( ^ω^)は駆動兵器を操るようです
- 37: ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/22(日) 20:59:31.01 ID:Jn45hc820
少し時は遡り、ヒッキーの搭乗するカンダタゴロシを殲滅、回収したあの夜の事。
ブーンは、ワタナベという女性を、意識していた。
今まで、抱くことの無かった、欠如した感情。
从'ー'从『ブーンさん。私が言うのも可笑しいですが、自信を……。
自信を、持ってください。あなたは、そんなに弱い人間ではありません』
嬉しかった。
認められて、嬉しかった。
それだけじゃない。
いつも戦っている僕を、後ろから支えてくれる。
そんな、あなたが好きだった。
( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第25話『右回りの時計』
- 38: ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/22(日) 21:01:31.24 ID:Jn45hc820
( ^ω^)『(何か……悶々とするお……)ドクオー』
('A`)『おぉ、何だ?』
こういう時は、やっぱりドクオに相談するのが一番。
何でも話せる、戦友。
( ^ω^)『ドクオは、女性へのアプローチって、どうするんだお?』
('A`)『……。なんで俺にそんな事を聞くかなぁお前は』
( ^ω^)『ドクオも、わからないのかお?』
(;'A`)『ばっ……馬鹿野郎!知らない訳無いだろ!あのなぁ、女ってもんは、押しに弱いのさ!』
( ^ω^)『押しに弱い……。積極的に行けって事かお!?』
('A`)『そうだよ!テロリストの立てこもりを打破するあの感覚だよ。勢いだけじゃ駄目って事だぜ?』
( ^ω^)『な……なるほど。ドクオはやっぱり、すごいお』
え……えへへ。
まだ俺童貞なんすけどね……。
(;'A`)『そ、それはそうと、相手は誰なんだ?クー少尉か?』
(*^ω^)『い、言いにくいけど……。わ、ワタナベさんだお』
- 39: ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/22(日) 21:02:53.78 ID:Jn45hc820
('A`)『おお。NRPのクルーのワタナベさんか。話したことは何回かあるけど、いい人だよな』
( ^ω^)『そうだお。いい人なんだお』
('A`)『お前……、ワタナベさんをお母さんみたい、って思ってないだろうな?』
(;^ω^)『……なっ!?』
('A`)『……はぁ。それじゃあ駄目だぜ?女は女なんだからよ』
( ^ω^)『ドクオには見透かされっぱなしだお。そう感じてたかもしれないお』
('A`)『まあ、そう見るのも駄目とはいわねぇがな』
ブーン。
お前は母親を帝国時代に無くしてから、ずっと欲しかったんだろう。
俺も、お前と同じさ。
父親、母親から受けた愛を、少ししか知らねぇ。
俺は、まだ顔を覚えてるだけ、マシか?
お前は、本当に顔も何も知らない。
('A`)『まあよ、好きってんなら、俺は応援するぜ』
( ^ω^)『……ありがとうお。早速、今日の訓練が終わったらお話に誘ってみるお』
- 41: ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/22(日) 21:06:23.36 ID:Jn45hc820
ブーンは順応スーツへ着替え、ノトーリアス訓練用のポッドへと入り込んだ。
この訓練も、明日を生きるための物。
そう自分へ言い聞かせて、人一倍努力しようと努めた。
そして、訓練が終わる頃には、夜が明けていた。
時計を見ると、もう午前10時。
ワタナベさんを探すブーン。
軍人には、昼夜の感覚があまり無い。
訓練や、実践における逆転生活が余儀なくされる場合が多いからだ。
なので、食堂は24時間開いているし、基地の光が消えることも、無い。
ブーンは、実践明けからそのまま徹夜で訓練、というハードスケジュールをこなしており、もうフラフラであった。
それでも、ワタナベさんと話さないと、気がすまない、眠れない。
そんな感情に苛まれていた。
(;^ω^)『い……いたお……!!』
戦闘機の整備をしているのであろうか、数人でエンジンをチェックしている中にワタナベはいた。
- 42: ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/22(日) 21:07:37.54 ID:Jn45hc820
泥だらけの整備服。
そして帽子をかぶる為に後ろに括った栗色の髪の毛。
ワタナベも相当疲れているようであった。
( ^ω^)『しんどそうだし……話し掛けるのもアレかお……?』
そう思い、部屋へと戻ろうとすると、ワタナベがブーンに気づき、声をかけた。
从'ー'从『あれ……。ブーンさんじゃないですか?』
(;^ω^)『お!!お!!そ、そうですお!!ブーンですお!!』
从'ー'从『ノトーリアスの訓練ですか?朝までご苦労様です』
( ^ω^)『いえいえ、ワタナベさんこそこんな朝まで……』
や、やっぱり緊張してしまう……。
どど、どうにかしないと。
( ^ω^)『え……えっと、この前の激励!ありがとうございましたお!!』
大きな声を出しすぎたのか、他にいた整備班にも聞こえたようだ。
皆、ワタナベとブーンの方を見る。
ワタナベは恥ずかしくなったのか、ブーンの手を引いて廊下へと連れ出した。
从*'ー'从『いいいいきなり何てことを言うんですか!!』
