( ^ω^)は駆動兵器を操るようです

65: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:41:16.09 ID:BkAIaKQ00

( ゚∀゚)『レーダー開け。対象の行動パターンから、目標予想ポイントを割り出せ』

――了解。

昼過ぎののどかな農道を、艶やかな黒をした駆動兵器が駆ける。
このまま、居住区から離れた、開拓区に流れてくれればいいのだが……。
などと、ジョルジュは考えながらトリガーを握っていた。

(;゚∀゚)「足元の農地も気にしねえといけねぇからな……。
     動物園から何を盗って行ったのかもわかんねぇし……。って、動物園だよな。動物園……動物園……」

そうだ。
動物園だから、盗んだのは動物に決まっている。現に檻を盗るところも見た。
だけど、駆動兵器を用いて盗まないといけないほどの動物となると……。

( ゚∀゚)『ショボン。聞こえるか?ショボーン』
(´・ω・`)『聞こえてるよ。ホント無茶言うんだから君は……。で、何かあったの?』

( ゚∀゚)『いや、今追っかけてる途中なんだがよ、
     あの動物園にいて、他の動物園にいないような絶滅危惧種っているか?』

(´・ω・`)『ちょっと待ってね。えっと……、タントオタベゾウ、ホレグリスザル、の二種だね。
      タントオタベゾウは、この動物園で最後の3頭を保護、飼育していたみたいだよ。
      ホレグリスザルは絶滅危惧種というだけで、大陸の南側に少数だけど生息しているみたいだ。それがどうかしたの?』



66: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:43:13.98 ID:BkAIaKQ00

( ゚∀゚)『ちょっと待ってくれ。じゃあよ、そのリスザルって大きいのか?檻が必要なくらい……おっとと』

(´・ω・`)『いや、非常に小さい動物だよ。
      動物紹介の所には、気弱で繊細だそうだ。檻というより、カゴじゃないかな?』

( ゚∀゚)『……わかった。今回盗られた動物はおそらくタントオタベゾウ。牙転売でもする気か?』
(´・ω・`)『了解。そのゾウを重点に入れて捜査進めるよ。じゃあ、気をつけてね』

( ゚∀゚)『よろしく頼んだぜ。じゃあ、三機の追跡を続ける。到達ポイント特定後、データを送る』

通信を切る。
一度大きく息を吸い込む。
トリガーを、汗ばんだ手で握る。
駆動兵器の呼吸を、感じ取る。

大きく、呼応する何かがある。

( ゚∀゚)「乗るたびに考えちまうが……。
     ドクオは、こんな化け物にずっと乗ってんだよな。尊敬しちまうよ本当に」



68: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:44:29.05 ID:BkAIaKQ00

ジョルジュが駆動兵器に乗り始めたのが、4年前の事。
まあその理由というのは、クックルに薦められたからであるのだが……。

―――
――


それは、突然の提案であった。

( ゚∋゚)『お前は、これから上へ上へと成って行く人間だ。駆動兵器くらい乗れなくてどうする』
(;゚∀゚)『い、いやさ、歩く棺桶とか言われてたくらいだぜ?おっそろしいわ』

('A`)『しょっぱい男だよ……ジョルジュ』
川 ゚ -゚)『塩っ辛いのか?塩っ辛いのか?』

(;゚∀゚)『ううううるせぇ!!怖いもんは怖いんだよ!!』

( ゚∋゚)『白兵戦よりは、余程死亡率は低いものだがな。
     まあ、搭乗者の力量が顕著に現れてしまうから、自分より強い相手に出くわせば、死亡だ』

(;゚∀゚)『そんな事、ブーンの顔を見に来た時に言わなくても……』

そう、その日は、ブーンの三回忌。
皆揃って、スレスト湿地にあるブーンの墓へと訪れていたのだ。
戦争の頃の話がぽつりと出ただけだと思っていたのだが、こうも話を振られるとは思ってもみなかった。



