( ^ω^)は駆動兵器を操るようです

2: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 17:53:49.08 ID:BkAIaKQ00

あの戦争から――。
随分と平和になったこの大陸。

俺達が知らない間に、水面下で進められていた平和への一歩から、もう8年になる。
気付けば、俺は所帯を持ち、この国と同じく、命をかけて守るべき存在を抱えていた。

正義の為に失われた命を弔う。
正義の中に生まれてきた命を祝福する。

統一国民全員が、そう同じ事を願っているとは、思ってはいなかった。
今日も、俺達は平和の為に、少数派の悪意に満ちたエゴを打ち砕く。

国と、家族を守るために。





( ゚∀゚)は戦うようです



4: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 17:55:03.81 ID:BkAIaKQ00


『3番、4番!!早く建物奥の非常ドアを塞げ!!45秒後に突入する!!』
『了解!!』

手に残る金属の苦い臭い。
どこからかこだまする人々の恐怖に満ちた叫び声。
口に渦巻く奇妙な味。

(;゚∀゚)『急げ!!人質の被害を一人でも減らさなければいけない!!』

――ああ。
俺は反政府ゲリラの立てこもりを鎮圧しようとしている最中か。
ぼーっとしていては命を危険に晒すことになる。
気を、引き締めねば。

(;゚∀゚)『3…2…1……、突入!!!』

喧騒に紛れて、音を立てないようにして侵入していく部隊。
少ししてから、ジョルジュも正面入り口へ手榴弾を放り投げ、言う。

( ゚∀゚)『……よし。俺達も突入するぞ!!』



6: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 17:56:28.49 ID:BkAIaKQ00

―――
――


『……あ…た。あな……!!』

( ぅ∀゚)「…ぅあ?突入だぞ…、ってああ……。朝か」
('、`*川「朝か…って。もう何時だと思ってるの?今日から珍しく4日も休暇が取れて、
     ヘリカルと私を連れて動物園連れてってくれるって言ってたじゃない!!」

……すっかり忘れてた。
そうジョルジュが言うと、妻であるペニサスが更に不機嫌な顔をした。
うっかり口から滑ってしまった言葉をうやむやにしようと、必死にペニサスを宥めるジョルジュ。

夢の中でさえ、昔の突入作戦を展開している自分にうんざりした。
部下からも、最近疲れているんじゃないか?などとよく聞かれる。
それを考えて休暇を取ったというのに、こんな様では……。

(;゚∀゚)「ああ変な夢を見て気分が悪ぃ!!ちょっとシャワー浴びて来るから、朝飯頼んだ!!」
('、`*川「はいはい。じゃあヘリカルとミセリも一緒にお願い」

ミセ*゚ー゚)リ*(‘‘)*「「……パパ!」」

( ゚∀゚)「うほほ可愛い可愛いヘリカルたんミセリたん!!パパと一緒にシャワーあびまちゅか〜?」
*(‘‘)*「あびる!あびる!」
( ゚∀゚)「おぉ〜そうかそうか!あびるのはいいけど優れちゃあ駄目ですよ〜」



9: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 17:58:10.56 ID:BkAIaKQ00

ミセ*゚ー゚)リ「あびるが……」
*(‘‘)*「すぐれる?」

('、`*川「二人がそんなネタ分かるはず無いでしょ!!とにかくお願いね!!」
( ゚∀゚)「あいよ!!ヘリカルちゃ〜ん。ミセリちゅわ〜ん。いきまちゅよ〜」

ミセ*゚ー゚)リ*(‘‘)*「はーい!」

自分とヘリカルとミセリの体を洗い、シャワーから出る。
リビングへ行くと、ペニサスが朝食を用意して待っていた。
ジョルジュが住んでいるこの場所は、元ニーソク国領オウトウ区域。

