( ^ω^)は駆動兵器を操るようです
- 33: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/04(土) 22:54:10.27 ID:MSClLYYf0
- (;<●><●>)「……げほっ!!げほっ!!」
胸が苦しい――。
体中を擦りむいた、痛い。
(;<●><●>)「車輪が岩にひっかかって転倒だなんて……。ついてないんです。でも、なんとか例のポイントにつきました……ね」
南部指令基地から南に行ったニーソク国領内。
ラウンジ国境に近いその例のポイントに、ワカッテマスはなんとか到着することが出来た。
そのポイントというのは、ニーソク国領内に存在する、旧国境会館。
国境会議時に使用された会館とは一つ前の、国同士の話し合いの為に設けられていた、現在は使われていない建物である。
ワカッテマスは、クックルに渡されたハンドガンを、胸元から取り出し、物陰に隠れながら慎重に進む。
すると、前方に物音と、人が話す声が聞こえた。
耳を澄ますワカッテマス……。
( <●><●>)(さっきの通信の声――。シラネーヨですか?)
建物の入り口付近に、数人いるようだ。
やはり向こうも、用心をしているのであろう、駆動兵器が待ち構えていてもおかしくない。
無駄な衝突が起こるとやっかいだ。そう考えて、ワカッテマスは敢えて前へ出ることにした。
( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第30話『感情のままに、生きる』
- 35: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/04(土) 22:55:30.03 ID:MSClLYYf0
( <●><●>)「……シラネーヨ殿ですか?」
( ▼W▼)『……!!!』
ブーツが、音をそろえて地面を踏みしめる音。
そして、銃を構える音の二つがワカッテマスの方を向くのがわかった。
両手を挙げ、戦意が無いことを主張する。
( <●><●>)「拳銃は地面に置きました。確認してください」
すると、警戒しながらもこちらへ銃剣のようなものを持ちながら歩いてくる3人ほどの兵士がいた。
ライトで照らされ、眩しい。
もう、日が暮れて月の光しか無い状態。
ボディチェック、拳銃を回収されると、奥からもう一人がこちらへと近づいてきた。
この男が、シラネーヨ。
( ´ー`)「いや、疑ってすまなかったね」
( <●><●>)「大した情報証拠も無いのに、信じていただけて感謝しているんです」
物腰が優しい。
だが、いつも何か別のことを考えているような印象を受けた。
シラネーヨが、兵士達を引かせるように指示し、会館内で話を聞こうと持ち出した。
それに、ワカッテマスは了承する。
- 36: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/04(土) 22:57:05.12 ID:MSClLYYf0
( ´ー`)「あらためて、私はシラネーヨ。ラウンジに飼われている科学者の一人だよ。よろしく」
( <●><●>)「元VIP情報二部所属、ワカッテマスです。よろしくお願いします」
質素な部屋。
もう何年も使われていないのだろう。床には埃が、窓ガラスには雨風の跡が残っていた。
シラネーヨは、適当に机の上に乗っかっている埃を叩き、腰をかける。
まあ、そんなに緊張しないで。そう言って、ワカッテマスへ質問を始めた。
( ´ー`)「とりあえず、君との何時間か前の会話だけでは、やはり情報が少なすぎる。
私は研究者という身、やはり人体の未解明な部分には興味があってね」
( <●><●>)「やはり、そうですね。では、詳しい点をお教えします。
ですが、私が言うよりも、本人に聞いたほうがやはり早いかと」
( ´ー`)「まあ、とりあえずさ。それに、内のセパタクロウを奪ったんでしょう?
