('A`)はダークヒーローのようです

6: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:07:25.07 ID:YjasvjgtO
『民族学部四年の内藤ホライズンさん、民族学部四年の内藤ホライズンさん、至急学長室までお越し下さい。繰り返します。民族学部四年の…』

校内放送に自分の名前が流れている事に気付いたブーンは、隣を歩くツンの方を振り向いた。

( ゚ω゚ )「……」

ξ゚听)ξ「こっちみんな」

( ;^ω^)「ぼぼぼ僕の名前が呼ばれちまったお! さぁ一大事! 一体何が起こるのでしょうかお!?」

あたふたと両手を振り回しながら、器用に頭まで抱えてブーンは取り乱した。

ξ゚听)ξ「あんたまた何かやらかしたの?」

ツンは呆れながら、ブーンを見下げる。

( ;^ω^)「し、知らないお! 悪いことなんかこれっぽっちも…あっー!」

思い当たる節があるのか、ブーンが声を上げて硬直した。



8: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:09:33.92 ID:YjasvjgtO
ξ゚听)ξ「何よ、心辺りあるんじゃない」

( ;^ω^)「もしかしてもしかしたら、ツンのプリン食べちゃった事かも知れなi」

ξ#゚听)ξ「こらっ、ちょっと待ちなさい」

廊下に、ブーンの悲鳴と骨の折れる鈍い音が響き渡った。



( ^ω^)は居場所を守るようです



9: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:10:43.27 ID:YjasvjgtO
なんだかんだで、ツンも一緒に学長室に来る事になり、ブーン達は二人で学長室のソファの上に腰掛けていた。

/ ,'3「おう、ツンまで来おったか」

荒巻研究室の二人には馴染みの顔でもある、学長兼荒巻研究室教授の荒巻スカルチノフは、片眼鏡を外すと身を乗り出して口を開いた。

/ ,'3「内藤。お前さんを呼んだのは他でもない、考古学部の事についてじゃ」

( ^ω^)「考古学部、ですかお?」

オウム返しに聞く内藤に、荒巻は難しい顔をした。

/ ,'3「うむ。最近、我々民族学部の調査活動が、考古学部の調査の領域を侵しているという物言いがあったんじゃ」

ξ゚听)ξ「確かに、最近の私達は遺跡の発掘とか、古代文献の解読なんかまで行ってますもんね。よく考えたら、それって考古学部の活動の範囲です」

ツンが確かに、と頷く。

/ ,'3「それでじゃ、考古学部の連中が我々の活動を、もう少し自粛して欲しい、もしくは、調査活動の一部を自分達に譲れと言っておる」

( ;^ω^)「うーん…でも、考古学部の人達ってそんなに頻繁に調査活動行ってるとこ、見たことないお」



10: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:11:48.41 ID:YjasvjgtO
/ ,'3「そこなんじゃよ。わしらも、昔は古代文献の解読の依頼や、遺跡の発掘依頼なんかは結構頻繁にしていて、向こうもそれに応えてくれていたんじゃが…」

そこで溜め息をつくと、荒巻は言葉を次いだ。

/ ,'3「最近の考古学部の学生達は、やる気も無いくせに自己顕示欲だけは一人前でな。
民族学部がでしゃばるから、自分達のやる事が無くなったと言い出す始末じゃ」

ξ;゚听)ξ「そんな、勝手過ぎます!そんな物言いが許されるハズが…」

ツンが立ち上がらんばかりの勢いで抗議したが、荒巻はそれを制して口を開く。

/ ,'3「わしも、始めはそう思った。じゃが、運営会の方でも他の学部長から民族学部はでしゃばり過ぎだとの声が上がっている。挙げ句、民族学部を考古学部に合併させたらどうか、という意見も出た」

( ;^ω^)「それは理不尽過ぎるお!なんで、そこまで横暴なんだお!」

/ ,'3「おそらく、わしらの活動が気に食わんのじゃろう。わしらが研究している、『邪神伝説』があまりにも突飛過ぎてそんなものを学会で発表したら、この大学の名誉に傷がつくと思ったんじゃな」



11: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:12:58.08 ID:YjasvjgtO
ξ;゚听)ξ「それで、民族学部を潰すなんて…馬鹿げているわ。そんな事したら、それこそ全国一の規模を誇る民族学部の名で売っているうちの大学は、逆に憂き目を見るんじゃないんですか?」

ツンの最もらしい意見に、だが荒巻は頷かなかった。

/ ,'3「連中はそれも分かっている。分かった上で『民族学部』の名だけを残し、今の考古学部の最高責任者に、民族学部の全責任を委託し考古学部と合併させると言うておる」