かつての戦争で、ツンのVBLとポイントへ移動中のセパタクロウが戦闘を繰り広げた場所からちょうど北西に位置している。
ニーソク国領は非常に豊かな土地で、戦争が終了し、統一国に至るまでのこの7年で、住宅街と農地が広がるのどかな地方へとなった。

( ゚∀゚)「うほっ!!これは美味そう!!さすが俺の嫁だな!!」
('、`*川「……もう。早く食べちゃってね」

ミセ*゚ー゚)リ「いただきます!」
*(‘‘)*「いただきま〜す!」



12: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:00:05.49 ID:BkAIaKQ00

ジョルジュは、戦争が終了した4年後に、妻であるペニサスと結婚した。
出会いは単純なもので、上官からの見合いの申し立てであった。

その頃はまだ、ジョルジュは女性を『乳のついた人間』としか考えておらず、
見合いはとりあえず顔を出して断ろう。
そう決めていた。

だが、ペニサスの強気な態度になぜか惹かれたジョルジュは、
お見合いをした後も、果敢にアタックをし続けて結婚にこじつけたという。

惹かれた理由は、強気な態度とジョルジュ当人はずっと言っているが、
長く付き合ってきたドクオやショボン曰く、完全に乳だと言っている。

( ゚∀゚)「いや、でもホントに家で食う飯はうめぇや。
     軍のに慣れちまうと、どうも舌が貧乏になっちまっていけねぇ」

('、`*川「なら言ってくれればいいのに。
     父さんに言えば私達だって基地内の居住区へ入れてもらえるのよ?
     地下だけど、物価は安いし、他の家族も沢山いるらしいじゃない」

( ゚∀゚)「ん〜……。でも、それだけはしたくねんだよ」
('、`*川「……どうして?」

焦げ目が綺麗についた半熟の目玉焼きを、フォークで美味く突き刺して口に運ぶジョルジュ。
ペニサスへの答えを間延びさせるかのように、ヘリカルの口の周りについたケチャップを拭き取る。



13: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:01:20.55 ID:BkAIaKQ00

( ゚∀゚)「いやさ、言うのはちょっとこっぱずかしいんだけどよ……」
('、`*川「なになに?」
*(‘‘)*「なになにぃ?」

(;゚∀゚)「か、帰る家があるから頑張れるっつーか……」

ごにょごにょと口を間誤付かせながら言うジョルジュを見て、ペニサスはニヤリと笑う。釣られてミセリもニヤリと笑った。

*(‘‘)*「なんでママとミセリちゃんはわらうの?」
ミセ*゚ー゚)リ「しっ!大人の世界なの。ヘリカルしーっ!」
*(‘‘)*「おとなのせかいってむずかしいんだね!ヘリカルしーっしてる!」

(;゚∀゚)「ばっ……!!ミセリ何言ってんだ……というか何処で覚えたんだ!!」

少し真剣な眼差しをしたペニサスが、ヘリカルのようにジョルジュの口についたケチャップを拭い、言う。

('、`*川「あなたが帰って来たい家にするように、私も、頑張るから」
(;゚∀゚)「お、おう……。じゃじゃ、じゃあ気を取り直して、車動かしてくるから待ってな!」



15: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:03:03.51 ID:BkAIaKQ00

いそいそと食器を流しに置くと、余っていたミルクを飲み干し、クローゼットへ向かう。
クローゼットを開くと、軍人の鑑と言うべきか、迷彩服や軍服が所狭しと並べられていた。
ここでまた、軍の事ばかり考えていた自分に嫌気が差す。本日二度目だ。

服を掻き分けて奥に手を突っ込む。
最後にいつ着たか覚えていないシャツを、そのままタンクトップの上に被せて着る。
少し伸びたこの茶色がかった黒髪も、子供達を連れて回るには邪魔なので、ゴムでポニーテールのように括っておいた。