乱暴されちゃあ敵わない。その人が来た時は、君を人質としてとらせてもらうけど、いいかな?」
( <●><●>)「はい。もちろんそれくらいはわかってます。こちらも、本気です」
そういって、ワカッテマスは説明を始めた。
もちろん、自分が知っている情報のみだ。
まだまだ何かあるのはわかっているが、余りにも人間の想像の範疇を超えていて、予測でものを話すことができるわけがなかった。
- 37: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/04(土) 22:58:29.36 ID:MSClLYYf0
( ´ー`)「――ふむ。その人間には、やはり欠陥がありそうだね。余りにも、理想的すぎる」
( <●><●>)「はい。それは当人が言っていました。
寿命が極端に短かったり、頭痛、吐き気……。色々なパターンがあるようです」
( ´ー`)「こう、ずっと研究をやっている身としては、完璧なんて言葉は使いたくないんだよね。
非の打ち所が無い、なんて言葉は、弱者が生み出した妄言だと思っているから」
( <●><●>)「それは、僕もそう思っています。欠陥があってこそ、物事が成り立つはずですから」
そうこうしていると、ワカッテマスの胸に取り付けてあった無線が鳴り響く。
先程は、大きな砂嵐に遭遇していたせいか取れなかったのであった。
すっかりそれを忘れていたワカッテマスは、シラネーヨに了解を取り、無線に出る。
( <●><●>)『はい。ワカッテマスです』
(;´・ω・`)『あっ……繋がった!なんでさっきまで出ないんだいワカッテマス!!もうすぐポイントへ到着するよ!!』
( <●><●>)『申し訳無いんです。今こっちはシラネーヨ殿と接触して、話を進めているんです。
とりあえずクックルが来ないと、これ以上は進みようがありませんが』
( ゚∋゚)『わかった。あと15分程で着く。ブーストが焼き切れてしまいそうだ』
( <●><●>)『了解なんです』
無線を切ると、シラネーヨが期待に満ちた顔で微笑んでいた。
- 38: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/04(土) 23:00:47.42 ID:MSClLYYf0
( ´ー`)「しかし、楽しみだ」
( <●><●>)「……」
そして、クックル、ショボン、シラネーヨ、ワカッテマスの四人が揃う。
交渉が始まった。
( ゚∋゚)「こちらの要求は、とにかく力だ。貴殿の軍事力、経済力、科学力が欲しい」
( ´ー`)「……そうだね。その要求は飲もう」
(´・ω・`)(何か……軽いなぁ)
( <●><●>)(最初から、そんな感じの人でしたよ)
( ´ー`)「こちらの要求……という形にさせてもらうと、君の体にチップを埋め込ませてもらおう。
超小型体内循環計測チップ、所謂、駆動兵器の流れを計測するチップだ。
それを体内の4箇所に挿入。そして、専用の順応スーツを着てもらう事。これでこっちはいいよ」
( ゚∋゚)「ああ。構わない」
( ´ー`)「そして……だ。僕は戦争に興味が無い。この戦争に介入する気は無いという事だけは、最初から言わせてもらうよ」
( <●><●>)「はい。わかってます。ただ資金、兵器を回していただけるだけで結構なんです」
- 39: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/04(土) 23:02:09.35 ID:MSClLYYf0
( ゚∋゚)「――それで、どれだけ回してもらえるのだ?」
( ´ー`)「今、君がうちから奪ったセパタクロウを修繕。
そして、ちょっと時間的にどうかはわからないんだけど、
セパタクロウの改良型の、クモギイを貸し出してあげられればいいんだけどね」
後は、諸々の兵器に資金くらい……かな。
そうシラネーヨは言うが、それを聞いたショボン達は、どれだけ資金を持っているのだろうか疑問に思ってしまった。
ラウンジといえば、国の資源も少なく、国自体が富んでいない印象が強かった。
それに、この戦争にラウンジが参入してきた時は、ニーソクの森林資源が欲しいものだと思っていた。
(´・ω・`)「ν奇襲は、具体的にいつくらいを考えてるんだい?クックル」
( ゚∋゚)「……二週間後だ」
(;´・ω・`)「ええっ!?いくらなんでも準備が足りないよ!!」
( ´ー`)「いや、その選択は間違っていないよ。えっと……ショボン君?だっけ。
見ての通り、νの首都ピチカートはVIPの駆動兵器VRによってほぼ壊滅に追いやられている。やるなら今、って奴だ」