( ;^ω^)ξ;゚听)ξ「「無理矢理な揉み消しですか(お)」」

ブーンとツンが異口同音に発した言葉に、荒巻は黙って頷いた。

( ;^ω^)「それじゃあ…僕達はもう自分の研究したい事を自由に研究できなくなるのかお?」

内藤がポツリと呟いた言葉に、部屋の中が静まり返る。
ツンは俯き、荒巻は何か思案に暮れるように顎に手を這わせていた。

/ ,'3「手が無いことも…ない」

荒巻が、重々しい口調で切り出した。

( ;^ω^)ξ;゚听)ξ「それは!?」

/ ,'3「今度の運営会議が開かれるまでに、民族学部と考古学部の合併に反対な学生達の声を集めて、運営会に提出するのじゃ。多くの学生達に反対されては、運営会も流石に押し切る事もできまい」



12: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:14:36.61 ID:YjasvjgtO
( ;^ω^)「ほ、本当ですかお!?」

/ ,'3「うむ…だが、過半数が集められなければ、連中も合併に踏み切るじゃろう。じゃから、かなりの数の反対票を集めなければならん。
だから、わしはお前さんをここに呼んだのじゃよ、内藤」

そう言って、荒巻はブーンの目をじっと見つめた。

( ;^ω^)「おっおっ。何で僕が?」

/ ,'3「お前さんは、自分では気付いてないじゃろうが、相当な数の学生達に人望がある」

ξ;゚听)ξ「ブーンが!?ないない!」

( ;^ω^)「そうですお!僕には人望なんて…ってツン何気にヒドスwww」

/ ,'3「そう謙遜するな。現に、去年一昨年と入学の面接で志望理由として上げられたものの中に、『先輩と一緒の学部で研究してみたい』という理由があった。
その先輩が、誰だかは言わずともわかるな?」

ブーンとツンは、顔を見合わせた。

( ;^ω^)「僕…ですかお?」

荒巻は頷き、また口を開いた。



13: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:15:53.54 ID:YjasvjgtO
/ ,'3「どうか一つ、民族学部の代表として合併に反対する生徒達から、署名を貰って来てくれんか。
そして、運営会議に出席して欲しい。
これは他の人物ではいかんのだ。合併なんかに無関心な生徒もいるだろう。だが、お前さんが『反対に一票を』と呼びかけるだけで、反対票をくれるかも知れん」

ブーンはしばらく押し黙るように俯くと、拳を握り締めた。

( ^ω^)「わかりましたお。どこまで出来るかわからないけど、僕も、この民族学部で自由な研究が出来なくなるのは絶対に嫌ですお」

ブーンは立ち上がり、拳を突き上げた。

( ^ω^)「ここは…この民族学部は、僕のかけがえの無い居場所なんだお!だから、僕が絶対に守ってみせるお!」

息巻くブーンを見つめながら、ツンは心中で焦っていた。

ξ////)ξ「(な、何よブーンの奴、あんなに熱くなっちゃってさ…なんか、カッコイいじゃない)」

/ ,'3「うむ、そのいきじゃ。しかし、ちと臭すぎる。その拳を下ろして、まずは落ち着いて欲しい」

( ^ω^)「フヒヒwwwサーセンwwwww」

こうしてブーンは、大学の生徒達から合併への反対票を貰う為に署名運動を行う事になった。



14: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:16:56.93 ID:YjasvjgtO
そんな訳でブーン達は校門の前で、道行く生徒達に合併反対の署名を募っていた。

( ^ω^)「民族学部と考古学部の合併に反対の方は、こちらに署名の方をお願いしますおー!」

ξ゚听)ξ「どうかご協力お願いします!」

学生1「何々、何の署名運動?」

( ^ω^)「えーと、今度の運営会議で、考古学部が民族学部を合併吸収してしまう事が、決まってしまうかも知れないんだお。だから、僕達民族学部はそれに反対する生徒の皆さんに署名をお願いしてるんだお」

学生1「へぇー、そうなんだぁ。オレ、文学部だけど、とりあえず反対しとくわ。これに名前書けばいいの?」

そう言って、その男子学生はブーンの持っているボードに、すらすらとペンを走らせた。

( ^ω^)「あ、有難うございますお!」

学生1「なぁに、大したこっちゃねぇよ。お前ら、あちこちで色んなもんみっけて来ては、面白おかしいことやってんじゃん。あれが見られなくなると思ったら、寂しいじゃんかよ」

そう言い残して、男子学生は去っていった。



15: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:18:22.49 ID:YjasvjgtO
( ^ω^)「署名運動にご協力くださいおー!」

学生2「あれ?内藤先輩何やってるんですかぁ?」

見るからに天然属性の女子学生が、ブーンに話し掛けて来た。

( ^ω^)「お!君は、確か高校の時(ry」

学生2「覚えてくれたんですか!?」

女子学生は、嬉しそうに瞳を輝かせて、身を乗り出した。

( ^ω^)「勿論だお!それで、(かくかくしこしこ)」

学生2「な、何だってー!!??(AA略)それは一大事!私も署名協力しますよ!」

女子学生は、そう言うやいなや、声を張り上げて署名を募った。

学生2「署名運動にご協力くださーい!」

その声に、大勢の生徒達が振り返る。



17: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:20:19.36 ID:YjasvjgtO
その声に、大勢の生徒達が振り返る。

