('A`)はダークヒーローのようです

20: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/27(水) 02:24:50.39 ID:qz1zJIBZO
第二十一話 干渉

自室に戻りPCの電源を入れて、いつものようにネットサーフィンを堪能する。
あまねく犇めいている情報の波を、その身に浴びても、ドクオの胸中は穏やかでは無かった。
言いようの無い苛立ち、とでも言おうか。
先程のしぃとの会話からこっち、ドクオは何故か苛立っていた。

('A`)「どういうわけだ」

自分の言った事を否定しようとは思わない。
『死』そのものに、特別な意味など彼には見いだせないし、身近な者が死んだ悲しみというものも、彼にはわからない。

それなのに…

('A`)「イライラする…」

彼は思い切ってPCの電源を落とすと、椅子から立ち上がる。
上着をひっつかみ、そのまま部屋のドアを開けた。

('A`)「…飲みに、いくか」

酔えないのはわかっている。
だが、そうせずにはいられない。
彼は自分が、無意識のうちに人間の行動を真似ている、という事には気付きもしなかった。



21: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/27(水) 02:25:50.24 ID:qz1zJIBZO
━━バーボンハウスの扉を開けると、今まで中で飲んでいたであろう連中が、一斉にドクオの方を振り向いた。
彼らはドクオの姿を見つけると、ある者は不機嫌そうに、ある者は気まずげに、席を立ち上がった。
そのまま、バーテンにぶっきらぼうに代金を払うと、彼らはドクオの横をすり抜けて、バーボンハウスを出ていく。

('A`)「…疎まれるのは、慣れている」

皮肉でも言う調子で呟いてみたが、あまり決まらない。
彼はそれにまた苛立つと、カウンターに乱暴に腰掛け、バーテンにジンの一番強いのを頼んだ。

('A`)「……」

バーテンがおずおずと差し出したグラスを、無言で受け取り呷ると、カウンターに叩きつけるように置く。

( ゚∀゚)「よう、ドクオ。お前さんがここにいるなんて、珍しいな」

慣れ親しんだ声に振り向くと、ジョルジュがちょうどバーボンハウスの扉をくぐるところだった。
彼はそのままの足取りで、ドクオの隣に腰を下ろすと、ウォッカを頼んだ。

( ゚∀゚)「何か、あったんだろう」

ジョルジュはきっと、ドクオが何故ここにいるのか、その理由を知っているのだろう。



24: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/27(水) 02:27:20.69 ID:qz1zJIBZO
だが、そこは彼の事だ。ずけずけと、他人の心の中に土足で入って来るような事はしない。
あくまで、ワンクッション置いた話し方をするのだ。

('A`)「お前も、わかっているんだろう。しぃの事だ」

ドクオは自分でも、しぃの事で苛立っている事を認めたのが、意外だった。
この男の前だと、自分はお喋りになってしまう。そう思った。
だが悪い気はしない。

( ゚∀゚)「…あぁ、聞いてる。ギコの死に意味は無いと言って、頬を叩かれたそうじゃないか」

やはり、ジョルジュは知っていたのだ。

('A`)「あぁ。訳の分からん女だ。オレの言っている事に間違いは無いのに、いきなりビンタときた」

ドクオは吐き捨て、またジンを呷る。熱い奔流が、喉を焼いた。

( ゚∀゚)「確かに、お前さんならナイトメアの爪ぐらいじゃあ、死なないのはわかる。その点だけ見れば、ギコの死は無駄で無意味なものだったと、言えるだろう」

ジョルジュは、いたっていつもと変わらない調子で話す。

( ゚∀゚)「だが、人間には『感情』ってのがあるんだ。こいつは、自分ではどうする事もできねぇ厄介なもんでな、時折理性を押しのけてまでオレ達の体を動かしやがる」



26: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/27(水) 02:28:53.78 ID:qz1zJIBZO
('A`)「それぐらい、わかっているさ」