財布はペニサスに任せるとして、車のキーを持ち少し離れたガレージへ行き、
少し型の古い、くすんだ黄色の車にエンジンを入れた。

( ゚∀゚)「それにしても……。戦争が終わって七年。まーだ安心できないってのは当たり前なのかね」

などと言う事をぼんやり考えながら、車を玄関前まで回す。

二回ほどクラクションを鳴らし、よほどミセリ達が楽しみにしていたのか、
助手席に置いてあった、今から行く動物園のパンフレットを眺めていた。

( ゚∀゚)「戦争前は、こんな娯楽少なかったもんな。ふむふむ、小鹿か……。
     少し臭いがきついけど、野戦でなら、まあこれくらいなら食え……」

('、`*川「……何が食えるって?」
(;゚∀゚)「おぉぅ!?じ、準備はえーな」

('、`*川「ほんっと、体の芯まで軍人なんだから!」
*(‘‘)*「だから!」
ミセ*゚ー゚)リ「だから!」

( ゚∀゚)「すまねぇすまねぇ!!じゃあ気を取り直して行くぞ!乗り込め乗り込め!!」



17: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:04:48.28 ID:BkAIaKQ00

助手席にミセリ。後部座席にペニサスとヘリカルが乗り込むと、動物園のあるビィ地区へと車を走らせた。
1時間ほどで着くので、少しゆっくりと、景色を楽しむようにのどかな道を走らせる。
こんな緩やかな時間を過ごせる機会というのは、中々無い。

その動物園があるビィ地区は、都会寄りの地区なので、人が多い。
徐々に道も広くなり、横を通り過ぎる車や、信号が増えてきた。

この七年で、ここまで変わるとは誰が予想したであろうか。
国境戦争の頃は、道という道が少ないほどであった。

だが今では、ドクオやクックル達の頑張りで、これほどまで過ごしやすくなってきている。
自分が考えた統一国草案も、少しは平和の役に立っているのであろうか。そんな事もハンドルを握りながら考えた。

( ゚∀゚)「大分車も多くなってきたな。もうそろそろか?ちょっと地図見てくれ」
('、`*川「あとちょっと……かな。このまま真っ直ぐよ」
( ゚∀゚)「了解」

すると、大きな看板が見えた。
『マンモス動物園』

名前の通り、大きな動物園だ。この大陸外からの動物を輸入して、展示しているらしい。
この大陸では、ここでしか見る事のできない動物がいる……と、謳い文句のようにパンフレットに書いてあった。

警備員に誘導され、駐車場へと車を止めると、子供達は一斉に飛び出した。
余程楽しみだったのであろう、ジョルジュにも自然と笑みが毀れた。



19: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:06:09.23 ID:BkAIaKQ00

( ゚∀゚)「へへっ。急がなくても動物園は逃げやしねーぞー!」
*(‘‘)*「にげちゃうかもしんないよ!だからパパママはやく!」

ミセ*゚ー゚)リ「何見ようかな〜?」

( ゚∀゚)「お姉さんでも、ミセリもまだまだ子供だな」
('、`*川「そりゃあそうじゃない。ミセリだってまだ3歳なんだから」

ミセリは、結婚の翌年に出来た第一子。三歳。

ヘリカルは年子で、二歳だ。二人とも、親を驚かせるようなスピードで成長している。
ちょっと任務に行って帰ってくれば、ハイハイをしていたヘリカルが、もうヨチヨチ歩きをしていたくらいだ。

('、`*川「ほら、ミセリ達が怒ってるわよ!いきましょ!」
( ゚∀゚)「おう!」

ペニサスが持っていたランチバスケットを代わりに持ってあげると、ジョルジュは子供達へと向かった。

また3日もすれば、またいつ家に帰られるかわからない軍生活だ。
いい父親を見せておかないと、嫌われちまう。

だが、そう意気込むジョルジュを他所に、ある悪意が動物園を狙っていた。



20: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:08:14.74 ID:BkAIaKQ00

『……この動物園にいるタントオタベゾウがいるんだな?』
『ああ。丸ごと一頭が望ましい』

『だけど……。こんな目立つやり方していいのかね?キメラをもう一度作るなんて知れたら……』
『馬鹿野郎。でっかくしねぇで何になるというのだ?今のヌルい統一国政府に知らせてやるんだ。
俺達、反政府集団の反撃の狼煙という奴を!その為に、これだけやってきたんだ』

