( ^ω^)は駆動兵器を操るようです

103: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:19:22.39 ID:aZiKgCjT0

空を、常識では考えられない速度で雷を帯びた光線が駆け抜け、朝焼けに一筋の光の放物線を描く。
一見、低く飛ぶ流れ星のようなそれは、美しく輝いて、街に降り立つ。

大きく閃光を放つと、町に大きな稲光が起こった。

スコープから目を放すクックルの額には、脂汗が浮かんでいた。





( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第32話 『アイアン・ハート』



106: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:22:28.02 ID:aZiKgCjT0

その稲光を確認すると、VRとVPはピチカートへと向かう。
終わりを知らない戦争の終結。

その引導を落とす役目を担っているのは、クー、ロマネスク。
二人は、オペラと対峙する。
モノクロが、朝焼けを介してより一層不気味に映えていた。

(・(エ)・)『そうだよ、そうなのだよ君ぃ。今あるその命、大切にしようとは思わんのかね?
     月並みな言葉だが、今降伏すると言うのであれば、命だけは残しておいてやろう』

( メωФ)『何をふざけた事を言っている。
       私は、フサギコからの、軍人としての最後の願いを叶える為に、ここまで来たのだ。
       その願いが、お前の死だ。引くわけにはいかない』

川 ゚ -゚)『そして、この大陸に平和をもたらす為でもある』

从 ゚∀从『……ぎゃははは!!!お前本当に言ってんの!?
      こんな事をして、本当に大陸が平和になるとでも思ってんのかよバーカ!!!
      お前らも、何人殺してるのか覚えてないくらい、把握し切れてないくらい人を殺してんだろ!?
      そんで今更になって平和、大陸を守る、だぁ?』

(・(エ)・)『その通りだ。フサギコの望む事が、平和に繋がる訳でもなかろう?
      お前達の利害が一致しているともわからん。降伏を勧めるがね』



110: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:24:06.89 ID:aZiKgCjT0

川 ゚ -゚)『ああ。たしかに人はいくら殺したかも覚えていない。平和が訪れるかという事も、確かでは無い。
     だがな、お前達のしている事が非道だと言う事はわかっている。だから、私達は戦うのだよ』

( メωФ)『さあ、その武器を手に取れ』

青い光を放ち、腰に備え付けていた流動エネルギー充電式槌矛『ミヨルニル』を両手で持ち構える。
クーも『オオテンタ』を、突きの姿勢で構える。
吹く風が、少し強まり、戦闘の開始を告げようとした。

(#・(エ)・)『馬鹿には何を言っても通じんという事か……!!!よかろう、葬り去ってやる。
      粉塵も残さぬくらいに、粉々にな!!!行くぞ!!ハインリッヒ!!』

从 ゚∀从『……ひひっ!!楽しくなってきたぜぇぇぇぇ!!!!』

曼荼羅のように、四本の腕を大きく広げるオペラ。
太く、屈強な作りである事が見受けられるその一本一本の腕から、蒸気のようなものが吹き出る。

( メωФ)『クーさん。あれは……』
川 ゚ -゚)『ああ。シラネーヨ殿が言っていた、腕部リミッター解除だろう。攻撃を喰らうわけにはいかなくなったな』

オペラに対する予習ができていなかった場合、このまま確実に壊されていただろう。
作ったシラネーヨさえ、弱点が中々見出せ無いその機体。
非常に柄が長く、振り回せるのか疑問に思えるほどの槌を持ち、ぶんぶんと振り回す。



113: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:25:36.27 ID:aZiKgCjT0

間合いを教えているのだろうか……、二対一の戦闘の中にも、余裕が見受けられた。
脚を半歩分だけ前に出し、下手に槌を構える。
残りの二本の腕は、何をするでもなくダラリと垂れ下がり、動く気配が無い。

だが、その格好が、妙に強さに満ちており、二人は中々攻撃の一歩を踏み出すことが出来なかった。
相手の半歩に制されている一歩。

負けてもいない、始まってもいない戦いに、敗北感を二人は感じていた。

(;メωФ)「前に……出れない……!!」
川;゚ -゚)「……っ」

(・(エ)・)『……どうした?こっちから行ってもいいのかな?
     武器を手に取れと言ったのは、君達であろう?ほら?どうしたのだ?かかって来るがよい』

从 ゚∀从『へへっ。ビビってんのかよこの屑共!!俺はトリガーに手も触れちゃいないぜ?』

安い挑発に乗るわけにもいかない。
だが、攻めないわけにもいかない。

二人の中に、葛藤がすばしっこく走り回る。
そして、クーが動く。
この静寂を、停滞を、取り払う為に。



124: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:29:02.99 ID:aZiKgCjT0

川 ゚ -゚)『随分と、余裕を見せられては腹も立つ。
     とりあえず、そのトリガー。無駄にしない前に……握れ!!!』

クーは、トリガーの傍に備え付けられているボードに、プログラムを入力。
そのプログラムとは、内部に渦巻く流動エネルギーを、一時的に各部分へと集中させ、爆発的な運動能力を得る、といったもの。

