何やってもうまくいかないから( ^ω^)小説でも書くようです

82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 08:39:48.47 ID:ug5EbwgY0

ざああああ。

ポスターが貼り連ねてあるわけでもない、小物や装飾で彩られているわけでもない。
家具も単色で地味なものが多く、シンプルな室内はいかにも一人暮らしの学生の部屋といった感じである。

その中で、ベッド脇の棚に並べられたフィギュアの類が異彩を放っていた。

アメリカンコミックのヒーローや外国アニメのキャラクターが多い。
……無論、萌え系の美少女ものなんかはない。
……いや、本当はあるのかも知れないが、隠してるのかもしれない。

川 ゚ ー゚)「映画好きだもんなあ、彼」

手に取ってみてみると、実に精巧に作られていることがわかった。

手足が関節一つ一つごとに駆動するものもあれば、実に細かい部分まで彩色が行き届いているもの、
まるで生きている表情を切り取ったかのような生々しいものもある。

川 ゚ -゚)「へえ、なんだかすごいな……」

順繰りにフィギュアを手に取り、そのつくりに感嘆を漏らしているうち。

ガガガガガガガガガ

Σ川;゚ -゚)「!!」

突如耳に飛び込んできた怪音に、クーはびくんと体をのけぞらせた。



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 08:40:46.15 ID:ug5EbwgY0

川;゚ -゚)「あー……、あれか」

音の発信源は、テーブルに置かれたショボンの携帯電話だった。
バイブによってテーブルの表面を叩いている。

川 ゚ -゚)「……」

勝手に出るわけにはいかないが、せめて音を止めるため、ベッドへ置いとこう……。
そう考えて携帯を手に取った彼女の頭に、友達との会話が思い出された。


『───こないだ、彼のケータイをこっそりチェックしてみたんだけど』

『───そしたら、女の子だけ下の名前で登録してるんだよ、あいつ!』

『───女友達なんていないっていってたのに、ありえなくない?』

『───浮気してるわけじゃないだろうけど……なんでそういう嘘つくのって感じ』



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 08:41:53.45 ID:ug5EbwgY0

川;゚ -゚)「……」

ざあああああ。

無理に干渉しないよ、少しづつお互いを知っていこう。
言いたい事、話したいことは何でも言っていい。

でも、言いたくないこと、知られたくないことがあるのなら、今は言わなくてもいいんだよ。
人のプライベートを無理やりこじ開けるような真似はしたくないからさ。

(´・ω・`)「僕は君を信用しているし、君にも僕を信頼してほしいからね」

これは他ならぬショボンがよく言っていることだった。
彼女はそれを、ドライなようで情の厚いことだと好意的に解釈していた。

川 ゚ -゚)「だめだだめだめ、これはショボンの携帯なんだから……」

これは彼のプライベートだ。
それを覗くことは……勝手に干渉することは、言うまでもなく、悪い事だ。

第一、彼は浮気とか、そういう事をするような人じゃない。
それは自分が一番よくわかっているじゃないか。

川;゚ -゚)「……」

そう自分に言い聞かせながらも、振動の止まった携帯電話を開く彼女の手は止まらなかった。



90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 08:43:11.66 ID:ug5EbwgY0

ざああああああ。

川 ゚ -゚)「……」

自分の持っているそれとは機種が違うため、下手な操作をしないよう気をつけてはいたが、
画面に表示されたアイコンに従うことで、登録された電話帳を開くのは容易だった。

サークルのメンバーや学内の友達を中心に、全ての人間が本名で登録されている。
当然、女性の名前も多い。

川 ゚ -゚)「……そりゃそうだ、な? うん」

一人で相槌を打つと、画面をもどして操作を続ける。
しかし、メールをチェックしようとした矢先、ぴたりと指が止まった。

川;゚ -゚)「これは……ここまでは、さすがに、だめだよな」

そこで躊躇し、思いとどまった。目を閉じ深呼吸する。



91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 08:44:12.88 ID:ug5EbwgY0

川 ゚ -゚)「……やめとこう」

そう思い直し、携帯を元に戻そうとしたところで。

川 ゚ -゚)「うん?」

友達やサークルといったメールフォルダとは別に、
「クー」というフォルダ分けがしてあることに気が付いた。

