( ^ω^)は駆動兵器を操るようです

6: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/04(水) 23:11:23.16 ID:KpIK/YZP0




( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第21話



8: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/04(水) 23:12:33.23 ID:KpIK/YZP0

ガコン……。
重い音と共に、NRPへとVBが回収される。

ドクオは安堵の表情を浮かべていたが、どこか上の空であった。
VBは故障してしまったが、大きく勝利を収め、何の申し分の無い戦闘内容であった。
だが、ドクオの脳裏に残る、あの赤い液体。
人を殺したという実感。
手には感触は残っていない。けれども、深く刻まれた”何か”が、ドクオを襲う。

('A`)「……はぁ」
@^0^@)/『お疲れ様です!2CH-VB、収納完了しました!』

順応スーツのプラグを取り外し、一息つく。
コクピットから出ると、すぐに修繕をスタッフが始めていた。

こう見てみると、VBには悪いことをした、と感じる。人間でいう所の、生傷、であろうか。
駆動兵器の修繕に携わったことが、よりVBへの理解を深めていた。



10: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/04(水) 23:14:19.13 ID:KpIK/YZP0

('A`)「……バルケン殿」
( ,'3 )「ドクオか。よくやってくれた。どうやらあのラウンジ駆動兵器は、向こうのリーダー機だったようだ」

('A`)「はい。それはいいんですが、ブーンとクーさんは大丈夫でしょうか?」

自分より、仲間の事が気になってしょうがないドクオ。

( ,'3 )「ワタナベ君。衛星からのVG、VRの映像を」
从'ー'从「了解。正面モニターに開きます」

電子音と共に、正面に大きく二分割された映像が写る。
ややノイズがかかっていて、見づらい。

クーのVRは、砦のような壁に、鉤爪を突き刺して上っている。
そして、ブーンは、なぜか戦場に立ち尽くしたままで、動く気配が無かった。



11: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/04(水) 23:15:35.21 ID:KpIK/YZP0

('A`)「……あいつ、何やってんだ?」
从'ー'从「どうやら、ラウンジ駆動兵器を一機逃がしてしまったようです」

ブーンが、逃がす?
あいつのノトーリアスから逃げられるはずがない。
生き残るために深追いは止す、そんな男でもないはずだ。

なにか、あったのか?

('A`)「ワタナベさん。ブーンと回線は繋げますか?」

从'ー'从「それが……ドクオさんを回収してすぐに、向こうからの妨害電波が入ってしまったみたいで……」
('A`)「そうですか……わかりました。ブーンを信じましょう」

从'ー'从「……はい」

急速上昇し、戦場から離れるNRP。
クーのいる、ν帝国首都ピチカートへと向かう。



12: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/04(水) 23:16:50.58 ID:KpIK/YZP0

( ^ω^)「……ショボン、クックル」

ひどく静かなコクピットの中で、何か物思いにふけるブーン。
外では、銃弾の雨が、流れ星のようなミサイルが飛び交っている。
時たま弾丸があたり、乾いた音が鳴るが、そんな音はブーンには聞こえてはいなかった。

苛立ちが募る。
トリガーを、強く握り、歯を食いしばる。

(  ω )「……くそっ……」

ショボン達を止められなかった自分。
追いかけられなかった自分。
もし、敵対した場合、いくら考えてもショボン達を”殺せない”であろう自分。


ブーンが、自己嫌悪に苛まれているちょうどその頃。
クーの首都進攻、核ミサイルの発射阻止作戦が、急遽始まっていた。



14: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/04(水) 23:18:05.75 ID:KpIK/YZP0

川 ゚ -゚)「ふぅん!!!」

飛び掛るような体勢のまま、首都正門へ爪を立て、突き刺し、引きちぎる。
戦車、戦闘機、攻城砲台。
一斉に首都周辺へと展開されると、全てがクーの操るVRへと砲身を向けた。
そんなものに構うことなく、大きく、堅固な正門を突破すると、目の前にも攻城砲台が10基ほどであろうか、こちらを向いていた。

川 ゚ -゚)「そんな子供だまし……この、駆動兵器に通用すると思っているのか!!!」

爆音と共に飛び出す砲弾を、バネのように跳ねてかわすと、そのまま砲台へと飛び降り、踏み潰す。
地盤沈下のごとく、へこみ、沈む。
続けざまに、首都内の建造物をぶち壊していく。

