('A`)はダークヒーローのようです

134: ◆/ckL6OYvQw [外伝] :2007/06/14(木) 23:06:17.93 ID:m0f5tZJIO
血が、足りないな。

ジョルジュはぼんやりと霞がかかった頭で、そんな事を考えた。
全身の傷口という傷口から血液が、生命が流れ出していく。
目の前が、段々暗くなってきた。

あぁ、オレは死ぬんだな。

はっ、小隊のエースと呼ばれたこのオレが。
少し調子に乗りすぎたかな。

神様はお調子者が嫌いと見える。

あぁ…血が、足りねえ。

短い一生だったな、くそったれ……



( ゚∀゚)は希望をもらったようです



137: ◆/ckL6OYvQw [あぁ、約束だ!] :2007/06/14(木) 23:14:01.62 ID:m0f5tZJIO
なんだ、ここは。
天国か?だとしたら随分と殺風景なとこなんだな、天国っつうのは。
崩れかけの屋根に、蜂の巣みたいなコンクリートの壁。
そしてこの薄汚いベッド!
天国も経費削減なのか?
おいおい、こんなんだったらまだ地獄の方がましだったぜ。

ノハ#゚听)「さっきから聞いてれば、命の恩人の部屋のこと随分とボロクソに言ってくれるじゃねぇか!えぇ、死に損ないの兵士さんよぉぉ!」

( ;゚∀゚)「うわっ!天国に悪魔がいる!じゃあやっぱりここは地g」

スパンっと小気味のいい音がして、オレの目から星が飛び出す。本当に目から星って、飛び出すんだな。

ノハ#゚听)「やかましい!いいから傷が治ったらさっさと失せやがれ!」



139: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 23:21:46.49 ID:m0f5tZJIO
彼女はそう言うと、今にも爆発しそうな頭を振りながら部屋を出ていった。
彼女の言葉を改めて反芻してみる。

( ゚∀゚)「傷が治ったら……治ったら?じゃあオレは生きてんのか!?」

どうやら神様はお調子者を言う程嫌ってないみたいだ。
きっとオレの幸運の女神はツンデレなのだ。

手当てをしてくれたのは彼女だろう。自分でも言っていたしな。
しかし参ったな。折角助けて貰ったのに、失礼な事を言って怒らせてしまったようだ。
どうも自分は余裕が無くなると思っている事を口に出してしまう癖があるようだ。
いつか治さなきゃな。
そうと決まったら、取りあえずは謝りに行くか。
オレはベッドを抜け出し、部屋に一つしか無いドアを開けた。



142: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/14(木) 23:33:57.86 ID:m0f5tZJIO
ドアを開けると、今にも崩れそうな階段が下へと続いている。
そこをオレはゆっくりと、崩さないように降りていく。
すぐに、目の前に荒廃したリビングと思しき部屋が現れた。
そこで件の彼女がボロボロのソファに座って銃のパーツの手入れをしていた。

ノハ#゚听)「なんだお前?撃ち殺されにきたのか!?」

( ;゚∀゚)「おk、時に落ち着け。君がオレを助けてくれたんだろう?さっきは失礼な事を言ってしまってすまん。
起き抜けで頭が混乱していたんだ。とにかく助けてくれて有難う。いや、本当に有難う。感謝している」

一気にまくし立てたせいで荒くなった息を整える。
彼女は、オレの早口に呆けたような顔をしていたが、急に笑顔になるとソファから立ち上がりオレの近くまでやって来た。
背丈は181pのオレの胸より少し小さい。
綺麗な赤毛の髪を無造作にポニーテールに束ねたその顔立ちには、まだ幼さが残っている。恐らくは十七、八歳と言ったところか。



3: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 13:46:30.06 ID:q0YZSyUMO
ノハ*゚听)「そうかそうかぁ!なんだ、そんなにオレに感謝してんのかぁぁぁ!!それならそうと最初から言えよなぁぁぁ!!
いやぁ、さっきは引っぱたいて悪かったなぁ!」

