('A`)はダークヒーローのようです

7: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:16:31.08 ID:FVdhWrJ8O
第四十話 激流

━━いつからだったろうか。
私の足首にこの鎖が巻き付いたのは。

周りを見渡せば、屍がうず高く積もった山ばかり。

次はお前だ。

そう彼等が呼ぶ。

……死ぬのは怖くなかった。
あの日、彼の隣で精一杯に「生きよう」と誓ったその瞬間から、死に対して恐怖は無かった。

ただ、止まるのが怖かった。

激流の中で立ち往生して、自由を奪われ、動けなくなるのが、ただ、流されるままになるのが怖かった。

(;゚ー゚)「はぁ…はぁ……ドクオ、さん……」



9: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:17:06.82 ID:FVdhWrJ8O
だから抗った。
全身全霊をかけて抗った。
希望があったから、抗えた。
この光の後ろをついて行けば、なんとかなる。
これなら大丈夫。そんな安心に身を任せ、ただ茫漠たる流れの中に埋没していた。

気付いた時には遅かった。

私は、自らの足で激流の中に立っていられなくなり、激流は巨大な水しぶきの中に私を飲み込んでしまっていた。

そして希望は私の前から姿を消し、残された私を緩やかな腐敗と停滞が包み込む。
切迫はしなかった。諦めが、考える事を放棄させた。
ただ、ただ、激流に身を任せていた。



10: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:18:14.20 ID:FVdhWrJ8O
激流に身を任せ弄ばれる中、祈っていた。
願わくば、もう一度希望を。
私のこの足に、もう一度立ち上がるチャンスを。

(;゚ー゚)「ドクオさん……」

ねだるだけの時間が過ぎた。
我が儘な時間が過ぎた。

それでも神様は、私にチャンスをくれた。

見放されたと思っていたのに、チャンスをくれた。

だから。
だから。
だから。

(;゚ー゚)「もう、泣かない……」

神様、願わくば、もう少しだけ見守っていて下さい。

私が、自分の足で立ち上がる、その瞬間まで━━。



13: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:19:24.34 ID:FVdhWrJ8O
━━振り返ると、そこに彼女が居た。

(;'A`)「……クー」

紡いだ名前は、一度聞いたっきり。
それでも、懐かしい響きのそれは、違和感なく舌の上を転がり、唇から空気へと渡り溶け出した。

川 ゚ -゚)「オリジン……」

二人、見つめ合った。
視線の間に流れる悠久の風は、古びた臭い。

懐かしい。



14: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:20:01.39 ID:FVdhWrJ8O
しかしそんな純粋な思いに浸るのを、彼の理性は強く拒んだ。

('A`)「何をしに…現れた」

拒絶。
口をついて出たのは、絶対零度の言葉。
南極を渡る風が、二人の間に流れる風を吹き散らし。

川;゚ -゚)「……オリ、ジン…?」

空気は簡単に凍った。
懐かしき人は脚を止め、差し伸べていた手は宙をさまよい、力無く垂れる。

('A`)「今更、何をしに現れたのだと聞いている」

救世主は、棺桶のような顔で穴の縁を見上げる。

川;゚ -゚)「……何を、言っている?」

('A`)「よくもまぁ、呑気な顔でオレの前に立っていられるものだな、裏切りの魔女さんよ」

川;゚ -゚)「言っている意味が分からないのだが……」

('A`)「記憶の無いオレを誑かすのは随分と簡単だったろう?」



17: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:21:24.82 ID:FVdhWrJ8O
川;゚ -゚)「……誑か…す?」

('A`)「オレが何も知らないとでも思っていたのか?つくづく吐き気のする女だな」

川;゚ -゚)「オリジン、君が何を言っているのか分からない。すまないが詳しく教えてくれないか?」

('A`)「まだしらばっくれる気か。5000年前、オレを裏切って人間側に付いた挙げ句、オレを封印した……ハインリッヒが教えてくれなければ、まんまと騙されているところだった」

