('A`)はダークヒーローのようです
- 6: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/02(土) 22:54:26.78 ID:lYrBkbemO
- 第六話 無関心
ドクオは、しぃが出ていった後もパソコンに夢中だった。
ネットの海は、潜れば潜る程ドクオに新しい知識をもたらす。
その中から取捨選択をしていき、この現代社会の全体像を築いていく。
掲示板には偏った情報しか無いため、この時代を知るにはニュースサイトなどを多く回る必要があった。
だが、ドクオは本能とも言える知識欲によって無数のサイトを渡り歩いた。
その上で、彼がこの時代に抱いたイメージは「無関心」であった。
- 7: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/02(土) 22:56:12.61 ID:lYrBkbemO
- 現在進行形で絶滅の危機に瀕しているにも関わらず、彼ら人類は流行のファッションや最新映画情報に血眼になっている。
チャットも見学してみた。
だが、ここでも話題はどこの誰が誰と付き合っただとか、どのドラマのここが面白いだとかばかりだ。
最初は盛んだった邪神の侵攻が止んだのが、彼らの精神に余裕を持たせているのか。
ドクオには彼らがどうしてこうも世界の情勢に無関心になれるのか、わからなかった。
- 9: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/02(土) 22:57:39.77 ID:lYrBkbemO
- 湧き上がる疑問に答えを出すため、再びネットの海に潜ろうとマウスを握ったところで、彼はメールの受信を確認した。
送信者はしぃだ。
('A`)「《二日後に魔物討伐が決行されることになりました。
つきましては、今夜『バーボンハウス』で討伐隊のメンバーとの顔合わせを行いたいと思います。
絶対参加して下さいね。
P.S キーボードは上手く扱えるようになりましたか?試しに返信してみて下さい(笑)》……」
ドクオは、初めてのメールを音読する。
返信など馬鹿馬鹿しいと思ったが、送らないと舐められると思い直し、キーボードに指を置く。
(;'A`)「ちっ……思うように指が動かん」
結局彼がしぃに返信を送ったのは、メールが届いてから三十分後のことだった。
- 11: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/02(土) 23:00:14.86 ID:lYrBkbemO
- そうしているうちに日は沈み、夜の帳がVIP基地にも訪れる。
しぃに言われたとおり、ドクオは「バーボンハウス」の前までやってきていた。
軍隊の基地内にある割には、なかなかツボを押さえていて洒落た酒場だ。
ノブを回し、中へと入る。
そこには既に、五人の屈強な男女が集まって酒盛りを始めていた。
( ゚∀゚)「おっとみんな、主役の到着だ」
ジョルジュの声に、二、三人が歓声と拍手を上げる。
(=゚ω゚)「ぃよう!あんたが救世主様かい!?宜しくな!」
ノパ听)「こいつぁとんだモヤシっ子だねぇ!鉄砲は持てるのかい!?www」
愛嬌のある顔をした男と、威勢のいい女が口々に声を張り上げる。
女の方は既にアルコールが回りきっているのか、顔が真っ赤だ。
( ゚∀゚)「おいおいヒート、あまりいじめてくれるな。それはこれから判ることだろう?」
ジョルジュが笑いながらも女をたしなめる。
('A`)「……」
( ゚∀゚)「いやぁ、すまないドクオ殿。どうにも礼儀を知らない奴らでね。
まぁ座ってくれ」
ジョルジュに促され、彼の隣のカウンター席に腰をおろす。
- 12: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/02(土) 23:02:03.50 ID:lYrBkbemO
- ( ゚∀゚)「酒は、何を飲む?」
テキーラをあおりながら、ジョルジュが訪ねた。
('A`)「遠慮する」
アルコールは嫌いでは無いが、ドクオは酔えない口だ。
騒々しいのも好かない。