赤い機体が、さらに紅く輝く。
その瞬間に、クーの操るVRは、オペラの懐まで迫っていた。
オオテンタを思い切りコクピット目掛けて突き刺そうと、パイロットを殺そうというその一撃が、オペラを襲う。

从;゚∀从『!!!』
(#・(エ)・)『見えんものでは……無い!!』

柄の部分でオオテンタの突きを止める。
正に神業であった。
だがそれにも怯まずに、VRは切っ先を上に持って行くと、オペラの腕ごと弾いた。

腰部分に、強烈な蹴りをかまし、回転する体の力を利用してオペラの頭に手を置き、新体操のように後ろへと回る。
あっという間の出来事に、ロマネスクは反応が遅れたが、チャンスとあらんばかりに槌矛を持ち突進する。
右に揺れる機体。ハインリッヒはトリガーを握り、3,4本目の腕が生を得たように動き出す。



135: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:32:19.55 ID:aZiKgCjT0
(#メωФ)『防げるものなら防いでみろおぉぉぉぉ!!!!』

強烈なゴルフスイング。
そして、オペラの後方で縦に構えるVRのオオテンタ。

川 ゚ -゚)『これで……終わりだ!!!』
(#・(エ)・)『……甘いわ!!!!』

またも、槌の柄で、ロマネスクの槌矛を防ぐ。
そして、ハインリッヒが操る腕で、オオテンタを白羽鳥したのだ。

川;゚ -゚)『なっ!!!』
(;メωФ)『……くっ!!』

从#゚∀从『こんなもんじゃねーんだよ!!!!』

掴んだ刀を捻るようにして、VRごと地面に叩きつけると、後ろ手のまま指の第一関節が開き、バルカンが発射される。
致命傷にはならないが、蓄積されればダメージになるのはわかっていた。
クーはたまらず転がり、オオテンタを離したままその場を離れる。

震えるように、鍔迫り合いをしている槌と槌矛。
VPも、ここで引くわけにはいかないと、力比べになっていたが、そのVPに向かってもバルカンは発射される。



139: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:33:55.97 ID:aZiKgCjT0

(;メωФ)『ぐぅぅっ!!! ……だがっ!!!』

トリガーの側面にあるスイッチを押すと、VPの肋骨のようについていたニードルが、
オペラへと飛び出し、その内の一発が、オペラの前右腕を突き刺した。

(;・(エ)・)『!!!』
( メωФ)『VIPの砦と呼ばれた、この2CH-VPをなめてもらっては……!!』

ニードルを引っ込めて、右腕を槌から引き離すと、ミヨルニルを思い切り胸部へと押し当て、オペラを吹き飛ばした。
ニードルは釣り針のように変化しており、外れることも叶わず、吹き飛ぶオペラの機体と、前右腕は千切れてしまう。

大きく地面に叩きつけられるオペラ。

川 ゚ -゚)『なんと……!!』
( メωФ)『……困るんですよ。なめられては、終わりですからね』

その隙に、VRはオオテンタを拾い、再度構える。
VPも、一歩、また一歩と、倒れているオペラにミヨルニルを持ちながら近づく。



142: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:34:46.53 ID:aZiKgCjT0

(;・(エ)・)「くっ……!!不覚をとった」
从 ゚∀从「思ったより、奴らできるみたいですね。さすが、VIPと言うべきでしょうか」

立ち上がり、片手で槌を持つオペラ。
三本になった腕。
千切れた面からは、夥しいほどの火花が散っていた。

(・(エ)・)「だがな、最後に勝つものは、生に執着をし、粘り強く、意地汚い者だけだ」
从 ゚∀从「それは、わかっていますよ。大統領」

(・(エ)・)「さあ、ハインリッヒ。行くぞ」
从 ゚∀从「はい。どこまでもお供します」

クマーにも、クマーの正義がある。
ハインリッヒにも、ハインリッヒの正義がある。
もちろん、クーにも、ロマネスクにも、クックルにも、荒巻にも、ワタナベにも……ドクオにも。

戦争と言うのは、自我と自我のぶつかり合いなのだ。
理屈で丸めようとしても、とても収拾がつく物ではない。

その収拾をつけ、ねじ伏せるのが、力だ。
正義の元に、力を振るう者達。



146: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:35:46.71 ID:aZiKgCjT0

これが正しいか、と問われれば、正しいとは言い切れない。
では、その戦争を理屈で丸め込もうとして、時間がかかり、被害が広がってもいいのか?と言われれば、否定もできない。

答えが、無いのだ。
戦争とは、そういうもの。

その縮図が、今のこの三機に集約されている。
ある男の頼みを聞くために、人を殺そうとする男。
ある男を守るために、戦争を終わらせようと、人を殺そうとする女。
今の自分を守るために、戦争を終わらせまいとする、男と女。

