('A`)はダークヒーローのようです

31: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:26:30.76 ID:q0YZSyUMO
しゃぶるような、ねぶるような湿った音が贅を尽くした部屋に響く。

( ´∀`)「なかなか巧いじゃあないかモナ」

自分の股ぐらにしゃぶりつく女の頭を撫でながら、僕はブランデーを煽る。

金で買えない物は何も無い。愛も、心も、人間も、全部全部、僕のものだ。
ひざまずけ、愚民共。さぁ、どれぐらいが欲しいんだ?



( ´∀`)は金の亡者のようです



32: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:27:51.33 ID:q0YZSyUMO
( #´∀`)「やかましい、そんなもん札束で横面ひっぱたいてやれば頷かざるを得なくなるモナ!
今からそっちに一億渡すモナ! だからさっさとあの禿頭を丸め込んでこいモナ!
解ったかこのド低脳が!」

怒鳴り、受話器を叩きつける。
全く、頭の堅い爺だ。そんなんだから、頭の毛も出家するんだよ。

(秘那ー゚)「モナー会長、そろそろショボン大将とのお食事の時間ですが、今日はどのようなお召し物に致しましょうか?」

秘書が両手に違う色のスーツを下げてやって来た。

なめし革の椅子から立ち上がると、僕は壁一面ガラス張りの窓から、立ち並ぶ高層ビルの群れを眺める。
この街も、いずれは僕のものになる。

( ´∀`)「そうモナね…今日は黒にするモナ」

(秘那ー゚)「そうですか。私も今日は黒がいいと思ってたんですよ!」

上っ面だけの笑みを浮かべ、秘書が黒のスーツを差し出してくる。

(秘那ー゚)「帰ったら娘さんの誕生会ですから、早めに切り上げましょうね」

ふん。上っ面だろうが、精々笑みを絶やさない事だよお嬢さん。
お前を生かすも殺すも、僕次第なんだからな。
精一杯僕のご機嫌を取るがいい。



33: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:29:06.07 ID:q0YZSyUMO
庶民が高級だと口々に言うリムジン。
僕はその一番後ろの席に腰掛け、今までの僕の輝ける人生について振り返っていた。
モナー財閥の跡取り息子として生まれ、下降気味だった財閥の経営状態を自分で立て直した自らの手腕を輝けるエピソードの数々を。
邪神とかが現れてからは軍関係へ資金の融資を行い、今では一個大隊の指揮権を担う小将の階級すらもぎ取った。
全て金の力で手に入れた。金。金さえあれば何だってできるのだ。
その金の力で、これから僕はあの気に入らない若僧から、兵を搾り取りに行くのだ。
このご時世では、いつ命を無くしてもおかしくない。だが、金さえあればその命だって買える。私設軍隊を、ショボンのところの精鋭から抜き出して設営するのだ。


(秘那ー゚)「モナー会長、つきました」

━━━━━

( #´∀`)「何故ダメモナか!? これだけ金を積んでいるのに、これでも足りないと申しますかモナ!?」

和風料亭の個室で、僕は豪奢な料理の乗ったテーブルを拳で叩いた。
向かいに座るしょぼくれ顔のいけ好かない若僧は、素知らぬ顔で口元を拭っていやがる



34: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:30:22.50 ID:q0YZSyUMO
(´・ω・`)「そう言われましても、僕達も今は一兵でも欲しいところなんです。
モナー小将も人員不足の大変さはお分かりでおいででしょう。こればっかりはいくら金を積まれても首を縦に振る事はできません。申し訳ない」

クソ、舐めてやがる。大体、ノンキャリアでどうしてこんな二十代のガキが大将なんかやってやがるんだ。

( ;´∀`)「くっ…だからそこをなんとかお願いしたいと申しているんですモナ」

(´・ω・`)「あなたもしつこいお方だ。そんなに言うのでしたら、僕達のVIP基地にお越しになればいい。それなら、お互い兵力の増強になって良いでしょう」

そんな事を言っているんじゃない。こっちは私設軍隊が欲しいんだよ。
だが、そんな事は口が裂けても言えない。僕の社会的な評価に傷がつくからな。

クソ…ここは頷いておくしか無いか。

( ;´∀`)「そう…モナね。それならば、お互いの為になるモナね」

(´・ω・`)「そうでしょう。それではこのお話しはこれで決まりという事で宜しいでしょうか」

よくねぇよボケ。

( ;´∀`)「ああ、異存無いモナ」



35: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:31:52.62 ID:q0YZSyUMO
(´・ω・`)「では僕はそろそろおいとまさせていただきます。基地を空けて来てしまったのでね」