川 ゚ -゚)「これは……?私専用のフォルダなのか」

川 ゚ -゚)「……」

川*゚ ー゚)「……これなら、いいか」


 ざああああああああ。



93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 08:45:31.31 ID:ug5EbwgY0

 ざあああああ。

フォルダをクリックして、メールの一覧を表示する。

出会ってから今に至るまでの全てがそこにあった。
サークル内でのやり取りを含め、
付き合い初めて以来、幾度となく交わした会話の全てが、記録として残っている。

川*゚ ー゚)「はは……付き合う前のも全部取ってあるのか」

一年半、特にこの二ヶ月における彼らの歩みが、データとなってその中に詰め込まれていた。

              ざああああああ。

川 ゚ -゚)「そういえば、あの事件からしばらくは不安で、相談に乗ってもらったんだよな……」

川 ゚ ー゚)「そうそう、このときはお互いに電話しすぎて電話代がかさんだから、
      たくさんメールしたんだ……」

   ざああああああ。

川*゚ ー゚)「ふふ、こういうこともあったな……ん?」

懐かしいやり取りの数々に頬を綻ばせ、思い出に浸っているうちに。
彼女はふと、送信済みのメール一覧の中に、
一件だけfromの違う、つまり別のアドレスから送られたメールがあることに気が付いた。

                   ざあああああ。



95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 08:46:56.80 ID:ug5EbwgY0

 ざあああああああ。

川 ゚ -゚)「あれ? なんでこれだけ発信元のアドレスが違うんだ?」

                          ざああああああああ。

クリックして開く。

    ざああああああああ。

どこかで見たような文面が表示された。

 ざあああああああああああ。



   『あなたに大事な話があります。午後四時に、サークルの部室にて』


   ざあああああああああああああああああああああああああああああ。



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 08:48:53.10 ID:ug5EbwgY0

川 ゚ -゚)「……」

頭の中で生まれた疑問の糸、糸、糸。
それはすぐさまぐちゃぐちゃに絡まって、彼女の脳裏をかき乱した。

川;゚ -゚)「……これって、何だ? これ」

あの事件のあと、メールはすぐに削除したため、クーの携帯にアドレスは残っていない。
確かめようのない事実。なのに、心の奥に黒いモヤが湧き上がるのがわかった。

川 ゚ -゚)「似たような文面なんて、いくらでもあるし……
     他の人に送ったメールを、間違って私の名前のフォルダに入れたのかも……」


ざあああああ。
あの日の出来事が頭の中にフラッシュバックする。


     『君は、僕のものになるべきなんだ』


川; - )「……?」


 (*'A`)『おれが好きなんだよな? 両想いだぜおれたち!
     カップルだよ! カップル! ねえ!』



98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 08:49:52.65 ID:ug5EbwgY0

僕。……僕?
僕って誰だ。
ドクオは……あいつは、おれ、だ。   だった。

ごくり。
生唾を飲み込む音。心臓の音。
わずかに開いた口から漏れる吐息の音。

全てが耳障りに残響し、彼女の不安を一層掻き立てた。

川;゚ -゚)「? ……あれは」

ふと、フィギュアの並べられた棚の下に置かれた小さなダンボール箱が目に留まる。


     『君は、僕の傀儡だ』


ごくり。ごくり。
また唾を飲みこんだ。

川;゚ -゚)「……」

カーペットに手を伸ばしたまま、ゆっくりとそれに手を伸ばす。

わずかに開いた蓋の上部から手を差し込むと、
何故か緩んでいるガムテープを破らないように、少しづつ開いていく。

ダンボールの闇に電灯の光が差し込むと、そこには



99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 08:51:18.94 ID:ug5EbwgY0




                      バタンッ



 ざああああああああああああああああああああああああああああああああ


                        
     バサッ



100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 08:52:39.59 ID:ug5EbwgY0

