('A`)はダークヒーローのようです

142: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 17:42:58.05 ID:QV3B1W3VO
第四話 無知

ジョルジュと別れた後、ドクオはすぐに自室へと戻っていた。
詳しい事はおいおい話すと世話役がそう言っていたので、それまでは実質暇な時間が流れる事になる。
ベッドに腰掛けると、改めて広大な部屋の中を見回す。
まるで高級ホテルのスイートルームのような部屋は、ドクオ一人には広すぎた。
ふと、机の上の金属の箱と鏡台のようなものの事を思い出す。

('A`)「………」

一体あれは何なのか。
手っ取り早く世話役に聞いてみることにしたドクオは、机の上に据え付けられたボタンを押した。

ピンポーンと間の抜けた音がする。



143: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 17:47:12.75 ID:QV3B1W3VO
しばらくして、部屋のドアがノックされる音がする。

(*゚ー゚)「お呼びですか?」

('A`)「ああ。少し聞きたいことがある」

しぃを部屋に招き入れると、ドクオは彼女を件の箱と鏡台らしきものの前に案内する。

('A`)「この箱と鏡台のようなものは一体何だ?見たところ、何かの機械のようだが。使用用途と操作方法を教えて欲しい」

(*゚ー゚)「え?」

ドクオの言葉にしぃは一瞬何を言ってるのかわからないような顔をしたが、彼が現代について全くの無知である事を思い出した。

(;*゚ー゚)「ああ、えっと、これはパソコンと言いまして、様々な情報を得たりするのにとても便利な機械なんです


そう言うと、しぃはパソコンの電源をいれインターネットに繋ぐ。

(*゚ー゚)「ここの所に、自分の調べたいことを入力して…」

キーボードを叩きながら喋る。

(*゚ー゚)「ここの検索を押すと」



145: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 17:50:15.20 ID:QV3B1W3VO
('A`)「おぉ…」

画面に現れた大量の検索結果に、よくわからないながらもドクオは感心した。

('A`)「つまり、辞書のようなものか」

(*゚ー゚)「まぁそんな感じです。他にも色んなことが出来ますよ。
遠くにいる人とお話ししたり、ゲームしたり…」そう言いながら、しぃは次々とサイトを開いては閉じていく。

('A`)「ふむ……興味深い。操作方法を教えろ」

子供のように画面に釘付けになったドクオの姿にしぃはクスりと笑うと、

(*゚ー゚)「いいですよ。
私もそんなに詳しくは無いですけど、お教えしましょう♪」

ドクオをパソコンの前に座らせ、その後ろに立つ。

(*゜ー゜)「まずはマウスとキーボードの使い方から教えますね」

('A`)「うむ」

部屋の中には不思議と和やかな空気が流れたが、二人はそれに気付かなかった。



146: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 17:53:04.45 ID:QV3B1W3VO
━━バスを降りると、古びた洋館のような様相をした「VIP大学」が目の前にそびえていた。

( ^ω^)「いつ見てもバ〇オみたいだお」

ξ゚听)ξ「教授、元気かしら」

内藤とツンの二人は今回のドクオの件を荒巻教授に報告する為、VIP基地からここまでバスを乗り継ぎ、約一時間かけてやってきたのだ。

( ^ω^)「前に会ったのはオオカミ遺跡発掘の時の記者会見前だから……もう、二週間も会ってないことになるのかお」

珍しく内藤が説明台詞を発し、ツンが頷く。

ξ゚听)ξ「教授は自ら世界中を飛んで歩いて邪神伝説について調査している身だものね。
なかなかお会いできる機会が少なくて残念だわ」

( ^ω^)「それでも、僕たちがドクオを覚醒させたって聞いたら、世界の裏側からでも飛んでくる辺り、僕たちへの愛を感じるお」

ξ゚听)ξ「ねーよwwwwww」



147: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 17:55:23.31 ID:QV3B1W3VO
そんな事を話しながら、大学の構内を教授の研究室がある別棟まで歩く。

ここVIP大学は、民族学や神学などの研究が盛んなニュー速でも珍しい大学で、中でも民族学部には専用の棟までもが割り振られている。
他の学部からは、この別棟は「オカル棟」などと呼ばれ、敬遠されているが、内藤とツンにとっては我が家のような所である。
廊下のそこかしこに散らかった水晶ドクロや土偶、巨大ペンタグラムなどを掻き分け進む二人に、馴染みの学生達が声をかけてくる。