ドクオの声は、拗ねた子供のようだった。

( ゚∀゚)「あぁ、だからこれは感情論になってくるんだ」

('A`)「下らんな」

即座にドクオが否定する。

( ゚∀゚)「あぁ、確かにお前さんにとっては、下らない話しだろうな。だがな、オレ達は人間だ。痛みを感じる。傷を負えば死ぬ。それは心も同様だ」

ジョルジュの声には、珍しく露骨な感情の高ぶりが浮き出ていた。

('A`)「オレは人間じゃない。オレは痛みを感じない。傷を負っても死にはしない。心も同様だ」

まったく聞く耳持たぬと言わんばかりに、ドクオが切り返す。
その剣幕に、ジョルジュも地雷を踏んだと思ったのだろう。ゆっくりと、言葉を選びながら口を開いた。

( ゚∀゚)「…すまん、少しカッとなってしまった」

('A`)「……」

ジョルジュの言葉に、ドクオはただ黙って目の前のグラスを傾けるだけだった。
しばらくの間、気まずい沈黙が流れる。
その長い沈黙を破ったのは、ドクオがポツリと零した一言だった。



27: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/27(水) 02:30:02.33 ID:qz1zJIBZO
('A`)「大切な人間が死んで、悲しい…という感覚がわからないんだ。結局は他人事では無いのか?」

純粋に、彼は不可解な謎に取り組む学者のような顔をする。

( ゚∀゚)「お前さんには、大切な人間はいないのか?」

ジョルジュは、自分でもこの台詞がドクオにとってタブーであろう事を、予測していた。
だが敢えて、そのタブーに突っ込んで行こうと覚悟する。
今までは、出来るだけ他人のスペースに踏み入らないよう、自分に言い聞かせて来た。
それでいて、的確な応対によって人望を得てきた彼だったが、得られたのは人望だけだ。
腹を割って話せるような人間は、いない。
だから今彼は、心の底から信頼し合える親友を、心の底から求めていた。
そして、もしかしてドクオならば、お互いの感情をぶつけ合えるような関係になれるのでは無いかと思い、ジョルジュは思い切ってドクオの領域へと一歩踏み出したのである。



28: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/27(水) 02:31:22.01 ID:qz1zJIBZO
緊張した面持ちで、ドクオの次の言葉を待つ。
他人と話していて、これほどまでに緊張したのは久しぶりだ。
やがて、ゆっくりとドクオの口が開かれる。

('A`)「オレは…」

少しばかりの期待と、拒絶されるのではないかという恐怖。
そんなジョルジュの胸中など知らな気に、ドクオの口は言葉の続きを紡ぐ。

('A`)「いない…から、わからないんだろうな」

そう呟く声に、ジョルジュは複雑な心境にあった。
贅沢を言えば、ドクオの口から自分の名前が出て来る事を期待していた。
だが、拒絶された訳ではない。少なくとも、ドクオは本心を語ってくれたのだから。

( ゚∀゚)「…そう、か」

少し落胆しつつも、ジョルジュは酒を呷った。

( ゚∀゚)「そのうち、お前さんにもわかるようになるさ。こればっかりは、実際に体験してみなきゃわからん」

そう言って、ジョルジュは店を出て行く。
彼の後ろ姿を見つめるドクオの目には、僅かばかり寂しげな色が浮いていた。

('A`)「…大切な、人か」

自分は、人間では無い。だからそんな者はいない。
そう当たり前に思ってきた。



30: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/27(水) 02:32:48.07 ID:qz1zJIBZO
定命の人間とは違う価値観を持った自分が、人間に情が移るなんてことは、考えた事もなかった。
だが、気付くとドクオは必死になって、自分にとって大切な人間がいないかを考えている。
考えて考えて、無理矢理に自分の周囲の人間を、その枠に当てはめようとしている自分の心中に気付き、同時に、自分には大切だと思える人間がいない事に戸惑った。