「!!!」

彼女の視界が暗転した。

ざあああああああああああああ。ざああああああああああああ。


『ああ……せっかくここまで辿り着いたっていうのに』

「え、な、なんだ!? ショボン!?」

『だめだよう、人のケータイ、勝手に見ちゃあさあ』

「何? 一体、何が……」


そこまで言葉を発し、息を飲んだ。
何をされたのかを瞬時に理解すると、彼女の体は小刻みに震えを帯びてくる。

「いや……まさか、これってまさか」

『……』

「嘘……うそだよな、嘘

『ごめん、そのまさかなんだ、謝って許してもらおうとも思っていない』


先程よりも大きなシャワーの音をバックに、無慈悲で無機質な声が響いた。



103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 08:53:59.84 ID:ug5EbwgY0

(:::::::::::::::)「い、いやだ! 早くこれを外して!」

(´・ω・`)「残念だよ、非常に残念な結末だ」


彼女の頭部には、あの時と同じ覆面が被せられていた。


(´・ω・`)「信頼して欲しいと言ったのに。君はそれに応えてくれなかった」

(:::::::::::::::)「なんで!? どうして!? なぜドクオと同じ事を……!」

(´・ω・`)「ドクオ? ああ……あいつか」


彼女のほうを改めて向き直ると、ふう──と溜息を漏らし、ショボンは言った。


『あいつはね、僕の傀儡だったんだよ』


( 川;゚ -゚) )(!? ど、どういう事……!?)



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 08:54:53.97 ID:ug5EbwgY0

                          ざああああああ。

一見してクールだけれども、芯はあたたかい。
漆黒の闇で覆われた世界に、そんな『彼女にとってのショボン像』は既に存在しなかった。

かつてショボンだったものは、彼女の様子を気にするでもなく、事務的に言葉を紡いでゆく。


(´・ω・`)「あいつにつけたのは、心を縛って動かすあやつり糸。
       君の覆面についているのは、体を縛って動かすあやつり糸さ」

(:::::::::::::::)「な、なんだ、その、糸って」

(´・ω・`)「その通りの意味だよ。まあ、わからなくても別にいい」

(:::::::::::::::)「嘘だ……じゃあ、あの時わたしを操っていたのは」

(´・ω・`)「御名答。廊下からね。見つからないように隠れるのが一番難しかったかな」

(:::::::::::::::)「ショボン……」

(´・ω・`)「君が欲しかったんだ、わかってくれるよね」


淡々とした彼の告白、一つ一つが。
金属の刃のように冷たく、彼女の心に刺さり、抉っていった。



106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 08:57:33.19 ID:ug5EbwgY0

( 川  - ) )(……え)

絶望の闇の淵、ぽっかりと開いた彼女の心の中に、ふと疑問が湧き上がる。

どうして?

(:::::::::::::::)「なんで? なんでこんなに回りくどいことをしたんだ!」

(´・ω・`)「何故って……必要だったからだよ」

(:::::::::::::::)「ど、ドクオみたいに、心を奪えばすぐに済んだだろう!」


ざああああああああ。
不快な水音が頭の袋で反響する。


『くく……ははははは』

かりそめの静寂を破ったのは、彼の笑い声だった。



110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 09:02:24.95 ID:dSoPYOf60

ざあああああああ。

ひとしきり笑ったあと、ショボンは続けた。

(´・ω・`)「いやあ……こないだはひやっとしたんだって。本当に。
       殴りかかるように仕向けたのは僕だけど、ナイフは予想外だったよ」

(:::::::::::::::)「え……?」

(´・ω・`)「言ってること、わかるかな?」

(:::::::::::::::)「わからない! 何もわからないぞ!」

(´・ω・`)「はは……はあ」

ショボンはそこで溜息をひとつつくと、小さいけれどはっきりと通る声で言った。


(´・ω・`)「心を縛るのはセーブがきかないし、何よりもつまらない。つまらないんだ。
       あんなつまらない人形はごめんだよ」



111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 09:04:12.79 ID:dSoPYOf60