結構可愛い顔をしているが、何というか…こいつは馬鹿なんだな、うん。

ノパ听)「ところでお前、名前はなんつーの?オレ?オレはヒート!!ここのレジスタンスのリーダー、人呼んで『爆炎のヒート』様だ!!」

いや、まだ何も聞いてないのだが…

( ゚∀゚)「オレはジョルジュ。VIP基地所属ビコーズ小隊の兵士だ」

ビコーズ小隊ね。あのくそったれ隊長、さっさと自分だけケツまくって逃げ出しやがって。
基地に帰ったら靴に画鋲入れてやろう。

ノパ听)「おぉぉぉ!!!どうでもいいや」

今ガクッてなったわ、ガクッて。

ノパ听)「それよりお前腹とか減ってねえか?二日も寝てたんだぜ、お前」

二日……そんなに寝てたのか、オレ。

( ゚∀゚)「確かに、言われてみれば腹が空っぽみたいな気がしてきたな」

それを聞いたヒートが、嬉しそうに口の端を限界まで釣り上げる。不覚にも可愛いと思った。

ノハ*^―^)「よぉぉぉっし!!それじゃあオレがお前に手料理作ってやるっ!!喜べ!!」



4: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 13:47:41.32 ID:q0YZSyUMO
ん? なんだろう、こんなにも嬉しい申し出の筈なのに、何だか不安なんだが。
おかしいな。

――三十分後。

ノパ听)「今日はハンバーグっだぁぁぁぁあ!!!」

勢い良く台所から飛び出して来たヒートの手の上に乗っていたのは、歪な楕円形の灰色の「塊」を乗せた皿だった。
つうかここの台所はまだ機能しているのか。意外だ。

ノパ听)「さあっ、食えぇぇぇ!!!」

勢い良くテーブルに叩きつけられた皿の上を見る。

おいおい、そんなにしたらテーブルがぶっ壊れるだろうが。
ただでさえ脆そうなんだ。丁寧に、な?
物は大切に扱いましょうって昔お袋が言ってたが、まさにその通りだな。
やはり先人は偉大だよ。思うにことわざとかだってよく見ると結構的を射てるんだぜ。先祖様々だな。
伝記とかだって、読んでみりゃためになることが書かれてるんだぜ。
あの有名なマポレオンも、「自分の剣は大事にしろ。勿論下の剣も大事に手入れしておけ」という名言を残してるんだ。
つまりオレが言いたいのは……

…え? ハンバーグですか?

察しろ。



6: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 13:50:20.85 ID:q0YZSyUMO
━━━━━

( ゚∀゚)「そう言えば、お前さんはどうしてこんな焼け跡の廃墟になんか暮らしてるんだ?」

ふと気になった事を、訪ねてみた。
ここ鮫島は数年前から邪神とその下僕の魔物達がコロニーを築いている、ゴーストアイランドだ。
それをオレ達ビコーズ小隊と、その他精鋭部隊の寄せ集めである邪神討伐隊が、遠征という事でわざわざこんなド田舎までやって来たのだ。
島民がまだ生きているという報告は聞いていない。

ノパ听)「オレ様は、ここの鮫島を化け物の支配から解放する為に、日夜戦うレジスタンス『ヒート・ザ・ダイナミック』のリーダーやってんだよ!
奴らにこの島は渡さねえぇ!」

( ゚∀゚)「レジスタンス?
そんなのがあったのか。上からの報告じゃ、島民は全滅したって聞いたんだが。
それじゃあ、お前の他にも生き残りが?」

ノハ;゚听)「お、おうその通り! 人数は少ねぇけど、みんな熱い魂の持ち主だぜ!
そ、そのうち、お前にも合わしてやらぁ」

そうだったのか? まぁいいか。とにかく生き残りがいるんなら、上に報告しとかなきゃならんな。



7: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 13:52:59.86 ID:q0YZSyUMO
━━━━━

∠=゚听)「ミー、ミー」

オレのベッドの上に、一匹の猫が乗っかってきた。
一体どこからこの部屋に入って来たのか、部屋中を見渡す。

すると、ベッドから見て左側の壁の高い位置に、ちょうど猫が入り込めそうな明かり取りの窓があるのを発見する。

( ゚∀゚)「赤毛の猫とは珍しいな。お前さんもここの生き残りか」

猫は、毛布から出しているオレの上半身に頭を擦り寄せると、甘い声を出した。

∠=*゚ー゚)「ニャ〜ン」

人懐っこい奴だ。首の下を掻いてやる。

∠=*´ー`)「フニャ〜」

お、気持ちよさそうな顔だな。凄いだろ、オレのテクは。

ノパ听)「おおぉ! ナパーム! ナパームじゃないかっ!」

なんだ、その物騒な名前は。

∠=゚听)「ニャッ!」

今までオレのテクに恍惚としていた猫は、いきなり部屋に入って来たヒートの元へトテトテと駆け寄っていく。



8: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:01:34.56 ID:q0YZSyUMO
ノパ听)「さあ、遠慮無く食えっ!」

