('A`)はダークヒーローのようです

90: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 03:26:35.33 ID:QV3B1W3VO
第三話 今そこにある脅威

ドクオたちが会議の開かれている第三作戦室に顔を出した時には、既に出席者は全員席に着いていた。
しぃはすいませんと言って、壁際の席へと座る。
彼女はあくまでドクオの付き人という名目で、この会議に出席しているようだ。

(´・ω・`)「これで全員揃ったね。それじゃあ会議を始めたいと思う」

ショボンの一言で、円卓に着いている全員が背筋を伸ばした。

(´・ω・`)「まずは今回の議題についてだ。
今日皆に集まってもらったのは、言うまでもないが新たな味方である彼を紹介する為。
それと今後の方針についてだ」

そう言ってショボンはドクオに視線を向けた。
ショボンの目線を追うように、皆の目がドクオに集まった。



91: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 03:28:04.57 ID:QV3B1W3VO
(´・ω・`)「彼が荒巻教授の言う『ダークメサイア』だ。
…と言い切るのは些か早計だが、内藤達の話しを聞くに間違いはなさそうだ


(´・ω・`)「彼はこれから、僕たちVIP軍の援軍として、この基地に留まることになる。
皆、仲良くしてやってくれ」

内藤が隣のツンに耳打ちする。

( ^ω^)「ボソボソ(ドクオ、転校生みたいだお)」

ξ#゚听)ξ「(会議なんだから黙ってなさい)」



93: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 03:34:36.08 ID:QV3B1W3VO
(´・ω・`)「さて、それじゃあ今後の方針についてだが……まずはドクオ殿に我が軍、いや、人類の現状について知っておいてもらおう」

('A`)「一応聞いておこうか」

(´・ω・`)「うむ。現在世界の四割は邪神によって支配されている。
残りの六割のうち二割は焦土と化して、人間が住めるような状況じゃない」

(´・ω・`)「つまり、地上の六割を支配されているのと変わりは無い」

('A`)「情けないものだな」

(´・ω・`)「ああ、本当に情けない。我々の力ではどうしようも無いのだ。
南半球は既に邪神達の巣窟だ。奴らの下僕の化け物で溢れかえっている」

(´・ω・`)「この下僕達には、僕たちの兵器でもなんとか通用する。
現にこうして僕たちが会議できるのも、辺境警備軍が魔物達と戦ってくれてるおかげだ」

(´・ω・`)「しかし邪神には科学兵器の一切が通用しない。
これを見てくれ」

ショボンがそう言って、隣の軍人に合図した。
軍人は立ち上がると、ショボンの後ろの天井から伸びた紐を引き、スクリーンを引き出す。
そのまま部屋の反対側まで回ると、どこから取り出したのか映写機のスイッチをいれた。



94: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 03:37:42.81 ID:QV3B1W3VO
すぐに映像の再生が始まった。

画面は、何かとてつもなく巨大な赤黒い塊を映している。
塊の表面は粘着質なのだろうか、小刻みに震えている。
よく目を凝らすと、それは小さな蛆のような生物の集合であることがわかった。
その生物達がそれぞれ蠢いているのだ。

( ^ω^)「きめぇwwww」

画面が少し引いて、その塊の全体像が明らかになる。

それは、熊とも牛とも言えるような形をした、高層ビル程もある巨大なけだものだった。

('A`)「ベルゲルドか」

熊や牛ですら、ようやくこじつけた表現に過ぎない。
それを表すのに、この世の動物を引き合わすのは、この上なく愚かに思われた。

━━突然、画面の端から何かがけだものに向けて疾駆した。
と思った瞬間、画面がホワイトアウトする。

(´・ω・`)「核弾頭を積んだ巡航ミサイルを使って、僕たちはこの化け物に四度に渡る射爆を試みた。
今のが四度目の射爆だ」

やがて、ホワイトアウトした画面が鮮明になってくる。
もうもうと舞う土煙。
土煙が晴れると、辺りにあった建物は影も形も無くなっていた。
そんな中赤黒い塊が天を仰ぎ、身の毛もよだつ吠え声を上げた。
けだものが、傷を負った様子は無い。
映像は、最後にけだものがのそりのそりと歩き出すところで終わった。



