( ^ω^)は駆動兵器を操るようです

87: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:46:00.86 ID:bdyvNrbq0



( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第20話



89: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:47:58.00 ID:bdyvNrbq0


(*゚∀゚)『VIPの兵士さん。これで、決めましょう?』
('A`)『……』

 ドクオの乗るVBの装甲は、もうほとんど限界に近かった。
CPUが告げる、各部損傷の報告。

庇っていた胸部以外は、使い物になるか微妙なほどの損傷であった。
だが、逃げるわけにはいかない。

('A`)「……もう少し、頑張ってくれよ、VB」

 ドクオは、左へと目をやる。

武器を収納しているボックスまで、ブースト全開で3秒といったところか……?
そして、素早く中にある兵器を手にとって離脱。あわせて10秒あればいいのだが……。

この間に、ミサイルがボックスに被弾すれば、兵器ごと爆発して、もう反撃は難しいだろう。
ボックスごと運んで、一旦距離を置いてから……いや、無理だ。
ブーストも損傷が厳しい状況。ボックスを運べるとは思えない。



90: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:48:59.83 ID:bdyvNrbq0

(*゚∀゚)『……いけぇぇっ!!!』

右腕から4発のミサイル。
不規則軌道を描き、ドクオへと襲い掛かる。
体を大きく左へと寄せ、加速。ミサイルをかわすと、そのままブーストを全開にしボックスへと飛んだ。

(*゚∀゚)『やっぱり!!!!』

すぐさま左腕を構え、ミサイルをもう4発発射。
そして、追撃しようと、ドクオの元へと駆動兵器を走らせる。

(;'A`)『おぉぉぉぉ!!!!』

 どうするどうするどうする!!!!!
このままボックスへと向かっても、兵器を回収する時間が無い……。
アイツだってそれを見越して撃ってきているはず。

……こうなったら。

(;'A`)「一か……八か!!!」

 ブーストを急反転させるドクオ。
そのままミサイルが飛んできている方向を向き、左手を翳す。
何をするかと思うと、飛んでくるミサイルの内の一発へと思い切り拳を叩き込んだ。



92: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:50:14.69 ID:bdyvNrbq0

(*゚∀゚)『!!?』

ミサイルがミサイルを爆発させ、大きい爆炎が上がる。

(*゚∀゚)『気でも狂ったのかな……?』

爆煙が消えた先にいたVBは、片手に大きなショットガンを構えていた。
左手は、肩の少し先までしか残っておらず、火花を上げ、もう動く気配は無い。
それを見たツーは、興奮した。

(*゚∀゚)『ふふ……。左手を犠牲にしてミサイルを破壊。
    煙で見えない状態にして、兵器をボックスから回収……すごいね、ほんと』

 ツーは、再びドクオと距離を取る。
相手との間合いを調べるように、じりじりと離れ、ドクオを焦らす。

ドクオの持つ武器の形状はショットガン。
ショットガンは、いわば近距離用の銃。近づかなければ、ツーの勝利はゆるぎない物であった。

(*゚∀゚)『あたしにソレをぶちかます前にミサイルで死ぬかどうか……楽しいじゃない?』
('A`)『……』

 ドクオは、VBの脇に挟むようにしてショットガンを持ち、片手で器用にリロードをする。
実弾を入れるこのV-Shot1は、弾丸にヴィプクロミニウムを使う、対駆動兵器戦の兵器である。なので、直撃さえすればほぼ一撃で決まる。
まだ、あの爆撃を受けてVBが動けるかどうか不安であったが、もうこれしか手は無い。



94: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:51:57.10 ID:bdyvNrbq0
('A`)「CPU。脚部報告」

――脚部損傷率、43%。走行、跳躍他問題無ク行エマス。

('A`)「……よし。行くか!!」

 頬を思い切り叩くドクオ。
覚悟を決めたか、ドクオはツーに向かって最短距離を一直線に走り出す。
それに反応し、ツーは後退しながら、ミサイルを、次から次へとドクオへと撃ち込んだ。