(´・ω・`)「……なるほど」
( ゚∋゚)「……クーか」
( <●><●>)「相変わらず、容赦の無い人なんです」
( ゚∋゚)「とにかく、必要になるべき物は、駆動兵器。これが無いと、νはもちろん、VIPも落とせはしないだろう」
- 40: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/04(土) 23:03:55.22 ID:MSClLYYf0
( ´ー`)「さすがに二週間じゃクモギイは出せないな。
こっちとしては、今、君たちが乗ってきたセパタクロウの修繕を全力でさせてもらうよ。
何か必要なら、早めに言ってくれればいい。今日は、このままラウンジ領の国境キャンプへ行って休んでくれ」
そして、シラネーヨ達を乗せた大型トレーラーが、ラウンジ国境へと向かう。
セパタクロウを詰めるほどの大きく、戦車など比較にならないほどであった。
揺れる積荷部分。近くで見ると、細かい傷が沢山ついているセパタクロウの固定された腕を目の前に、クックルは考えていた。
( ゚∋゚)「……」
(´・ω・`)「もう少し、だね。もう少しで、全部片付く」
そして――。
( ´ー`)「え?また匿名の通信?忙しいね、全く」
/ ,' 3『……聞こえるかの?シラネーヨ君』
(;´ー`)『あ……荒巻さん!!!な、なんで……』
/ ,' 3『頼みたい事が、あるんじゃ――』
絡み合った糸が、解かれていく。
それは、ゆっくりなどではない。
まさに、風雲急を告げる、といったものであった。
(;´ー`)『本当に言っているんですか……?』
/ ,' 3『ああ。もちろん、本気じゃ』
- 42: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/04(土) 23:07:02.84 ID:MSClLYYf0
シラネーヨは、なぜか自分が、いつのまにか数奇な運命の中に組み込まれているように感じた。
気付けば、もうこの歯車の一つになっているような……そんな気がしてしょうがなかったのである。
いや、もう最初から組み込まれていたのであろう。
この時点で、シラネーヨは、この反逆に関与する事を、決めた。
( ´ー`)『そうですか。ですが、先客がいるのですよ……。誰とは言えませんが』
/ ,' 3『……先客?』
空を行くNRPの中、ドクオとロマネスクは話をしていた。
内容は、ただたわいもない事。
今まで、どうやってここまできたか。戦争での出来事。
思い出したくは無いけれど、今なら気兼ね無く話せる、そう感じていた。
('A`)「あいつは、元気すぎたんですかね」
( メωФ)「あいつって、ブーン君かい?」
ロマネスクも、ドクオも、もうVIPを抜けた身ということもあり、二等兵、といった堅苦しい呼び方は、極力止めるように努めているようであった。
('A`)「はい。あいつが死んで、みんなが悲しみました。
でも、よく考えてみると、あいつが元からいなければ、
もっと悲しい戦争を送っていたんだろう。そう思えるようになってきたんです」
- 43: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/04(土) 23:08:18.65 ID:MSClLYYf0
( メωФ)「……そうか。ブーン君は、君を成長させたのかもしれないな」
('A`)「今も、ずっと走ってるでしょうね、あいつなら。どこまでも駆けて、行き止まりなんて存在しないんですよ。あいつには」
そして、クーはというと、VRのコクピット内にいた。
最後の戦いに、試作プログラムを持ち出すのも、どうかとは思うのであるが、どうしても試したいものがあった。
川 ゚ -゚)「CPU。どうだ?稼働率を表にしてくれ」
『稼働率73%。実用域ニハ達シテイマセン』
川 ゚ -゚)「むう。まだ推敲が必要か……よし。もう一度出力を上げてくれ」
『了解シマシタ』
川 ゚ -゚)「……欠陥、か。そんなもの、今まで気にも留めていなかった。私にも、あるのだろうな」
(;´ー`)『本当の意味で、先客です。なんせ、博士達と全く同じ要求をしてきている者達と、共にしているんですから』
/ ,' 3『……なんじゃと!?もしかして、ショボン、という名前ではないか?』
( ´ー`)『やはり、ご存知のようで……。博士、ちょっと待っていただけますか?』
シラネーヨは、積荷部分へと急ぐと、クックル達へと主旨を説明する。
最初こそ、何かあると思っていた三人だが、