その言葉を合図に、ナパームと呼ばれた猫は猫特有の跳躍力でヒートの拳に握られた煮干しの塊に飛びつき、それを根こそぎ奪い取った。
夢中でそれにかぶりつく。

ノパ听)「旨いか!?」

ヒートの言葉に、猫は煮干しの塊から顔を上げると、

∠=^竸)「ミー!」

御満悦そうな声で鳴いた。

ノハ^竸)「よしよし、これを食ったら昼からも見回り頼むぞ!」

∠=^ー^)「ミー、ミーッ!」

この娘、猫と会話できるのか?
コミュニケーションが成立しているように見えるのだが…

そうこうしてる内に猫は食事を終え、明かり取りの窓から出ていった。

( ゚∀゚)「大したもんだな。猫を完全に手懐けてるなんてよ」



9: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:02:37.71 ID:q0YZSyUMO
ノパ听)「手懐けてる? 違ぇよ! あいつは立派なオレの同士だ!!」

ヒートが拳を振りながら力説する。

ノハ#゚听)「あいつも勇敢なレジスタンスの一員として化け物共と戦ってんだ!! どっかの軍隊と違って、決して逃げ出したりしねぇ!!
立派な、オレの戦友だっ!!」

( ゚∀゚)「…そうか、すまなかった」

そう怒鳴るヒートの声に、オレは何も言えずにただ謝る事しかできなかった。



10: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:04:04.70 ID:q0YZSyUMO
━━目を覚まして、血の巡りの悪い頭を奮い起こす。
あの時かなりの血を失った為か、朝は辛い。
早起きしなくてもいい事がせめてもの救いか。

ノパ听)「おはようございまぁぁぁす!!!」

訂正。早起きはしなくてもいいが、結局は無理矢理起こされる。

ノパ听)「ジョルジュ! 今日はいい天気だぞっ! だから今日はお前の布団を干すことに決めた! 干すったら干す! 異論は認めないっ!」

( ゚∀゚)「いや、反論するつもりは無いんだが」

オレの言葉を無視すると、ヒートはオレの体の乗ったままの敷き布団の裾を掴んだ。

ノパ听)「さぁどいたどいた! それともお前も天日干しにされたいか!?」

だから結論を急ぐのが早過ぎるんだ、お前は。
少しは辛抱と言う言葉を知れ。お願いしますから。

( ゚∀゚)「分かった。分かったからその手を離せ。オレは一応怪我人なんだ。もう少し優しく扱ってくれ」



11: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:05:19.28 ID:q0YZSyUMO
━━なんでだろう。
オレはちゃんと抗議したのに。
丁寧に扱って欲しいと陳情したのに。
こんなのはあまりにも理不尽だ。

( ゚∀゚)「なぁ、ヒートさん?」

オレは布団の上に正座したまま、ヒートに担がれてこの崩れかけた建物の屋根の上にいる。
見下ろせば、そこには一面に広がる街。

ノパ听)「到着ぅぅぅ!!」

そう言ってヒートは、オレが乗っている布団をそのまま屋根の上に放り投げた。

( ;゚∀゚)「ばばば、馬鹿野郎! もし落ちたらどうすんだよ! おい、聞いてんのk」

慌てて抗議するオレの隣に、ヒートが飛び込むように寝転がった。

ノパ听)「ああぁぁ…気持ちいい……やっぱ天日干しは最高だなぁぁ…」

そう言って、大きく伸びをするヒート。
一言言わせてもらえば、足と手がオレの足と頭にぶつかっている。
肩身が狭いとはこの事か。

( ゚∀゚)「いい、天気だな」

本当にいい天気だった。太陽がさんさんと輝き、街の屋根屋根を渡るように風が吹き抜ける。
その屋根の上を伝って、ナパームがのんびりとお散歩を楽しんでいた。

ふと、隣のヒートが静かな事に違和感を感じて首を隣に回した。



12: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:06:30.73 ID:q0YZSyUMO
ノハ--)「Zzz……」

寝てる。本当に気持ちよさそうに寝てやがる。
おそらくまだ十代後半であろうヒートの寝顔は、まさに純真無垢な少女のそれだった。
これはもう、チャンスとしがいいようが無い。
日頃感じている理不尽なストレスを発散するチャンスだ。