そう言って、ショボンが立ち上がる。
女将を呼ぶと、支払いを済ませ部屋から出ていこうとして、こっちを振り返った。

(´・ω・`)「それに、私設軍隊なんて設けたら、モナー小将の折角築いた世間体に傷がつくでしょうしね。では」

( ;´∀`)「!?」

そう言い残して、ショボンは料亭を去っていった。

なんなんだ、あの若僧…僕の内心を見透かしたような事を言いやがって。
ショボンは魔術が使えるという噂を聞いたことがあるが、まさかそれなのか?

( ;´∀`)「まさかな…」

しかし、いけ好かない奴だ。
腹立たしい。こんな時は、派手に金を使って遊ぶに限る。
そうだ、あのクラブに行くか。そうしよう。

( ´∀`)「おい運転手、今日はこれからクラブに行くモナ」

(秘;゚ー゚)「か、会長しかし今日は娘さんのお誕生日では…」

( #´∀`)「だまらっしゃい! そんなもんいつでもできるモナ! とにかく今はイライラするモナ! さっさと車を出すモナ!」

(秘;゚ー゚)「は、はいかしこまりました」



36: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:33:09.95 ID:q0YZSyUMO
むしゃくしゃした気持ちを忘れる為、僕はニーソク街で一番規模の大きいクラブ「dat」にやって来た。
店内の暗めの照明の中に、落ち着いたクラシック音楽が響いている。

( *´∀`)「さぁ飲め! 飲め! 今日の僕のポケットマネーに限りは無いぞモナ!」

ドンペリ、ボジョレー、ボルドー、ロマネコンティ。
名だたる高級ワインをテーブルの上に揃えた僕は、僕を囲うホステス達にその金の塊を惜しげもなく振る舞った。

(ホ1*'∀')「キャー! モナーさんお金持ちぃ♪」

( *´∀`)「どうだお前達、僕のモノになってみたいと思わないか!?」

ホステス達「なりたいでーす♪」

( *´∀`)「ふはははは!! そうだろうそうだろう! よぉしいい気分になってきた! 」

僕は一気にロマネコンティを煽ると、マイクを手にした。
十八番のVIP☆STARをフルコーラスで歌う。
最高だ。やはり、金を使うことほどすっきりする事は無い。
ご機嫌な気分でソファに戻ってくると、ホステスの一人が歓声を上げた。

(ホ2'ゝ')「小将さん歌上手ぅ〜♪私もっと聞きt」

( #´∀`)「やかましい! 小将って言うんじゃねぇ!!!!」



37: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:34:23.02 ID:q0YZSyUMO
小将。なんとムカつく響きか。
あのショボンよりも、僕が下であるという事を知らしめさせるような、そんなニュアンスが詰まったような肩書きだ。

( #´∀`)「クソ、酒が一気にまずくなりやがったモナ。あーあー止めだ止めだ! おい、帰るぞ」

(秘;゚-゚)「は、はい」

足を踏み鳴らしながら、クラブを後にする。
出口で、苛立ちまぎれにクラブの看板を蹴飛ばすと僕は冷や汗を浮かべた秘書が開けたリムジンのドアをくぐり乗り込む。

( #´∀`)「クソが…絶対僕の方が社会的に見て地位は上の筈なんだモナ…クソ! クソ! クソ! なのになんだこの苛立ちは!」

腹の虫が収まらず、リムジンの防弾ガラスを叩く。

( #´∀`)「おい運転手! 何ちんたら走ってるモナ! もっと飛ばすモナ!」

(運;=ゝ=)「は、はい只今!」

低脳運転手の焦った声と共に、リムジンは急加速した。

( #´∀`)「そうだ、それでいい。全く…どいつもこいつm」

その時、物凄い衝突音が響きリムジンに何かがぶつかった衝撃が走った。
急ブレーキに、タイヤがけたたましい叫び声を上げる。

(運;=ゝ=)「う、うわぁぁあ!?」

( ;´∀`)「な、なんだモナ!? 何が起こったモナ!?」



38: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:35:58.09 ID:q0YZSyUMO
(運;=ゝ=)「ひ、人を引きました!」

