('A`)はダークヒーローのようです
- 63: ◆/ckL6OYvQw [保守投下] :2007/06/14(木) 17:31:10.10 ID:m0f5tZJIO
- 第十四話 神
(-@∀@)「当たれー!」
出来るだけ小刻みに動き、ナイトゴーント共の爪や、口から発せられる生体レーザーをかわしながら、アサピーは対空ミサイルを連発していた。
ナイトゴーントの群れは、地上からの攻撃とアサピーの多弾頭ミサイルによりかなりの数が削られていた。
(;-@∀@)「へへへ、やるじゃんオレ。流石はエースパイロットってとこかよ?」
額から流れる滝のような汗を拭いながら、アサピーは操縦桿を繰りナイトゴーントの群に三十ミリ機関砲で掃射をかける。
一体、また一体と翼持つ闇色の悪鬼共は翼をもがれて母なる大地の胸の中に飛び込んで行く。
それを見た群の中の数体が、同朋の敵討ちとばかりに口腔を開いた。
ぽっかりとあいた洞穴のような口に、赤黒い光が収束していき、臨界点に達すると同時に一条の光条がアサピーの駆るアパッチ目掛けて疾駆する。
(;-@∀@)「そんな攻撃…当たるかよ!」
生体レーザーは発射までの予備動作が長い。
発射のタイミングを見極めれば、かわせないことは無い。
戦闘経験は皆無と言えど、彼のヘリの操縦技術は一級品だ。
操縦桿を少し倒し、ヘリの角度を傾けることでアサピーは破壊の光条をなんなく回避した。
- 69: ◆/ckL6OYvQw [そこはかとなく保守] :2007/06/14(木) 18:28:52.85 ID:m0f5tZJIO
- (-@∀@)「さぁ、お返しに蛸さんでもお見舞いしてやんよ!」
そう言い、ヘリの頭をナイトゴーントの群へと旋回させると、アサピーは多弾頭ミサイルの発射スイッチを押した。
蛸壺から一尾の親蛸が泳ぎだし、空中で無数に分散すると数が少なくなってきた蝙蝠共に絡みつく。
別名オクトパシーミサイルと呼ばれる多弾頭ミサイルは、確実にナイトゴーント共の数を削っていく。
最早アサピー達の領空を飛んでいるナイトゴーント共は、残党としか言いようが無いまでにその数を減じていた。
(パ1@`_´)「やるじゃねぇかアサピー。こりゃあ本場の空挺部隊顔負けだな!」
無線から味方のパイロットの賞賛の声が響く。
(-@∀@)「へへっ、叩き上げのエースパイロットも夢じゃねぇってか!」
(パ2"・⊇・")「そのいきで、バシバシ行こうぜ!」
味方のミサイルが更にナイトゴーントに追い討ちをかけ、今やアサピー達の勝ちは目に見えていた。
彼らが自分達の勝利を確信した時、ふいに遠方の雲の合間が鋭く閃いた。
無音の光条。破壊の音。飛び散る破砕片。
彼らが事態を把握した時には既に、ヘリの一機が地上に向けて最後のダイブを開始していた。
- 74: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 19:26:31.26 ID:m0f5tZJIO
- (パ1;`_´)「な、何が起こったんだ!?」
無線越しに、味方の狼狽する声が聞こえてきた。
(;-@∀@)「わ、わからない。向こうの雲の辺りで何かが光ったと思ったら、味方が……」
心臓が動悸を起こす。ドラムのように耳骨を震わせる。
何者による攻撃かを確かめる為、無事だった味方が攻撃のあった雲の海へと向けて近寄って行く。
(;-@∀@)「ば、馬鹿!近づくな!危険だ!引き返せ!」
(パ1;_;)「馬鹿はそっちだ!味方がやられて黙ってられっかよ!」
無線越しに涙混じりの悲痛な叫びが木霊する。
━━と、また雲の中が閃き、光条が味方のヘリを貫く。
(パ1;口;)「畜生!畜生!畜生ぉぉooooo!!!kgp52シマjm」
無念なる最後の咆哮を残し、それきり無線は沈黙した。
一人生き残ったアサピーを、ヘリの中にわだかまる静寂が包み込み、蝕む。
(;-@∀@)「う、うわっ…うわぁぁaaa!!」
広い空にただ一人取り残されたアサピーの緊張の糸がついに切れた。
もともと、無理矢理に恐怖を押さえつけていたのが、味方のあっけなさ過ぎる死によって歯止めの効かない奔流となって胸の内をかけ巡る。