『ああ、そうだね……』

――※――

( ゚∀゚)「おいおい見ろよ!シマが迷彩模様みたいじゃねーか!!」
*(‘‘)*「すごーい!!」
ミセ*゚ー゚)リ「あれは…マダラシマシマウマって言うんだって!!」
( ゚∀゚)「ややっこしい名前だな!!」

('、`*川「子供よりはしゃいでどうするのよ」
(;゚∀゚)「いっいや。ついついはしゃいじまった」

('、`*川「ふふっ。私ここで待ってるから、あなたも楽しんでくればいいじゃない」
( ゚∀゚)「じゃ、じゃあお言葉に甘えさせてもらうか……なっ!!よし!ミセリとヘリカル!次はクビミジカイケドキリン見に行くぞ!」

――※――

『……準備はできているか?俺達に残された駆動兵器は3体。
 檻を奪取しさえすれば、撤退する。ここは軍基地から遠い。
 それほど急がなくとも、追いつかれること無く研究所には帰られるだろう。よし、カウントを始めろ』



23: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:10:41.48 ID:BkAIaKQ00

/ ゚、。 /『3…2…1……』

【+  】ゞ゚)『……やれ』

合図と共に、動物園の周囲で爆発が起こる。
耳を劈くような音。
皮膚を焦がす熱。

動物園にいた人達を、騒動の中へ追いやる、ファンファーレの代わりとなった。
それは、ジョルジュも例外では無い。

(;゚∀゚)「なっ……お前ら伏せろ!!!」

わけも分からず泣き叫ぶ周りの人達に釣られて、
泣き出すわが子を胸に強く抱きかかえ、先いたペニサスの元へ体を低くして走った。

どうやら、威嚇の意図を含めた爆発らしい。

――車、だろうか。
ジョルジュは車を停めた駐車場を見ると、黒煙がぽつりぽつりと浮かび上がっている。

*( ; ;)*ミセ*:ー;)リ『おどぅさぁぁぁん!!!』
(;゚∀゚)『……っ!大丈夫だぞ!!お父さんがついてるからな!!』

すると、立て続けに、今度は園内で爆発が起こる。
断末魔が聞こえ、焦げ臭い香りが鼻をついた。



25: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:12:23.84 ID:BkAIaKQ00

なんでこんな所を襲うんだ――!?
そうジョルジュは思いつつ、二人の子供を右脇に抱え、持っていた携帯電話でショボンに電話をする。

(;゚∀゚)『……おい!!ショボン!!ショボン!!』
(´・ω・`)『な、急いでどうしたの?何かあったのかい?』

(;゚∀゚)『何かあったのじゃねぇ!!動物園が……ぅぁ……っ!!』

耳元で、大きな音がし、そのままジョルジュとの回線が切れた。

(;´・ω・`)『……!?ジョルジュ!!どうしたの!?』

ショボンには、何か大きな音が聞こえたくらいにしか感じられなかったが、
ジョルジュの息の詰まる様子から察して、ただ事ではないと考えた。すぐさま発信元を特定しようと、検索にかける。

