('A`)と( ゚∀゚)は利己的なようです
- 301: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 23:33:06.62 ID:lh4IdvDW0
(*゚ー゚)「あれ、クーちゃんが何で此処に?」
川 ゚ -゚)「しぃこそ何でこんな所に?」
(*゚ー゚)「私は今日雨で部活が無かったから此処で遊んでるだけだよ?」
_
( ゚∀゚)「あれ、お二人さん知り合いだったんですか?」
驚いた様子で話していたクーさんとしぃさんにジョルジュはそう問いかけた。
何故だか、この部屋にいる人間の中でジョルジュだけが驚いていない。
(*゚ー゚)「うん。中学からの友達なの。
じゃあ、クーちゃんも遊びに来たの?」
川 ゚ -゚)「いや、そういう訳じゃ…」
_
( ゚∀゚)「此処に来たってことは、何か返す物があるってことですよね?」
川 ゚ -゚)「…ああ、そうだ。これを」
そう言うと、クーさんはポケットから細長い機械を取り出し、
ジョルジュに手渡した。
- 306: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 23:34:34.27 ID:lh4IdvDW0
('A`)「何だそれ」
_
( ゚∀゚)「ボイスレコーダーだ。聞いてみるか?」
そう言うと、ジョルジュは再生ボタンを押した。
('A`)「……なるほどね」
川 ゚ -゚)「それは、本当なのか?」
_
( ゚∀゚)「そう思ったから、此処まで来たんじゃないんですか?」
川 ゚ -゚)「…わからない。ただ、ブーンが信じられなくなったんだ」
(*゚ー゚)「え、え? 一体何の話なの?
さっきのやつに内藤君の声まで聞こえたけど」
困惑した表情で、しぃさんは俺達に問いかけた。
川 ゚ -゚)「…実は、私はブーンと付き合っているんだ」
(;*゚ー゚)「えっ!? そんな…」
- 309: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 23:37:26.58 ID:lh4IdvDW0
- _
( ゚∀゚)「なら、何でこれを再生しようと思ったか、聞かせて貰えますか?」
川 ゚ -゚)「…ああ、わかった。これは昨日のことだ……」
クーさんは、昨日あったことを俺達に話した。
_
( ゚∀゚)「……そうですか。いや、俺の予想通りになりましたよ」
川 ゚ -゚)「君達は、一体何を知っているんだ?
君達がブーンを憎んでいる理由は、一体何なんだ?」
(*゚ー゚)「内藤君を憎んでるって、もしかしてツンちゃんが…」
しぃさんが言いかけたとき、ジョルジュが睨むとまではいかないが、
厳しい表情でしぃさんの方を見た。
それを見て、今まで黙っていたツンさんが慌てて口を開いた。
ξ;゚听)ξ「い、いいのよ」
_
( ゚∀゚)「でもツンさん…」
- 313: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 23:39:34.71 ID:lh4IdvDW0
ξ゚听)ξ「…私から話すわ。
しぃちゃんの友達があの内藤のバカに襲われそうになったのに、
黙ってはいられないわよ」
_
( ゚∀゚)「…そうか」
ξ゚听)ξ「そうよ。あれはね……」
ツンさんは内藤と付き合ったこと、俺達がしたこと、
別れたこと、その後にあったことをクーさんに話した。
クーさんは、黙ってそれを最後まで聞いていた。
川 ゚ -゚)「ブーンがそんなことを…」
ツンさんが話し終えたとき、クーさんはそう呟いた。
(*゚ー゚)「クーちゃん、内藤君とはすぐに別れた方がいいよ。危ないよ」
川 ゚ -゚)「しぃ…」
_
( ゚∀゚)「後はクーさん、何を信じるかですよ。
俺達を信じるか、内藤を信じるか」
- 321: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 23:41:35.09 ID:lh4IdvDW0
ジョルジュにそう言われ、クーさんはしばらく考え込んでいた。
川 ゚ -゚)「…一つ、腑に落ちないんだ。
君達が正しかったなら何でそれを気付かせるのに、
あんなに回りくどいやり方をしたんだ?」
_
( ゚∀゚)「それは、俺はそのやり方が一番効果的だと思ったからですよ。
自分が信じているものを真っ向から否定されても、
人はそれを受け入れようとはしねェ。
だから俺は、自分でそれに気付くようにしたんですよ」
川 ゚ -゚)「そうか…君達の方が何枚も上手だったわけか」
クーさんはまたしばらく考えていた。
川 ゚ -゚)「…わかった。しぃも言っているんだ、私は君達を信じるよ」
_
( ゚∀゚)「それなら、これからどうしますか?」
川 ゚ -゚)「ブーンと、内藤と別れる」
_
( ゚∀゚)「なら、協力しますよ」
- 325: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 23:43:34.16 ID:lh4IdvDW0
川 ゚ -゚)「いや、これは私の問題だ。それは必要ない」
(*゚ー゚)「でも、内藤君が何してくるかわからないよ」
川 ゚ -゚)「いや、大丈夫だ」
_
( ゚∀゚)「…クーさんが何を言っても、俺達は引きませんよ?