がむしゃらに搭載兵器の発射スイッチを連打し、操縦桿を折れんばかりに倒すとどこまでも雲の海から逃げる。
- 80: ◆/ckL6OYvQw [保守投下] :2007/06/14(木) 20:24:58.69 ID:m0f5tZJIO
- 駄々っ子のように泣きわめきながら、あるだけの弾薬を吐き出したヘリは、基地の司令塔上空に呆けたように滞空していた。
ナイトゴーントの残党は、気付けば基地の地面すれすれを滞空し、地上の兵士達に攻撃を加えている。
(-@∀@)「もう、いやだ……もう、沢山だ……」
戦意を喪失したアサピーは、ぼんやりと戦場全体を見回す。
正面ゲートの辺りでは、第一防衛ラインを破ったドールとスケイルウォーク共が逃げ惑う兵士達を次々と捕食していく。
基地の前庭では、空から侵入したナイトゴーントの残党と、最終防衛ラインの兵士達が絶望的な戦いを続けていた。
しかしアサピーにはどうでもいい事だった。
誰がどうなろうと関係無いのだ。もう嫌だ。戦いたくない。死にたくない。
やはり自分では化け物には歯が立たないのだ。
何をしても無駄なんだ。
それならここからいっそ逃げてやろう。
そう思ってヘリの操縦桿を力無く握った時、純白の雲の海の中から味方のかたきがその異形の姿を堂々と表した。
- 86: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 21:19:38.86 ID:m0f5tZJIO
- (-@∀@)「………」
そいつは今まで見たことの無い程に吐き気を催す姿をしていた。
玉虫色に光る球を、そのグロテスクに戯画化された横長の風船のような巨体に幾つも纏わせ、頭部と思われる器官には無数の複眼を備えている。
その口腔から十数本の触手を伸ばし、それがまるで何かを探すかのように蠢いていた。
それがどうやって空に浮いているのか、最初アサピーにはわからなかった。
だがよく観察すると、地面に向けられた腹に大きな穴のような器官が存在し、そこから恐らく浮力のあるガスを噴出して、奴は空を歩むのだろうと結論付けた。
その恐ろしい大きさのグロテスクな風船のような「それ」は、悠々と雲の海を抜け出すと、ゆっくりと基地の上を目指して航行を始めた。
(-@∀@)「あいつが…仲間を殺したかたき…」
今まで戦場に背を向けていたアサピーの気持ちが、徐々に目の前のかたきに向かっていく。
仲間を奪われた静かなる怒りが、次第に腹の底で芽を出し始めた。
(-@∀@)「許さない…絶対に…許さない」
- 88: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 21:21:58.80 ID:m0f5tZJIO
- ━━正面ゲートは最早完全に化け物共の手中に落ちていた。
あれから何度かドクオの魔術が放たれたが、それでも化け物達は数に限りが無いかのごとく攻撃を休める事は無かった。
じりじりと確実に、前線の兵士達は命を奪われ、ついには第二防衛ラインにまで奴らはその進撃の手を伸ばしてきた。
ジョルジュ小隊の他にも、強固に武装した装甲歩兵の部隊がゲート内の守備に加わっていたが、どんなに頑丈な強化装甲服でもドールの生体爆弾を防ぐ事は出来なかった。
最早、ゲート内に立っているのはジョルジュ小隊の面々と僅かばかりの手錬だけだ。
(;=゚ω゚)「糞ったれぇい!こんなんじゃもう持たねえよ!誰か何とかしろや!」
ぃようが悲痛な声を上げる。
( ゚∀゚)「なんとか持ちこたえろ!ここを通すわけにはいかん!」
瓦礫に隠れながら、ジョルジュはセミオートショットガンを化け物共に発砲する。
(´<_` )「隊長、後ろからナイトゴーントの残党が!」
後ろを振り返った弟者が、怒鳴る。
( ;゚∀゚)「えぇい!航空部隊は何をやっているんだ!」
珍しくジョルジュが毒づく。余程切羽詰まっているのだろう。この状況を見れば一目瞭然だが。
- 89: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 21:24:33.46 ID:m0f5tZJIO
- ( ´_ゝ`)「おk、隊長時に落ち着け。空を見て欲しい」