(#'A`)『おらぁぁぁぁ!!!!!』
(*゚∀゚)『死ねぇぇぇぇ!!!』

 両者叫び声にも似た大きい掛け声と共に、全力で相手を殺そうと攻撃を仕掛ける。
飛んでくるミサイルを、ショットガンで何度も撃ち落す。

徐々にツーとの距離を縮めていく。
一発でもミサイルが当たれば、ひるんでVBを一気に殲滅することができるツーも、もう引くことはやめていた。

(#゚∀゚)『いい加減にぃぃぃ!!!死ぃねえぇぇぇ!!!』
(;'A`)『もう……少し!!!』

 正面から飛んでくるミサイルを、撃って、撃って、破壊するドクオ。
しかし、一発のミサイルが、脚に直撃する。



95: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:53:24.26 ID:bdyvNrbq0

(; A )『なぁっ!!!』

脚を取られ、膝をついてしまったVBへ、ミサイルが襲い掛かる。

(*゚∀゚)『……決まり!!!今度こそ!!』

胸部の装甲が開き、カノンがまたも顔を出す。
光を集約。
その間もミサイルは撃ち続け、逃げる隙を与えない。
光が大きくなり、カノンの中へと吸い込まれていく。

(*゚∀゚)『これで……終わりぃぃぃぃぃぃ!!!!』

至近距離からの超射撃。
先程より大きい光線は、地面を削り取り、表面を焼き尽くした。
まぶしいほどの輝きが、霧を晴れさせる。

が、またもVBはそこに存在していた。
そして、ゆっくりとツーのコクピットへショットガンの銃口を向ける。
驚く暇も無く、ツーは負けを悟った。

(*゚∀゚)『……負け、か。楽しかったよ』

ツーは潔く、目を瞑る。
そして、弾丸が発射された。

装甲をぶち破り、コクピットへと放たれる弾丸。
弾は、ツーの右半身を掠め取り、長い長い夢へと誘った。



96: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:54:44.93 ID:bdyvNrbq0

 白の駆動兵器を、倒した。
が、ボロボロのVBは、今にも崩れそうであった。
そして、ドクオは悲鳴も上げず、倒れもしない眼前の白の駆動兵器から、赤く綺麗な血が、少しだけ流れているのを見て、また悲しくなった。

('A`)「……」



川 ゚ -゚)『バルケン殿。もう少しでピチカートですが、向こうの守備が思った以上に硬い。援軍を待ちます』

( ,'3 )『うむ。NRPも、ブーン達の戦闘が落ち着き次第向かおうと思う。少し不便だが、そのまま待っていてくれ』

 湿地を抜けたクーの目に飛び込んできたのは、幼少の頃、よく見ていた光景。
ν帝国首都、ピチカート。
首都と呼ぶよりは、要塞と呼んだほうがいいその堅固たる守備、岩壁から覗く大砲は、難攻不落を表していた。
向こうも、本陣の守備に力を入れているのか、多くの戦闘機や戦車がひしめいている。
先発隊は、もう交戦を始めているようで、銃声が響いていた。

川 ゚ -゚)「ここで突っ込むのは得策ではない……。背中が万全に整ってからだな」

そう考え、バルケンにも伝えていた。
が、戦況は一変する。



100: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:57:08.44 ID:bdyvNrbq0

『各部へと緊急伝達。”ギガンテス”と称された、核ミサイルが、νによって発射準備中との事。各自、全力でギガンテスの発射を阻止せよ』

川;゚ -゚)『何!?』

 クーは要塞の上部を見上げた。
すると、大きなカタパルトが出てきており、着々と準備が進められているではないか。
すぐに、クーは駆動兵器との順応度を上げ、起動させる。

川;゚ -゚)『VR。すぐに起動だ!!!』

――了解。2CH-VRアクティブモード。

鉤爪を尖らせ、ピチカートへと飛び出す。
弾幕を掻い潜り、ミサイルの発射を阻止せねば――!!!


駆動兵器を倒しても、休憩をする暇など無くドクオはバルケンに通信を入れる。

('A`)『……バルケン殿』

( ,'3 )『ああ。よくやってくれた。回収へ向かうから、そこで待っていなさい』
('A`)『……違うんです。自分はまだ、戦えますか?』

( ,'3 )『戦える。だが、今は戦えん。ブーンを助けにいこうなどと思わないことだ』
('A`)『……わかりました』

通信を切ると、次はブーンへと通信を入れた。



101: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/06/29(金) 20:58:09.50 ID:bdyvNrbq0

('A`)『ブーン。大丈夫か?』
(  ω )『……』

('A`)『ブーン!!』
(;^ω^)『ど、どうしたお!?』

 ボーッとしているのはいつものことか……?
そう思って、俺は気になんか留めていなかった。

('A`)『いや、返事が無いからさ。こっちは片付いた。そっちは?』
(;^ω^)『か、片付いたお』

('A`)『そうか。俺はVBを壊しちまったから、NRPへと戻ってる。無理だけは、しないでくれ』
( ^ω^)『……もちろんだお。帰ったら大事な話があるお』
('A`)『……ああ。じゃあ切る、死ぬなよ』


そうなんだ。
この後の事に比べると、たいした事じゃなかったけど、あの時にでも直接聞いておけばよかったかもしれない。
通信を手早く切ったりせずに、聞いておけばよかった。



もう、お前の声は、世界のどこへ行っても、どれだけ戦っても、聞けないんだから。



( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第20話 『さよならの序章』 完



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