人の波が、出口に向かって一斉に流れていく。
その波を掻き分けるようにして、ペニサスを探すジョルジュ。

(;゚∀゚)「ペニサス!!どこだ!!!」

娘にふと視線をやると、恐怖で顔が歪みきっており、衰弱している様が伺えた。
ジョルジュは、下唇を噛む。

家族との団欒が壊されたことにでは無い。


自分が、家族を、守れないことに腹を立てた。



31: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:14:07.79 ID:BkAIaKQ00

(;゚∀゚)「……くそっ!!」

今見つからない妻を、このまま探しに行くか……。
今抱きかかえている我が子達を、外へ連れて行くか……。

頭に選択肢がいくつも浮かび、いくつも消えていく。
このままペニサスを探し続けても、いいだろう。

だが、いつ爆発が、どこで起きるかは分からない。
爆発に巻き込まれて、家族みんなが死ぬなどという事は、絶対に避けなくてはいけない。

――苦渋の、選択。

(;゚∀゚)「……!!ちくしょう!!!一旦出るしかねぇ……!」

大急ぎで、正門へと駆けて行き、子供二人を人が溢れかえっている動物園周辺へと連れて行く。
乗ってきた車のドアを開け、子供を押し込み、鍵をかける。
中に、飲み物、食べ物はあったはずだ。
来る前にお菓子をかってやった。

――大丈夫だ。

そう、自分と、子供達に言い聞かす。



34: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:16:19.61 ID:BkAIaKQ00

そして、一つの淡い希望もここで消える。
もしペニサスが、避難していれば、おそらくこの車の近くにいたはず。
わかりやすいシンボルは、これ以外に無いからだ。

すぐさま、車のトランクを開き、中に備え付けてあったライフルを手に取る。
防弾チョッキ、ナイフを着込み、弾丸を装填し、園内へと向かった。

軍人の癖というのに、感謝をしなければいけない。

ジョルジュが見上げると、そこには三機の、群青色をした”駆動兵器”が映っていた。
ジョルジュの手に、一斉に脂汗が浮かぶ。

(;゚∀゚)「ペニサス……!!!」


【+  】ゞ゚)『檻を掴め。ダイオードは予定通り、檻を運べ。
       私とフォックスは、適当にここを破壊して、”何”が奪われたかわからなくする』

/ ゚、。 /『了解。このまま担いで行くよ』
爪'ー`)y‐『……久しぶりだねぇ。こんなに暴れられるのはさ!!』

群青色をした、小型の駆動兵器が、一斉に腕に内臓されたバルカン砲を円状に掃射する。
土煙が無数に起こり、動物や、人の断末魔が、その銃声によってかき消された。

ジョルジュは、その場に留まることなく、園内を走る。



36: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:17:30.36 ID:BkAIaKQ00

あんな大口径な弾、一発でも当たれば、体ごと引きちぎられて死んでしまうだろう。
だが、足を止めるわけにはいかない。

自分の妻が生きている事を切に願って、戦場と同じ臭いがする動物園を探した。

(;゚∀゚)「……檻?動物が入っているのか?」

破壊された飲食店の瓦礫に、身を低くして背中を当てる。
そこから伺えたのは、巨大な檻を担ぐ一機の駆動兵器。

そして、その周囲で乱射している二体のそれ。

周りを見渡すジョルジュ。

すると、何か小さな声が聞こえた――。

『……ル……ッ』

聞き慣れた、声。

(;゚∀゚)「……ペニサス!!!」

声は、瓦礫の中からしていた。
どうやら、爆発と共に飲食店内へと逃げ込んで、そのまま機銃の乱射で建物を壊され、逃げ場を失ってしまったようだ。
声からして、衰弱した様子が伺えた。



40: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:18:53.26 ID:BkAIaKQ00

(;゚∀゚)「……ちょっと我慢しろよ!!いいか!?出してやるから!!!」

すぐに、ジョルジュは瓦礫を一枚一枚剥がしていく。伊達に、”あの時の”仲間の中で、一番の怪力では無かった。
はみ出した鉄骨を持ち、コンクリート片をひっくり返す。

そう長く時間はかけていられない。
そして、空を駆け抜ける弾丸にも気を配りながら、ペニサスの体に負担をかけないようにしなくてはならない。

(; ∀ )「待ってろ……。ペニサス……!!」

腕の筋肉が、はち切れそうなほど力が入る。
上着は、もうボロボロだ。指の皮も捲れ、血が滲む。

どこで切ったか、右足の脹脛からも、水のように血液が流れ出していた。

(#゚∀゚)「……ペニサスぅぅぅ!!!!」

大きな石版のようなコンクリートを……ひっくり返す。
すると、中には小さなスペースが出来ており、そこにペニサスが横たわっていた。
寝言のように、家族の名前を呼んでいるのを見て、ジョルジュは安心した。