全て、変わりの無い正義。
正義と言う言葉で片付いてしまうのだ。

人に否定される正義。
正義とは何か、正義とは正しい事を指しているのか、それすらも、もう今は闇に溶け込んでしまっている。

そんな事、わかりきっている者も、沢山いる。
だが、止めるわけにはいかないのだ。



150: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:37:10.18 ID:aZiKgCjT0

(#・(エ)・)『お前らごときに!!!!我が帝国を明け渡してなるものかぁぁぁぁ!!!!!』

強烈なスイングによる、槌の打撃。
VPの左腕、腰のニードルを巻き込み、機体をを砕く勢いで吹き飛ばした。

吹き飛ぶVPに追い討ちをかけるように放たれるバルカン。弾丸が地面と装甲を掠め取る。
反応しきれないほどの素早さでVRへと振り向き、突撃を始めるオペラ。

回避運動をとろうとしたが、先程のエネルギー集中の反動で、反応速度が著しく低下していた。
まともに機体を動かすことも出来ず、3,4の腕で胸の装甲と右腕を掴まれる。

(;メωФ)『ぐっ……げほっ!!!な、なんだあの速度……!!!』
川;゚ -゚)『……!!!くそう!!やはり試作プログラムを持ち出すべきではなかったか……!!』

ゴムが切れるように、右腕の回線が音を立て千切れて行く。
クーは何も出来ぬままに、右腕を毟り取られてしまった。

そのまま胸の装甲に指をひっかけられたまま、上空へと放り投げられると、
巨大なハンマーで、まるで野球のボールのように打ち抜かれてしまう。

煙を吐きながら、低い放物線を描き地面へとゴミのように落とされるVR。
この変化は、一体何が始まったのであろうか。
ただ分かる事は、二対一でも、勝利が危ういという事だけであった。

ロマネスクは損傷報告を急がせる。

――なんとか腕は動くようだが、もうそれほど期待できるものではない。
ニードルは左側が破壊されてしまった。



152: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:39:30.84 ID:aZiKgCjT0

(;メωФ)『……!!!』
(#・(エ)・)『どうしたというのだ!!?これで終わりなどと……ふざけたことは言わないであろう!!?』
从 ゚∀从『もう、降参したって、遅いぜ?』

クーは、口の中にじわりと滲んできた鉄の味を感じていた。
あの一連の動きだけで、これほどまでVRがやられてしまうとは……。
その鉄の苦い味と共に、さらに苦い悔しさが浮かび上がってくる。

負けて、なるものか――。

川 ゚ -゚)『ずっと、ずっとだ。私は戦場に身を置いてきた。その私が、死ねる場所は、只一つ』

川 ゚ -゚)『私が、殺されてもいいと思った相手との戦いの中だ』
(;メωФ)『……』

(・(エ)・)『それが、私だとでも言うのかね?』

川 ゚ -゚)『馬鹿げた事を言うな。お前など、器ですら無い。
     私が認めた男は、もうこの世にはいないのだよ。だから、私は死ぬわけにはいかない』

オオテンタを杖のようにして、VRは立ち上がる。
千切れた右腕が、どこか痛々しく見え、肩ごと抉られていた。

( メωФ)『……そうですね。死ぬわけにはいかないようです。
      戦争をするだけして、後の事は放っておく。そんな無責任な事はできません』

川 ゚ -゚)『私達は、この大陸の未来をいい方向へ向かうように指し示さなくてはならない』



153: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:42:01.52 ID:aZiKgCjT0

(#・(エ)・)『揃いも揃ってぬけぬけと……!!』

クーは、ロマネスクに通信を立ち上げる。

川 ゚ -゚)『もう一度、加速プログラムを入れる。私が突破口を開く。それを逃さず、奴のパイロットへその槌矛を突き刺してくれ』
(;メωФ)『だが……。そんな事ができるんですか?』

川 ゚ -゚)『できるさ』

( メωФ)『勝手に、死なないでくださいよ』
川 ゚ -゚)『死なない。ドクオと約束したからな。ブーンの墓を立てよう、と』

( メωФ)『安心しました。なら、お願いします。これが最後の攻撃です』

VRが、再度紅く染まる。
もう限界を迎えつつある駆動兵器の、最後の鳴動。
クーの目は、真っ直ぐ前方のオペラだけを見ていた。オペラの防御を切り崩せば、全て終わる。ただその一心で、睨む。

川 ゚ -゚)『クマー。お前の戦争は、これで終わる。野望も、何もかもだ』
(・(エ)・)『……お前にできるわけがなかろう。返り討ちにしてやろう』



154: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:43:15.44 ID:aZiKgCjT0

紅が、地面を吹き飛ばす勢いで駆け抜ける。
どこまでも駆けていけそうな脚は、空気の輪を消し飛ばし、地から空を制していた。

一瞬にして、クマーの前左腕を切り落とすVR。
悲鳴をあげている機体に構わずに、刃を切り返し、胸部に斬撃を叩き込んだ。
もちろん、腕を失くしたクマーに反撃の術は無く、ハインリッヒは反応できず……。

川 ゚ -゚)『終わりだと、言ったであろう。お前は、今……』
( メωФ)『……死ぬ!!!!約束、果たすぞ!!!見ていろフサギコ!!!』

(;・(エ)・)『まだだ!!!まだ終わりは……!!!』
从 ゚∀从『……けっ』

槌矛がオペラの胸部に思い切り突き刺さり、そのまま持ち上げる刺さったオペラごと持ち上げるVP。
両腕で支える事のできるギリギリの範囲。

ロマネスクは、この時を待っていた。

(#メωФ)『流動エネルギー……開放!!!!』

緑色の光が、オペラの中に広がる。
ミヨルニルの最終手段。充電した流動エネルギーを、矛先から開放。
強烈なエネルギーを生み出し、小規模超高エネルギー爆発を起こすことが出来るのだ。