兄者の声にジョルジュは顔を上げた。
ヘリの墜落が空けた穴から、絶望が眼球に飛び込んできた。
( ;゚∀゚)「新手か…」
玉虫色に光る巨大な風船のようなそれにやられたのだろう。
ヘリのローター音は一つしか聞こえない。
( ;゚∀゚)「ちっ…」
ジョルジュは歯を噛み鳴らした。
絶望的だ。
恐らくあの空に浮かぶ新種は大きさからして、化け物共の親玉だろう。
空母のようにその体表に纏った球体から四方八方に生体レーザーを放ちながら、ゆっくりとこの基地の上空を目指して泳ぐように進んでいる。
- 90: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 21:27:25.28 ID:m0f5tZJIO
- ( ;゚∀゚)「万事休す、か……」
呆然と空に浮かぶ玉虫色に輝く化け物を見る。その姿は最早神々しくさえ見えた。
('A`)「リブアフィート……ついに邪神のご登場か」
ドクオの呟きは小さかったが、その場の全員の耳に確実に届いた。
('A`)「あの高さでは、流石にオレでも手が出せない。封印するには地面に引きずり下ろさなければならない……」
珍しく悔しげに、ドクオが吐き捨てた。
恐らくドクオを除くこの場の全員が、生で邪神を見たのは初めてだろう。
- 91: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 21:29:50.48 ID:m0f5tZJIO
- (;=゚ω゚)「あれが、邪…神」
( ;´_ゝ`)「神……神なのか」
(´<_`; )「オレ達は、神に刃向かっているのか……」
ジョルジュ小隊の面々も、武器を下げて空を見上げその場に棒立ちになった。
神々しくも禍々しい、異形の神を見上げる。
ついに兵士達は、抗う事を止めた。
神の前では何者も無力だ。大いなる主の前に差し出された贄には等しく死が待つのみ。
神の怒りは全ての罪人の頭上にあり。
その裁きの雷に打たれ、罪深き一生を遂げ神の元でその罪の贖いをする。
邪神の巨躯が震え、全身の球体から裁きの光条が地面に降り注いだ。
光の柱の如く地表に突き立つ光条は、無抵抗の兵士達を浄化へと導く。
(兵1*´口`)「おぉ、偉大なる神が光臨なさられた」
(兵2;口;)「神よ、罪深き私達をお許し下さい!」
瓦解した他部隊の面々が、口々に神への救いを求める。
泣き叫び、狂ったように祈りを捧げる兵士達。
他部隊の装甲歩兵の中には、ギアのメットを脱いで地にひれ伏し泣いているものまでいる。
ついに気が触れたのか、顎が外れんばかりに口を開けて歓喜の笑い声を上げるものもいた。
壊れた信仰が、急速に根を張る。
誰もが死を確信した。
- 93: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 21:31:46.32 ID:m0f5tZJIO
- ノハ#゚听)「しゃらくせぇぇ!!!お前ら何めそめそしてんだよ!!神だか何だか知らねえが、あんな化け物にオレ達の人生をバッドエンドにされてたまるかってんだよ!!」
打ちひしがれ、狂った兵士達の中で、ヒートが鬼気迫る怒声を上げる。
泣き叫んでいた者も、狂ったように笑っていた者も、彼女の方を振り返る。
誰もがヒートの姿を見つめていた。
ノハ#゚听)「おらぁ!!金玉ついてるんなら銃をとれぇぇ!!立ち上がってぶっ放せぇぇぇぇ!!!絶対に死なねぇぇぇ!!!オレ達は絶対に死なねえんだよ馬鹿野郎ぉぉぉぉ!!!!」
根拠など無い。この期に及んでの抵抗など、どれほどの価値があるだろう。
相手は神なのだ。万に一つ勝てる見込みも無い。
しかし兵士達は立ち上がった。
銃を取り、上空の神目掛けて背徳の弾丸を放った。
ヒートの魂の叫びに心を動かされ、誰もが銃を取る。
勝てないなどとは思わない。
今は、ただ生きることだけを考えて、銃を手に取る。
- 94: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 21:32:52.20 ID:m0f5tZJIO
- (=;ω;)「そうだ!死んでたまるかぁ!死んでたまるかってんだぁ!」