目だった外傷は無く、ショックで気を失っているだけのようだ。
すぐさまペニサスの体を抱きかかえると、園外へと急いで連れて行く。

外はまだ、救急車や消防車が来ている気配が無い。



43: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:20:01.92 ID:BkAIaKQ00

( 、*川「ジョルジュ……」
(;゚∀゚)「……俺は、ここにいるからな!!もうちょっとだけ、我慢してくれ……!!」

子供達が待っている、車内へとペニサスを預ける。
ヘリカルも、ミセリも。
ぐったりした様子でシートに横たわっていた。

助手席に、ペニサスを乗せる。
そして、車内に備え付けられた無線を繋ぐ。

( ゚∀゚)『……ショボン。あとどれくらいだ?』
(;´・ω・`)『今駆動兵器小隊がそっちへ向かってるよ。後五分くらいで着くはずだ』

( ゚∀゚)『いや、小隊に戦闘はさせなくていい』
(´・ω・`)『……え?』

キッと、動物園から離れていく駆動兵器を睨むジョルジュ。

( ゚∀゚)『旧式のクモイトタグリと思われるものを三機、この動物園半径85kmで広範囲検索。
     全て捕捉しろ。全てだ。それと、俺の駆動兵器を送ってくれ。小隊は、この園内・外にいる人達の人名救助を頼む』

(;´・ω・`)『……それは、ダメだよ。ジョルジュ、君は今、統一国の大事な舵取りの一人なんだ。
      反政府ゲリラと言っても、相手は駆動兵器。無茶はさせられないよ』

( ゚∀゚)『いいから頼む』
(;´・ω・`)『でも……』


( ゚∀゚)『頼む』



46: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:22:06.40 ID:BkAIaKQ00

ここまで言われて、ショボンは断れようか。
一つ小さなため息をつくと、小隊に救助優先の連絡。
近隣の住民への避難勧告。救急・消防への処置方法を手早く伝えた。

(´・ω・`)『GLT。21番格納庫にある、ジョルジュの駆動兵器を積んで、ビィ地区、マンモス動物園へ急いで』
『了解』

そして、駆動兵器小隊が動物園に到着する。
ジョルジュは、隊員に補足対象の場所を聞いた。

( ゚∀゚)「ご苦労。それで、対象の三機はどこだ?」

(゚、゚トソン「先ほどショボン殿から頂いたデータによると、ここから南へ真っ直ぐ移動しているようです。
     クモイトタグリは旧式ですし、それほどスピードは出ていません」

( ゚∀゚)「そうか。逃がしはしねぇぞ……」

(´<_` )「しかしジョルジュ殿」
( ´_ゝ`)「我々を」
(´<_` )「頼っていただけは」
( ´_ゝ`)「しないものでしょう」

( ´_ゝ`)「「か?」」(´<_` )

( ゚∀゚)「……お前達は、評価してるよ。十分。でもよ、自分の不甲斐なさを知っちまったんだよ。
     こうやって、満足に家族を守れなかったんだ。それに、こんなにも人が死んじまってんだ。俺がいて、だ」



49: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:23:46.74 ID:BkAIaKQ00

(゚、゚トソン「……やっぱり、違いますね。あの戦争を体験していない私達とは」
( ´_ゝ`)「我々兄弟は、戦争中に何も出来なかった」
(´<_` )「そうだなアニジャ。アニジャは何もしていなかったな。本当に何もしていなかった。
      私は勉学に勤しんでいたが、アニジャは何もしていなかった」