( ;´∀`)「な、なんだって! この馬鹿者が! 大変な事をしてくれたモナね!」

悪態をつきながら、僕は慌てて車を降りる。
リムジンの前にまわると、ヘッドライトに照らされてまだ幼い少女が倒れていた。
辺りは一面血の海。

( ;´∀`)「お、おい運転手! 早くこいつをトランクに…」

そう言いかけて、僕は言葉を無くした。
何故ならば、そこに倒れていたのはこんな所に居るはずの無い人物だったから。

( ;´∀`)「モナ…美」

川 ∀ )「……」

血を流して倒れているのは、間違いない……我が娘だった。

( ;´∀`)「なんで、ここに……」

よろよろとモナ美の傍らにしゃがみ込むと、僕はその手を、冷たくなりつつあるその手を握り締め力の限りに叫んだ。

( ´∀`,)「モナ美ぃぃぃぃぃぃ!!!!」



39: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:37:22.31 ID:q0YZSyUMO
━━━━━

すぐに救急車を呼び、僕達はニーソクで一番大きいニーソク大学病院にモナ美を連れて行った。

その間の僕の記憶はあまり鮮明には思い出せない。

ただ、ただ、モナ美の手を握って「何故」とか「どうして」とか意味の無い言葉を、掠れるような声で呟いていたと、秘書は言っていた。
大学病院に着いてもモナ美は直ぐには手術室に入れられなかった。
応急処置とか言って、二人くらいの医者が包帯を持ってうろうろしているだけだ。

( ;´∀`)「モナ美を、早くモナ美を手術するモナ!」

(医;@_@)「し、しかし今は立て続けに急患が入ってて、娘さんを手術できる医師の数が足りません」

( #´∀`,)「やかましい! 金ならいくらでもくれてやる! だからモナ美を一番に手術するモナ! さっさとモナ美を助けるモナ!
僕はモナー財閥の会長モナよ!?」

僕は医者の胸ぐらを掴むと、鬼気迫る表情で怒鳴った。

(医;@_@)「分かりました…そこまで言うなら娘さんの手術を最優先させましょう」

(医@_@)「おいお前達、そっちの手術は取り敢えず後回しだ! 先にこっちの患者のオペを」



40: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:38:56.64 ID:q0YZSyUMO
(看;*。*)「し、しかし先生、こっちは今手が離せません! 生きるか死ぬかの瀬戸際なんです!」

(医@_@)「こっちの患者はモナー財閥の会長の娘さんだ。後は言わなくてもわかるな?」

(看;*。*)「…わかりました」

手術室の一つが空いて、そこにモナ美は運ばれていった。

やっと手術が始まったのだ。

手術は何時間にも渡って続いた。その間僕は、祈る想いで廊下のベンチに固まっていた。

( ´∀`,)「どうか…どうかモナ美を…」

━━━━━

どれくらいたっだだろうか。手術室のドアが開き、医者が表情の無い顔を出した。

( ;´∀`)「モナ美は! モナ美は助かったのかモナ!?」

僕の言葉に、医者はただ頭を横に振るだけだった。
彼の力無くぶら下げた腕が、僕の行き場の無い怒りに火を点けた。

( #´∀`)「てめぇぇ!! さては手抜きしやがったな!! そうだろう!? そうなんだろう!?
だからモナ美は助からなかったんだモナ!! この低脳やぶ医者が!!」

(医# @_@)「私どもも最善の処置を尽くしました!! 助かる筈の患者の手術まで放り出して、あなたの娘さんの手術に何人もの医師をつぎ込みました!! それでも助からないものは助からないんです!!
これ以上あなたは私どもに何を望むのですか!??」



41: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:40:12.17 ID:q0YZSyUMO
( ;´∀`)「な…」

(医@_@)「あなたの娘さんは運ばれてきた時点で、もう助からない事はわかっていました。
それでもあなたがどうしても助けて欲しいからと言うことで、私どもは先に手術を開始していた他の患者を後回しにして、あなたの娘さんの手術を行ったんです」