69: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:46:24.09 ID:BkAIaKQ00

(´・ω・`)『残念ながら僕は情報部』
( <●><●>)『僕は町の修理屋さんなんです』

(;゚∀゚)『……あばばば』
('A`)『先に結婚しやがった罰だ!!ざまぁ!!ざまぁ!!!』

( ゚∋゚)『では、決定だな。またお前に通知を出す事にしよう。
     ジョルジュのような勇敢な操り手が欲しかった。先を示す意味でもな』

川 ゚ -゚)『うむ。そうだな』

( ゚∀゚)『うそーん……』

―――
――


( ゚∀゚)「あの頃は、嫌で嫌でしょうがなかったなぁ。なにせ、自分の手足以外、信用できてなかったから」

そう。
自分の手足でも、満足に戦えていなかった。
そんな自分に、駆動兵器は、ただの重荷でしか無かったんだ。

だが、操っていくに連れて、俺の考えは変わっていく。
駆動兵器も、要は白兵戦と同じ。

戦略を立て、自分の持てる限りの力を出し、敵を、最善の方法で倒す。それは、人間同士の戦いそのものだった。
そして、自分がどこまで行けるか、どこまで上へのぼれるのか、といった感情が、沸々と沸きあがってくるのを、俺は感じていたんだ。



71: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:48:20.31 ID:BkAIaKQ00

徐々に、自分の手足となって動く、この『ハンゲツ』。
日々戦うにつれて、駆動兵器の戦い方も、身についてきた。

( ゚∀゚)「人間、慣れって事かぁ?単純だなぁ俺」

そうこうしている内に、開拓区へと差し掛かってくる。
ここは、統一国となった際に、廃棄された軍事基地の跡地などである。

もちろん、重火器等は全て回収されているが、軍基地というものは、
入り組んだ構造、強固な装甲が多くあり、建造物の解体には時間がかかっている。

現在、問題視されているのが、この開拓区に住まうとされる『反統一国政府ゲリラ』である。
どれだけいるのかはわからないが、裏でこっそりと活動している……らしい。

現に前ν帝国幹部も、この反政府ゲリラへと加入し、扇動していた。
とっとと焼き払えばいいのだが、やはりそうもいかない。
今は、そのような非人道的な事は許されていないのだ。

人は、平和を望む。
だが、悪人を無差別に殺すのを拒む。

理由があれば、殺せばいい。
そういう事でも無いのだが、今は、表立って掃討作戦などできないのだ。



72: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:50:29.55 ID:BkAIaKQ00

( ゚∀゚)「……見つけたぜぇ〜」

モニターに映ったのは、5km先に走る駆動兵器二機。
ここから追跡すればいいのだが、もう向こうのレーダーにも映っていることだ。このまま突撃することを決めた。

建造物の屋上を踏みつけ、ステップのように飛び移っていく。
建物が軋む音が、静かな廃墟郡に響く。

すると、向こうの二機がこちらに振り向いた。
相手は、旧式とは言えど、3年前の機体。

それほど性能が劣るというわけでもない。

そして、駆動兵器は、その性能より、乗り手の力を重視する。
性能など、いわば個人の特徴に合うものを選べばよいのだ。

ズン!と大きい音を立てて、地面へと降り立つハンゲツ。

( ゚∀゚)『おいおい。追いつかれちまってるじゃねぇかウスノロ諸君』

爪'ー`)y‐『……ふん』
【+  】ゞ゚)『もっと数で来ると思っていたが……。お前一機か』

随分余裕を持っているようだ。
……手慣れか?



74: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:53:03.30 ID:BkAIaKQ00

( ゚∀゚)『お前らは俺で十分だからな。他の奴らは救護に回した。
     手早く行くが、残す言葉はねぇか?死体を裁判にかける国じゃあねえけどよ』

爪'ー`)y‐『いい男じゃないかぁ。根性があって、芯が一本通ってる男は嫌いじゃないよ』

女か……?
色気のある声。だが、煙草の吸いすぎだろう、少しかすれ気味であった。

【+  】ゞ゚)『男よ。俺達を今逃がせば、後々の大きな障害になる。
       だが、今俺達に攻め入れば、お前は死ぬ。どちらがいい?
       我の命を大事に思うか、国の為に、無駄死にするか……!!!』