(;^ω^)『だ……ダメでしたかお?』
从*'ー'从『駄目じゃないですけど……。えっと!えっと嬉しいですけど……あの……もう少し小さな声で……』
(;^ω^)『すす、すいませんでしたお!!!』
- 43: ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/22(日) 21:08:50.24 ID:Jn45hc820
从;'ー'从『わわ、また大きいですよ!!』
(:^ω^)『もごご、す、すいませんでしたお』
从'ー'从『あの時は、私も必死だっただけですよ。
いつも頑張っているのに、結果が出せないと、ブーンさんも悔しいと思ったんです』
( ^ω^)『……そうでしたかお。僕は、人に褒められたことが無くて……。本当に、嬉しかったんですお』
从'ー'从『それに、ブーンさんの頑張りは、よくわかってるつもりですから』
(*^ω^)『そんな事言われたら、照れますお』
从'ー'从『ふふっ。あ、よかったらまた今度、ご飯でも一緒にどうですか?私、誘います』
( ^ω^)『ほ、本当ですかお!?』
从'ー'从『はい。本当ですよ』
(;^ω^)『い、いや!男として、自分が誘いますお!!』
从'ー'从『そうですか?じゃあ、期待してますね』
ワタナベは微笑むと、挨拶をしてそのまま整備へと戻った。
ブーンは、さっき口を抑えられた手に纏われていた、鉄の臭いを、思い出していた。
- 45: ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/22(日) 21:10:45.26 ID:Jn45hc820
そして、そこからは何を言うでもなく、親しくなっていった。
訓練の終わり。
実践の前。
二人が共にいる時間は、徐々に増えつつあった。
その頃にはもう、自然に交際という事になっていたので、周りも何も言うことはなかった。
ただ、ブーンとワタナベ両名は、共に恥ずかしがり屋であったため、
決して自分から言うことは無かったのであるが……。
そして、二人の仲が確かな物になりつつあった、スレスト湿地戦が迫る頃、二人は、約束をした。
( ^ω^)『ワタナベさん。自分は、このVIPに命を捧げていますお。
それでも、毎晩考えるんですお。命を惜しく思わず、VIPの為に燃やして戦うのか。
それとも、愛している人の為に、命を守って戦うのか』
从'ー'从『……』
( ^ω^)『ワタナベさんに言うのは、おかしいことだと思っているんですお。
それでも、答えが出なくて……出なくて。
僕にとっては、今の僕を作ってくれたVIPと、今の僕を作ってくれているワタナベさん。
どちらを選べ、だなんて……。選べないんですお……』
俯いて、できるだけワタナベの目を見ないように、話すブーン。
- 47: ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/22(日) 21:11:46.55 ID:Jn45hc820
そうすると、ワタナベが口を開いた。
从'ー'从『選ばなくても、いいんじゃないのかな』
( ^ω^)『……選ばなくても……?』
从'ー'从『うん。その場その場で、決めればいいと思うんだ。
私を守ってくれるのは嬉しいけど、そんな守りながら生きる人生なんて、つまらないでしょ?私ならそう思う』
( ^ω^)『……そういう、ものかお?』
从'ー'从『そういうもの。それに……嬉しいよ?
ブーンさんが、こうして戦争と、私なんかを比較対象にしてくれてさ』
(;^ω^)『あっ……えっと……ごめんなさいお!!
やっぱりこういうのに引き合いに出すべきじゃなかったですお!!』
从'ー'从『ふふっ。次からは、嬉しかったんだけど、もっと素敵な言い回しにしてね』
ブーンは、決めた。
戦争より、ワタナベさんを守ろう。
ワタナベさんに言われたこととは、全く違うことをしているのはわかっている。
だけど、僕は、好きな人を守るために、戦おう。
そう、心の中で、一人思った。
- 48: ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/22(日) 21:12:53.09 ID:Jn45hc820
確かなものとしての、愛。
从'ー'从『……生きて、NRPへ帰ってきて下さい!』
( ^ω^)『……もちろんですお!!!』
('A`)『いいなぁ……』
そして、その密かな決意を、徐々に解いていく障害。
( ゚∋゚)『俺たちは、今をもってVIPから出て行く。だから、最後のお別れの言葉を言いにきた』
(;^ω^)『お別れ?一体何を言ってるんだお!!理解できないお!!』
( ゚∋゚)『……ブーン。お前はもう一人前の兵士なんだ。別れを惜しむなとは言わない。
ただ、もう俺とショボンは、ブーン、お前の前には現れない』
- 50: ◆Cy/9gwA.RE :2007/07/22(日) 21:14:31.15 ID:Jn45hc820
友との離別。
( ゚∋゚)「……また、会おう」
( ω )『……』
聞こえはしない、その声は。
体に潜む、悪の因子を、開かせる。
( ゜ω゜)『敵を……敵を倒すんだお!!!そうすれば、みんな!!!みんな幸せになるんだお!!!!』
守る為に振るう手が。
自らを討つ為の魔手になり――。
( ;ω;)『最後くらいは……!!最後くらいは……!!』
青年は、死を迎えた。
優しく、輝いて。
( ^ω^)は駆動兵器を操るようです第25話 『右回りの時計』 完
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