そして、その淡い輝きは、オペラを包み込む。
連続して起きる小爆発は、止む事を知らず、オペラであった機体が消し炭のようになるまで続けられた――。



155: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:45:14.92 ID:aZiKgCjT0

ミヨルニルを支えていた両腕は、見るも無残なほどに壊れ、VPは沈黙する。

川 ゚ -゚)『……これで、終わりなんだな』
( メωФ)『はい。これで、終わりです』

作戦は、完了する。
残りは、ドクオとクックルが、ピチカートを制圧すれば、全てが終わりを告げる。

そして、時は少し遡る。

( ゚∋゚)『着弾確認。このまま首都へ進むぞ』
( ´ー`)『了解。積極的に責めて来てね。データを取るいい機会さ』

肩に背負っていたライフルを地面に捨てると、車輪を回し体制を低くする。
地響きのような音が周囲に響き、その轟音と共にセパタクロウは駆け出した。

ドクオは、雷鳴轟く最中のピチカート目掛け、巨大ミサイルを遠慮なく撃ち込む。
もう、できることをするしかない。
頭で考えに考え抜いた、答えの無い結論を胸の支えにして、撃ち続ける。

('A`)『……全弾着弾確認!!!』

12発全弾発射すると、先に出撃したセパタクロウを追うためにブーストを展開する。
森の木々を倒してステップを踏むと、大きく空へ飛び出した。
森林の向こうには、運河が見える。
今から戦場になろう場所は、これほどまでも綺麗なものだったのか。そのような事をドクオは考えた。



158: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:46:17.16 ID:aZiKgCjT0

('A`)『クックル!!余り出過ぎるなよ!!』
( ゚∋゚)『ああ。わかっている。それとな、レーダーを見ろ。お客さんだ』
('A`)『……!?』

レーダーを見ると、スレスト湿地側から高速接近する熱源反応を感知していた。
ドクオは、このスピードに見覚えが無かったのだが、クックルには確かに見覚えがあった。

ツン。

間違いない。
あいつだ。

( ゚∋゚)『気をつけろ!!あいつは……強いぞ。認めたくは無いものだがな』
('A`)『……二対一で一気にかたをつければいい!!』

ブーストを調整し、VBLが向かってきている方向を向く。
セパタクロウは前進し、多方向からの攻撃を展開するようにした。少し湿っている土壌か、車輪が少し滑り気味に感じた。
あっという間にレーダーの距離は縮まり、クックルの目に、またあの青が映りこんだ。

( ゚∋゚)『……しつこい奴だ』
('A`)『あれが……VBL』

大きな翼を広げ、空に浮かぶ駆動兵器をまじまじと眺めるドクオ。



162: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:47:27.75 ID:aZiKgCjT0

ξ゚听)ξ『……どっち』
('A`)『……?』

ξ゚听)ξ『……どっちか、って聞いてるの。答えなさい』

何を言っているのだろう?
ドクオは、力無く空中に漂う駆動兵器から発せられる声に耳を傾けながらも、警戒を忘れない。
すると、クックルが口を開く。

( ゚∋゚)『俺だ。俺がやった』
ξ゚听)ξ『あんたじゃないのはわかってるわ。弱者は、引っ込んでなさい』

何を言っているのか把握できないドクオは、クックルへと通信を繋ぎ、何の事を問い詰めているのか聞いた。

('A`)『な、なんなんだ?何がやったやってないなんだ?』
( ゚∋゚)『お前にはまだ話していなかったな。あいつはツン。俺の兄妹。そして、フサギコの娘だ』
('A`)『……なるほど。あいつも敵討ちって奴なんだな』

( ゚∋゚)『察しがいいな。どうにかしてこいつを切り抜けないといかん』
('A`)『そうだな……』

クックルとの回線を切り、ドクオはCPUに何やら指示を始める。



165: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:48:29.70 ID:aZiKgCjT0

ξ゚听)ξ『……そこの黒い駆動兵器。あんたなの?答えなさい』
('A`)『そうだな……。俺っていったら、お前はどうするんだ?』
(;゚∋゚)『……なっ!!』

翼を大きく開き、アンブレラを全基VBに向けると、ツンは答える。

ξ゚听)ξ『殺すわ。遠慮無く、全力でね』
('A`)『そうか。じゃあ言うぜ……』

ドクオの左目に、スコープが降りてくる。
VBLをロックすると同時に、その言葉を口から放った。

('A`)『俺が、フサギコを……。お前の父親を、殺した』
ξ゚听)ξ『私、冷静を装ってるけど、本当に頭にきてるの……』

(#'A`)『……頭にきてんのは、俺も一緒なんだよ!!!!!!!!』
ξ#゚听)ξ『お父様が感じた怒り、痛み、屈辱……。全部、全部あんたに返してあげる!!!受け取りなさい!!!』