川;゚ -゚)「……」

言葉を失ったクー。
救世主は眼前の魔女と背後の魔術師を交互に仰ぎ見、続ける。



18: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:22:03.66 ID:FVdhWrJ8O
('A`)「お前達が何を企んでいるかなんてのは知らない。オレはただ、邪神を殺す。一匹残らず殺して、ついでにお前達“魔術師の末裔”も殺す。ただ、それだけだ」

腰を落とし、戦の構え。
今にも飛竜に成らんとする救世主。

ふと、魔術師が声を上げた。

( ФωФ)「そう!我々の目的!まだ救世主殿にはお教えしていませんでしたね。鍵の姫君も揃いましたし、今お聞かせしましょう」

('A`)「……」



19: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:23:16.15 ID:FVdhWrJ8O
油断なく、全身の筋肉に力を込めたまま、救世主は振り返る。
話の主導権を奪われた魔女は何を思うのか。

川 ゚ -゚)「……」

ただ、魔術師の次の弁を待つ姿からは分からない。

( ФωФ)「我々の目的……」

前置き。息継ぎ。

( ФωФ)「それは、人類の進化」



20: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:23:45.74 ID:FVdhWrJ8O
重々しい言葉。

('A`)「どういう意味だ?」

( ФωФ)「……人間というのは、魂の生き物である。それを前提として、話を進めましょう」

魔術師は、水を得た魚宜しく弁をふるい始めた。

( ФωФ)「人間はこの地上において、唯一考える事を許された崇高な生き物です。感情を持ち、思考し、個性を持つ。
真の意味での神に最も近い生物であるのです。それら全ては、神が与えたもうたこの魂の賜物」

( ФωФ)「本来人間の魂は、汚れを知らないとても潔癖なものです。しかし、現実はどうですか。皆が皆、争い、自分を優先させる」



22: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:25:07.92 ID:FVdhWrJ8O
( ФωФ)「欲、羨望、嫉妬、憎悪、それら汚らわしい感情を自分本位に振りかざし、他者と争うことばかり。
 真の意味で協調しようとせず醜い本音を懐に忍ばせ、隙あらば自己の為に他者を蹂躙しようとする」

( ФωФ)「何故、そんな風にしか人間は生きられないのか?本来なら、人間の魂は清く出来ている筈なのに!」



23: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:25:44.33 ID:FVdhWrJ8O
('A`)「……」

( ФωФ)「性善説と性悪説。古今東西で様々な議論が交わされた末に出て来たのがこの二つの言葉であります。が、私達の考えはこの言葉のどちらにも含まれません」

( ФωФ)「何故なら、人間がここまで汚れきってしまったのは生まれつきでもなく、はたまた環境の為でもないのですから」

( ФωФ)「全ては、肉体。肉体の為に人間は汚れてしまったのです」



24: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:26:49.55 ID:FVdhWrJ8O
( ФωФ)「肉体があると、それを維持する為に食物を摂取せねばならない。しかし、いつもいつも食物が手に入るとは限らない。
 日照りが続けば稲は枯れ、家畜も死ぬ」



( ФωФ)「すると食物を巡って争いが生まれるのです」




25: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:28:34.48 ID:FVdhWrJ8O
( ФωФ)「今の例えは原始社会に限られた話ですが、現代だって大して変わりませんよ。
 争いの対象が、“食物”から“金銭”や“支配欲”に代わっただけなんですから」

( ФωФ)「欲望。これは全て肉体があるからこそ生まれるのです。
 肉体がある限り、我々人類は未来永劫永遠に続くこの汚れた縛鎖から解き放たれる事は叶いません」

そこで一拍置くと、魔術師は次の言葉を威厳を持って吐き出した。



27: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:29:09.14 ID:FVdhWrJ8O



( ФωФ)「だから、我々は人を次の次元へと導く」




29: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:30:24.93 ID:FVdhWrJ8O
('A`)「次の…次元…?」