('A`)「……こんな事を考えるなど、オレらしくないな。気味が悪い」

そんな事を考えたのを、アルコールのせいにすると、ドクオは立ち上がりバーテンに代金を支払う。
そのまま重い足取りで、彼はバーボンハウスを後にした。

酔えない事は、ドクオの体が一番よくわかっていたが、今は考えたくなかった。



31: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/27(水) 02:34:58.94 ID:qz1zJIBZO
━━薄暗い倉庫の扉が、久しぶりに開け放たれたのか、欠伸のような擦過音を上げる。
薄暗い室内を照らすのは、天窓から差し込む申し訳程度の光条のみ。
床には一面絨毯のように埃が積もっている。
おそらくは、長い間誰にも使用されていないのだろう。
ミセリは、その倉庫に血まみれの体を引きずりながら、入り込んだ。
セントジョーンズの巨大チャクラムに切り裂かれた胸が、まだずきずきと痛む。

ミセ;>ー<)リ「痛っ……」

早いところ傷口を塞がなければ、大事に至る。
そう思い、ミセリは身に纏ったローブの胸元をはだけるとその袖を破り、浅く開いた胸の傷口をそれできつく縛った。

「あらあらぁ?こんなところにお客様とは、また珍しいねぇ」

今まで人気の無かった筈の倉庫内に、飄々とした女の嘲笑うような声が木霊す。

ミセ;゚ー゚)リ「!」

倉庫の隅の暗がりから聞こえてくるような声に、ミセリは思わず声のする方向を振り向いた。
よく目を凝らす。
だが、闇になれた目にすら、空気中に舞う埃しか写らなかった。

「こっちだよ、こっち」

今度は頭上から聞こえた。



33: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/27(水) 02:36:05.98 ID:qz1zJIBZO
追うように視線を上げたミセリの目に、よく知った古い友人の顔が飛び込む。

从゚∀从「よお、ミセリ。久し振りじゃん。今日はどういったご用で?」

ミセ;゚ー゚)リ「ハインリッヒ!」

ハインリッヒ。
そう呼ばれた女は、倉庫の天井付近に張り巡らされた鉄骨の梁の上に腰掛け、ミセリの方を見下ろしていた。

ミセ;゚ー゚)リ「やっぱりあなたも、ニーソクにいたのね」

頭上のハインリッヒを見上げながら、ミセリが安堵の声を上げる。

从゚∀从「あぁ、聖騎士団とかいう奴らが五月蝿くてかなわねぇぜ。こっちはさっさと、オリジン様の元へ向かいたいってのによ」

そう言うと、ハインリッヒは梁の上からミセリの目の前へと飛び降りた。

ミセ*゚ー゚)リ「えぇ…何の為に、彼らがここまで私達を邪魔するのかわからないけど、早くオリジン様の元へ行き、記憶を取り戻してもらわなi」

そう言いかけたミセリの顔の横を、一陣の疾風が駆け抜ける。

ミセ;゚ー゚)リ「…え?」

何が起こったのか、判断しかねた様子で、ミセリは目の前で腕を自分へと突き出しているハインリッヒを見つめた。



34: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/27(水) 02:37:17.25 ID:qz1zJIBZO
从゚∀从「再開の感動も、引ききらねぇままに悪いけどよぉ…」

ミセリの顔面を狙って突き出した腕を、引き戻すハインリッヒ。
その動作と共に、ミセリの肩で揃えたセミロングの栗色の繊細な髪が、はらりと一束宙に踊る。

从゚∀从「オリジン様の元へ帰るのは、この私だけで充分だ。お前はここで、死ね」

言い終わらぬ内に、ハインリッヒは左の拳を立ち尽くすミセリ目掛けて、振りかぶった。
その拳が、毒々しい紫色の光を纏う。

ミセ;>ー<)リ「きゃっ!」

眼前の友人が突然露わにした殺意に、ミセリは慌ててその場から後ろに跳びすさる。
直後、貪欲に餌食を求めて振り下ろされたハインリッヒの左腕が、獲物を捕らえ逃して地面に食らいつく。
衝突音が響いた後に、剥き出しのアスファルトが溶ける気味の悪い音。