悲鳴。
銃声。

クーの興奮は、収まらない。
たとえ、核ミサイルを止めるための侵攻であったとしても、クーにとっての軍属の意味は、戦闘にある。
いくら上官といえど、この楽しみを止めることは許さない。



15: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/04(水) 23:20:05.86 ID:KpIK/YZP0

立て続け、すぐには移動できない攻城砲台を、赤子が積み木を崩すかのように、蹴散らした。
鉄片が宙を舞い、爆発が起こる。

右の鉤爪をパージすると、その鉤爪を、上部へと放り投げる。
この首都ピチカートは、元は砦だった場所。
地形的戦略に非常に優れており、居住区がある正門から、大統領邸宅、ν帝国軍中央基地までの高低差は、およそ80mにもなるのだ。
金属独特の重い音が、砦の”中腹”に響く。

川 ゚ -゚)「……ふん。攻め込まれないからこそ、砦だというのに」

背中に取り付けておいた、大きな鞘からカタナを引き抜く。
スラリと伸びた細い刀身に、粒子がコーティングされ、薄緑に輝く。

『オオテンタ』

そう名づけられたこの武器を、右手に持ち、少し後ろ向きに構える。
水が流れるような音を放っており、クーのリズムを形成していく。

川 ゚ -゚)「……オオテンタも、久しぶりだな」

空気を切るように、試し振りをする。
兵器越しにも伝わってくる、この、吸い付くような感覚、感触。
感傷に浸っている間もなく、次々とやってくる敵戦力をなぎ倒していく。



17: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/04(水) 23:22:07.44 ID:KpIK/YZP0

川 ゚ -゚)「きりが無い。一気に行く……!!」

片腕で構えたオオテンタを、防壁に切り叩きつける。
パックリと削がれた壁、戦車は、斬撃のスピードを追いかけるように爆発した。

切断面を足場に、凹凸の無い砦特有の壁を登っていく。
居住区は、首都内部に展開されており、敵侵攻時には、”フタ”を閉じ、居住区と元の砦部分とを隔離する。
クーが飛び出すと同時に、隔壁が現れ、ミサイル発射カタパルトへの道を防ぐような形となっていた。

そして、城砦と化したピチカート。
鉤爪を駆使し、素早く上るクーを待ち構える、一機の駆動兵器が、上部にいた。
黄色いボディに、緑のライン。大きなアーム、短い脚。
まるでゴリラのような駆動兵器には、ν帝国軍隊長、タナシンが搭乗していた。

∴∵(・)∴∵(・)∵∴『……』

そして、砦最上部。
ミサイル発射準備を着々と進める男。

( ◎□◎)『おい!!しっかりとめてくれよ!!』
∴∵(・)∴∵(・)∵∴『あア……』

( ◎□◎)「あといくらほどかかる?敵は駆動兵器一機。このペースだと5分以内に発射できれば問題ないが……」
作業員「あと6分20秒ほどで、全チェック終了。発射できます」
( ◎□◎)「1分20秒か……。まあ誤差範囲内だ。そのまま進めろ」
作業員「了解!!」

( ◎□◎)「……タナシンが、あの悪魔をどれだけ抑えられるか……だな」



18: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/04(水) 23:23:58.05 ID:KpIK/YZP0

クマーが命じた、タナシンへの命令。
それは『帝都への駆動兵器の侵入を許した際。向こうの駆動兵器を迎撃せよ』。

そして、その命令には、続きがある。
『もし、その駆動兵器が”赤”である場合、できる限りの時間稼ぎをせよ』

ズズ……ン。
と、不規則な間を起き鳴り響く爆発音。
タナシンは、構える。

今から襲い掛かろう、余りにも強大な力。
『赤』の恐怖。

∴∵(・)∴∵(・)∵∴「……クる」

ロッククライマーのごとく、鉤爪を岩盤へと押し当て、抉り込ませる。
VRのブーストはそれほど上昇に適したものではないので、こうやって引っ掛けて上るほうが効率がよいのだ。
勢いよく、岩壁を駆け上がってきたVR。
それを待ち構える『シルバック』。
この障害を取り除けば、ミサイルの発射を阻止できよう。



