('A`)はダークヒーローのようです
- 7: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/12(火) 21:49:17.53 ID:9z7E3pgBO
- 第十一話 思いやり
インクを垂らしたような真の闇の中で、五人の賢人達が集まり会議は始まった。
?「緊急会議と聞いてやって来たのだが、なんなんだ?
あまり頻繁に集まるのは危険だ。我々『エデン』の活動が周囲に知れたらどうする」
?「落ち着け。重大な内容なんだ」
?「いいから早く話せ」
?「せっかちな奴だ。単刀直入に言おう。『鍵』が逃げ出した」
どよめく賢人達。
?「馬鹿ものが!あれほど厳重に拘束しておけと言っただろうに」
?「黙ってくれないか。過ぎた事を責めるのは愚か者のすること。この場合は早急に対応策を練るのが賢明だ」
?「同意だな。で、逃亡先の目星はついているのか?」
- 10: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/12(火) 21:51:45.76 ID:9z7E3pgBO
- ?「ニュー速国のVIP付近で目撃情報が上がっている」
?「そうか。ならばすぐにでも『聖騎士団』をVIPに向かわせよう」
?「あぁ、早急に頼む。この際『門』の覚醒は後回しだ。
我々『エデン』の総力を上げて『鍵』を探すんだ」
?「旅人に、祝福あれ」
?「「「「旅人に、祝福あれ」」」」
- 11: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/12(火) 21:53:31.01 ID:9z7E3pgBO
- ━━しぃは考え込んでいた。
仕事とストレスについて、その源泉であるものについて。
つまりはドクオのことについて。
彼がここに来て一週間が経つ。だが、今まで彼とろくに喋る機会は無かった。
彼が自分との接触を望まないからだ。
それはそれで仕方ないのかも知れない。
だが、彼女としてはそのままギクシャクとした関係ではいけないと思う。
仕事をする上でそれでは余計なストレスを感じてしまう。
ストレスは少ないに限る。
それには彼と少しでも親しくなるのが一番。ギコに相談したところ、彼もドクオに興味があるとのことだった。
そこでしぃは、今度の休日にドクオとギコと三人でニーソク街へとショッピングに行こうと提案した。
ギコは勿論賛成だったが、問題はドクオである。
彼が自分達の誘いを受け入れてくれるだろうか。
とにかく言ってみなくては始まらない。
- 13: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/12(火) 21:55:56.05 ID:9z7E3pgBO
- そんなわけで、しぃは今ドクオの部屋にいる。
彼は最早習慣となっているのか、パソコンの前でキーボードを叩いている。
以前と比べると、タイプもスムーズに行えているみたいだ。
('A`)「で、オレに何か用なのか?」
パソコンの画面から振り返りもせず、ドクオはぶっきらぼうに言った。
(*゚ー゚)「あの、今度の休日にギコ君と一緒にニーソクへショッピングに行くんですけど…」
('A`)「『zipでくれ』っと……で?」
(;゚ー゚)「……(またVIP…)それで、もし宜しかったらドクオさんも一緒に来ませんか…?」
ドクオは相変わらずディスプレイから目を外さない。
('A`)「……」
- 14: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/12(火) 21:56:48.90 ID:9z7E3pgBO
- しばしの沈黙。
静寂が、しぃの身には辛い。
耐えられなくなったしぃが冗談めかして声を上げる。
(;゚ー゚)「…なーんちゃっt」
しぃが言い終わらないうちに、ドクオがしぃを振り返った。
('A`)「ふむ。そうだな、そろそろPCだけの知識にも限界が来ている。
この際自分の目でこの『時代』がどのようなものか、見ておくのもいいかも知れん」
(*゚ー゚)「え?」
('A`)「いいだろう、オレもそのショッピングに同行させてもらおう」
- 16: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/12(火) 21:57:42.74 ID:9z7E3pgBO
- 思わぬドクオの言葉に虚をつかれたしぃは、喜びのリアクションを取るのが少し遅れてしまった。
('A`)「なんだ、誘ったのはお前だろう?それともオレにk」
慌てて笑顔を浮かべると大きな声で、
(*゚ー゚)「はい!」
自分でも気持ちのいい返事をした。
- 19: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/12(火) 21:59:38.89 ID:9z7E3pgBO
- ━━内藤がシャワーを浴びてリビングに戻ると、ツンが渾身の力でクッションを投擲して来た。
( ^ω(#)「ぶほっ!」
あの柔らかいクッションが、砲弾のように内藤の顔にめり込む。理不尽な攻撃に慌てふためく内藤。
ξ*゚听)ξ「服着なさいよ、この馬鹿!」
なる程、ごもっとも。内藤は一糸纏わぬ生まれたままの姿で、バスルームから出てきてしまったのだ。
( ^ω(#)「でも、着る服が無いお」
内藤の言うことももっともだ。
ξ*゚听)ξ「…しょうがないわね、今回に限り私のパーカーとジーンズ貸してあげる」