なんたって俺達は『利己的』ですからね。
やりたいようにしますよ。なあ、ドクオ?」
('A`)「…ああ。クーさん、これはクーさんの為とかじゃないんですよ。
突き詰めれば、これはただの俺の我侭だ。
内藤のカスにクーさんが傷つけられるところを、俺は見たくない。
ジョルジュの言った通り、俺はクーさんが何を言っても俺は引きませんよ」
川 ゚ -゚)「そうか…」
_
( ゚∀゚)「さて、そしたらコイツをまた貸しますね。
多分役立ちますよ。」
そう言うと、ジョルジュはボイスレコーダーをクーさんに渡した。
- 329: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 23:45:31.71 ID:lh4IdvDW0
- キーンコーンカーンコーン
川 ゚ -゚)「やあブーン」
( ^ω^)「おっ、クー。おいs……何でドクオが居るんだお?」
('A`)「よう内藤。俺がクーさんと一緒に居るってことは、
どういうことだか解るよな?」
川 ゚ -゚)「ブーン、これを聞いてくれ」
そう言うとクーさんはポケットからボイスレコーダーを取り出し、
再生ボタンを押した。
(;^ω^)「な、何でこんなものがあるんだお?」
('A`)「壁には耳があるってことだ」
川 ゚ -゚)「それとこれを」
クーさんは更に写真を取り出し、内藤に見せた。
('A`)「で、障子には目がある」
(;^ω^)「……」
- 336: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 23:47:04.94 ID:lh4IdvDW0
川 ゚ -゚)「これはどういうことだ、ブーン?」
(;^ω^)「そ、そんなの知らないお! 多分そいつの悪戯だお!」
そう言いながら内藤は俺を指差した。
('A`)「まあ、あながち間違いじゃないな。それを撮ったのは俺達だからな。
内容は真実だけど」
川 ゚ -゚)「ブーン、君が正直者じゃなかったのが残念だ」
(;^ω^)「クー、僕を信じてくれお…」
川 ゚ -゚)「ブーン、もう終わりにしよう」
- 339: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 23:48:33.39 ID:lh4IdvDW0
( ゚ω゚)「……畜生、全部お前のせいだお、ドクオ。
お前等のせいで台無しだお」
内藤が俺を睨みつけた。
('A`)「何だ、俺とやろうってのか? 勝てるとでも思ってるのか?」
('A`)「二度と、クーさんの前に現れるんじゃねぇぞ」
( ゚ω゚)「っ……覚えてろお!」
そう捨て台詞を吐き、内藤は俺達の前から消えていった。
('A`)「忘れやしないさ。お前はクーさんに手ぇ出したんだ」
- 347: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 23:51:00.38 ID:lh4IdvDW0
('A`)「クーさん」
川 ゚ -゚)「何だ? ドクオ君」
('A`)「何か…すんませんでした」
内藤との決着を着け、俺とクーさんは帰路に着いていた。
俺の先を歩くクーさんに向かい、俺はそう言った。
それを聞いたクーさんは、俺の方に振り返る。
川 ゚ -゚)「何で君があやまるんだい?」
('A`)「…まあ、勝手に色々やりましたからね」
川 ゚ -゚)「そうか…でも、私は感謝しているぞ。
それと、私の方こそ謝らなければならないことがあるな」
('A`)「何をですか?」
川 ゚ -゚)「君の事を自分勝手だと言ったり、叩いたりしたことをだ」
- 351: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 23:52:33.69 ID:lh4IdvDW0
('A`)「自分勝手なのあってますよ。
じゃあ、自分勝手ついでに一ついいですか?」
川 ゚ -゚)「なんだい?」
('A`)「俺と、付き合ってください」
川 ゚ -゚)「…すまない、としか今は言えない」
色々あって、心の整理が出来ていないんだ」
('A`)「そうっすか……まあ、俺は諦めませんからね。
クーさんが首を縦に振るまで、俺は引きませんから。
なんたって俺は『利己的』な人間っすから」
川 ゚ー゚)「そうか」
クーさんは微かに微笑みながらそれだけ言った。
思えば、クーさんの笑顔を見るのはこれが初めてだった。
夕日の中の彼女のその綺麗な笑顔は、恐らく一生忘れないだろうな。
そうだ、やっぱ後で内藤殴っとこ。
- 359: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 23:54:05.36 ID:lh4IdvDW0
- * * *
キーンコーンカーンコーン
('A`)「なあ、この問題解るか?」
_
( ゚∀゚)「ycosxdx+2sinxdy=0? これは積分因子F(x)を掛けてだな…」
校舎の片隅にある『写真部』と扉に掲げられた、暗くて狭い部屋。
初夏の暑い中、コンクリートで囲まれ窓の少ないこの部屋は、
他と比べてとても涼しく快適だった。
俺とドクオは、放課後この部屋で勉強していた。
いや、勉強というよりは主に課題だな。
家に帰ってまで勉強したくない俺達は、