(:::::::::::::::)「……つまらない……にんぎょう……」

彼女はその意味を理解することなく、ただただ機械的に言葉を反芻していた。

( 川; - ) )(なんだ……何を言ってるんだ彼は?)

頭の中がぐるぐる回る。
もはや考えがまとまらず、その材料すら留め置くことができなかった。

暗くて何も見えないが、
例え見えていたところで、その目に映る世界は歪み、視点は定まっていないだろう。


(:::::::::::::::)「だって……そんな、つまらないなんて」

(´・ω・`)「うん。もうコワシチャッタケド」

( 川;゚ -゚) )(!?)

(´・ω・`)「役目が終わったからね」


 ざああああああああああああああああああああああ。



113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 09:05:50.92 ID:dSoPYOf60

(´・ω・`)「全ては君を手に入れるため。君という生き人形を手に入れるためだったんだよ」

彼の声は記号と化していた。

(:::::::::::::::)「そ、そんな……私は」

(´・ω・`)「あやつり糸なしで、自分の意志をもって。
       身も心も思い通りに、僕につき従う……」

断片的にしか、その意味がわからなかった。

(:::::::::::::::)「いやだ……いやだ、いやだ」

(´・ω・`)「美しい、本物の生き人形がほしかったのに」

文脈での理解はできなかった。

(:::::::::::::::)「わたしは! にんぎょうなんかじゃな

(´・ω・`)「こうなっちゃったらしょうがないよね。うん。
       言う事を聞かない人形には、糸をつけて操るしかないもんね」


ざああ………。
二人の声を遮るかのように、水音が幾重にも飛び交っている。

いつの間にか、窓の外は土砂降りになっていた。



114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 09:07:27.11 ID:dSoPYOf60

『綺麗だよ……クー』

ショボンの一言を合図に、クーの体は完全に支配された。

彼女は立ち上がると、シャツをゆっくりと捲り上げる。
覆面ごと頭を通し、震える腕から袖を抜く。

動きを止めることなく、その手は腰に伸びていった。
ロングスカートがはらりと床に落ちる。

( 川 ;-;) )(うう……ううううぅううう)

その肢体は蛍光灯の光に照らされ、一層白く。柔らかで。透き通り。
艶かしく淫靡な輝きをたたえていた。


(:::::::::::::::)「いや……ショボン、いやだ……」

(´・ω・`)「ふふふふふ、クー、綺麗だね。本当に綺麗なカラダダネ」

「やめて……やめ」


……線の影響により、夜から雷を伴う大雨になるでしょう。以上、各地の予報をお伝………



117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 09:08:28.48 ID:dSoPYOf60

      ざああああああ。

『ほら……こっちだ。 ベッドにおいで』

「いや、いやああ」

『どんな姿勢がいいかな……うふふ、ふふふふふふふ』

「だめ、むりだ、たすけて」

            ざああああああああ。

『ゆっくり……開いてみようか。うふふ。
   ぼくのおにんぎょう。うふふふふ』

                      ざああああああああ。

「やめ『ああ……きれいだよ、きれいだよそのままもっともっとひらいてさいこうにえろてぃっくだようふふ』

 ざああああああああ。

『もっとひろげてこうやってああきれ
 いたのしいうつくしい』『いいよい
いすごくいいさあもっとだそうそうやってそれからああああいいねかんじる
ね』



『もっともっともっともっともっともっともっとさいこうにきれいきれいきれいきれいき



118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 09:09:38.17 ID:dSoPYOf60



ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア













                          足がありえない方向に曲がったようです  了



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