19: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/04(水) 23:25:48.00 ID:KpIK/YZP0

川 ゚ -゚)「……新型か?」
∴∵(・)∴∵(・)∵∴『……おレは、ν帝国軍隊長、タナシン。赤イ悪魔とおみうけシた。……しょうブ』

川 ゚ -゚)『……礼儀がいい奴だ。私は、VIP軍少尉、クー。勝負の申し受け、したいところであるが……』

オオテンタを右腕に、鉤爪を左腕に構える。
クーのこの戦闘スタイルは、VIP独立の際に多用していた。
片腕で持つオオテンタ、片腕に取り付ける鉤爪。この構えは、機動性に非常に優れており、相手の空間感覚を間接的に壊せるのである。
鉤爪での連続攻撃。そこからのオオテンタによる斬撃。間合いが大きく違うこの武器を生かして、クーは戦う。

川 ゚ -゚)『残念だが、お前に構っている暇は無いようだ。すまんな』
∴∵(・)∴∵(・)∵∴『にがシは、シない』

川 ゚ -゚)「……そうこないと、な」

タナシンの操る『シルバック』の巨大な両腕が、駆動音を発し始める。
腕の中にモーターを積んでいるのだろうか、小刻みに震え、アームが回転し、蒸気を吹く。
強い力で、相手をそのままねじ伏せようとする力が、クーの喉元を狙う。



20: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/04(水) 23:27:31.49 ID:KpIK/YZP0

∴∵(・)∴∵(・)∵∴『おぉオおぉおぉおォォ!!!!!』

腕を引きずり、VRへと突撃するシルバック。
クーは、視認すると同時に左へ飛び出す。このようなパーツバランスの破綻している機体は、大抵機動性に欠ける。
案の定、ゆるい軌道を描くカーブでしか曲がれることは無く、クーは容易にシルバックの右側を取ることができた。

川 ゚ -゚)『……なめるなよぉぉっ!!!』
∴∵(・)∴∵(・)∵∴『……ぬぅゥっ!!!』

間合いを維持することを含めての袈裟斬り。
しかし、回転するアームが邪魔をし、刃が通らず弾かれてしまう。
続けざまに鉤爪を叩き込むも、やはりあの巨大なアームが邪魔で、本体には通らない。

∴∵(・)∴∵(・)∵∴『グォぉあぁぁアぁ!!!』

ただ乱暴に振り回しているだけのタナシン。
だが、その破壊力は凄まじく、足場を掠め取り、隔壁を吹き飛ばす。

川 ゚ -゚)『……ただの力馬鹿が、私に当てられると思っているのか!?』

飛び掛り、オオテンタを両手で構え、正面から右肩部分へ突き刺す。

刺されば、もうこちらのもの。
あがく間もなく、右腕をそぎ落とす。
はずであった。



22: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/04(水) 23:29:30.03 ID:KpIK/YZP0

クーにとっての大きな誤算。
それは、ロケット発射場からの、援護射撃。

( ◎□◎)『おい!!俺がレーザー撃ってなかったら腕落とされて終わってたぞ!!!』
∴∵(・)∴∵(・)∵∴『……!!』

VRの右脚を貫通するレーザー。
バランスを崩し、膝を突く。

川;゚ -゚)『ちぃぃぃっ!!!!』

レーザーと続けざまに叩き込まれる、タナシンの攻撃。
アッパーカットが、VRに直撃し、吹き飛ばされてしまった。
そこへ、シンプルなハンマーパンチであるが、VRの背中部分へ次々と叩き込まれる。

振り下ろされるたびに響く轟音。あまりの威力で足場へとめりこんでいくVR。
削り取られるように、背部装甲にダメージが蓄積されていった。

川; - )『……っ!!!』
∴∵(・)∴∵(・)∵∴『……ふんッ!!!ハぁぁぁっ!!!』

――背部装甲。ダメージ危険値ニ達シマシタ。

強烈な攻撃は、とどまることを知らない。
このまま、クーをコクピットごとへしゃげて殺してしまおうというのか。
クーは、タイミングをただただ待つしかなかった。



23: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/04(水) 23:31:32.17 ID:KpIK/YZP0