ミセ;゚ー゚)リ「どうしたのハインリッヒ!?何故、私を?」

理解不能な友人の乱心に、ミセリは取り乱した。
彼女は自分と同じ、「片割れ」の筈。
それが何故、自分に牙を剥くのか。



35: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/27(水) 02:38:27.80 ID:qz1zJIBZO
从゚∀从「ミセリ。お前さっき、記憶を取り戻す…とか言ったっけなぁ」

アスファルトを穿った左拳を引き抜くハインリッヒ。
彼女が拳を引いても尚、そこから放たれた紫の炎はアスファルトを溶かすことを止めない。

ミセ;゚ー゚)リ「えぇ、オリジン様に記憶を取り戻していただいて、人間達を救うんです!」

そう、ミセリが言い終わった瞬間、彼女の足元が凄まじい音を立てて爆発した。

ミセ;>ー<)リ「ひゃっぅ…!」

爆風に尻餅をつくミセリを見下し、ハインリッヒは言葉を続ける。

从゚∀从「記憶を取り戻す?人間を救う?下らねぇ…」

憎悪。殺意。怨恨。それらがごちゃ混ぜになった、負力の塊のような言葉と共に、ハインリッヒの周囲の空気が不吉な色を伴って揺れた。

从#゚∀从「私はただ、オリジン様と一緒にいられりゃあ、んなもんどうだっていいんだよ!!」

ハインリッヒの全身全霊の叫びと共に、倉庫中の床という床から、邪龍のごとき紫炎の柱が、殺意の咆哮を上げて吹き上がった。

ミセ;゚ー゚)リ「な、何を……言っているの?」



38: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/27(水) 02:40:54.37 ID:qz1zJIBZO
今や完全なる殺意を剥き出しにして、自分へと迫るハインリッヒを呆然と見つめる。
未だにハインリッヒの凶行が信じられないのか、ミセリはただ、ただ、口を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返すだけだ。

从゚∀从「それを…お前が、オリジン様の元へ帰ってしまえば、あの人の目には『あの女』しか写らなくなる…それだけは、絶対に避けなきゃならねぇ。私には、オリジン様しかいねぇんだ。あの人と、一緒に添い遂げるんだ!
だから、今ここでお前を殺す!」

ハインリッヒは、殺意の叫びを上げると、ミセリに向かって猛烈な勢いで地を蹴る。
だが、その身に紫炎を纏わせ、鬼気迫る形相で迫るハインリッヒを目にしても尚、ミセリは退かなかった。
肉薄し、疾駆する体に無理矢理ブレーキをかけたその慣性で、右腕を振り下ろすハインリッヒ。
邪龍が地面を噛み砕くかのような爆音の後、ミセリの周囲のアスファルトが燃え盛り、爆裂する紫炎に囲まれる。
だが、ミセリの身が紫炎に喰らい尽くされた様子は無い。
寸での所で、ハインリッヒの拳は目標を逸れて、ミセリの体の横すれすれに振り下ろされていた。



39: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/27(水) 02:42:26.92 ID:qz1zJIBZO
あまりにも勢いを付けすぎた拳が、目標を捕らえ損ねたのか。
それとも、ハインリッヒが故意に狙いを外したのかは、わからない。
命がまだある事を確認したミセリは、眼前の鬼神を見据え、今一度口を開いた。

ミセ;゚ー゚)リ「人間は…定められた命の中で、必死に邪神に抗い、生きようとしているわ。
自分達にはかなわないと知って、それでも生きたいと願うから。
大切な人を守る為、故郷を守る為、何かを守る為、無力ながらも武器を手に取る。
そんな彼らに救いの手を差し伸べようとは、思わないの!?」