( ФωФ)「汚れきった肉の枷を解き放ち、魂だけの存在となり“約束の地”へと旅立つ……」

川;゚ -゚)「“約束の地”……まさか、“時の墓標”へとか!?」

('A`)「おい、何を言っているのかわからんが……」

( ФωФ)「そして、我々人類は神をも超越した存在となる!」

('A`)「何を……」

( ФωФ)「そう!オリジン殿、貴方と同じ存在、“超越者”と!」

その言葉に、救世主と魔女の動きが止まった。

('A`)「オレと…“同じ”存在に……?」



32 名前: ◆URjgikZ/16 投稿日: 2008/07/20(日) 21:31:56.53 ID:dqqSGL9A0
( ФωФ)「今の例えは原始社会に限られた話ですが、現代だって大して変わりませんよ。
 争いの対象が、“食物”から“金銭”や“支配欲”に代わっただけなんですから」

( ФωФ)「欲望。これは全て肉体があるからこそ生まれるのです。
 肉体がある限り、我々人類は未来永劫永遠に続くこの汚れた縛鎖から解き放たれる事は叶いません」

そこで一拍置くと、魔術師は次の言葉を威厳を持って吐き出した。



33: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:32:02.55 ID:FVdhWrJ8O
━━━━

【+  】ゞ;)「ミナイでクれ!タノむ!ミナイで……!」

嗚呼なんと。なんと醜悪なことか。
仮面の下に覆われていたのは、この世ならざる次元の芸術が生んだ化け物の肖像か。

从;'ー'从「これは……」

骨格、まずそれが奇怪であった。凸凹と不恰好に歪んだ輪郭に、あるべき位置から遠く離れた目、鼻、口。
開かれた口に並ぶ歯は、我先にとこの忌まわしき洞穴から逃れようとするかの如く、折り重なり、一心に仰け反りながら伸びている。
目を覆う瞼は熟れたライチのように腫れ、その下で黄ばんだ瞳が充血した眼球にどす黒い涙を湛えていた。
皮膚は半分が先の爆発で焼け爛れ、もう半分は鱗とも瘡蓋ともとれる醜い腫物で覆われ、そして耳は……いや、もう止めよう。
とにかくそれは不快極まる醜悪の権化であり、その傷は先の渡辺の呪文の破壊で出来たのではない、紛れもなく生まれつきのものであった。

ミセ;゚ー゚)リ「あなたは……」

思わず目を背けそうになるのをこらえ、ミセリは醜悪な面を見つめる。
彼女は、この醜い男を知っている。



34: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:33:32.64 ID:FVdhWrJ8O
【+  】ゞ;)「そうダ!私コソが神に呪われシモノ…ソドムの一族ノ末裔ダ!」

ミセ;゚ー゚)リ「あの、ソドムの一族……」

いや、正確にはこの男の先祖を知っている。

ドクオの封印に立ち会った五人の魔術師。その中の一人が、ソドム。目の前の男の、先祖だ。

【+  】ゞ;)「先祖ハ偉大ダッタ!オリジンの封印のおリ、一番ニ奴に立チ向かってイっタのダ!」



35: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:34:05.65 ID:FVdhWrJ8O
その事は、自分で見たことのようによく覚えている。
薄暗い地底湖の中央、周りを取り囲んだ魔術師達。
抜かりなく構えた彼らはしかし、オリジンという“化け物”の前では流石に恐怖せずにはいられなかった。
各々に武器を構え、魔術の準備をすれども始めの一歩を踏み出しあぐねていた。
しくじれば全滅。
誰もが自分の命が可愛い。
ためらいに心が揺れる。

そんな中、一人の魔術師が雄々しい雄叫びを上げてオリジンへと踊りかかった。
それがソドムだった。

【+  】ゞ;)「彼ハ一番槍ノ栄誉ト引キ換えに、全身二呪いの傷ヲ負っタ……ソノ呪イは今モコウしテ子孫ノ身を苦しメ続けテいる!」



36: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:35:15.85 ID:FVdhWrJ8O
呪いを受け、傷を負いながらもオリジンに対して魔術を放ったソドム。
彼のその一撃に勇気を得た後続の魔術師が、封印魔術を完成させ、オリジンは永劫の眠りへと着く事になった。