そしてもう一人。
勝気な男だ。声からも、駆動兵器の位置取りからも、強さがにじみ出る。

( ゚∀゚)『へへっ……。じゃあよ、三つ目作るわ。
    ”お前ら二人を倒して、先を行くもう一人も倒す。そして、後の障害を取り除く”
    これでどうだ?負けなんて言葉、今の俺の頭にゃねぇよ。
    こちとら、国も、家族もやられてんだ……。我慢なんて、できねぇぜ』

トリガーを素早く引き、奥へと押し込む。
すると、スラリと伸びたハンゲツの両腕の先端。装甲にてカバーされている部分から、楕円状の刃が飛び出した。

そして、その刃を組み込むように、腕部に装甲が展開される。まるで、両腕に回転ノコギリが取り付けられたような風貌へと成る。

(#゚∀゚)『というかよ、頭に来てんだ。お前ら、俺の今を崩そうとしやがってよ……!!』
爪'ー`)y‐『あら、敵さんやる気みたいだよ?どうすんのさオサム』
【+  】ゞ゚)『ああ……。ならばやるしかなかろう。挟むぞ』



76: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:55:22.92 ID:BkAIaKQ00

長い手足をバネのように動かし、ジョルジュの両サイドへとつく二機の駆動兵器。
群青が、残像のように目に映る。

廃墟の粉っぽい、乾いた土が、視界の鮮明さを奪う。
煩わしい場所だ。

(#゚∀゚)『行くぜ行くぜ行くぜ!?俺はほんっとうに頭にきてんだよ!!!!覚悟しろや!!!』

【+  】ゞ゚)『冷静さを欠くことが、対駆動兵器戦において負ける要因に一番繋がりやすいことを知らないのだな』

(#゚∀゚)『うるっせぇ!!!まずはてめぇからだよ!!!』

土煙を高く高くあげて、右方向へと飛ぶ。
すぐさま二機の駆動兵器は反応をし、ハンゲツが向かう方向、オサムは後方へと、距離を詰められない為に下がる。

爪'ー`)y‐『それじゃ……駄目よ。この先にあんたは行けない』

フォックスの操るクモイトタグリが、追いかけるようにしてハンゲツの背中につく。
長く伸びた右腕を尖らせ、勢いよく迫った。

( ゚∀゚)『――。わざわざ近づいて来てくれてんだよな?』

急にその場へと止まり、体を時計回りに捻り、裏拳を放つ。
ギリギリの所で体制を低くし、フォックスは素早くかわす。そのまま腕部関節部を切断する為に、地面から直角に右腕を突き出す。

(#゚∀゚)『甘いんだ……よぉっ!!!』

遠心力に振り切られそうになりながら、体の捻りを力に転換して思いローキックを打ち込む。



77: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:56:51.70 ID:BkAIaKQ00

爪;'ー`)y‐『……っ!!』

大きく、左側に機体を吹き飛ばされたフォックス。
長い腕が、地面に鞭打つように土煙をあげて叩きつけられる。
続けざまに、回転ノコギリを、拳を浴びせるのと同じ要領で、その長い腕へと押し当てる。

(#゚∀゚)『おぉぉらぁぁぁぁ!!!!』
【+  】ゞ゚)『フォックス!!』

脚部からミサイルを撃ちだし、ジョルジュの攻撃を妨げようとするオサム。
その場から飛び跳ねて回避するジョルジュ。爆風を帯びたその黒い機体は、怒りに満ちて、紅く輝いているように見えた。

爪;'ー`)y‐『右腕、やられちまったよ……』
【+  】ゞ゚)『……!』

そう言って、立ち上がるクモイトタグリの右腕は、綺麗に切断されていた。
切断面から、流動エネルギーを帯びた、紫色をした火花が飛ぶ。

【+  】ゞ゚)『こいつ、強いぞ。侮っていた』
爪'ー`)y‐『ええ。そうみたいね……』

フォックスは、右肘関節から下を切り離し、腰に取り付けた光粒子鞭を取り付けた。
生を得たかのように、グネグネと動き出す。

爪'ー`)y‐『蜘蛛糸を手繰るは蜥蜴の尻尾。切れども切れども元に戻るの。あんた、右腕の借りに、痺れさせてあげるよ』
【+  】ゞ゚)『痺れ蜥蜴は、喉を鳴らして敵に警告をする。それと同じに、俺達も、お前に警告をしよう……』