今このような所で問題を起こすような馬鹿な事はしないであろう、と判断し、共闘することを了承した。
- 44: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/04(土) 23:09:30.90 ID:MSClLYYf0
( ゚∋゚)「もう、形振りかまっている場合では無いだろう。俺達は、やれるところまで行く。
思い出も、何もかも捨てて、目の前の敵を倒す事のみを考えれば、いい」
( <●><●>)「……わかってます」
(´・ω・`)「野望は捨てないけどね」
( ゚∋゚)「……そうだな」
(;´ー`)「行ったり来たりで忙しいよ全く……」
そして、荒巻に、共闘の旨を告げる。
/ ,' 3『そうか。では、今からそちらへと向かう。ショボン殿達にはよろしく言っておいてくれ』
( ´ー`)『はい。わかりました』
- 45: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/04(土) 23:10:45.52 ID:MSClLYYf0
――人の死というものは、環境の変化の中で、一、二を争うほどの大きい出来事である。
死が、人を、いい意味でも、悪い意味でも変化させる。
その変化を、どう持って行くのかは、当人次第なのであるが、やはり、人間としての強さが問われる。
ツンは、父親を愛していた。
たとえ、造られたこの命であったとしても、造ってくれたフサギコを、愛していた。
命に変えて守ると、そう誓っていたのだ。
だが、それは打ち砕かれる。
たった一回トリガーを引いただけ。ただそれだけで、その誓いは破り捨てられるのである。
この戦争において、復讐、恨みというものは、大きな位置を占めていた。
感情に、人が喰われた様に動き、正義の無い戦いが繰り広げられていた。
どれだけの人間が死んだなど、覚えている者など、一人もいない。
だが、周りの人間が、どれだけ死んだか、殺されたかという事を忘れる人間は、一人もいない。
胸に深く、ナイフでえぐられ、傷ついたかのように残るその傷は、一生癒えることの無い、忘れる事のない傷。
- 47 名前: >>46ごめんなさいごめんなさい ◆Cy/9gwA.RE 投稿日: 2007/08/04(土) 23:13:47.14 ID:MSClLYYf0
その傷を、ツンは初めて受けた。
受けたことの無い痛みというのは、想像もつかないものである。
人間誰しも、拳銃で撃たれた時の痛みなど知らない。もちろん、中には知っている者もいるだろう。こんなご時世だ。
だが、そのような痛みなど、知りたくも無い。そう考えるのが普通であろう。
今、初めて感じた、身近な人の死。
そしてその死は、愛した人の死でもあった。
ツンは、涙を流す。
ξ;;)ξ「……お父様……」
押し寄せる、悲しみ。
だが、その悲しみは、時間と共に、怒りへと変わる。
沸々と、煮えたぎるような怒りが湧き上がる。
そして、その感情は、ツンの傷ついた心を喰い散らかし、思い出を、復讐の糧へ変える。
まるで、魔法にかかったように、ツンは怒りに支配された、復讐の鬼へと成る。
ξ゚听)ξ「……」
じゃじゃ馬。
そう呼ばれる理由を、ロマネスク達は、二週間後に知ることとなる。
そして――。
- 48: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/04(土) 23:14:43.60 ID:MSClLYYf0
('A`)「……よう。ショボン」
(´・ω・`)「……ドクオ」
川 ゚ -゚)「相変わらず、無茶ばかりだな。クックル」
( ゚∋゚)「余計なお世話だ」
( メωФ)「シラネーヨ博士。お初にお目にかかります。ロマネスクと申します」
( ´ー`)「ああ。よろしく」
从'ー'从「……よし!」
@^0^@)/「頑張るぞ!!」
/ ,' 3「歓談の所、申し訳ない。決戦は、二週間後。
作戦内容は、クマーの殺害。そして、VIP、ν、ラウンジによる戦争の終結じゃ。
偶然にも、二週間後は、VIPが成立した日と同じ……。今、私達が、本当の平和を導くんじゃ!!!」
『了解!!』
今、少数ながらも、反撃の狼煙を上げる者達が集った。
最終決戦は、二週間後。
舞台は、ν帝国首都、ピチカート。
( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第30話 『感情のままに、生きる』 完
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