一人は生を叫び、
( ;_ゝ;)( ;<_; )「カーチャァァァン!!!」
二人は故郷の親を想い、
( #゚∀゚)「全員、ヒートに続けぇぇ!!」
隊長は彼ら運命の奴隷達の反抗を煽り、鼓舞した。
( ゚∀゚)「(そうだ、ヒートの言うとおりだ。まったく、隊長はオレなのに…あいつに助けられてばかりだな)」
('A`)「絶望したり開き直ったり、忙しい奴らだ」
ドクオは溜め息をつきながらも、地対空ミサイルを担いだ。
('A`)「いいだろう。お前らに付き合ってやる」
- 96: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 21:35:09.24 ID:m0f5tZJIO
- ハンドミサイルが、対空ミサイルが、空に居座る邪神目掛けて放たれる。
彼らは神に抗うことを、絶対的な「死」に抗うことを決めたのだ。
手に手に武器を握りしめ、空へ目掛けて弾装が空になるまで打ち続ける。
('A`)「弾薬が足りんな…補給があれば…」
何度目かの空撃ちの感覚に、ドクオが呟く。
\(^o^)/「待たせたな、兄弟達!補給部隊の到着だ!」
鬼軍曹と呼ばれる男の一声に、兵士達は一斉に振り返った。
( ゚∀゚)「なんてタイミングで来てくれたんだ!助かるぜ、教官!」
ジョルジュがオワタの元へ駆け寄る。
\(^o^)/「今日は嫌な予感がしたから、演習を早めに切り上げて基地に戻ることにしたのだ。
そしたら帰り道の途中でこいつが基地に迫る化け物共を見つけてな」
そう言って、オワタが彼の後ろに立っていた若い男の頭を小突いた。
( ゚∀゚)「お手柄だな、ギコ新兵」
(,,゚Д゚)「いえ、そんな、ただの偶然です」
ギコははにかみながらも敬礼をした。
\(^o^)/「見つけたのはいいが、こいつらひよっこでは何もできない。それなら補給部隊としてでも使ってやろうと思ってな。ニーソク基地までお使いに行ってたのさ」
- 98: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 21:39:29.66 ID:m0f5tZJIO
- そう言うオワタの後ろには、弾薬や交換用の重火器が入っているであろうバックパックを背負った訓練兵達が、息を切らせて整列していた。
一人一人が個人が持てる限界の量の補給物資を背負っている。
流石は鬼軍曹と言ったところか。
\(^o^)/「さぁクソガキ共!前線で戦う勇敢な兵士様達に補給物資を差し上げろ!もたもたするな!」
オワタの指示により、補給物資がジョルジュ達に配給される。
前線の兵士達は訓練兵達に礼を言いながら、弾装の交換や銃身の焼け付いたライフルを新しいのと替えていった。
( ゚∀゚)「さぁ、これで態勢は整った!さぁ、休まずに撃て!」
- 101: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 21:44:51.39 ID:m0f5tZJIO
- 一度止んだ攻撃が、また再開した。
今度は先程よりも一段に勢いを増している。
リブアフィートは、皮膚に感じる銃弾やミサイルの衝撃を鬱陶しいと感じた。
実際のところ、このリブアフィートに精神と呼ばれる概念は存在しない。
生物の持つ本能、それだけでリブアフィートは動いている。
その本能が、地上の人間達を最優先で根絶やしにする事を告げた。
邪魔だから、鬱陶しいから殺す。
ただそれだけだった。
精神を持たない白痴なる神は、その身に纏う玉虫色の球体を地上の矮小なる虫共に向けた。
- 102: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 21:46:15.64 ID:m0f5tZJIO
- ノハ#゚听)「おおおぉぉぉぉぉ!!!!」
( #゚∀゚)「撃ちまくれぇぇぇ!!!」
(#=゚ω゚)「食らええぇぇぇ!!!」
補給物資による勢いを回復した兵士達の攻撃は続く。
(´<_`; )「兄者!これは効いてるのか!?」
対空ライフルを乱射しながら、弟者が兄者に大声で尋ねる。