( ゚∀゚)「なんだかベタな展開だが、気にしたら負けかな、と思っている」

起こさないように、気をつけながらヒートの顔に手を伸ばす。鼻を摘んでやるか。
そーっと、そーっと……

ノハ--,)「お母さん……」

ヒートの口から出るにはあまりにも不釣り合いな言葉と、その目の端に光る小さな水滴が、オレの下らない悪戯心を萎縮させた。

改めて、眼下の街並みを見渡す。
見渡す限りに広がる荒廃したこの街に、人の住む気配は無い。
レジスタンスなんて言ってはいたけれど、やはりこいつは独りだったんだ。
その寂しと、一握りの誇りが、ヒートに自分が誰もいない街を一人で守るレジスタンスのリーダーである、という言葉を口に出させたのだろう。
まだ十代の少女には、それはあまりにも辛いものに思えた。

( ゚∀゚)「強いガキだな、お前さんは」



13: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:09:06.49 ID:q0YZSyUMO
そう呟き、赤毛の頭髪をそっと撫でる。

ノハ*゚兪)「んあ……」

おっと、リーダーさんを起こしちまったかな。

ノハ;゚听)「ななな、なんだお前ぇぇぇ!!??
寝込みを襲う気だったのかぁぁぁ!!?
おのれぇぇ、お前もあの化け物の手先だったとはぁぁ……」

( ;゚∀゚)「え? あ、いや、その、なんだ…」

ノハ#゚听)「ナパームゥゥゥ!!!」

∠=`凵L)「ナ"ー!!」

( ;゚∀゚)「ひでぶっ!?」

畜生…やっぱりこいつはただの「馬鹿」だ……



14: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:10:22.05 ID:q0YZSyUMO
━━━━━

( #∀゚)「あだだだっ! 染みる染みる!」

ノパ听)「男なら我慢しろ! これに懲りたらもう下手な真似はしないこった!」

糞…なんでオレがこんな目にあわなければならないんだ。
顔にでかいミミズ腫れができたじゃねぇか。

ノパ听)「…ほいできた。そういやぁ体の方の傷ももう治ったんじゃねぇか? いや治ってる」

何故決めつける。

( ゚∀゚)「と思ったけど…お、本当に治ってる」

これなら、運動してもなんら差し支えなさそうだな。

ノパ听)「やっぱりな! オレの看護のおかげだぞ! 感謝しろ!」

( ゚∀゚)「ああ、助かったよ。有難う」

ノハ^竸)「よしよし、いい返事だ!
ところで、お前こっからはどうやって帰るつもりなんだ?本土なんだろ?」



15: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:12:02.41 ID:q0YZSyUMO
( ゚∀゚)「それなら心配無い。一応救助のヘリは呼んでおいた。今日中には着くだろう」

ノパ听)「そうか…」

ん? 寂しそうな顔してやがる。

( ゚∀゚)「お前はどうするんだ? この島に残るのか?
なんなら一緒に乗せていってやってもいいが」

ノパ听)「馬鹿野郎っ!! オレはレジスタンスの……リーダーなんだぜ!! この島を見捨てて行けるかよ…」

ヒートの言葉に、迷いは無かった…わけでは無さそうだった。
だからオレもこう続けたんだ。

( ゚∀゚)「そうか。しかし、この島は軍ももう捨て置くつもりだと思うぞ。
おそらく、二度と近付かんだろう。それでも残るのか?」

ノハ#゚听)「うるせぇなぁぁ!! 二回も言わせんな!! 軍が見放そうがオレだけは絶対にこの島を見捨てねぇぇ!!
お前はさっさと本土に帰りゃぁいいんだよ!!」

ああ、やっちまった。こうなったら手がつけられんな。

( ゚∀゚)「そうか…」



16: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:13:11.44 ID:q0YZSyUMO
━━それ以降オレ達は、お互いだんまりを決め込んだかのように何一つ言葉を交わさなかった。
オレがソファに腰掛け、ヒートが窓縁に寄り添って。
気まずい空気のまま、時間だけが過ぎていく。
日も段々と傾き、救助のヘリが到着する予定時刻が迫りつつあった。

沈黙が沈殿した部屋の中は、とても居心地が悪くて。
この現状を打破する為の打開策を探してヒートの方を見ると、彼女は珍しく何か考え事でもしているのか、難しい顔をして窓の外を眺めていた。
その姿に、声を掛けようと口を開きかけ━━突然、外で引き裂かれんばかりの咆哮を耳にする。