ミセ;゚ー゚)リ「悲劇の英雄…ね」

【+  】ゞ;)「そうダ、悲劇ダ!おかげで私は生まレた時カラ今に至ルまで普通ノ生活を送る事が出来なカった!
奇形の一族トシテ闇に生き、決して光ノ下へト出らレなイ運命!この苦シみが貴様に解ルか!?イイヤ、解っテタマルカ!!」



37: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:36:00.14 ID:FVdhWrJ8O
風の噂に聞けば、彼ら一族はそれから人目につかない地に移り住み、近親婚によって代を重ねていったそうだ。
五千年の歳月の間、外界との接触を極限までに限定し、日の光の差さない隠れ家で彼らが重ねた日々はどれほどまでに孤独で、絶望に溢れていたのか。
ミセリには想像もつかない。
だが。

ミセ;゚ー゚)リ「そんなの、自分勝手過ぎます!自分達を救ってくれたオリジン様に矛先を向けておきながら、呪われた事に不平不満をぶちまけるなんて……人間は勝手ですね!」



38: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:37:35.53 ID:FVdhWrJ8O
【+  】ゞ;)「勝手だト!?アア勝手だナ!本当に勝手ダ!私がソの場に居たラ、間違いナく奴ラの頬を殴り飛ばシて居たダロうさ!私ガその場に居たナらナ!!」

ミセ;゚ー゚)リ「……!」

彼のせいではない。彼が悪いのではない。
そんな事は解っていたのに言葉を止められなかったミセリに、オサムは叫ぶ。



39: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:38:01.74 ID:FVdhWrJ8O
【+  】ゞ;)「私であれド、家族以外の他人と言葉を交わシたカッタ!社会に出タかった!恋をシテ悩み、失恋に泣いタり、友と笑いアったりシタカッタ!」

【+  】ゞ;)「ダガそれすら…それスら、五千年前の先祖の馬鹿ガ起こしたドジのセいで叶ワぬ夢ダ!」

同情すべきなのか。涙を流すべきなのか。
激昂するオサムの前ではしかし、どちらも彼が望むもので無いのが解るだけだ。

【+  】ゞ;)「ドイつモこいツも自分の都合ばかり押し付けて、尻ヲ拭う事さえ知らナい!誰かガ欲望ヲ叫べバ、他の誰かガ涙を飲ム……」

【+  】ゞ;)「コンな世界に誰がした!誰ダ!今スぐ出てコい!!八ツ裂き二シテ地の果テにバラまイてヤル!」



40: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:39:24.96 ID:FVdhWrJ8O
理不尽。
何故、自分が。
宿命だとか、業だとか、そんな重々しい言葉で飾る事が出来ない程、それは世界中で一番ありふれた病理。
程度の違いはあれ、誰しもが抱える悲しみだ。

【+  】ゞ;)「畜生!誰ダ!早く出てコい!畜生!畜生!畜生!」

どうにもならない苦しみ故に、歪んだ彼。
その姿がハインリッヒと重なり、ミセリは目頭が熱くなるのを自覚した。

ミセ ; -;)リ「どうして……」



41: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:39:56.70 ID:FVdhWrJ8O
疑問の余地が、そこにはあるのだろうか。
人が誕生した瞬間から溢れるこの病に、決定的なワクチンは存在しない。
有るのは、個人個人による拙い民間療法のみ。
自分の中で割り切り、妥協して前を向くしかない。

だが、彼やハインリッヒが患った苦しみにはそんなものでは事足りない。足りなすぎる。

ミセ ; -;)リ「……こんなの、こんなの酷すぎるよ…」

行き届かないケア。そのはけ口に、彼は自らの先祖の所業を無理矢理に美化し、誇りとする事によって生きてきたのだろう。
だが、それにも限界があった。



42: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:41:50.57 ID:FVdhWrJ8O
いつしか自らの生まれを呪った彼の気持ちが抑えきれなくなり、ついに彼は「エデン」による救済を真の安寧として見出した。
それは自然な事で、ミセリには否定出来ない。否定するには、彼女はあまりに幸せに生き過ぎている。