幾重にも束ねられた光線が、VBへと撃ち放たれる。
それに応戦するように、VBもスターマインを構え、ぶちかました。

空中にて接触し、大きな爆煙を上げる双方の攻撃。
横に長いその煙を掻き分けるかのよう二、VBが突進を図る。



171: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:51:11.52 ID:aZiKgCjT0

(#'A`)『俺も、お前と一緒で一番大切な人が、この戦争で死んでんだよ!!!』

フレキシブルアームを展開し、VBLの翼を掴もうとしたが、驚異的な加速力により避けられてしまう。
それにも構わずVBはブーストを展開し、追跡を行う。

ξ#゚听)ξ『ならあんたにも、この辛さはわかるでしょう!!!それがわかっていて、なぜ殺したの!!!』

接近してくるVBに構わずアンブレラを撃ちまくるも、巧みにかわされ命中しない。
ドクオは、フレキシブルアームの拳部分に仕込んでおいたカッツバルゲルを展開させると、一気に距離を詰める。

ξ;゚听)ξ『……っ!!!』
(#'A`)『クックル!!!後ろに回れ!!!』
(;゚∋゚)『……了解』

ドクオの豹変振りに戸惑いを隠せないクックルも、ブーストを展開し、VBのプレッシャーに物怖じしているVBLの背後をとろうと加速する。
空中では、光線が飛び交っている。まるで、大衆漫画の1シーンの様な場面が展開されていた。

(#'A`)「一発でもどこかに喰らえば……っ!!的になっちまう!!CPU!!”肩の”を出せ!!」
『了解。ショルダーカノン展開シマス』



172: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:52:07.18 ID:aZiKgCjT0

ξ#゚听)ξ『喰らえぇぇぇぇ!!!!』
(;'A`)『これを使うと、タネがバレちまうが……しょうがねぇ!!』

空中にて一瞬静止したVBを見逃さないツンの、全弾発射。
30を超える光の束が一つになり、ドクオが乗るコクピットへと突き刺さるかの様に飛び出した。

光が、黒の機体を飲み込む――。
まるで、巨大な運河から、河川へと枝分かれするかのように、巨大な光がVBを吹き飛ばした。
そう、ツンは確信していた。

だが、光の先にいたのは、紛れも無く消し飛ばしたはずの『黒』。
肩に二丁のビームカノンを、腰にはビーム粒子の散弾銃を構えていた。

(#'A`)『お前だけじゃ……ねぇんだよ!!!』

ξ;゚听)ξ『くっ……!!!』
( ゚∋゚)『ドクオ……』

バチバチと音を立てるその口径から放たれる青い光線が、広範囲に拡散する白い光の塊が、ツンの操るVBLへ向けて発射される。
発射の反動によって、VBが大きく体を仰け反らざるを得ないほどの高威力の圧縮光線がVBLに直撃した。
地面に叩きつけられる寸前に、ブーストを展開して直撃を逃れると、膝をついた体制で、すぐにVBLの方を向く。



173: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:54:11.93 ID:aZiKgCjT0

(;'A`)『俺が分解装置積んでいるかどうか、確認したのか……』
ξ゚听)ξ『……あなたより、何もかも上を行く私が、考えも無しに連発すると思ってたの?』

乗せられていたのは、俺の方か――。
ドクオは、自分が怒りに任せて、命を捨てるように行動していたのを後悔する。
やはり、事は勢いだけではうまくいかない。

( ゚∋゚)『余所見をしている暇は無いぞ……ツン!!!』

地面から、土煙を上げながらスライドをし、腕部ミサイルを放つクックル。
空に浮かぶVBLへと一直線に向かう4発のミサイルを、ツンは何てことも無く切り裂いた。
真っ二つに別れ、放物線を描きながらヒョロヒョロと飛び爆発する4発だったミサイル。

ミサイルを裂いたのは、三本ずつVBLの両脚に展開された爪。
その爪をクックルへ向け、威嚇する。

(;゚∋゚)『……っ』
ξ゚听)ξ『この前は、よくもやってくれたわねクックル。
      そこの黒いのに乗ってる奴はちょっと待ってなさい。そうね……2分ってとこかしら』

翼をたたみ、体勢を反転させると、クックルへ向かい急降下を始めるVBL。

ξ#゚听)ξ『……こいつを殺すのに1分もいらないから!!!』
(#'A`)『……させるかよ!!!』



175: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 21:55:37.10 ID:aZiKgCjT0

アンブレラを連射し、クックルの退路を狭める。
猛スピードでバックし、地面をえぐるような威力の光線を避けるクックルを、逃がすものかと距離を詰めるツン。

ξ#゚听)ξ『甘いのよ!!!』

光線による爆発で、視界が塞がれたセパタクロウの胸部を、思い切り爪で叩ききるVBL。
装甲板は一瞬にして真っ二つにされ、カノンの砲身も裂かれてしまった。

(;゚∋゚)『ぐぅぅ!!!』

苦し紛れにVBLの右脚を掴むも、一瞬にして切り裂かれてしまう。
あっという間に、セパタクロウの胸部と左腕は地面に落とされてしまった。

(#'A`)『おりゃあぁぁぁぁ!!!!』

クックルから気をそらせようと、ドクオは先程と同じ肩のビームカノンをがむしゃらに放つ。
それさえも、VBLがかざした翼のまだら目の模様に吸い込まれてしまい、何の効果も得られない。