( ゚∀゚)「そうか。それじゃあ一応顔合わせってことだし、面子の紹介とでもいこうか」
興味無いと言いかけたが、この男を前にしてそれを言うのは無粋と思えた。
ジョルジュには、そう思わせるだけの雰囲気(変換できた!)があった。
( ゚∀゚)「あの頭の中身が詰まって無さそうなのが『ぃよう』、やかましい女が『ヒート』だ」
(=゚ω゚)「隊長そりゃ無いぜ!オレ中学じゃ学級委員だったんだぜ!」
ゲラゲラと笑いながら、ぃようが酒をあおる。
ノハ*゚听)「やかましいって何さ!?あたしはこの小隊の紅一点だよ?レディにはジェントリィに振る舞えよなぁ!」
キーキーとヒートが喚く。しかし楽しそうだ。
- 14: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/02(土) 23:05:34.79 ID:lYrBkbemO
- 苦笑しながら、ジョルジュは今度はドクオとは反対側の席に腰掛けている二人の男を振り返った。
( ゚∀゚)「で、こっちの辛気くさい双子が兄者に弟者」
( ´_ゝ`)「宜しく頼む、救世主殿」
(´<_` )「右に同じ」
こちらの二人は、あまりドクオの事を歓迎しているようには見えない。
疎まれることに慣れているドクオは、さして気にはとめなかった。
こちらも馴れ合いは望んでいない。
- 15: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/02(土) 23:07:18.81 ID:lYrBkbemO
- ( ゚∀゚)「まぁみんなこんなんだが、気の良い奴らばかりだ。仲良くしてやってくれ」
('A`)「そのうちな」
ひねたジョークが自分の口から出た事に気付いたドクオは、内心驚いた。
ジョルジュが苦笑し、また酒をあおる。
( ゚∀゚)「それよりどうだい、この『現代』は?少しは慣れたかい?」
('A`)「大体は。オレが前起きてた頃と比べると、随分様変わりしたが」
バーボンハウスの中を見回し、言葉を続ける。
('A`)「相変わらず人間は進歩が無いな」
ドクオの言葉に、ジョルジュはまた苦笑する。
( ゚∀゚)「ははは、変わったら変わったでそこは寂しいだろ?」
('A`)「進歩が無いことが、お前たちのいい所でもある」
( ゚∀゚)「面白い奴だよ、君は。
人間には変わらない、良さがある」
('A`)「愚かさと」
( ゚∀゚)「人情だ」
そこで二人は顔を見合わせ、ニヤリと笑った。
- 17: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/02(土) 23:12:25.30 ID:lYrBkbemO
- そんな二人の横で、兄者と弟者は相変わらず押し黙ったまま酒をちびちびと飲んでいる。
二人の前にはノートパソコン。
(´<_` )「兄者」
( ´_ゝ`)「なんだ弟者、オレはブラクラ集めで忙しい」
(´<_` )「ここで席を外してはいけないだろうか」
( ´_ゝ`)「それは流石にまずいだろ。常識的に考えて」
(´<_` )「まぁそうなんだろうが」
( ´_ゝ`)「それに、話してみれば案外いい奴かも知れんぞ。彼も」
そう言って、掲示板上のURLをクリックする。
( ´_ゝ`)「よし、ブラクラゲット」
(´<_` )「ふいんき(またh)でわかる。あれはまともじゃない」
- 18: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/02(土) 23:13:36.71 ID:lYrBkbemO
- ( ´_ゝ`)「弟者、何度も言うg」
(´<_` )「あぁわかっている。隊の士気を落とすような事だけはせんよ。オレも兵士だ」
( ´_ゝ`)「それでいい。さぁ、それじゃあオレ達も本腰を入れて飲むか」
そう言って、兄者はノートパソコンを閉じると、バーテンにウォッカを頼んだ。
ノパ听)「一番ヒート、脱ぎます!」
(=゚ω゚)「ぃよう!待ってました!」
( ゚∀゚)「ははは、やりすぎて風邪だけは引くな」
こうして、一部の者にとっては賑やかな夜が更けていく。
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