その咆哮の後に、猫の金きり声が続く。

( ;゚∀゚)「何事だ!?」

オレはソファから立ち上がり、窓を向いた。

ノハ;゚听)「ナパーム!!」

ヒートは、その咆哮に血相を変えると後ろも見ずに扉を蹴り開け飛び出していった。

( ;゚∀゚)「お、おい待て!」

その後ろ姿を追って、オレも慌てて飛び出す。
傷がまた痛んだが、気にしなかった。
とにかくヒートの後を追い走る。



18: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:14:37.25 ID:q0YZSyUMO
( ;゚∀゚)「ちっ、獣みてぇに速ぇ」

追い立てられたジャッカルの如く疾駆するヒートを追うのは、病み上がりの体には相当堪えた。
だがそれでも、鈍い痛みに耐えて廃墟と化した夕闇の街を走る。
ヒートは一心不乱に山の方へと走ってる。

途中何度か瓦礫に足をとられながらも、なんとかオレはヒートに追いついた。
そこは島全体が見下ろせる、高台だった。
吹き渡る潮風が、足元の草を揺らす。

ノハ;゚听)「ナパーム!」

ヒートが呼んだのと同時に、またあの咆哮が響き渡った。
しかし今度はオレ達の目の前から。

( ;゚∀゚)「こいつは……」

咆哮の主は、人間の倍はあるであろう黒く毛深い体躯に、ぱっくりと縦に裂けた巨大な口蓋と目のない頭を乗せ、その両腕は肘から先が二つに分かれた合計四本の腕を生やしていた。

( ;゚∀゚)「ガグ…だと?」

脳裏にあの虐殺の一部始終が、細切れになってフラッシュバックする。
オレの小隊はこいつによってその半数以上を削られ、撤退させられたのだ。
その時でも十人で戦っていたのだ。
今オレ達は二人しかいない。かなうわけがない。



19: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:15:44.71 ID:q0YZSyUMO
( ;゚∀゚)「おいヒート、逃げるぞ!」

後退りしながら、ガグと目の前で相対しているヒートに怒鳴る。

ノハ#゚听)「うるせぇぇぇ!! 逃げたいなら勝手に逃げやがれ!! オレ一人でもこいつをぶっ潰してやらぁぁぁ!!」

そう言うヒートの目線の先を追う。
そこには、ガグを目の前に全身の毛を逆立てて精一杯の威嚇を行うナパームが居た。

( ;゚∀゚)「馬鹿! 猫なんてほっとけ! お前も殺されちまうぞ!」

しかしヒートはオレの言葉など最早耳に入っていないかのように、腰から六連発式リボルバーを抜いた。

ノハ;゚听)「ナパームゥゥゥ!! 今助けるからなぁぁ!!」

そう叫び、撃鉄を上げてヒートは引き金を引いた。
今や時代錯誤もいいところのリボルバーでは、あの不浄なる化け物を怯ませることもできない。
何せ、対物ライフルですら奴に致命傷を与えることが出来なかったのだ。
見越した通り、ガグは平気そうな顔でヒートに一歩を踏み出すと、その肘から先が二股に分かれた腕を振り上げた。

ノハ#><)「ぐぉっ!?」

豪腕の一撃をまともに腹に浴びたヒートは、五メートル程後ろに吹き飛ばされ芝生の上を滑走した。



22: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:17:10.17 ID:q0YZSyUMO
( ;゚∀゚)「おい、大丈夫か!?」

慌てて駆け寄る。
口から血を吐き出しながらも、ヒートは立ち上がる。

ノハ#゚听)「どけぇ!! 臆病者の兵隊さんはさっさと逃げな!!」

怒鳴り、リボルバーを構えるヒート。

ノハ#゚听)「ナパームはオレの戦友なんだ!! 見捨てられるかよっ!!」

震える手で撃鉄を起こし、ファニングする。
それでもガグに効いた様子は無い。
両腕を振り回し、ヒートに襲いかかる。

ノハ#><)「ぅわぁっ!!」

間一髪で直撃は免れたものの、右肩を掠めたガグの爪がヒートの皮膚を抉りとっていく。

( ;゚∀゚)「馬鹿野郎! 死にたいのか!」

たったの二撃で満身創痍になったヒートの後ろで、オレは腰のホルスターからデザートイーグルを引き抜きながら怒鳴った。
援護するように、ガグの頭部目掛けて二発発砲する。