ξ#゚听)ξ『大人しく……してろ!!!』

胸部のバルカン砲をドクオへ向けるツン。
容赦なく襲い掛かるその弾丸を、腕を交差させ何とか防ぎきると、VBLがこちらへと向かってきていた。



181: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 22:01:25.75 ID:aZiKgCjT0

ξ#゚听)ξ『死にたいなら……』

右脚の爪を大きく振りかざし、突進する勢いを足して踵落としを放つ。
即座にカッツバルゲルを爪にかち合わせ、防ぐドクオ。稲光のような火花が飛び散り、お互い力比べに持ち込んだ。

(;'A`)『……っ!!!』
ξ#゚听)ξ『死ねぇぇぇぇ!!!』

ドクオに気がいっている隙に、セパタクロウは後退する。
このまま背後を攻撃したいのだが、手負いのこの状況では難しい。

カノンもやられてしまっているし、もしやられていなかったとしても、
あの翼部分についている粒子分解装置を起動されてしまっては意味が無い。

(;゚∋゚)『……不覚を取った!!』
(;'A`)『と、とにかくNRPに戻れ!!』

(;゚∋゚)『もうレーダーが効いていない!!こうなったら……』

こうなったら、VBLの背後をとって攻め立てるしか無い。

先程の考えを撤廃し、車輪を回して、鍔迫り合いになっている二機の駆動兵器へと突進する。
警告音など無視して、そのままVBLへ強烈なタックルを浴びせる。



186: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 22:02:26.57 ID:aZiKgCjT0

火花を上げながら大きく吹き飛ぶVBL。
翼を開き、そのまま空中へと舞い上がると、地上にいる二機に光線を発射する。
VBが身を挺して、光線粒子を分解すると、その影から隠れてセパタクロウがミサイルを撃ち込んだ。

( ゚∋゚)『片腕でも、引けは取らんぞ!!!』
(;'A`)『クックル。言っとくけどこの粒子分解装置、2分に一回程度しか撃てないぞ……』

(;゚∋゚)『……散らばれ!!』

(;'A`)『言わんこっちゃない!!』

ξ#゚听)ξ『何ごちゃごちゃ言ってんのよ!!!』

緩いカーブを描きながら、ツンの周りを走るクックル操るセパタクロウに目掛け、アンブレラを撃ち込む。
まずセパタクロウに集中して攻撃をし、一機になってからVBを倒す。
こうするのが定石である。

が、余りにもあの黒いのが邪魔に感じたツンは、ある行動に出た。

ξ゚听)ξ『……CPU。独立プログラムをアンブレラに当てて、セパタクロウをロック。
      とりあえず45秒掃射し続けなさい。左翼は7番まで、セパタクロウの前方5m。
      8番から15番はセパタクロウ向かって右方向に。
      右翼7番まで、左翼7番までと対称に、8番からも同じく。着脱準備しなさい。それと、今打ち込んだプログラムを実行』

『プログラム読ミ込ミマシタ。了解。着脱開始シマス』



190: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 22:04:20.95 ID:aZiKgCjT0

――誰が、そう考えたであろうか。

ドクオと、クックルは驚きを隠せなかった。
目の前で、青く輝く翼と、青く輝く機体が、二つに分かれたのだ。

スルリと外れ、地に降り立った、翼を失くした『青』。
戦闘機のように形を変え、セパタクロウの上空を、隙を伺うように旋回する『青』。

二つの『青』が、ドクオとクックルを死に追いやろうと現れたのだ。
クックルは、その青を見上げる。

( ゚∋゚)『……さすが、と言うべきか……』

ドクオは、その青へ向かい、構える。

('A`)『分離するとは……予想外すぎるだろ』

ξ゚听)ξ『クックル。あんたは私の手のひらで踊らされるのよ。今からね』
( ゚∋゚)『……』

上空を旋回している青の戦闘機が、キッと動きを変え、
クックルへ向かい光線を発射するのと同時に、青の機体もブーストを展開し、土煙を上げながらVBへと走り出す。

ある球技のタックルのような姿勢で、ただ直線に進むVBLに物怖じしたか、ドクオは一歩下がってしまった。



197: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 22:05:51.63 ID:aZiKgCjT0

(;'A`)『……っ!!』

ドクオが驚いたのは、ただ真っ直ぐ突っ込んでくる事ではない。
今までとの戦闘スタイルが全く違うことに驚いたのだ。遠くから光線を的確に発射し、相手を撃ち抜くスタイルだと思っていた。

現に、ドクオは、駆動兵器を操る者には、その性格が大きく関わってくることを確信していた。
だが、今目の前に映っている光景は、その確信を打ち砕く物であった。

慌てて腰に装着したスターマインを取りはずし、ショットガンとして構えるも、その躊躇いが、撃つまでの時間を与えなかった。
右脚で薙ぐように、手に持ったスターマインの片方を切り裂かれ、小爆発を起こす。