78: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 18:59:20.35 ID:BkAIaKQ00

【+  】ゞ゚)『この場から去れ。見す見す命を捨てる事も無いだろう。お前は俺達に勝てはし……』
(#゚∀゚)『うるせぇ!!!!ごちゃごちゃ御託並べてねぇで……!!』

オサムの言う事に聞き耳をも持たず、前屈みの体制で、両腕を後ろにやり、突進する。
体の捻りの力をそのまま利用するかのようにして、粒子電動ノコギリを我武者羅に振り回した。

(#゚∀゚)『かかって来いっつってんだよ!!!』
【+  】ゞ゚)『……ならば、お前はここで死ぬ』

高速で突き出されたハンゲツの左腕を、合気道のように受け流すオサムの操るクモイトタグリ。
バランスを崩して、よろけている所を、離れたフォックスが、腕部内臓小型バルカン砲にて牽制。
オサムが、そのまま近接戦闘へと持って行く。

(#゚∀゚)『ぐっ……この野郎!!』
爪'ー`)y‐『駄目じゃない。こっちに来ちゃあ……』

右腕の光粒子鞭が唸り、近づこうとするジョルジュの足元を削ぐ。
地面の跡は、まるで溶けたかのように丸ごと無くなっていて、当たれば危ないと言う事を、ジョルジュの中で明確にした。

とは言っても、男の方を相手にしようにも、女の方から、煩わしい攻撃を喰らってしまう。
女の方を相手にしようにも、近接戦闘の男と、同時に相手にしなければいけない。



81: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 19:01:15.14 ID:BkAIaKQ00
ジョルジュは思索を巡らせる。
どのようにすれば、最善の方法で、こいつらに勝てるのかを。

(#゚∀゚)『お前らとは……お前らとは……。
     背負ってるものが違うんだよ……違うんだよ!!!!!』

ブーストが大きく音を立てて、周りの空気を吸い込む。
小石が、跡形も無く粉々になるその様は、異常な回転数をたたき出す。

地面を蹴飛ばし、音がついてくるような素早さで、フォックスへと接近する。
鞭を振れない距離まで詰め、インファイトにて仕留めようとジョルジュは考えた。

(#゚∀゚)『一気に……仕留めるッ!!!』

体を木が撓る様に右に曲げ、メインカメラへと大振りの拳を振り回す。
だが、その拳はオサムの電撃鞭によって絡みとられてしまう。そのまま振りぬこうと、更に力を入れるジョルジュ。

だが、完璧のタイミングであったその攻撃がずれ、大きく後ろへと引っ張られてしまう。
体勢を崩し、コクピットへと、電撃のような痛み、衝撃が伝わる。

【+  】ゞ゚)『背負っているものが違う、だと?お前は何を言っている』
(  ∀ )『ぅぁああぁあああ!!!!』

ハンゲツは、その場に蹲り、強力な電撃によってビクビクと機体を震えさせる。
青白い光を発しながら、駆動兵器の接している地面を焦がしていく。



83: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 19:03:36.70 ID:BkAIaKQ00

【+  】ゞ゚)『我々はな、統一国を良く思っていない。今の、この温い国の状況。
       戦争の無い大陸。全てだ。だから俺達は、今、お前と戦っている』

爪'ー`)y‐『そうよ。あなた達は、統一国になって満足しているでしょうけど、私達は違う。
       元ν帝国の特殊戦闘員部隊の私達は、ね』

そう言って、フォックスは光粒子鞭を蹲るハンゲツへと振り貫く。
一撃一撃が、ヴィプクロメタリウムへと傷跡を残し、金属からも痛々しさが伝わった。

(#゚∀゚)『……ッ!!!』

肩部分からニードルが飛び出し、前方で鞭を振るうフォックスのクモイトタグリの腹部へと3本突き刺さる。

爪;'ー`)y‐『なっ……』
(#゚∀゚)『そ…うかいそうかい』

ワイヤーを手繰り寄せ、フォックスのメインカメラに粒子電動ノコギリを押し当てる。
瞬く間に胸の部分まで真っ二つになるクモイトタグリ。

(#゚∀゚)『電撃とめねぇと……このままコクピットごと行っちまうぜ……?』
爪;'ー`)y‐『……オサム!!!電撃を…ッ、止めて!!!』
【+  】ゞ゚)『……っ!!』