ノハ#゚听)「うおぉぉぉぉ!! お前はさっさと逃げちまえよ腰抜け軍人がぁぁぁ!! ナパームは、オレの戦友はオレが守るんだぁぁぁぁぁ!!!!」

( ;゚∀゚)「何故、たかが猫一匹に固執できる? 死んだらそこで終わりなんだぞ!?」

ノハ#゚听)「ただの猫じゃねぇぇ!! 仲間なんだよっ!! オレのたった一人の仲間なんだよおぉぉぉ!!!!」



24: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:18:18.25 ID:q0YZSyUMO
ノハ#゚听)「他にはもう何もねぇぇんだっ!! 戦って守り抜かなきゃ、何もかも皆無くなっちまうんだよぉぉぉ!!」

リボルバーをファニングし続けるヒート。やがて、撃鉄が吐き出すべき弾丸を見失った時、襲い来る不浄なる四腕がヒートを薙払った。

ノハ#><)「ぐぶっ!……畜生…畜生…お前らに、オレの仲間は渡さねえぇぇぇ!!!!」


地に倒れ伏し、血反吐を吐き、それでもヒートは撃ち尽くしたリボルバーを離すことなく、這いつくばっても尚諦めることをしなかった。

( ゚∀゚)「馬鹿が…だが、愛すべき馬鹿野郎だ!!」

柄に似合わねえ事に、オレはアーミーブーツからナイフを抜き取ると構えた。

( ゚∀゚)「おら巨人さん、こっち向け。オレが相手してやんよ」

ノハ;゚听)「ジョルジュ、お前……」

( ゚∀゚)「オレもお前の言う戦友の為に戦うぜ。さぁ巨人さん手の鳴る方へ!」

ノハ--)「馬鹿…野郎」

( ゚∀゚)「へっ、お前ほどじゃねぇよ」



25: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:19:23.48 ID:q0YZSyUMO
ガグが、その目のない頭をオレに向ける。挑発に乗るとは、単細胞馬鹿もいいところ…

( ;゚∀゚)「くぼっ!」

二股の腕による強烈なフックがオレの鳩尾を捉える。
血の味が口内に広がる。こいつは、内臓が逝っちまったな。
気を失わないように、全力で神経の糸をつなぎ合わせる。

ガグはそのままオレの体を突き上げるように持ち上げると、縦に割れた吐き気のする大口を開けた。

お食事タイムという訳か。

( ゚∀゚)「それじゃあじっくり味わいな。最後の晩餐をな!」

叫び、胸にぶら下げた手榴弾を奴の大口に投げ込んでやる。

( ゚∀゚)「パイナップルの味はどうだい、巨人さんよ」

強烈な爆音と共に、ガグの汚らしい頭が吹き飛んだ。
数瞬後、ゆっくりとベッドの倒れ込むようにガグの巨体が地に沈む。

オレも…限界かな…



27: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:20:30.81 ID:q0YZSyUMO
━━ヘリのローター音が五月蝿い。

「ジョルジュ…ジョルジュ!」

やかましいな、オレは眠たいんだ。静かにしてくれ。

「起きろ、いつまで寝てるんだ!」

頼むぜ母ちゃん、一人で起きれるからわざわざこんなとこまで…

( ゚∀゚)「どんなとこ!?」

飛び起きて、周りを見回す。一番先に視界に飛び込んできたのはヒートの顔。
次に狭い機内に並んだ通信機器類や他諸々の銃器。どうやらオレは救助隊のヘリの中にいるようだ。

( ゚∀゚)「じゃあ何でお前がいるんだ? 島を守るんじゃなかったのか?」

目の前で救急箱をごそごそやってるヒートは、オレの目を見るとニッと笑って答えた。

ノパー゚)「言っただろ、戦友を守るってな」

そうか、オレはお前の戦友になれたんだな。なんか、照れくさいじゃねぇか。

( ゚∀゚)「島はいいのか?」

ノパ听)「いつか、必ず故郷は取り返しにいくさ。今のオレじゃまだまだ実力不足だ。だから、その日まで鍛えて鍛えて強くなるっ!」

なる程な、そう言う納得の方法もあるわけだ。



28: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:21:53.05 ID:q0YZSyUMO
ノパ听)「そう言うわけで、しばらくお世話になるぜ、先輩!」

( ゚∀゚)「はぁ!?」

既に日が沈んだ夜空に、オレの叫び声が木霊する。
これから騒がしい毎日がやってくると思ったらどっと疲れが出た。

∠=^ー^)「ミー、ミー」

( ゚∀゚)「ナパーム…」

まぁ、それもそれでいいかも知れんな。



( ゚∀゚)は希望をもらったようです

fin



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