空中を舞うように連続とした回し蹴りに翻弄され、防戦一方になる。
ドクオは、右腕のカッツバルゲルを再度展開し、突き刺し抉るようにVBLの胸部へと突き出す。

(#'A`)『……ちくしょう!!!!』
ξ#゚听)ξ『遅いのよ!!あんたはぁぁぁ!!!』

フレキシブルアームを掴まれ、攻撃を止められるドクオ。
ツンはそのまま、懐へと潜り込むと、VBを背負うようにして放り投げる。



198: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 22:07:31.37 ID:aZiKgCjT0

景色が一転し、地面に強く叩きつけられ、何が起こったのかわからないドクオ。
そこへ、踵の部分にあたる爪を展開し、胸部へと思い切り踏みつける要領で突き刺す。

少し左に逸れたか、わき腹の部分を貫通。
刺された部分は火花を拭き、装甲にコゲ目を付ける。

ξ゚听)ξ『何回耐えられるかしら……?』
(;'A`)『ぐっ……らぁぁ!!』

再度振り下ろされる踵の爪。

それを見切ったかのように、脚を掴むと、ブーストを急展開し、地面を擦りながら加速を始めるVB。
脚を掬われ、地面に尻餅をついたような体制になるVBL。

ξ;゚听)ξ『……っ!!』
(;'A`)『ブーンにもらった腕、なめるなよ!!!』

バチン!
大きな音を立ててフレキシブルアームのロックを外すと、ブーストの勢いを維持したまま、砲丸投げのようにVBLを放り投げる。
と言っても、掴んだ手は放さない。フレキシブルアームの伸縮性を利用して、何度も何度も引きずり回し、地面へとVBLを叩きつける。



200: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 22:09:51.34 ID:aZiKgCjT0

(#'A`)『おぉらぁぁぁぁぁぁ!!!!』
ξ; )ξ『……っ!!!』

地面に大きく皹を入れ、めり込むVBL。
そのままフレキシブルアームを元に戻し、VBLを近くへと引き寄せると、カッツバルゲルを左腕で構える。

(#'A`)『くらぇぇぇぇ!!!』

カッツバルゲルが、深く腹部分に突き刺さり、刺さった断面が勢いよく沸騰し、溶け出す。
火花と、化学反応を起こした煙が勢い欲噴出す。

ξ#゚听)ξ『……なめないでよ!!!』

両手を頭部の上で組み、ハンマーパンチの要領でVBの頭部へと振り下ろす。
メインカメラにぶち当たり、大きく視界が揺れるドクオ。
しかし、ここで離す訳にもいかない。
刺さったカッツバルゲルをより深く刺し込もうとまた一歩踏み込む。金切り声のような音を立てて、ぐいぐいと刃が減り込む。

(;'A`)『止まれ……!!!止まれぇぇぇ!!!』

(;゚∋゚)『くそっ!!!なんだこいつは……!!』

避けても避けても、ぴったりとセパタクロウの動きに合わせて放たれる光線。
ミサイルを放ち、沈めようとするも、高速旋回でかわされる。
クックルは、認めたくは無いが、手のひらで踊らされているような、そんな感覚に支配されつつあった。



201: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 22:11:48.60 ID:aZiKgCjT0

(;゚∋゚)『ただの戦闘機一機!!手負いでも何という事は……!!』

口でそうは言えても、なぜか打つ手打つ手を封じられる状況。
次々と地面を追いかけるようにして襲い掛かる光線を、車輪を駆使しながら避けるセパタクロウ。

(;゚∋゚)(避けるのも……計算されているのか?どこまで読めるんだアイツは……)

そう考えた瞬間に、打ち抜かれる右脚関節部。
膝をつくと同時に、何十本もの光線が、一斉にクックルへと向けられる。

(;゚∋゚)『……!!!』

咄嗟の判断であった。

自分のミサイルを、左腕を地面に刺し、格納されたミサイルを使い、腕を犠牲にして爆発させる。
その爆風で光線を打ち消したのだ。

両腕が吹き飛び、右脚を打ち抜かれ、何も出来ずにその場に沈黙するセパタクロウ。

もう次は避けることが出来ない――。



205: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 22:12:43.12 ID:aZiKgCjT0

(#'A`)『おらぁぁぁ!!!』

刃を、徐々に上へとスライドさせて行く。

コクピットごと真っ二つにしてやれば、確実に止まる――!!!
それを防ごうと、ハンマーパンチを何発も繰り出すVBL。

ξ;゚听)ξ(……接近戦に持ち込んだのがまずかったわね……)

頭部を完全に破壊すると、VBのメインカメラは機能しなくなった。
グシャグシャになった頭部を、さらに叩く。

ξ#゚听)ξ『これで……!!!:』

右腕を急に上へと翳し、手刀を作ると、破壊された頭部に、思い切りそれを突き刺した。
一気に手刀が減り込む。

そう。ツンの狙いは――。

ξ#゚听)ξ『直接!!!殺す!!!』

コクピット。
先程までのハンマーパンチは、直接攻撃する為の突破口を開くためのものであったのだ。
そして、ドクオの眼前に現れたのは、巨大な駆動兵器の、指。



209: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 22:14:01.45 ID:aZiKgCjT0

