々が、帝国を許してはいけない。
              帝国は、有無を言わさず我々を根絶やしにしてくる。そのような者達に、慈悲の心など向けてやる必要は無いのだ」



70: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/21(木) 21:31:28.43 ID:EagyJmYX0

 胸に輝く勲章の音を立て、さらに熱弁を奮う。

ミ,,゚Д゚彡「VIPこそ、今、この大陸にあるべき正義の形である。
      『死の光』を繰り返さぬよう、同胞の死を悲しまずに済むように、今、我々の腕にある勲章と、我々の肩にぶらさがっているライフルで、帝国を沈めてやるのだ!!!」

『イエス!!サー!!』

 兵士達の声が、こだまする。
各々胸に秘めた想いを、銃弾にこめるように、深く刻みこんだ。

ミ,,゚Д゚彡「作戦開始は、30時間後。厳しい作戦になるであろう。各自、悔いのないように、この30時間を楽しめ。以上!!」

 一同が敬礼すると、フサギコは大広間から姿を消した。
ν帝国建国記念作戦まで、あと30時間。
ブーン、ドクオは、何を胸に思い戦いへと急ぐのか。



( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第14話 「ワカッテマス」 完



戻る第15話