大きく振りかぶり、パンチを叩き込む。
ここぞ、という振りかぶりを待っていたクー。
それを見計らい、クーは素早く仰向けになり、両腕でシルバックの豪腕を受け止める。メキメキと関節が鳴り響く。
少しの間、駆動兵器の力比べが行われる。
向こうは片腕、こちらは両腕。片腕どうしなら力の差は歴然であった。

川#゚ -゚)『……この野郎!!!!』

駆動兵器の頭部を蹴り上げ、ひるんだところで体勢を立て直す。
すぐさまオオテンタを構えると、アームへと一直線に突き刺した。繊維を掻い潜るまち針のように手から肩まで突き刺さるオオテンタ。
火花が散るのと同時に、右腕が二つに吹き飛んだ。
体勢を崩すシルバックは、そのまま左腕を振りかぶる。

∴∵(・)∴∵(・)∵∴『オオぉぉォおおお!!!!』

川#゚ -゚)『死を見せてやる。構えていろ!!!』



26: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/04(水) 23:35:45.33 ID:KpIK/YZP0

シルバックの左フックを直に受け止めるVR。
大きな衝撃がクーを襲い、足場を巻き込み吹き飛ばされそうになったが、なんとか持ちこたえることができた。

そのまま、今度はメインカメラへと突き刺す。火花を上げ、ふらついているところに、左脚を掬うように切り取る斬撃。
足場を崩しながら、その場へ膝をつくシルバックのコクピットへ、一直線に突き刺す。
完全に背中までぶち抜くと、そのまま下へと切り払った。
汚い音をたてるまでもなく、綺麗に二分割されたシルバック。


∴∵(・)∴∵(・)∵∴『……tana……sinn……』


プツンと途切れるタナシンの記憶。
最後に見た『死』は、切り離された装甲から覗く、爆炎を纏う2CH-VR。
赤い死神であった。

しかし、タナシンの死は、無駄には終わらない。
モルモロの方を向くVR、もうミサイルは、カタパルトから射出されており、スレスト湿地へと一直線に向かっていた。



27: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/04(水) 23:37:35.30 ID:KpIK/YZP0
川;゚ -゚)『……こちらクー。あと少しのところで逃してしまった……』
( ,'3 )『そうか……。では、NRPから本部へ情報を伝達させる。君を回収しに行くのでその場を離脱しなさい』
川 ゚ -゚)『……了解しました』

発射カタパルトが設置してあった研究所に、オオテンタを突き刺し破壊すると、クーはその場を離脱した。


( ^ω^)「……」

銃声が、疎らになりつつあるスレスト湿地――。
やはり、直接侵攻もあったせいか、VIP側が優勢のようであった。そのど真ん中。一機たたずむ駆動兵器、2CH-VG。

(・(エ)・)「もうすぐだ。スレスト湿地に着くぞ」
从 ゚∀从「了解。通信が届いてますよ。ラウンジ駆動兵器2機大破。1機奪取だそうですよ!!ぎゃははは!!」

(・(エ)・)「赤以外も、思ったよりやるみたいだな。向こうのほうが場数をこなしている、というのもあるのだろうが……」

湿地帯に入ったオペラも、戦闘体勢に入る。
巨大な槌を振り回し、VIPの戦闘機を吹き飛ばした。
遠距離妨害電波が発せられている現在、オペラの存在に気づいたものは、いない。

いや、オペラの”範囲内”に入ったものは、全て、潰されているのである。
そして、クマー達は、一機の駆動兵器を見つける。



28: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/04(水) 23:39:05.86 ID:KpIK/YZP0

(・(エ)・)「……ほう」
从 ゚∀从「それじゃあ緑から、ってことですね?」

そして、スレスト湿地へと向かっていた、もう一機の駆動兵器。
荒巻、そしてロマネスクを乗せた2CH-VPも、吸い寄せられるかのように、ブーンの元へ向かう。

( メωФ)「それにしても、もう戦いは収束しているようですよ?」
/ ,' 3「クマーはまだでておらんじゃろ。もしクマーを見つけたら、わしが後ろにいる事を忘れて戦ってくれの」
( メωФ)「了解」



終焉は、近い。




( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第21話 『セントラル』 完



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