(#´_ゝ`)「……」


         
        _(#´_ゝ`)
      /      )           _  _
     / ,イ 、  ノ/     ―= ̄ `ヽ, _
    / / |   ( 〈 ∵. ・(   〈__ >  ゛ 、_―
   | !  ヽ  ー=- ̄ ̄=_、  (/ , ´ノ
   | |   `iー__=―_ ;, / / /
    !、リ  -=_二__ ̄_=;, / / ,'
        /  /       /  /|  |
       /  /       !、_/ /   〉
     / _/             |_/
     ヽ、_ヽ

(´<_`;)「げぶふぅ……。オーケイオーケイ。落ち着くんだアニジャ……」
(゚、゚#トソン「兄弟揃って何してんのよ!!早くここの人達の手当てをするのよ!!」

(;´_ゝ`)「す、すまないトソン。デートはいつにする?」
(´<_`;)「ちょっと待てアニジャ!どさくさに紛れて何を言っている!?トソンとデートをするのは俺だ!!」

(゚、゚#トソン「誰がそんな約束するもんですか!!」



52: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:26:43.52 ID:BkAIaKQ00

( ゚∀゚)「……ふふっ。おもしれぇなぁ、お前らを見てるとよ!」
( ´_ゝ`)「「?」」(´<_` )

ジョルジュは、空を見上げる。
上空には、大きなプロペラを回転させた、駆動兵器輸送ヘリ『GLT』が投下ハッチを開いていた。

( ゚∀゚)「やっぱりよ、笑っていてぇよな。
     俺は、お前らの歳の頃は、戦争戦争……って考えてたんだよ。
     娯楽も無かったしよ。たった8年も前の話だ」

ズズン……。
地響きを立てて、カプセル状の大きな投下ボックスが地面に落とされた。蒸気を上げて『フタ』が開く。

( ゚∀゚)「あの頃頑張ったから、今があるんだよ。今があるから、笑ってられるんだよな」

( ´_ゝ`)「「……」」(´<_` )
(゚、゚トソン「……」

( ゚∀゚)「今を、壊したくねぇんだ」

肩に担いだライフルを降ろし、防弾チョッキと、ボロボロになったシャツを脱ぐ。
そして、アニジャ達小隊を見る。

( ゚∀゚)「そうやって、いつまでもお前達仲間で笑っていたいと願うならよ、今を守ろうと思うんだ。
     現状維持って意味じゃねーぞ?今以下にはならないようにするんだぜ」



55: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:28:19.04 ID:BkAIaKQ00
そう言って、ジョルジュは、駆動兵器『ハンゲツ』へと乗り込む。
光沢を持った黒。大きなブーストを持ったその機体は、綺麗な流線型を描くボディを輝かせ、命を得る。

( ゚∀゚)「そうだよな。俺は、家族がいる今を守りてぇんだ」

――ハンゲツ、起動確認。順応75%……80%……。

髪の毛を、もう一度括りなおして、レーダーを確認する。

( ゚∀゚)『お前ら!!俺の家族、頼んだぞ!!!』

それを聞いたアニジャ達は、ジョルジュが、自分達を頼ってくれていると確信した。
駆動兵器へ向かって、敬礼をする小隊のメンバー。

背部装甲の巨大な扇風機のような形をしたブーストが回転を始め、周囲の空気をチリチリと焦がす。
全身にエネルギーが漲る感覚が、ジョルジュを襲う。

( ゚∀゚)『よし!!男は熱く行くもんだ!!!ハンゲツ!!出るぞぉぉぉ!!!』

アスファルトに大きく皹を入れて、その場から飛び出すハンゲツ。
調子を確かめるように、空中にて一回転をし、逃げた三体の方向へと体を向ける。

(#゚∀゚)『逃がしゃあしねぇ!!!俺は甘くねぇぞ……!!』

地面を滑るかのようにして、飛び跳ねて進む駆動兵器。
真昼の追跡劇が始まった。



( ゚∀゚)は戦うようです 前編 『一軍人の考える今』 完



戻る後編