暇な放課後によくこの部屋で済ませてしまう。
_
( ゚∀゚)「……で、多分ysin^(1/2)x=Cでいいはず」
('A`)「マンドクサ、やる気失せたわ」
_
( ゚∀゚)「俺もだ。帰ろうぜ」
('A`)「そうすっか」
俺たちは立ち上がり、荷物を纏めて部室を出た。
- 366: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 23:55:34.16 ID:lh4IdvDW0
- * * *
教科書を置きに教室に入ると、そこにはもう誰も居なかった。
俺はロッカーに適当に教科書を突っ込む。
('A`)「……」
振り返ると、綺麗に拭かれた黒板が目に留まった。
('A`)「こういうの見ると落書きしたくなるんだよなぁ…」
俺はチョークを取り、その綺麗な黒板に絵を描き始めた。
白いチョーク1本で思いつきでどんどん描いて行く。
カンカンという音が、静かな放課後の教室中に響いた。
('A`)「…こんなもんかな」
_
( ゚∀゚)「何してんだオメェ?」
まあまあ満足してチョークを置いた俺に向かって、
やることを終えて俺の教室に来たジョルジュが言った。
- 371: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 23:57:09.72 ID:lh4IdvDW0
('A`)「見れば解るだろ? 絵ぇ描いてんだよ」
_
( ゚∀゚)「あ〜あ、折角掃除しただろうにねェ」
俺の隣に来て、ジョルジュは俺の描いた絵を見ている。
('A`)「だから描きたくなるんだよ。これが『利己的』ってやつか?」
_
( ゚∀゚)「ちょっと違くないか?」
ハハッと笑いながらジョルジュは言った。
('A`)「…あ、そうだ、これクーさんから」
俺はポケットから細長い機械を取り出し、ジョルジュに渡した。
_
( ゚∀゚)「おう、サンキュ。コイツも案外役にたったな」
('A`)「よくそんなもの買ったな。サラリーマンとかが使うやつだろ、それ」
- 375: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 23:58:34.62 ID:lh4IdvDW0
- _
( ゚∀゚)「まあ、親父に貰ったからな」
そう言うと、ジョルジュは再生ボタンを押した。
ピッ ザザザ…
《ありがとう、ドクオ君、ジョルジュ君》
ザザザ… ピッ
_
( ゚∀゚)「なかなか粋だね、クーさんも」
('A`)「流石は俺が惚れた女だぜ!」
_
( ゚∀゚)「何言ってんだかwww」
今度は男2人の笑い声が、静かな放課後の教室中に響いた。
- 377: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 00:00:05.13 ID:SXa5uY/K0
- * * *
川 ゚ー゚)「……フッ」
私は毎朝、クラスで一番に学校に来る。
皆が学校に来るまでの静かな時間、その時間は何をしてもはかどる。
勉強したり、本を読んだり、時にはクラス委員としての仕事をしたりと、
何とも有意義な時間だ。
そして、たまに黒板に描かれた可笑しな絵を見ることが出来た。
今日もその絵を一目見て、ちょっと噴いてしまった。
そういえば、この絵を描いたのは内藤ではなかったのだろうか。
川 ゚ -゚)「だとすれば一体誰なんだろう?」
しばらくその絵を見たら、誰も来ないうちに消した。
その絵を独り占め出来たような、不思議な気分だ。
- 386: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 00:02:25.51 ID:SXa5uY/K0
それから、しばらく本を読んでいたら、最近のちょっとした楽しみがやって来た。
('A`)「クーさん、おはよう」
川 ゚ -゚)「やあ、ドクオ君」
それだけ言うと、彼は漫画を取り出して読み始めた。
川 ゚ -゚)「それは何ていう漫画なんだい?」
('A`)「ああ、これはバリバリ伝説といってだな…」
川 ゚ -゚)「それは面白いのか?」
('A`)「面白いっすよ。読みたくなったらいつでも部室にあるんで」
「そうだ」と言い、彼はこっちの方を向いた。
- 389: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 00:04:04.95 ID:SXa5uY/K0
('A`)「何か面倒な仕事とかあったり暇だったりしたら、
いつでも写真部の部室に来て下さい。
たまにしぃさんとかも居るし」
川 ゚ -゚)「そうか、なら今度行くよ」
('A`)「楽しみにしてますよ」
そう言うと、彼は再び漫画に視線を落とした。
最近、以前と変わった彼とのこの時間が楽しみになっていた。
恐らく、彼は私が答えを出すのを待っているのだろう。
いつかは、彼にちゃんと答えたいと思う。
その時の答えは、もしかしたら前向きなものになるかもしれない。
何故なら、彼ほど『利他的』な人間もそうは居ないだろうから。
('A`)「……フヒヒ、ハスラムかっこいいなおい」
――('A`)と( ゚∀゚)は利己的なようです・完――
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