( ^ω^)は駆動兵器を操るようです
- 33: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:34:11.50 ID:MVtdHWVX0
( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第16話
- 36: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:37:49.86 ID:MVtdHWVX0
ν国立競技場。
記念すべき日に、競技場に人が集まりつつあった。
しかし、もちろんというべきか……。ν帝国大統領、クマーはそこにはいない。
ゴゥン……。
ゴゥン……。
(・(エ)・)「まあ、こういう国民の犠牲があると、VIPへの反戦体制も国民側に整うものであろう?」
从 ゚∀从「でも、あっこにいる人間、3万人くらいじゃないんですか?多分、8割は死にますよ?」
(・(エ)・)「そんなものどうにでもなる。むしろ、その3万人の被害で済んで、向こうの駆動兵器を破壊できるかどうか、の方が心配だ」
从 ゚∀从「さすがクマー殿。一歩先を考えてらっしゃる」
相も変わらずケラケラとハインリッヒが笑る。
そうこうしていると、タナシンからの通信が入った。
∴∵(・)∴∵(・)∵∴『クマーどノ、”ギガンテス”はどうすればよいのダ……?』
(・(エ)・)『湿地帯全域に到達するほどの威力が出るよう、調整しておけ』
∴∵(・)∴∵(・)∵∴『……りょウかい。喰らわナイように、逃げる事をスすめる』
(・(エ)・)『ふん……、心配いらん。”ソレ”がくるまでには、かたはつくだろう』
从 ゚∀从「クマー殿、最終チェックをそろそろしないといけませんよ」
- 37: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:39:48.76 ID:MVtdHWVX0
(・(エ)・)「うむ。オペラ、起動だ」
――了解。オペラ、ツインコネクトオールグリーン、起動ヲ開始シマス。
広いコクピット内、上部にいるクマー、下部にいるハインリッヒがトリガーを握る。
白色の眼が、赤く光り、大きな体が持ち上がる。
生の息吹を受けたその体は、指先からゆっくり、ゆっくりと確かめるように駆動しはじめる。
(・(エ)・)「ハインよ。負けは頭から消しておけ」
从 ゚∀从「当に消えてますよ、そんなもの」
各関節部から、蒸気のような煙が上がり、格納庫であろう空間を白く染めた。
白と黒でペイントされたボディに、怪しく光る赤の瞳。
殺気を放ち、まさに、猛獣のよう。
(・(エ)・)「杞憂であったか。では、このまま行くとしようか」
从 ゚∀从「了解」
(・(エ)・)『整備班!!ハッチを開け!』
格納庫のハッチが開き、対照色の悪魔が姿を表す。
長く大きい右手に、巨大な槌を持って、VIPへ悪の力の塊を振り下ろしに行く。
くれてやるのは、死、のみ。
- 38: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:41:01.17 ID:MVtdHWVX0
時を同じくして、VIP中央研究所。
駆動兵器の生みの親である、荒巻も、この戦いの行く末が気になっていた。
/ ,' 3「……クマーよ。わしの駆動兵器の技術を、どこまで使いこなせる……?」
一人、暗い部屋にライト一つ点け、設計図片手に考える荒巻。
いつ、浮かぶやもわからないアイディアを、汲み零さないように、荒巻は寝ない。
60歳に近い体になろうとも、浮かび続けるものは変わらないのだ。
/ ,' 3「ラウンジ、ν、ニーソク、VIP。どこも、同じに見えるのぅ」
『荒巻博士。迎えに参りました』
/ ,' 3「おお。待っていたぞ。さあ、スレスト湿地へ連れて行ってくれんか」
『……どうしてもですか?』
/ ,' 3「うむ。どうしても行きたいんじゃ。駆動兵器が、見たくての」
『バレたら駆動兵器から降ろされる自分の身にもなって下さいよ……全く』
/ ,' 3「すまんすまん!!だが、君の度量を測るいいチャンスとは思わんかね?そうあるチャンスではないぞ。それに、バレてもわしがちゃんと言ってやるから安心すればいい」
『……わかりました。ケガだけは気をつけて下さい』
/ ,' 3「ふん……。年老いても心と体は丈夫なもんじゃ。では、連れて行ってくれるかね?ロマネスク中尉」
( メωФ)「……了解!!」
- 40 :少しの間だけ離席します。。 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 19:42:33.91 ID:MVtdHWVX0
隻眼の男、ロマネスク。
荒巻の甥にして、VIPの駆動兵器『2CH-VP』を操る。
若くして、中央の守護の為に配属されたVPを操るのにもっとも適している、と軍内部からの声が高かった程の"天才"である。
隻眼という、大きなハンデがあるにもかかわらず、常人より瞬発力に優れており、駆動兵器に搭乗する以前の白兵戦などで、多くの武勲を挙げた。