医者の力無くぶら下げられた筈の腕に、心なしか強く握り締めたように青筋が浮いていた。

(医@_@)「このような事を言うのは責任の押し付けのようで嫌なのですが、あなたの娘さんの手術を行っている間に、助けられる筈だった患者さんが二人亡くなりました。
あなたの娘さんを手術するために後回しにされた患者さん達です」

( ;´∀`)「っ……!」

(看;*。*)「先生……」

(医@_@)「失礼、つい我を忘れてしまいました。娘さんの御冥福を、祈ります」

そう言い残すと、医者達は他の手術室に向かって小走りに駆けていった。

後には呆けたように立ち尽くした僕と、気まずげな顔をした秘書が残された。



42: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:42:01.24 ID:q0YZSyUMO
(秘;゚_゚)「会長……」

秘書が何か言っていたが、僕の耳には届かなかった。

ただ一つ言える事は、金の力でも買えない命があるという事だけだった。

━━━━━

あれから一年が過ぎた。小高く海を見下ろす岬に、モナ美の墓は立てられた。

( ´∀`)「モナ美、十八歳の誕生日おめでとう」

後から聞いた話しによると、あの晩モナ美は僕の帰りを待ちきれずに僕の秘書に電話をしたそうだ。
そして、僕がモナ美の誕生日を忘れてクラブで遊んでいる事を知って、いてもたってもいられずに夜の街へと飛び出して行ったのだという。

思えば、全ては僕が招いた悲劇なのだった。いや、悲劇というとあまりにも自己陶酔が過ぎるだろう。
僕の身勝手のせいで、モナ美ばかりか助かるはずの患者が二人も死んだのだ。

あの後死んだような目をして自室に帰った僕は、今まで感じた事のない程の罪悪感に苛まれた。
沸き起こるのは、涙と自責の念ばかり。
モナ美の葬式でも、僕はただ呆けたように喪主席に座っていただけだ。
その葬式はテレビでも報じられ、沢山の民衆が涙を流したと聞く。
医者も誰も、僕がモナ美の為に他の患者の手術を後回しにさせた事は言わなかったのだ。



43: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:43:15.84 ID:q0YZSyUMO
だがしかし、モナ美の巻き添えを食って死んだ二人の患者の事を思えば、自分だけがこのように世間の同情をかっている事が、本当に正しい事なのだろうかと疑問に思った。
いや、それではいけない。こんなのは間違っている。
そう思い、僕は亡くなった二人の患者の遺族達に非公式で面会し、真実を語った。
患者の遺族は、どう思ったのだろうか。
ただ、謝罪の途中で僕が流した涙を見て「誰だって自分の家族が一番大事なものだ」と言っていた。

その言葉が、逆に僕の胸を抉った。

これから、僕はどうやってこの罪を贖えばいいのだろう。
傷つけ、壊してしまったものはあまりにも多い。

今日は、モナ美がいなくなってしまってから初めてのあの子の誕生日だ。

僕は、胸のうちの迷いの答えを求めてモナ美の墓の前に立っている。

( ´∀`)「モナ美、本当にすまなかったモナ。謝っても、もうモナ美はここにはいないから、仕方ないモナけど」

モナ美の墓は、ただ黙って佇んでいるだけだ。



45: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/19(火) 14:44:22.13 ID:q0YZSyUMO
( ´∀`)「ダメな親モナね。自分で殺しておいて、それでもまだお前に贖罪の術を求めにやって来る」

( ´∀`)「僕は、どうしたらいいモナ。それが、わからないモナ」

( ´∀`)「一生懸命考えたモナ。それでも、僕には分からなかったモナ。だから、今はこれで勘弁して欲しいモナ」

そう言って、僕は墓の前に雛菊の花束を備える。申し訳程度の、小さな花束。

( ´∀`)「決して、僕は僕のこの罪を忘れないモナ。生きてる限り、贖罪の方法を考え続けるモナ。
もしかしたら、そんなものは見つからないかも知れない。
それでも、いつか見つかったら…」

そう言って、墓に背を向ける。

( ´∀`)「そしたら、またここに来るモナ。それまで、そこで待ってて欲しいモナ」

空は青く澄んでいて、初夏の訪れを僕にそっと教えてくれた。
僕は空から視線を落とすと、これから行く茨の道を見据えた。
終わりなど見えない。だけど、いつか必ず歩き終えてやる。

そう、胸に誓って。



( ´∀`)は金の亡者のようです

fin



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