学生3「何々ー?署名ー?オレも協力するぜー」

学生4「考古学部の腑抜け野郎共に、デカい面させられっかってんだよ!貸せ、署名してやる!」

学生5「ふむ。考古学部と民族学部の合併ですか。そんなものはナンセンスだ!僕も署名しましょう」

学生6「オレもオレも!」

学生7「私も私も!」

ガッチャン「クピプクピプ!」



18: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:21:20.63 ID:YjasvjgtO
今やブーンとツンの周りには、小山程もある人だかりが出来、皆が口々に合併反対の声を張り上げ、大合唱の様相を呈していた。

学生8「ブーンの頼みとあっちゃぁ、しょうがねぇなぁ」

学生9「ブーン先輩が反対するなら、私も反対ですっ!」

学生10「ブーン!ブーン!」

アラレチャン「キーン!キーン!」

( ^ω^)「(みんな…民族学部の為に…)」

ブーンは、今まで自分がどれだけの人望を得ていたのかを、この時初めて実感した。
思えば、朝の登校の際に挨拶を交わしただけの生徒まで、署名運動に協力してくれている。
ラーメンの引き換え券を上げた男子生徒が、なんとなく声を掛けただけの根暗そうな生徒が、頭を撫でてやった泣き虫の生徒が、口々に合併反対を叫んでいる。

ブーンは自分でも知らない内に、こんなにも大勢の生徒達に慕われていたのだ。
いや、慕われていたと言えば語弊があるかも知れない。

ブーンの何気ない行動の積み重ねが、ブーンに協力する生徒達の心の中にも、気付かない内に「ブーンに反対する理由」を無くさせていたのだ。



19: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:22:43.77 ID:YjasvjgtO
要は「嫌われていない」のだ。
ブーンの言動や行動の端々に、人を惹きつける力があるかと聞かれれば、ブーンも頷けない。

だが、逆に彼を嫌う人間もいない。

そして、その彼を嫌っていない生徒達が、彼から受けたであろう「恩」を無意識のうちに覚えていて、今その恩を返しているのだ。

( ^ω^)「みんな…有難うだお!僕、みんなから貰ったこの反対票を、絶対に運営会議で通してみせるお!」

気付けばブーンは、感極まって感謝の声を上げていた。

━━━━━

ξ゚听)ξ「初日でこんなに集まるなんて、凄いわね」

民族学部の研究室に戻ってきた二人は、自分たちが集めてきた反対の署名を見つめながら、感嘆の声を上げた。
夕日の差し込む書類に埋もれた研究室で、二人は反対票を入れてくれた学生の名前を読み上げながら、荒巻から貰って来た学生名簿のコピーにチェックを入れていった。
重複署名を避ける為、という名目で開始された作業だったが、二人共あまりの名前の数にその作業を諦めて、今はブーンが煎れたコーヒーを飲みながら一日の疲れに浸っていた。



20: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:23:47.06 ID:YjasvjgtO
ξ゚听)ξ「見てこれ、考古学部の人の署名もあるわよ」

ツンが、ぼんやりと眺めていた署名用紙から顔を上げて言った。

( ^ω-)「その場のノリとかじゃないかお?」

デスクに突っ伏し、半ばうたた寝の状態におちかけていたブーンが、のんびりとした声を上げた。

ξ゚听)ξ「そうかしら…まぁ、認めたくないけど、これもあんたの人望の賜物って事にしとくわね」

( -ω-)「そうだと…嬉しいお」

ツンはまた署名用紙に目を落とし、なんとは無しに捲っていく。

ξ゚听)ξ「ブーン?」

ドアが開いたような気がして、ふと、ブーンの名前を呼ぶ。返事は無い。
気になって、ブーンのデスクの方へ首を巡らしたツンは、彼が安らかな寝息を立てて眠っているのを発見した。

ξ゚听)ξ「……ふぅ、勝手に寝ちゃって。寝るなら寝るって言いなさいよね」

めちゃくちゃな理論をぼやきながらも、ツンは書類の山に埋もれていた毛布を引っ張り出すと、ブーンにそっと掛けた。

ξ゚听)ξ「今日は一日頑張ったものね…お疲れ様、ブーン」

誰にも聞こえないよう、そっと呟き、微笑む。

ξ゚听)ξ「こんなに気持ち良さそうに眠ってる…」



21: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:25:42.88 ID:YjasvjgtO
ブーンの寝顔を、まじまじと見つめるツン。

ξ゚听)ξ「なんて無防備なの。誰かが財布盗んだりするかも、とか考えないのかしら」

( -ω-)「むにゃ…ツン…」

自分の名前を呼ばれ、寝言だというのに背筋に緊張が走る。

( -ω-)「いつも…有難うだお…むにゃ」

ξ*゚听)ξ「べ、別にあたしは感謝される事なn」

寝言に憎まれ口を叩きながら、ふとブーンの唇に目が行くツン。
ある考えが、頭に浮かぶ。
きょろきょろと周囲を見回し、誰もいない事を確認し、ブーンが今だ夢の国にいる事も確認する。