その声をかき消すように、空から光条が降り注いだ。
( ;´_ゝ`)「うおぅっ!?」
(´<_`; )「くっ…まだまだ元気みたいだな」
弟者は憎々しげに吐き捨てると、ライフルを握りなおした。
- 103: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 21:48:27.81 ID:m0f5tZJIO
- 地上に向けて光条を放つリブアフィートを見て、アサピーは舌打ちをした。
(#-@∀@)「あの化け物……人間様を舐めやがって…オレがぶっ潰してやんよ!」
怒りの声を上げて、操縦桿を強く握りしめる。
しかし計器に記された全兵装の残弾はゼロだ。
(-@∀@)「へっ、残ってるのは燃料だけかよ」
機内に唾を吐き捨てると、無線機をチラと見つめる。
(-@∀@)「だが、それだけあれば充分だ!」
無線機を鷲掴みにすると、彼はこの戦いに加わっているあらゆる人間に聞こえるよう、オープン回線にして静かに口を開いた。
━━━━━
リブアフィートの攻撃は、休みなく繰り返された。
雨のように降り注ぐ光条を、ジョルジュ小隊の面々は辛うじてかわし物陰から反撃の機会をうかがっていた。
そんな彼らの無線に、オープン回線でオペレーターとは違う声が聞こえてきた。
(-@∀@)『戦場の全兵員に告ぐ。自分は航空部隊唯一の生き残りのアサピー一等兵である』
兵士達ははっとなり、ヘリのローター音が響く方角を一斉に向いた。
- 104: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 21:49:52.27 ID:m0f5tZJIO
- (-@∀@)『これより自分は、前方に浮遊する敵に特攻をかけ、これを地に引きずり落とす』
戦況の最新情報の報告の為ひっきりなしにヘッドセットに怒鳴っていた作戦室内のオペレーター達は、アサピーの通信にその手を休めて聞き入った。
(-@∀@)『地上に引きずり落とした後は、ドクオ殿にこれの完全破壊を依頼したい。それまでの援護射撃を全力で頼む』
(-@∀@)「必ず成功させてみせる。以上、通信を終わる」
無線を置きそのスイッチを切ると、アサピーはゆっくりと息を吸い、吐き出した。
狭いヘリの中の、無機質な酸素が口に苦い。可笑しなものだ。酸素に味など無い筈なのに。
目を閉じる。
一瞬、内藤の顔が瞼の裏に映って、消えた。
(-@∀@)「さあ、ここからが正念場だ。化け物さんよ、ダイビングの用意はいいかな?」
- 107: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 22:05:04.99 ID:m0f5tZJIO
- 操縦桿を一気に倒すと、アサピーの駆るアパッチY単座型は前方の化け物へ向けて最後の航行を開始した。
化け物は地上の兵士達に光条を降らせることに忙しいのか、自分に迫ってくる勇壮なる荒鷲に気付かない。
(-@∀@)「今その余裕ぶっこいてるてめぇの面を引き裂いてやるぜ」
操縦桿を後ろに倒すと、ヘリの高度を上げていく。
(-@∀@)「まるで、天国への階段を上がっているみたいだな」
皮肉が虚しく鋼鉄の棺桶内に響く。
ヘリは今やリブアフィートの頭上より遥か高くを飛んでおり、周りには雲さえも見当たらない。
(-@∀@)「さぁ、オレの人生最大にして最後のダイビングだ。しかとご覧あれ」
胸のロケットを開き、計器の上にそっと置く。
操縦桿を前方に目一杯倒し、ローターのスイッチを切る。
斜めになった機体は、遥か下の巨大風船に向けて一直線に死のダイビングを開始した。
- 108: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 22:07:18.30 ID:m0f5tZJIO
- 天井から吊していた模型の糸を切ったように、ヘリは落下していく。
その速度が段々と加速して行き、アサピーの体に耐え難い程のGがかかる。
長い長い、衝突までの時間の中で、思い出されるのは今は亡き故郷の母の顔、幼なじみ達、そして、内藤との約束。
(-@∀@)「オレ、防衛大学に行って戦闘機のパイロットになるんだ!」