そんな、ミセリの切なる願いに、彼女に馬乗りになったハインリッヒは憎悪の叫びを返した。

从#゚∀从「お前は!お前は、こんな『力』を持ってないから、そんな間の抜けたヒロイズムに汚染されたような事が言えるんだ!
お前は…知らないんだ…私が、この『力』を持って生まれた為にどんなに奴らから、弾圧されたかを…私がどんな思いで、この5000年を過ごして来たのかを…!」

ハインリッヒの右腕に、憎悪と破壊の紫炎が宿る。



43: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/27(水) 02:43:52.26 ID:qz1zJIBZO
从#゚∀从「…いつだったか、暴漢に襲われていた若い女を助けた事があった。
この炎で、私が暴漢を焼き尽くすのを見た女は、感謝の言葉を述べるどころか、私に向かって、恐怖に凍りついた表情で辺りの石や木の破片を投げつけて来やがった!
『化け物!近寄るな!』って泣き叫びながら…こおんな風に!」

言葉と共に右腕に纏わせた紫炎を、ミセリの頭すれすれの床に叩きつけるハインリッヒ。
ミセリは、それにも臆する事なくハインリッヒの独白に、口を閉じて聞き入っていた。

从#゚∀从「初めは、やりすぎたせいだと思っていた。だから、魔術を使うのも控えたさ。
だが、噂が広まるのは早いもんだ。二日と経たぬうちに、私は魔女のレッテルを貼られてお尋ね者さ!
今まで隣人だった奴らが、手に手に斧や鉈を持って私を駆り立てる!
信じられるか!?お前が馬鹿みたいに愛している人間様がだぞっ!」

憎々しげに、悲しげに叫ぶハインリッヒの姿は、ミセリの目にとても痛ましく映った。

从゚∀从「私を作り出した、魔術師達を、オリジン様を、恨んだ事もあった。何故、こんな『力』を与えたのかと」



44: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/27(水) 02:45:41.94 ID:qz1zJIBZO
ハインリッヒの身に纏う紫炎が、小さく揺らぐ。

从゚∀从「人間に疎まれ、弾圧され、迫害されるようなこんな『力』を何故与えた、と。けれども同時に、オリジン様ならば…オリジン様ならば、私の事を受け入れてくれるに違い無いとも思った。
何しろ、私の本来の主なのだから。私の最も愛おしい、主なのだから…」

尻すぼみに、ハインリッヒの声がか細くなっていく。
掠れたような声で、彼女は続けた。

从#゚∀从「けれど!あの女は、私からオリジン様を奪う!
私の唯一の心の寄りどころなのも構わずに!」

再び怒声を上げたハインリッヒの右腕に纏わせた紫炎は、いよいよその勢いを増して、今にもミセリを焼き尽くさんばかりだ。

从#;∀从「私には…私にはオリジン様しかいないんだよ!誰からも疎まれる私には、オリジン様しかいないんだ!」

悲痛なまでの叫びを上げて、ハインリッヒがその憎悪の右腕を振り上げる。
その黄金の双眸に涙を浮かべ、自分の幸せを邪魔するものへと、最後の鉄槌を下すべくその紫炎をたぎらせて。
燃え盛る怨恨。焼けただれたアスファルト。その全てが、毒々しく紫に照らされていた。

そんな地獄の光景の中ふと、ミセリが悲しげに口を開く。



46: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/27(水) 02:46:53.07 ID:qz1zJIBZO
ミセ*;ー;)リ「…そんなに、苦しい生を送っていたの…辛かったでしょうね。わかったわ。私を殺して、あなが幸せになれるなら…さぁ、殺して」

ミセリの言葉が終わるのとハインリッヒの腕が、地獄の炎を叩きつけるべく振り下ろされたのは同時。
ミセリの潤んだ瞳は、今にも自分を喰らい尽くそうとする、その右腕をただじっと見つめていた。

━━その刹那に、彼女達は何を思ったのだろう。

無情にも、倉庫内に邪龍の咆哮が木霊した。



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