ξ////)ξ「そ、それじゃあお礼に…」

自分の唇を、ブーンの唇へと近づける。
距離が近付くごとに、ブーンの息遣いが肌に直に感じられる。
くすぐったくも、愛おしい。
互いの出島に、掛け橋がかけられようとしていたその時、不意に研究室のドアが物凄い勢いで開け放たれた。

キバヤシ「話は全部聞かせてもらった!内藤、オレも微力ながら力を貸そうじゃあないか!」

ξ;゚听)ξ「ひゃっ!」

ドアを開けて入ってきたキバヤシは、内藤の唇に急降下爆撃をかけている途中のツンを見つけ、怪訝な顔をした。



22: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:26:50.01 ID:YjasvjgtO
キバヤシ「どうした、ツン。内藤の顔に、ノミ型宇宙人の基地でも発見したのか?」

ξ;゚听)ξ「え?あ、その、あんまり無防備に寝てるから、イタズラ描きでもしてやろうかと思ってさ」

こうして、寸でのところで怪盗ツンに盗まれかけていたブーンのファーストキスは、名探偵キバヤシの活躍により守られたのだった。

━━━━━

( ^ω^)「署名〜署名〜署名はいかがっすかお〜」

今日も今日とて、ブーンとツンは合併反対の署名運動を行っていた。
相変わらず、署名をしていく生徒の数は後を絶たず、次々とお祭りムードに任せては大勢の生徒達が、反対票を投じていく。
ただ一つ、昨日と違う事は…

キバヤシ「みんな、世紀の大事件だ!このままでは、民族学部が考古学部の連中に乗っ取られてしまう!」

ΩΩΩ「な、なんだってー!?」

キバヤシ「その野望を阻止する為、君たちの反対署名がなんとしても必要なんだ!どうか、我々MMRに力を貸してくれ!」

学生11「大変だ、このままじゃ学食のスパゲティ、食べられなくなっちまうってよ!」

学生12「何だってー!?」

学生11「ここに署名すれば、何とかなるみたいだぞ!」

学生13「ねーよwwwだが、署名しよう!」



23: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:29:06.72 ID:YjasvjgtO
学生14「どんだけwwwオレも署名させて頂こうか」

そう、心強い味方、キバヤシの登場だ。
彼の少しエキセントリックでシュールな署名活動により、何かの特設イベントと勘違いした生徒達が、やはりその場のノリで次々と署名用紙に名前を書いていく。
ある者は学食のスパゲティの為。
またある者はタバコの減税の為。
本当にこれでいいのかと頭を捻るところだが、キバヤシは、

キバヤシ「どんな手を使おうが…最終的に勝てばよかろう!なのだ〜!」

と言って気にしなかった。

ξ゚听)ξ「まぁ、いっか」

怒り出すかと思われたツンも、気にせずに署名活動を行っている。実際、キバヤシが嘘をついているわけでも、不正を行っているわけでもないのだ。

ξ;゚听)ξ「(それに、昨日の事言いふらされたらまずいしね)」

ツンは、キバヤシに昨日ツンの唇盗難の現行犯を抑えられたと、思い込んでいるようだ。

(σ^ω^)σ「おっおっ。順調に反対署名ゲッツ」

ブーンが古典的なギャグを飛ばしながら、ツンの元へ駆け寄る。

( ^ω^)「そろそろお昼にするお。一応、単位とかもあるから、午後の講義出て今日は取りあえずおしまいということで」



24: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:30:13.71 ID:YjasvjgtO
ξ゚听)ξ「そうね。このまま行けば、結構簡単に反対票が通りそうだし」

ツンも賛成し、二人は学食に向かうことにした。

キバヤシ「みんな、聞いてくれ!オレたちは、とんでもない勘違いをしていたようだ!」

後ろから、キバヤシの元気な声が響く。

━━━━━

お昼時の学食は、予想通りかなりの混みようだった。
ブーンが15分並んで、やっと二人分のスパゲティペペロンチーノを手に入れ、ツンの待つ席に戻って来る。

( ^ω^)「おっまたし〜だお」

ブーンはペペロンチーノをテーブルの上に置くと、ツンの隣に腰掛ける。

ξ゚听)ξ「本当、どれだけ待たせれば気が済むのよ。待ってる間に、コンビニで済ませとけばよかったわ」

そう毒づきながらも、ツンはペペロンチーノの代金をブーンに渡し、フォークを手に取った。
二口、三口、口に含み、至福の笑みを浮かべる。

ξ゚听)ξ「やっぱりペペロンチーノは学食のに限るわね」

( ^ω^)「……」

ブーンは、敢えてツンには突っ込まない。逆らえばどうなるか、その身にしっかりと刻み込まれているからだ。

ξ*゚μ゚)ξ「ハムッ、ハフハフ、ハムッ!」



25: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:31:30.51 ID:YjasvjgtO
( ;^ω^)「そ、そんなに慌てて食べなくても…(きめぇwwwなんて、口が裂けても言えないお…)」