(;'A`)『……うわあああ!!!!!!!』

指を曲げられでもしたら、死ぬ。
腕を少しでも動かされれば、死ぬ。

死が頭を巡り、ドクオに恐怖を植えつける。
あの時は、死んで楽になろうと思っていた自分は、どこへ行ったのであろうか。
もし今、自爆装置を起動すれば、きっと楽になれる。
ブーンの元へ行けば、きっと楽になると思っていた自分はどこへ行ったのか。

そんな自分に、嫌気がさした。

そして、その心境の変化は、危機的状況に置かれたドクオを大きく変える。

(;'A`)『……おらぁぁぁ!!!!!』

カッツバルゲルを抜き、両腕を自分の胸部へとやると、勢いよく装甲を引き剥がすドクオ。
鉄片や、コードが飛び散り、そのままブーストを使い後退する。
突き刺した腕を取り除くための、ドクオが考えた唯一の案であった。

ξ;゚听)ξ『なっ……!!自分で自分の装甲板を……!!?』
(#'A`)『喰らえぇぇっぇぇぇぇ!!!!』

余りにも予想外な行動であった為、ツンに隙が生まれ、動きが一瞬止まる。
仰け反ったままの体制。
ちぎった装甲板を、そのままツンへ――振り下ろした。



211: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 22:15:14.31 ID:aZiKgCjT0

ヴィプクロメタリウムの固さは、駆動兵器にて実証されている。
振り下ろされた装甲板は、VBLの右肩に減り込み、そのままVBLごと地面へと伏せ倒した。
コクピットが剥き出しになり、ドクオは肉眼でツンの操るVBLを見る。

ξ )ξ『……くそっ……』

荒野に吹く風がドクオの、無意識に流れていた涙で濡れた頬を冷たく撫でる。
そのまま倒れこむように、VBLのコクピットへとカッツバルゲルを突き刺すドクオ。


(;A;)『……ブーン!!!見てるか!!!!
   これが俺の……俺の出した答えだ!!!
   何があっても、生きて……生きて……!!』


何度も、何度も。
VBLが動きを止めているのにも関わらず、突き刺し続ける。
動く可能性がある限り、突き刺し続ける。


(;A;)『お前のいない世界を……生きて……!!!お前が見れなかった世界を……!!!』



最後の――。


一刺し。



213: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 22:16:56.24 ID:aZiKgCjT0

(;゚∋゚)「……。助かった……のか?」

急に力を失くし、墜落する『青』の戦闘機。
クックルを生かそうとしたのは、ドクオの執念か。それとも運命であったのか。

(;A:)『全部……!!!見てきてやる!!!だから、待ってろ……ブーン……。土産話、沢山してやるから……』

そして、動かなくなった駆動兵器。
ツンは死に、フサギコの残した怨恨は消え、ドクオは戦争の終結の前に、己の戦争の終局の意味を知った――。
だが、まだ終わりではない。
全てを終わらせるのは、もうすぐ先である。

(;A;)『墓を……墓を立ててやれる……。すぐに立ててやるから……もう少しだけ、もう少しだけ待ってくれ……』

( ゚∋゚)『ドクオ……。後は、クマーだけだ。急ごう……と言いたいのだが』
('A`)『……ぐすっ。ああ、もう動けねぇや』

( ゚∋゚)『俺もだ。戦争の終局を祈って、見守っている事しか、できないようだな』

('A`)『……戦争は、そんなもんだ。自分の知らないところで動いて、自分の知らないところで型がつくものだと、俺は思ってるよ』



216: ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/11(土) 22:18:15.55 ID:aZiKgCjT0

二人は、動かぬ駆動兵器から降りて、風がきつく吹きすさぶ荒野へと立ち尽くす。
爆発が起こり、銃声が聞こえる。
だが、どこか落ち着いた空気が漂い、ドクオ達に安心感を与えた。

川 ゚ -゚)『こちら、クー。クマーの撃破に成功。応答を願う』

('A`)『こちらドクオ。想定外の駆動兵器と戦闘の末、勝利。
   ですが、こちら二名負傷。ピチカートの制圧確認までは……、いけそうにもないです。すいません』

川 ゚ -゚)『ならば、私が行こう。かろうじて動ける。もうすぐ索敵妨害が解ける頃だ。もう少しの我慢だな』
('A`)『戦争は、終わったんですか?』
川 ゚ -゚)『ああ。終わったよ。それと……』

('A`)『……それと?なんですか?』
川 ゚ -゚)『自爆装置、使わなかったんだな。よく、頑張った』
('A`)『……。知ってたんですか』

川 ゚ -゚)『ああ。その時に止める事の出来なかった私を、許してはくれるか?』
('A`)『許すも何も……。もう、あんな事はしません。こんなに早く行けば、やっぱブーンに怒られそうで』
川 ゚ -゚)『……そうだな。ブーンの分まで、生きて行こう』

('A`)『……はい!』


音を立てることもなく、俺の戦争は、終わった――。


( ^ω^)は駆動兵器を操るようです 第32話『アイアン・ハート』 完



戻る最終話