( ^ω^)「おっおっ、dクスだお!」
ツンは、タンスの一番下の段から黄色のパーカーとジーンズを取り出すと、内藤に放った。
ξ*゚听)ξ「本当に今回だけなんだからねっ!」
- 21: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/12(火) 22:01:31.75 ID:9z7E3pgBO
- そう言って、後ろを向く。
ξ*゚听)ξ「ほら、向こう向いてるから早く着替えちゃいなさいよ」
( ゚ω゚)=3「むひょー!!!ツンの穿いたジーンズハァハァ」
ξ////)ξ「な、何想像してんのよ!!」
今度はコップが飛んで来た。
( #)ω^)「正直すまんかった」
顔面を少しばかり整形しつつも、内藤はジーンズを穿きパーカーに袖を通す。
( ^ω^)「おk、完全装着www」
ツンが振り向くと、まるで大昔に流行った不細工ロックバンドのボーカルのような内藤がそこにいた。
ξ゚听)ξ「意外と似合ってるじゃない」
しげしげと内藤を見つめる。ギターを持たせたら、なかなかはまるのでは無いだろうか。
( *^ω^)「そうかお?いやぁ、ちょっと照れちまうお」
ξ゚听)ξ「誉め言葉じゃないけどね」
( ^ω^)「ひでぇwwwww」
- 22: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/12(火) 22:02:52.04 ID:9z7E3pgBO
- ξ゚听)ξ「それで、この人は誰なの?」
今まで忘れていたことを、ツンが切り出した。
( ;^ω^)「正直僕にもわからないお。ツンの家に向かってる最中に、道に倒れてたからここまで運んで来ただけだお」
件の女は相変わらずソファで苦しげに身じろぎしている。
ツンの手当てが済んだ後、彼女は泥のように眠ってしまって、肝心なことは聞けず仕舞いだった。
ξ゚听)ξ「まったく……親切も大概にしないと、何か厄介事に巻き込まれたとき面倒よ」
ツンは眉を顰める。
( ^ω^)「でも、困った人を見つけたら助けてあげなさいってカーチャンも言ってたお」
内藤はそう言って、ソファに横たわる女の方を見る。
傷が疼くのだろうか、時折顔を歪めながらも彼女は荒い寝息を立てて眠っている。
( ^ω^)「こんなに苦しそうにしてるお。理由はわからないけど、病院とか警察とかに頼れないような人なんだお。
僕たちがなんとかしてあげないと、可哀想だお……」
- 26: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/12(火) 22:04:28.90 ID:9z7E3pgBO
- そういう内藤の顔は、鎮痛なものだった。『あの子』の事を思い出しているのだろうかと、ツンは思った。
誰にも見放されて、どこにいるかさえもわからない、『あの子』の事を。
ξ゚听)ξ「……しょうがないわね。わかった、とりあえず傷が治るまで、私がこの人を預かるわ」
慌てて内藤が振り返る。
( ;^ω^)「で、でもそれじゃツンに申し訳ないお。この人は僕が勝手に助けたんだから、僕が責任を負うべk」
ξ゚听)ξ「あのねぇ、まともに動けない女性をあんたに預けたら、あんたが何をしでかすかわからないでしょ」
( ;^ω^)「ちょwww僕はそんなに信用無いのかおwww」
ξ゚听)ξ「当たり前じゃない。とにかくそういう訳だから、あんたはこの人の分の食費をお願いね」
( ;^ω^)「どういう訳でwww」
ξ#゚听)ξ「返事は?」
( ;^ω^)「把握しましたお」
- 28: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/12(火) 22:05:51.15 ID:9z7E3pgBO
- いつものようにツンのペースに流される内藤だったが、ツンは心中穏やかでは無かった。
ξ--)ξ「(ブーンの、馬鹿……)」
本能的なジェラシーだろうか。
内藤が自分以外の女性に優しくしているところを見ると、苛々するのだ。
自分でも、見苦しいとツンは思う。
だがどうしようも無い。もっと大人にならなければ。
ミセ;゚ー`)リ「う…ん」
苦しげな声に、ツンの思考は遮断された。今まで傷にうなされていた件の女が、目を覚ましたようだ。
ゆっくりと上体を起こすと、内藤とツンを見つめる。
ミセ*゚ー゚)リ「あなた達は……?」
傷の為だろうか、少々記憶が混乱しているようだ。
内藤とツンは、彼女に今までのいきさつと、傷が治るまでツンの部屋で療養しているといいということを彼女に話した。
ミセ*゚ー゚)リ「…申し訳ありません。そこまで親切にしていただいて、私にはご恩を返すこともできません」
( ^ω^)「気にするようなことじゃないお。人類皆兄弟、助け合いが大切だお!お礼なんて気にすんなお!」
ξ゚听)ξ「そういうことだから、まぁ気楽にしてくれて構わないわ」
ミセ*゚ー゚)リ「お心遣い、痛み入ります」
- 30: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/12(火) 22:07:00.94 ID:9z7E3pgBO
- ξ*゚听)ξ「そこまでされる程じゃないわよ」
( *^ω^)「べ、別にあんたに同情したとか、そんなんじゃ無いんだからねっ!」
ミセリは照れる二人を見つめ、優しく微笑む。
八畳半の部屋に、暖かい空気が溢れた。
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