ξ#゚μ゚)ξ「うっはい…ハムッ…わねぇ、いいはら…ハフハフ…あんふぁも、…ハムッ…早ふ食へなふぁいよ」

ツンがパスタを咀嚼しながら口を開くのを見て、ブーンはいたたまれない気持ちになったが、ツンに促され黙ってフォークを取る。

( ^ω^)「(よっぽどお腹が減ってたんだお…)」

ξ*゚听)ξ「あぁ、美味しかった♪」

ツンはもう食べ終わったようで、丁寧に口の周りをナプキンで拭いている。

ξ゚听)ξ「あんた食べるの遅いわよ」

自分だけ食べ終わったのをいいことに、ツンは爪楊枝を取り歯に詰まったカスをほじくり出す。

( ;^ω^)「ご、ごめんだお(ツンって、変なところでオヤジ臭いお…)」

ξ゚〆゚)ξ「まったく、あんたは何につけてもワンテンポ遅いわね…シィーシィー」

爪楊枝を繰りながら、ツンはブーンから目を逸らすとぼんやりと窓の外を眺めた。
外には色付いた楓の葉が木枯らしに舞い、秋が深まった事をそれとなく伝えている。



27: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:32:52.12 ID:YjasvjgtO
「で、例の反対票の件だけど…」

ふと、後ろの方で交わされる会話に気になる単語を発見し、ツンは耳をそばだてた。

「あぁ、大丈夫。ちゃんと回収して来たよ。誰も近づかない場所に、大切に保管してる。馬鹿な奴ら…オレが忍び込んだ事に、気付かねぇでやんの」

ツンの背筋を、冷たいものが走った。

「しっ!馬鹿、聞こえるだろ…あっち行くぞ」

嫌な予感がする。会話の主を確かめなければ。そう思い、ツンはとっさに身を捻る。

ξ;゚听)ξ「ちょっとあんたt」

だが、ツンが振り返った先にはカウンターに並ぶ学生の列が、蛇のようにうねるだけだった。

ξ;゚听)ξ「なん…なのよ」

( ^ω^)「どうしたんだお、ツン。玉木宏でもいたかお?」

ブーンが、フォークを止めてツンの方を向く。



28: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:33:39.81 ID:YjasvjgtO
ξ;゚听)ξ「え?あ、いや、別に…」

ツンの不安は、消える事は無かった。

さっきの会話…まさか。

ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと私研究室に忘れ物しちゃった!今から取ってくるから、先に講義出てて」

そう言い残すと、ツンは内心の動揺と不安を抱えながら、研究室へと走っていった。

( ;^ω^)「あんなに慌てて…生理かお?」



29: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:34:57.81 ID:YjasvjgtO
ξ;゚听)ξ「やっぱり…無い…」

昨日、反対署名を閉まった引き出しを開けて、その署名用紙の束がそこから忽然と無くなっている事に気付いたツンは愕然とした。
自分の記憶違いかとも疑い、研究室中をひっくり返したが、やはり署名用紙はどこにも無かった。
すぐに、何者かに盗まれたのだと考えが至った。
先程学食で聞いた会話は、やはりツン達の事を指していたのだ。

ξ;゚听)ξ「どうしよう…」

この事を、ブーンに言うべきだろうか。
そう思い、ツンはそこである事に気付いて、その考えを取り消した。

ξ;゚听)ξ「…まさか」

自分の中でまとまりつつある、恐ろしい考えにツンはブーンにはこの事を黙っておこうと決めた。
自分の考えに、間違いは無いだろう。だが、これをブーンに言うのは絶対に避けるべきだ。

ξ;゚听)ξ「私が、署名用紙を無くしたって事にしとこう」

そう、心に誓い、ツンは研究室を後にした。
署名用紙が無くなった今、無くなった分を取り戻す為にも、今は全力でまだ署名を貰っていない生徒から反対署名を貰わなければ。



30: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:36:04.01 ID:YjasvjgtO
( ^ω^)「…ツン、結局午後の講義には来なかったお」

空いたままの隣の席を見つめながら、彼は寂しげに溜め息をついた。
終講のベルが鳴り、生徒達が退出する姿を見やり、自分も重い腰を上げる。
そのまま大講義堂を後にし、廊下を研究室へと歩く。
まだいるとは限らないが、他に当てのないブーンは真っ直ぐに自分たちの研究室を目指した。
研究室のドアを開け、中を覗いたが、やはりツンの姿は無い。

( ^ω^)「メール、してみるかお」

単文で、今どこで何をしているのかを尋ねる内容のメールを送信する。
いつもならすぐに帰ってくる返事が、今日は遅い。
違和感を感じつつも、ブーンはツンも忙しいんだろうと思い、そのままデスクに腰を下ろした。
何をするでもなく、ただぼんやりと窓の外を眺める。