ジョルジュは、この躊躇いを望んでいた。
駆動兵器の戦いは、人間のそれと同じ。そう、同じなのだ。



86: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 19:06:14.04 ID:BkAIaKQ00

オサムは、怒りによって我を失うことが、敗北に繋がると言った。
それもそうだ。
だが、それは敗北に繋がる程度。

ジョルジュの中で、躊躇いは、敗北と同義。

( ゚∀゚)『……止めたな?負けだ。胸に手を置く時間だけやるよ』
爪;'ー`)y‐『……あんた……ッ!』

躊躇いこそが、戦闘における一番の敗北要素。

爪 ー )y‐『ぎゃぁぁああ゛ぁ゛ぁああ!!!!!』
【+  】ゞ゚)『フォックス!!!!』

ハンゲツの電動ノコギリが、腰の部分まで真っ二つに引き裂く。
ノコギリの刃には、赤く輝く血がついており、フォックスの死は確実なものであった。

( ゚∀゚)『いっとくがぁ、大切なものを守る為には、俺は手段を選ばねぇ。
     これは、前の戦争で学んだ事だ。俺の今は、お前の今じゃあ覆らせられない。
     わかるか?お前の今は、小さい今なんだよ。俺のでっけぇ今の前じゃあ、霞んでしょうがねぇ』

急いで距離をあけるオサムへと、じりじりと近づくジョルジュ。
額には汗が滲み、喉が渇いてしょうがない。
血が、枯れていく。



87: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 19:08:18.55 ID:BkAIaKQ00

【+  】ゞ゚)『……そこまで言われて、引き下がれるものか』

鞭を捨て、両手を尖らせる。
長い両腕を前屈みで構えると、クモイトタグリのモノアイがギラギラと輝いた。
オサムも、ここで引き下がるわけには行かない。
目の前で切り裂かれた同胞の為にも、一矢報いなければいけない。そう考えた。

( ゚∀゚)『お前の棘で、俺の体に穴が開くのが先か、俺の鋸でお前の首が飛ぶのが先か……。勝負しようぜ』

そう、ジョルジュは言うが、先ほどの電撃が響いたか、もう体に力が入らず、トリガーを握ることが精一杯であった。
フォックスの機体に突き刺さっていたニードルを肩に収納し、けたたましい音を両腕の鋸から鳴らす。

【+  】ゞ゚)『お前に……何がわかる!!!』

先に飛び出したのはオサム。
素早く繰り出される突きを、ジョルジュはブーストを巧みに使い、かわし、受け流す。

機体を素早く左右上下に動かすので、ジョルジュの体に大きく負担をかけるが、
捕まってしまえば一気に決められるやもしれない、そう思って、必死に避けに専念した。

【+  】ゞ゚)『蜘蛛糸を手繰るは蜘蛛の細足。軌道の読めぬ俊敏な棘!!』

棘が腹部に突き刺さる。
紫色の火花を散らし、ハンゲツの動きが止まった。



89: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 19:09:34.28 ID:BkAIaKQ00
(;゚∀゚)『ちぃッ!!!』

すぐさま突き刺さった腕を切り落とそうと、
クモイトタグリの腕に鋸を当てようとするが、すぐに抜かれてしまい、切断出来ない。

右肩。

左足。

右腕関節部。

素早く繰り出され、動きが読めないその攻撃に、ジョルジュは翻弄されていく。
攻撃が装甲を破る事は少ないが、ダメージは確実に、徐々に蓄積されていった。

【+  】ゞ゚)『これで終わりだと思うな!!!俺達が受けた、この7年の苦しみを味わえ!!!』

そうだ。
このような奴にはわからない!!
俺達が受けた、戦犯としての扱い。
大陸から追い出そうとする者達から受けた、あの冷たい眼差しを!!!!