97: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 03:40:28.29 ID:QV3B1W3VO
(´・ω・`)「この直後、僕たちの軍はこの地区を放棄。
四時間後、偵察機が焼け跡に奴らの天国が築かれているのを確認した」

ショボンが、淡々と結果だけを述べた。

(´・ω・`)「これで邪神の脅威を目の当たりにしたことが無い諸君も、奴らの出鱈目な生命力を理解してくれたと思う」

(´・ω・`)「僕たち人間がまだ絶滅していないのは、奴らが全盛力を持って攻めてこないからだ。
僕たちはいつ絶滅してもおかしくない」

ショボンの言葉に、部屋の中が水を打ったように静かになる。
皆が皆、我が身に迫る絶対的な死の恐怖を自覚し始めたのだろう。
内藤ですら、強張った表情のまま動けないでいる。



v 99: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 03:44:04.87 ID:QV3B1W3VO
静まり返った部屋の中で、ドクオがショボンに問いかけた。

('A`)「で、ベルゲルドは…奴はここから近いところに住み着いているのか?」

(´・ω・`)「いや、これは僕たちの軍が南半球のラウンジ国に遠征したときの映像記録だ。
奴は今海の向こうだよ」

('A`)「そうか。ベルゲルドは数いる邪神の中でも極めて高い位の存在だ。
ここまで頑丈で馬鹿出かいのは、そうざらにはいないから安心しろ」

( ;^ω^)「そ、そうなのかお?なんか、安心したお」

('A`)「もう一つ。お前たちは勘違いをしている。奴らが神だとか言ってはいるが、奴らも肉体は有機体だ。
完全に息の根を止めるのはオレにしかできないが、やろうと思えばお前たちの兵器でも、短時間なら無力化できるだろう」

(´・ω・`)「それはいいことを聞かせてもらった」

会議室の中に、束の間安堵のため息の音が吐き出された。



101: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 03:48:43.63 ID:QV3B1W3VO
(´・ω・`)「さて、それじゃあそろそろ締めようか。今後の方針について、だったね」

(´・ω・`)「とりあえず現時点で、ドクオ殿がどれだけの力を持っているのかがわからないと、侵攻作戦も立てられない。
そういうことで、ドクオ殿にはしばらくの間試験的に魔物討伐隊に加わってもらって、腕前を見させていただく」

('A`)「まぁ、起き抜けの運動には丁度いいか」

(´・ω・`)「頼もしい限りだ。他のものは、これまで通り適当にやってくれ。
以上、解散」

解散の一声で、出席者達は一斉に立ち上がり敬礼をする。
ドクオがだけが、座ったままだ。
が、誰もそれについて咎める者はいなかった。
ショボンも敬礼し、会議室を後にする。
大将が退室した後の会議室では、残った面々が会議の内容について口を交わしている。

( ^ω^)「おっお。適当にやっていいとは、なんて楽なんだお」

(*゚ー゚)「軍隊では『適当』っていうのは、最善を尽くせっていう意味なんですよ」

( ^ω^)「ブーンはいつでも最善だお」

ξ゚听)ξ「どこが……」



104: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 04:03:43.64 ID:QV3B1W3VO
雑談に興味の無いドクオは、早々に自室へと引き上げるべく席を立つ。
そこへ絶妙のタイミングで声がかかる。

( ゚∀゚)「君が噂のドクオ君だね?」

振り向くと、どこか捉えどころの無い中年の男がそこに立っていた。

( ゚∀゚)「オレはジョルジュ。
君がこれから配属されるであろう、魔物討伐隊の隊長を務めている。
まぁ良かったら名前だけでも覚えてくれ」

('A`)「………」

( ゚∀゚)「そう嫌そうな顔をするな。
これから一緒に戦うんだ、戦略的に見てオレ達の関係はできるだけ良好に保っておいた方がいいと思わないか?」

そう言って、ジョルジュはシニカルに笑った。

('A`)「一理あるな。せいぜい宜しく頼む」

( ゚∀゚)「ははは……気に入ったよ。まぁ何かわからないことがあったら、何でも聞いてくれ。
悪いようにはしないさ」

そう言い残すと、ジョルジュは気だるげに会議室を出ていった。
なんとなく、彼のふいんき(何故かry)に懐かしいものを感じて、ドクオは安心のようなものを覚えた。



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