( ^ω^)「楓の葉っぱ、綺麗だお」

舞い散る楓の落ち葉が、ブーンの視界をよぎっては消える。
その楓の葉っぱの陰から、彼の探し人の姿が目に飛び込んできた。

( ^ω^)「ツン!」

慌てる必要があるだろうか。しかしブーンは、何となく彼の胸中にわだかまっていた不安にせき立てられて、研究室を駆け足で出ていった。



31: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:37:08.50 ID:YjasvjgtO
( ^ω^)「ツン!何やってたんだお!結局講義に来なかったから、心配したお!」

署名用紙の束を片手に、声を張り上げるツンに駆け寄り、ブーンは口を開いた。

ξ;゚听)ξ「ブ、ブーン。見てわからない?署名運動よ」

そう言って、またツンは声を張り上げる。
心無しか、ブーンの姿を見て動揺しているように見えた。

( ;^ω^)「今日の署名活動は、もうおしまいにしようって言ったんだけどお」

ξ;゚听)ξ「べ、別にいいじゃない。私がやりたいからやるの。一票でも多ければ、有利でしょ?」

( ;^ω^)「それはそうだおけど…」

やはりおかしい。ブーンは、ツンと長い付き合いだからわかる。
こういう時のツンは、何か隠し事をしているのだ。

( ^ω^)「ツン…何か、僕に隠してる事でもあるのかお?」

途端、ツンの表情が硬直した。
間違いない、ツンはブーンに隠し事をしているのだ。

ξ;゚听)ξ「べべ、別に何も。あんたこそ、私のプリン食べt」

( ^ω^)「正直に、言うお」

ブーンの目つきは、いつもより真剣味を帯びている。
ツンは、ブーンと付き合いが長い。
こういう時のブーンは既に確信を得ているのだ。



32: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:38:35.54 ID:YjasvjgtO
ここは、諦めるしか無いだろう。

ξ )ξ「うん…実は、ね……私、昨日集めた反対票の署名用紙、無くしちゃったみたいなんだ」

ツンはうなだれるように俯く。
声が、震えていた。

( ^ω^)「…」

ξ )ξ「…めんね…」

( ^ω^)「ツン…」

ξ;;)ξ「ごめんね…ごめんね!折角ブーンが頑張って集めた署名なのに…それを私がドジなばっかりに…」

ツンは、自分でも知らない内に、呆れるぐらいの量の涙を流していた。
自分が無くした訳ではない。それでも、自分の不注意で盗まれたも同然だった。
それを思うと、ブーンに申し訳なくて、どうしようもなくて、涙が溢れて来てしまうのだ。



33: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:42:08.83 ID:YjasvjgtO
( ^ω^)「ツンは…悪くないお…きっと、探せば見つかるお。だから…」

ブーンの優しい声が、ツンの胸を抉る。
違う。本当は違う。それでも、真実を言う訳にはいかなくて。

ξ;;)ξ「探したわ!部屋中探したけど、見つからなかったのよぉ!」

また、嘘をつく。いや、本当に部屋中探した。だけれども。違うのだ。

( ^ω^)「それじゃあもう一度、二人で探して…」

ξ;;)ξ「だから無いんだってばぁぁ!!!」



34: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:43:21.15 ID:YjasvjgtO
叫び、ツンは駆け出す。ツン自身、どこに行くつもりなのかは分からなかった。
それでも、ブーンにこれ以上嘘をつきたくなくて、ツンは無我夢中で走った。
がむしゃらに、行く先もわからぬままに。

ξ;;)ξ「はぁ、はぁ、はぁ…グスッ」

やがて息が切れ、膝に手をつき立ち止まると、ツンはその場にへたり込む。
そこは、今では誰も使う事の無くなった廃棟だった。
無意識のうちに、人のいない方へと走っていたのだろうか。
ツンは、周囲に誰もいない事を確かめると、大声を出して腹の底から泣きじゃくった。

ξ;;)ξ「ワアァァァァァアン!ウェ…ァァァン!」

涙が止まらなかった。どうしようもなく、後から後から溢れる涙が、ツンのスカートを黒く染める。

やがて、その涙がツンの膝に小さなため池を作ったが、それを慰める者は誰もいなかった。

━━━━━

ツンが走り去ってから、ブーンは呆けたようにその場に立ち尽くしていた。

( ;^ω^)「追い掛ければ、良かったお…」

とっさの事で、ブーンの足は動かなかった。

( ;^ω^)「はっ!今でも間に合うかお」

行って、慰めてやらなくては。
遅ればせながらも、ブーンはツンが駆けて行った方向へと走り出した。



36: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:44:41.20 ID:YjasvjgtO
( ;^ω^)「ツン…どこ行ったんだお」

大学のいたる所を走り回ってツンの姿を探したが、結局ブーンは彼女を見つけられなかった。

( ^ω^)「僕が、もう少し気の利いた事が言えれば…」

自分の至らなさを後悔しながら、とぼとぼとした足取りでブーンは研究室へと向かう。
一応メールも電話もしてみたが、やはりツンからの返事は無い。
研究室の扉を開けて、自分のデスクに着く。部屋には誰もいない。