そして、このロマネスク。
駆動兵器乗りだけではなく、駆動兵器の開発にも携わっている。
荒巻の血を少なからず継いでいるか、開発のアイディアも、戦闘におけるセンスも秀でている。まさに、非の打ち所がない男。
( メωФ)「それにしても、なぜこのような大きな戦闘の際に?」
/ ,' 3「ああ。旧友が……くるのでな」
( メωФ)「……クマー、ですか」
/ ,' 3「そうじゃ。アイツを死においやる、わしの作った駆動兵器が見たい。ただ、それだけだ」
( メωФ)「博士らしい」
会話をしながら、中央研究所格納庫へと向かう二人。
ロマネスクは上着を脱ぐ。中には、もう順応スーツを着込んであり、準備も完璧であった。
- 42: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 20:00:26.47 ID:MVtdHWVX0
/ ,' 3「……いつ見ても、吸い込まれるような色をしておる」
( メωФ)「紫、今はなき、母親の付けていた髪飾りの色です」
そう言うと、ロマネスクはパイロットへと乗り込み、ゴソゴソと何かを始めた。
( メωФ)「さあ、後ろに補助シートを取り付けました。乗り込んでください」
/ ,' 3「ああ。すまんの」
奇しくも、双方1台の駆動兵器に、2人の人間。
( メωФ)「2CH-VP起動」
――了解。2CH-VP起動。
紫煙を撒いたような、そのボディカラー。
肋骨が飛び出ているようにも見える、胴部分の爪……といっていいのだろうか。
細身のボディとは思えないような、力強さを感じる。
/ ,' 3「33番を出しなさい。きっと、気に入るだろう」
( メωФ)「33番?――CPU」
了解。ランチャーヨリ33番ヲ展開イタシマス。
格納庫の側部が開き、タンスのような壁が出てくる。
そこには、見本市のように、武器が格納されたボックスが羅列されていた。
その中の、No.33と書いてある箱が開く。
- 44: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 20:02:40.14 ID:MVtdHWVX0
( メωФ)「……ハンマー?」
/ ,' 3「少し違うの。答えは、メイス、槌矛じゃ」
中に入っていたのは、頭の部分が十字になっている、大きなメイス。
相手の頭部めがけ振り下ろし、砕く為に用いられた、金属性打撃の代表ともいえるものである。
/ ,' 3「このメイスはの、ヴィプクロメタリウムを使っておる」
( メωФ)「……なぜ武器にもヴィプクロメタリウムを?」
/ ,' 3「おもしろそうじゃろ?」
あっけらかんと答えを返す荒巻を見て、ロマネスクは逆に安心してしまった。
いつも難しいことばかり考えている叔父が、このように、好奇心のみで、子供のように武器を開発しているということに、嬉しくなってしまったのである。
( メωФ)「それで、この武器の特徴は?」
/ ,' 3「従来よりも、物質的硬度の上昇、というのもあるが、ヴィプクロメタリウムにしたことによって、駆動兵器と連動することができる」
荒巻の言う事は、駆動兵器の外部プラグに接続、搭乗者の"流れ"を充電しておく事によって、
充電をしない場合よりも、エネルギーを放出しながら敵を殴打するので、破壊力を増す事ができる、ということであった。
- 45: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/27(水) 20:06:03.20 ID:MVtdHWVX0
/ ,' 3「恐らく、相手も駆動兵器を何体かは出してくるじゃろう。
そして、向こうの駆動兵器が、ヴィプクロメタリウムを使用していた場合、容易には倒せなくなる。そのための武器じゃ」
( メωФ)「……了解しました」
/ ,' 3「うむ。それでは、全速力でスレスト湿地まで頼んだぞ」
( メωФ)「……計算によると、スレスト湿地まで、全力で飛ばして80分前後ですね」
/ ,' 3「ならば60分で行って見せい。ロマネスク、お主ならできるであろう?」
( メωФ)「もちろんです。駆動兵器の力を引き出すのは、自分なのですから」
カタパルトが、重そうな口を開き、外への道が開けた。
紫色のボディが、太陽に当たり、映える。背中のブーストに火が点り、ロマネスクと荒巻は、グッと力を入れる。
( メωФ)「では、行きますよ……!!!」
フワリと浮くように飛び出し、中空で一気に加速を始めるVP。
VGほどではないが、ブーストの反射を利用し、飛び跳ねるようにしてスレスト湿地へと飛ぶ。
クマーと荒巻。
二人は何を思い戦争へと出向いていくのか。
スレスト湿地へ、駆動兵器が集結する――。
( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第16話 『隻眼の男、ロマネスク』 完
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