【+  】ゞ;)「全てコの肉体ノセイだ!コノヨウナ肉体ガ無けレバ!」

【+  】ゞ;)「ダからエデンに頼ッた…ガ、モウそれモ終ワりだ……」

絞り出すように呟いたオサム。
その手が持ち上げられ、自らの首に当てられる。

【+  】ゞ;)「全てノ生有るモノに……」



43: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:42:32.34 ID:FVdhWrJ8O
彼が何をしようとしているのかが、ミセリには分かった。

分かったけれど。

ミセ*;口;)リ「ダメぇぇえ!」

その叫びは、間に合う事は無かった。

【+  】ゞ;)「呪いアレ!!」

手甲から飛び出した刃が、真っ赤な血飛沫を撒き散らし、地を染める。
赤く、朱く、紅く、飛び散るのは呪い。
張り詰めた空気は弛緩し、後に残ったのはただただやるせなく無気力な時間と、壊れた機械人形。

ミセ*; -;)リ「あ……ぅ…」

力無くうなだれ、涙を流して…彼女は実感した。



44: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:43:48.98 ID:FVdhWrJ8O
ミセ*; -;)リ「私は……」

無力だ。

ミセ*; -;)リ「誰も……」

救えない。

何も、出来ない。

目の前で繰り広げられる悲劇の演目を、ただただ見ている事しか出来ない観客にも等しい。

自分はただの傍観者でしかないのか?

ミセ*;д;)リ「そんなの…嫌だよ……」

そんなの。

ミセ*;Д;)リ「そんなの嫌だよ!!」



46: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:44:18.34 ID:FVdhWrJ8O
从'ー'从「なら、走りなさい」

ミセ*; -;)リ「えっ…?」

从'ー'从「何も出来ないのなら、走りなさいな。今のあなたじゃ何も出来ないのなら、オリジン様の下に走りなさいな」

ミセ*;Д;)リ「そんなんじゃ、結局私じゃ何も出来ないのを認めてるような……」

渡辺は、ゆっくりと首を振った。

从'ー'从「何も出来なくなんか無いです。あなたにしか出来ない事があります」

ミセ*; -;)リ「私にしか、出来ない事…?」

从'ー'从「…オリジン様は、まだ自分の真の記憶を取り戻して居ません。そんなんだから、このどうしようもない世界の中できっと自分を見失っている筈…」



47: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:45:16.85 ID:FVdhWrJ8O
从'ー'从「だから、あなたが行って彼に本当の事を教えてあげて下さい。何が正しくて、何が間違っているのか……そして、彼が戦う本当の理由を……」

ミセ*; -;)リ「……それが、私の出来る事…?」

从'ー'从「えぇ、あなたにしか出来ません。あなただけが出来るんです」

だから、あなたが支えてあげて下さい……と、彼女は呟く。

ミセ*; ー;)リ「私にしか……出来ない……」

確認するように、もう一度言葉にする。

ミセ*; ー;)リ「本当に……」

私なんかが?



48: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:46:16.24 ID:FVdhWrJ8O
从'ー'从「……」

渡辺は、無言で頷く。
それが肯定を意味するのならば。

ミセ*;へ;)リ「…っぐす」

涙を飲み込む。
足に力を入れる。

ミセ*う ー;)リ「……渡辺さん」

从'ー'从「はい?」

ミセ*゚ー゚)リ「遅れないで、着いて来て下さいね」

走り出す。

もう、泣いてばかりはいられない。
誰かを救うなら、涙は不要だ。

ミセリは走り出す。

決意というものには些か頼りないその背中に、精一杯の想いを込めて。

その背を見つめながら、渡辺は小さく零す。



49: ◆cnH487U/EY :2008/07/20(日) 21:47:29.25 ID:FVdhWrJ8O
从'ー'从「……少なくとも、“オリジン様だけ”に限っては…あなたの“記憶”が支えになるから……」

“オリジン様だけ”

では、それ以外の者とは?



終局が、近い。



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