( ^ω^)「署名用紙、探してみるかお…」

ブーンの独り言は、虚しく部屋に響いた。

━━━━━

学生達「はぁ?署名?こないだしたじゃん」

( ;^ω^)「も、もう一度、お願いしたいんだお」

学生達「面倒くせぇよ。大体、あんなんノリだし」

( ;^ω^)「そこをなんとか…」

学生達「しつけぇな!しないもんはしないんだよ!行こうぜ…」

あれから三日。ブーンは、無くなった署名用紙の分を取り戻そうと、署名して貰った生徒達の間を回っては、もう一度署名してくれるように頭を下げていた。



37: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:46:00.12 ID:YjasvjgtO
だが、やはりというかその場の雰囲気やノリで署名した生徒達が大多数のようで、その成果は芳しくなかった。

( ;^ω^)「はぁ…こうなったら、今ある反対署名だけを提出するしか無いのかお」

しかし、残った反対署名など微々たるものでしか無い。
これだけでは、運営会議で通るとは到底思えなかった。

( ^ω^)「ツン…」

そして、ツンとは未だに連絡が取れていない。
どうやら大学に顔を出していないようだ。
一体、何をしているのだろうか。明日はいよいよ運営会議だ。
このまま彼女は、姿を表さないままのつもりなのだろうか。

( ^ω^)「…取り敢えず、今あるだけでも荒巻教授に提出しに行くお」

ブーンは、重い足取りで学長室へと向かった。

━━━━━

/ ,'3「…なる程。そういう訳か」

荒巻は、ブーンから渡された薄い署名用紙の束を受け取ると、ため息をついた。

( ^ω^)「すいませんお…僕が、不甲斐ないばかりに…」

/ ,'3「いや、いいんじゃ。それよりも、ツンの行方が気になる。運営会議には、学部の代表としてお前さんと彼女にも出て貰おうと思ってたんじゃが…」



39: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:47:28.26 ID:YjasvjgtO
( ^ω^)「……」

/ ,'3「明日ツンが来なかったら、お前さんだけでも出席してくれるかの?」

荒巻が、窓の外を向いたままブーンに言った。

( ^ω^)「…はい、ですお」

ブーンの言葉は、消え入りそうな程に小さかった。



40: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:48:15.52 ID:YjasvjgtO
━━運営会議当日。
会議室の円卓についたブーンは、空いたままになっている隣の席を見つめた。

( ^ω^)「ツン…」

なんだか、この間の講義の時みたいだなと思いながら、ブーンは視線を上げる。

議長「それでは次に、民族学部と考古学部の合併についてだが…これに反対する者は?」

手を挙げる者は、荒巻教授だけだった。

議長「それでは…」

議長が言いかけた断頭台の一言を、ブーンは遮るように挙手して立ち上がった。

( ^ω^)「待って下さいお。合併に反対する学生達の署名を、ここに持ってきましたお。これを見て下さいお」

議長の元へ進み、大分薄くなってしまった署名用紙の束を、提出する。

議長「ふむ…」

議長は、薄い笑いを口元に浮かべながら用紙の束をペラペラと捲っていく。



43: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:49:28.22 ID:YjasvjgtO
議長「234人か。過半数にも満たないな。これでは、反対は認められない」

そう言い捨てて、用紙の束を机に放り出す。

議長「民族学部と考古学部を合併し、以降は民族学部のみとする。それに伴い、学部長も荒巻教授から…」

「 ち ょ っ と 待 っ て 下 さ い 」

会議室の扉を開けて、張りのある声が響いた。

( ^ω^)「…ツン!?」

ブーンは我が目を疑った。

ξ゚听)ξ「そこにあるのが、全部ではありません。ここに、まだ反対票はあります」

なんと、今まで姿をくらまし連絡も着かなかったツンが、両脇に署名用紙の分厚い束を抱えて、扉の前に仁王立ちしていたのだ。

議長「…なんだと?」

ツカツカと高鳴る靴音も雄々しく、ツンは議長の前まで詰め寄ると、その両脇に抱えた百科事典程もある分厚い署名用紙の束を、大きな音を立てて議長の目の前に置いた。

ξ゚听)ξ「総計1246人。これだけの学生達が、民族学部と考古学部の合併に反対しています。それでも、合併なされるおつもりですか?」

淡々と、だが力強くツンは言い放った。
議長は、ただ、ただ、歯を噛み締めて悔しげな表情をしているだけだ。

ブーン達の自由が、認められた瞬間であった。



44: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:50:55.78 ID:YjasvjgtO
━━夕日の差し込む研究室。
楓の葉が窓外に舞うのを眺めながら、ブーンとツンは、珍しくツンが淹れた勝利のコーヒーを堪能していた。