【+  】ゞ゚)「胸部ミサイルハッチ開け!!」

――了解。

膝をついて、動きが止まっているジョルジュに目掛けて、散弾型ミサイルを4発撃ち放った。
小型手榴弾が雨のように降り注ぎ、ハンゲツの体が大きく吹き飛ぶ。廃墟の一部を吹き飛ばすと、大きく砂煙が宙を舞った。



92: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 19:11:10.40 ID:BkAIaKQ00

【+  】ゞ゚)『お前には……わからんよ』

と、オサムが台詞を吐き捨てたその刹那。
砂煙から黒く輝く一陣の風が吹き出た。

オサムが反応しきれる訳も無く、コクピットの直ぐ下、胸部から腰の辺りにかけて、掠め取られてしまった。
まるで、積み木が崩れるかのように体が真っ二つに千切れていく。
右に傾くコクピットから、その黒を見つめるオサムの目には、涙が溜まっていた。

負けて、また負けるのか。

そのような事が、オサムの頭に過ぎった。
そして、間髪を入れず、鋸がコクピットに突き刺さり、背中へと貫通した。

クモイトタグリのメインカメラが光を失い、力が抜ける。

ハンゲツの右腕が、クモイトタグリの胴体を貫き、血が吹き出るように火花が散る。
そのまま腕を抜き取ると、ぞんざいに放り投げた。

廃墟にぶち当たり、建物が崩れるのと共に、そのままだらりと地面に倒れこむオサムが操っていたクモイトタグリの胴体。



( ゚∀゚)『ああ、わかんねぇよ。ずっとな。
     でもよ、晩飯を作ってくれる家族があるんだ。その家族に手ぇ出した奴に、俺は負けられねぇんだ』



97: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 19:13:55.90 ID:BkAIaKQ00

―――
――



そして、ジョルジュは、また一つ知った。
戦争とは、個人の『今』と『今』の守りあい。

その『今』が、何らかの理由で『過去』になったその時、人は執念に支配されるものだ。

(;´・ω・`)『ジョルジュ……。なんで通信に出なかったのさ!?』
( ゚∀゚)『ん、ああすまねぇ。ちょっと墓、立ててたんだよ』

その『過去』は、個人に『過去』を『今』に戻すように、命令する。

(;´・ω・`)『お墓?連絡が無いから、もう一機の駆動兵器はアニジャ達が取り押さえたよ。全く……』
(;゚∀゚)『あ゛っ!!忘れてたぁ〜……すまねぇ』

『過去』に取り付かれた人間は、他人の『今』を疎ましく思う。

(´・ω・`)『もう……後で謝っときなよ?』
( ゚∀゚)『ああ。すまんすまん。それと……』

(´・ω・`)『ご家族の事かい?ペニサスさんは足と腕に頭に軽症。
      ミセリちゃんとヘリカルちゃんは、今ペニサスさんの隣のベッドで寝てるってさ』



98: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 19:14:39.46 ID:BkAIaKQ00
( ゚∀゚)『そ、そうか!!よ、よかったぁ〜……』

その、繰り返しだ。

(´・ω・`)『ハンゲツ、まだ動ける?動けるなら迎えは送らないけど』
( ゚∀゚)『ああ大丈夫だぜ!!ちょこっと腹と肩をやられちまったけど、ハンゲツの丈夫さは伊達じゃねー』

(´・ω・`)『じゃあ、中央指令基地まで持ってきてね。あとこれ、特別手当は出ないからよろしく』
(;゚∀゚)『う、うそ〜ん』

家族が出来て、俺も変わっちまったのかな。
たとえそうでも、俺は俺。

今の俺を作ってくれているのは、俺の周りにいる皆。
そして、何より妻、子供だ。

幸せは、手に取り、守るもの。



100: 作者 ◆Cy/9gwA.RE :2007/08/31(金) 19:15:59.97 ID:BkAIaKQ00

あの戦争から……。
随分と平和になったのは違いない。

あっという間に経った8年は、あっという間に周りの環境を変えた。
気付けば、俺は所帯を持ち、国と、その家族のために戦っている。

正義の為に失われた命を弔う。
正義の中に生まれてきた命を祝福する。

統一国民全員が、そう同じ事を願っているとは、思ってはいなかった。

これからも、俺は少数派の悪意に満ちたエゴを、打ち砕く。

国と、家族を守るために。




( ゚∀゚)は戦うようです 後編 『一父親の考える、これから』 完



( ゚∀゚)は戦うようです 完結



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