あの夕焼けの帰り道に、交わした約束は、
( ^ω^)「アサピーなら絶対なれるお!ブーンが保証するお!だからパイロットになったら、飛行機に乗せてくれお!」
(-@∀@)「あぁ、任せろや!」
結局叶わなかったけど。
( ^ω^)「こいつはアサピー。アサピーはVIP軍のエースパイロットなんだお!」
オレ、エースパイロットには、なれたかな……
なぁ、内藤。
- 109: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 22:09:41.16 ID:m0f5tZJIO
- 鋼鉄と肉の衝突する轟音が戦場全体に響いた。
空の怪物と相対していた兵士達全員が、リブアフィートの背中に孤高なる鋼鉄の荒鷲の嘴が突き刺さっているのが見えた。
荒鷲は、嘴が突き刺さったのを確認したのかその羽ばたきを再開した。
(-@∀@)「落ちろぉぉぉぉ!!!!」
それに叩きつけられるように、リブアフィートの巨躯はついに大空から叩き落とされた。
勇猛なる荒鷲の勝利である。
轟音と地響きを立てて、巨大風船のような化け物は正面ゲートの一歩手前の地面に沈んだ。
(=゚ω゚)「やった!遂にあの畜生を引きずり下ろしてやったぜ!!」
歓喜の声を上げてどよめく兵士達。
それでも攻撃の手を休める者はいない。
今までに散々絶望を味あわされた恨みをぶつけるように、手にする重火器の弾装が空になるまで撃ち続ける。
( ゚∀゚)「ドクオ、頼む!」
ジョルジュがドクオを振り返る。
そこには既に魔術の体勢に入った救世主の姿があった。
('A`)「目的、対象の封印。前方二十メートルの地点を中心に半径十キロに展開。期間、無期限。懲罰、執行準備」
- 112: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 22:13:25.95 ID:m0f5tZJIO
- ドクオの周囲の大気が渦を巻く。
地が揺れ、兵士達が足早にリブアフィートの周囲から退避する。
('A`)「そうだ避難しておけ。巻き込まれたら、永久的に地面の中で苦痛に苛まれながら一生を送ることになるぞ」
ドクオが言い終わると、一際大きい地響きがする。
準備が整った事を、ドクオは確認した。
('A`)「地脈の鎖にその永遠なる屍を戒めてもらえ。
懲罰、執行」
ドクオが手向けの言葉を吐き終えると、魔獣の咆哮のような地響きと共にリブアフィートの周囲の地面が仙山の如く隆起する。
仙山の陰に隠されたリブアフィートの横たわる地面が、その全てを飲み込む口蓋を目一杯に開き化け物の巨躯を飲み込んだ。
リブアフィートの最後の断末魔の雄叫びは、怒れる大地の咆哮にかき消され、永遠に地上の大気を震わせることは無かった。
世界の果てまで響くかのような轟音を立て、再び地面の口蓋が閉じられた頃には、仙山の如く隆起した地面もその畏怖されるべき大質量を崩し、後には巨人の墓標のような丘が残る。
長い、長い、戦いが終わった。
- 113: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 22:14:47.96 ID:m0f5tZJIO
- しばらく兵士達は呆けたようにリブアフィートが沈んだ地面に出来た丘を見つめていた。
誰かがポツリと呟いた、勝利を確認する言葉にやっと自身が生き残った事を噛み締めるように万歳をする。
ノハ*゚听)「いぃぃぃよっしゃああぁぁぁぁ!!!オレ達の勝ちだぁぁぁぁ!!」
ヒートが、両手のマシンガンを放り投げ、ジョルジュの元へ走る。
ノパ听)「隊長ぉぉぉぉ!!!」
( ;゚∀゚)「お?お?おぉ!?」
突然自分の名を呼ばれ、うろたえるジョルジュ。
見れば、ヒートだけでなく他の兵士達も自分に向けて駆けてくる。
(=;ω;)「遂にやりましたね!!遂にあの化け物をぶちのめしてやりましたよ!!」
(兵1;∀;)「生きてる!!オレ達生きてるぜ隊長!!」
口々に喜びの叫びを上げながら、ライオンの子供のような男達がジョルジュに抱きつく。
( ;゚∀゚)「おい、馬鹿やめろ!暑苦しいわ!それに邪神を封印したのはドクオだ!」