( ^ω^)「少し、甘過ぎるお」

ξ゚听)ξ「私は甘いのが好きなの」

ブーンはカップを置くと、椅子の背にもたれながら、気になっていた事を口にした。

( ^ω^)「それにしても、今までどこで何してたんだお?」

ブーンの問いかけに、ツンもカップを置くと静かに口を開いた。

ξ゚听)ξ「ちょっと、探し物をね」

小さく呟き、またカップに口をつける。

( ^ω^)「あの、署名用紙の事かお?」

ブーンの言葉にツンは頷くと、盗まれた署名用紙を見つけ出した時の事を思い浮かべる。



45: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:52:38.37 ID:YjasvjgtO
━━ブーンの前から駆け出し、廃棟の前で泣いていたツンはふと、学食で聞いたあの会話を思い出した。

「あぁ、大丈夫。ちゃんと回収して来たよ。誰も近づかない場所に、大切に保管してる」

ξ;;)ξ「誰も、近づかない…場所」

目の前の廃棟を眺める。

ξ゚听)ξ「もしかして…」

わらにも縋る思いで、ツンは目の前の廃棟の中へと足を踏み入れて行った。



47: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:53:45.89 ID:YjasvjgtO
それから、ツンは虱潰しに廃棟の中を署名用紙を探して歩き続けた。
しかし廃棟と言えど、かなりの広さがある。探索には一日では足りなかった。
腹が空いたら、一度引き返してコンビニで弁当を買い、また廃棟の中を探索する。
昼も夜も関係なしに、とにかく署名用紙を探し続け、三日目にして遂にツンは廃棟の壁と壁の隙間から覗く、署名用紙の束を発見したのだった。
しかし、本当に幸運だった。焼かれでもしていたら、どうしようも無かったのだから。
その点は、あの男にも感謝しなければならないかもしれない。

ξ゚听)ξ「キバヤシ…」

署名用紙を盗み出し、廃棟に隠した犯人はあのキバヤシだった。
それは、あの時学食での会話を偶然耳にした時に分かっていた。
会話を交わすその片方の声に、ツンはその声がキバヤシである事を悟ったのだった。
ツンとブーンが、研究室で反対票を数えていたあの時、ドアが開いたような気がして、ツンはブーンの方を振り向いた。
その時、キバヤシは既に研究室に侵入していたのだ。
そしてツンに見つからないように署名用紙を盗み出すと、部屋を出て一旦署名用紙を別の場所に隠す。
そうしてから、何食わぬ顔でまた研究室に入って来る。



48: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:54:52.45 ID:YjasvjgtO
だが、そんな事をブーンに言うわけにはいかない。彼は、キバヤシの事を仲間として信じきっている。
真実を言えば、ブーンが傷つくのは目に見えていた。だから、彼には言うわけにはいかなかった。だから、何故キバヤシがそのような事をしたのか気になったツンは、署名用紙を見つけ出してから真っ先に、キバヤシの元へと事の真相を聞き出しに行った。
ツンがキバヤシに問いただすと、キバヤシは涙ながらに考古学部の連中に脅されていたのだと白状した。
もし、合併が可決されなければその時はリンチだと。だからお前が署名用紙を盗み出して、燃やせと。
だが、キバヤシは完全にブーン達を裏切る事は出来なかった。
だから署名用紙を燃やさずに隠し、学食で食事をとっていたツン達の後ろで、わざと聞こえるような声で喋ったのだ。

( ^ω^)「ツン?」

ブーンの声で、現実に引き戻される。

ξ゚听)ξ「え?何?」

ブーンは、いつもの締まらない顔でツンをただ見つめている。

ξ*゚听)ξ「な、何よ」

( ^ω^)「有難う…だお」

ブーンはただ一言そう言うと、飲み終わったコーヒーのカップを流しに持っていくべく、席を立った。



49: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:56:41.71 ID:YjasvjgtO
ツンは、その後ろ姿を見つめながら、やはり彼には真実を語らなくて正解だったな、と思った。

ξ゚听)ξ「ブーン…」

だからそっと、彼に聞こえないように囁く。

ξ゚听)ξ「あんたは、みんなの人気者ね…」

ちょっと灼けちゃうな、と心の中で付け加えて。

( ^ω^)「さぁて、自由を勝ち取った事だし、これから早速調査に向かうお!ツンも来るお!」

ブーンは、相変わらず突拍子も無い事を口走る。

ξ゚听)ξ「ちょっと待ちなさいよ!今何時だと…」

( ^ω^)「おっおっ!青春は待ってくれないお!ブーン!」



51: ◆/ckL6OYvQw :2007/06/25(月) 02:58:01.37 ID:YjasvjgtO
両手を広げながら研究室を駆け出していくブーンを追い、ツンも立ち上がる。

一つため息をつき、それでもこの奇妙な青春が奪われなかった事が、たまらなく嬉しくて。

ξ゚听)ξ「待ちなさいよ!ブーン!」

ツンは軽い足取りで、ブーンの後を追って駆け出した。



( ^ω^)は居場所を守るようです

-fin-



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