キバヤシ「やぁ、ブーンにツン、VIP丘陵遺跡の方はどうだった?
何か新しい発見はあったかい?」

( ^ω^)「聞いて驚くなお。なんと、あの『ダークメサイア伝説』は本当だったんだお!」

キバヤシ「な、なんだってー!?
…オレ達は、とんでもない思い違いをしていたようだ………」

ξ゚听)ξ「(知らないのはおめーだけだよ)」



148: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 17:57:24.07 ID:QV3B1W3VO
そんなこんなでやっと荒巻教授の研究室に辿り着いた二人は、少し緊張した面持ちでドアをノックする。
緊張する要素は何もないが、なんとなくふいんき(変換d)が盛り上がると思っての計らいだった。

/ ,'3「開いているよ。入りたまえ、ブーンにツン」

ξ;゚听)ξ「な、なんで私達だってわかったんですか?」

驚きながら、ツンが訪ねる。

/ ,'3「そっちの方が、わしのキャラが格好良くなると思ってな。オカルト的に考えて」

( ;^ω^)ξ;゚听)ξ「相変わらず(ね)(だお)……」



150: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 17:59:05.88 ID:QV3B1W3VO
/ ,'3「さて、時間が勿体無い。さっさと本題に入ろうか。
まずはおめでとう、ブーンにツン。流石はわしの教え子じゃ」

ξ゚听)ξ「あの、ドア開けていいですか?」

/ ,'3「部屋の描写が面倒くさい。
そこで結構」

なんという横着。これは間違いなく作者の本音。

それを無視してツンはドアを開ける。

ξ゚听)ξ「失礼します」

部屋の中は相変わらず散らかっていた。
所狭しと並べられた本棚と、それに入りきらなかった書物がうず高く床に積まれている。
荒巻は、その床に積まれた本の上にいつものように寝そべっていた。



153: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 18:01:15.97 ID:QV3B1W3VO
/ ,'3「面倒くさいと言うに…
まぁいい。とにかくおめでとう。これでまた一つわしの研究が実を結んだわけだ」

ξ゚听)ξ「はい。やはりあの石版に記されていたことは、間違ってはいなかったようです」

/ ,'3「うむ。これで伝説は伝説では無くなった。
しかしまだわからない事が山ほどある」

ξ゚听)ξ「……と、言いますと?」

/ ,'3「奴らの正体じゃよ」

( ^ω^)「『邪神』と『救世主』でいいんじゃないかお?」

/ ,'3「軍や政府はそれで納得がいくかもしれん。彼らにしてみれば、倒す方法がわかればそれでいいのだからな」

/ ,'3「だが、わしら学者は違う。奴らの正体を、起源を、生態を知りたい!」

ξ゚听)ξ「確かに、そこら辺はまだまだピンボケで、詳しい資料が見つかってませんもんね」



155: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 18:03:16.44 ID:QV3B1W3VO
/ ,'3「今まで見つかった資料には、奴らの存在を仄めかす程度のこと、各地に散らばる怪物伝説との関連性を示すことしか記されておらん」

/ ,'3「実際の所、わしらはまだ何も理解などしていないのだよ」

荒巻が嘆息する。学者としての探究心故、思考の壁にぶつかってしまうと気分が沈んでしまうのだ。

ξ゚听)ξ「そういえば数ある邪神の伝承の中でも、救世主についての記述だけは今回のVIP丘陵遺跡のものだけでしたよね」

/ ,'3「そう言われればそうだな。殆どの伝承では怪物の出現と終末の訪れについてしか記述が無い。
そういえば、あの『ダークメサイア伝説』はどこの出典だったかな」

ξ゚听)ξ「確か『クリプテリア』だったと思います。
ニュー速国の黙示録的戦史です」



158: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/01(金) 18:05:16.77 ID:QV3B1W3VO
/ ,'3「別名『魔術戦記』と呼ばれるあの書物には、魔術の存在を認める興味深い記述が溢れている。
魔王と勇者、それに邪神と救世主。まるでファンタジー小説のようだ」

( ^ω^)「指輪物語みたいで面白かったお。
神の怒りに触れた人間達が、救世主と呼ばれる神の分身と共に世界を救うヒロイックな内容でしたお」

/ ,'3「そう、『神の怒り』だ。もしも奴らが本当に神だとしたら、我々は途方も無いものを相手にしている事になる」

ξ゚听)ξ「しかし、他の伝承には奴らは知性の無い化け物としてしか描かれていません。
私達が邪神と呼んでいるのも、神懸かり的な力を持っているからそう呼称しているに過ぎないんでしょう?」

/ ,'3「まぁ、そうなのだが……」

( ^ω^)「まだまだわからない事だらけなんだから、ここで結論を急がなくてもいいと思いますお」

/ ,'3「そう……だな。わしらはまだまだ無知なんじゃ。すまん、わしの悪い癖だ」

そう言って、荒巻は窓の外に目を向けた。
空はどんよりと、曇っていた。



戻る第五話