その言葉に、兵士達は一斉にドクオを振り返る。
('A`)「ふぅ。久々の封印はやはり精神に堪える。しばらく眠りたいな」
首を鳴らしながら、ため息をついたドクオは自分に向けられた暑苦しい視線に気付いた。
- 116: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 22:18:18.27 ID:m0f5tZJIO
- ('A`)「ん?なんだ、お前たち。そんなぎらついた目をs」
(兵2";∀;)「ドクオ殿ぉぉぉぉ!!!!」
(兵3:゚@゚)「我らが救世主様ぁぁ!!」
(;'A`)「ちょwwwおまいらwwwくそみそってレベルじゃねーぞwwwwきめぇから離れろwwwww」
ドクオを取り囲みその栄光を褒め称える兵士達。いつしかその熱気は、ドクオの体を胴上げするまでに増していた。
そんな兵士達の中には加わらず、一人リブアフィートの墓標の丘の上に立ち尽くす男が居た。
\(^o^)/「アサピー……」
オワタは、胸に付けていた勲章の中でも一際大きく一際輝いている勲章をむしり取ると、丘の丁度真ん中の芝がちらほら生えている辺りに置いた。
\(^o^)/「お前のおかげで戦いはオワタ……お前がこれからは軍曹だ。ひよっこ共を、お前みたいに勇敢な兵士になれるよう、導いてやってくれ」
そう呟き、立ち上がる。
\(^o^)/「これで、お前の方が私よりも上だな。かつての教え子が自分を越えるのは、実に嬉しいものだ」
姿勢を正してベレー帽をなおす。
\(^o^)/「安らかに眠れ、とは言わん。これからも、その勇姿は私達の中で闘い続けるだろうからな」
そう言ってオワタは芝の上の勲章に向かって敬礼した。
その瞳は微かに潤んでいた。
- 117: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 22:19:36.61 ID:m0f5tZJIO
- ━━勝利による歓喜の渦は、作戦室でも当然の如く巻き起こっていた。
リブアフィートが地面の割れ目に消えた途端、今まで前庭で猛威を振るっていたナイトゴーントの残党達も、散り散りになって彼方の空へと逃げ去っていった。
完全に闘いは終わったのだ。
日が昇るのと同時に始まった闘いは、夕日が傾き始めるのと同時に幕を下ろした。
(*゚ー゚)「敵反応完全に消失!私達の勝利です!」
しぃの歓声を皮切りに、あちこちで喜びの悲鳴が上がった。
女達は手に手を取り喜びを分かち合い、司令官は安堵のため息をついた。
( ;´∀`)「ふう…一時はどうなることかと思ったモナが、なんとか助かったモナ」
ハンカチで額を拭いながら、モナーが椅子にもたれ掛かる。
小心者の司令官は人望があまり無いのか、彼に駆け寄って共に勝利を喜ぼうとする者はいない。
それが悲しくもあり、滑稽に見えた。
人間関係というものは追い詰められ、切羽詰まった時に如実に今までの個々人の業績を反映する。
この勝利の分かち合いの光景も、言わば一種の人物相関図と言えよう。
- 118: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 22:22:03.20 ID:m0f5tZJIO
- そんな悲喜こもごものお祭りムードの中で、モナーとは相対的に人望の有る筈であるショボンは、駆け寄る部下達をかわしながら一人作戦室を後にした。
ドアを閉めて、喜びの渦中から廊下と自分を隔離する。
懐からバーボンの小瓶を取り出すと、キャップを開け中身をあおる。しかし勝利の美酒という訳では無さそうだった。
(´・ω・`)「封印能力は健在か…彼が『扉』で有ることは証明されたわけだ」
一人壁にもたれながら、何か気難しい顔をして思案している。
(´・ω・`)「後は『力』を見つけるだけ……だが、それよりも本当に彼女はまだこの世界に居るのだろうか」
バーボンをあおろうとしていた右手の動きが止まる。
(´・ω・`)「それだけが、問題だ」
ショボンの呟きは誰にも聞こえる事無く、基地の廊下に響いて消えた。
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