( ^ω^)ブーンと('A`)は走りに生きるようです
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 22:06:12.25 ID:2KKyPbW/O
- エピローグ
ブーン
ピピピピピピピピピ―――
カチッ、カチッ、カチッ、カチッ………
( ´ω`)「ふお〜〜ん」
朝。
僕は枕元のデジタル時計を見る。
6時02分
いつもより早い目覚めだ。
でも、今日はこの時間じゃないといけない。
ベットの上掛けを持ち上げ、ゆっくりと窓へと向かう。
カーテンを開けると、そこには雲一つない空が広がる。
快晴だ。
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 22:09:00.19 ID:2KKyPbW/O
( ^ω^)「いい、天気だお」
晴舞台にはふさわしい気候。
僕は、昔のことを懐かしく思いながら、鍵を持って部屋を出る。
食堂に着くと、既に生徒はいすに座って待っていた。
( ・∀・)「おはようございます!」
( ^ω^)「おはようだお」
僕は軽く挨拶を返し、いすに座る。
2人だけの朝食。
できればもっと連れてきたかったんだけどな。
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 22:10:47.06 ID:2KKyPbW/O
僕の陸上人生は、高校2年生がピークだった。
3年の時は、インハイに行くことはできたものの、予選敗退。
悔しくて大学に行っても陸上を続けたけど、タイムは一向に上がらない。
そして、大学2年の夏に部活をやめた。
僕のベストは3分45秒止まりだ。
この記録は、未だ県内じゃ塗り替えられることはない。
そして、彼の記録も。
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 22:12:37.55 ID:2KKyPbW/O
僕は、それまで自分が何になりたいかなんて考えたことが無かったけれど、
陸上を離れた大学生活で見つけることができた。
自分の愛した陸上を教え、自分のすべてを託すことができる仕事。
教師だ。
僕は必死に勉強し、一昨年に見事教員試験に合格した。
今は県内の高校へ務め、日々生徒たちを指導している。
そして
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 22:14:09.82 ID:2KKyPbW/O
( ・∀・)「今日は体が軽いです。いけそうですね」
今日はこいつの全国デビューの日だ。
貰良(もらら)という一年生なんだけど、こいつがまたすごい。
4月に新入部員として陸上を始め、とんでもないスピードでここまで上り詰めた強者だ。
種目は1500M。
なんでも、県記録保持者の僕を超えたい、だとか。
うん、楽しみだねこれは。
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 22:15:11.81 ID:2KKyPbW/O
この子はいずれ僕の記録なんて易々と超えていく。
重要な人材だ。
じっくり、そして大事に育てていきたい。
( ^ω^)「よしっ、じゃあ7時30分にはここを出るから、ちゃんと準備しとくお」
( ・∀・)「はいっ、わかりました!」
僕は朝食を食べおわり、貰良に予定を伝えて部屋に戻る。
さぁ、戦いの場へ行こうか。
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 22:17:02.93 ID:2KKyPbW/O
- ドクオ
蝉の鳴く声。
そしてトラック独特の匂い。
ここにいると、いつかの夏を思い出しちまう。
現在時刻、14時30分
俺は競技場のスタンドにいた。
('A`)「あと、30分か」
1500の決勝まであと30分。
教え子は、もう召集を受けているころ。
教え子。つまり、俺は教師になったわけだ。
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 22:18:01.35 ID:2KKyPbW/O
俺は、高校3年の春に大ケガをした。
体育のマット運動の時、着地をミスって。
ケガは、膝の前十字靱帯断裂の重傷。
即手術をして歩けるようにはなったが、医者からは激しい運動はもうできないと言われた。
俺は絶望した。
最初こそもう何もする気が起きなくて、いっそのこと死んじまおうかとも考えた。
でもそんな俺を見兼ねてか、兄貴はある日俺を部屋に呼んだ。
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 22:20:17.66 ID:2KKyPbW/O
(#,,゚Д゚)「お前、それで人生終わったと思ってんのか?
そんなんでいいんか?
お前にはまだできることがあんだろーが!」
そして、俺はその日兄貴から殴られた。
何十回も殴られた。
今でも兄貴のあの真剣な顔は忘れねぇ。
その後は、しばらくまたやる気のない毎日を送ってたが、
俺はだんだんと考え始める。
俺に何をすればいいのか、俺には何ができるのか。
毎日考えたさ。
そしてある日、それがわかったんだ。
俺にできること、それは俺がこれまで陸上で学んだこと、感じたこと、
そのすべてを人に伝えることだって。
それからは勉強浸けの毎日。
俺はもともと頭が悪かったから、死ぬ気で勉強した。
それで今、この場所に顧問としていることができている。
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 22:22:03.55 ID:2KKyPbW/O
うちの学校の選手は、一人だけインハイ出場権を獲得した。
今年、バスケ部から転部してきたやつで、1500をやりたいって言ってきた。
それでいざ走らせてみると、これが速くなるわなるわ。
あっという間にこの舞台よ。
「ドクオ、久しぶりだお」
俺がぼーっとしながら1500の開始を待っていると、後ろから俺を呼ぶやつがいる。
語尾に「お」を付ける独特のしゃべり方。
忘れるわけが無い。
('A`)「よっ、久しぶりだな、内藤」
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 22:23:16.65 ID:2KKyPbW/O
俺が後ろを振り向かずにあいさつをしたら、内藤は俺の横へ座ってきた。
( ^ω^)「ドクオ、教師になったんだってお?
クーから聞いたお!
一言連絡入れてくれればいいのにおー」
('A`)「はんっ、お前こそ。
お前の方が後だったんだろ?
ツンちゃんから聞いたぜ?」
俺たちは笑いながら会話をする。
内藤とは、ずいぶんと会ってなかった。
最後に会ったのは高3の時だっけか。
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 22:25:34.69 ID:2KKyPbW/O
まぁ、俺が県外の高校に赴任したってのもある。
でも、やっぱりお互い、自分の傷に触れてもらいたくなかったから、それが裏にはあったんだろう。
タッタラタッタ〜タッタラタッタ〜♪
「次は、男子1500Mの決勝です――――」
ファンファーレの後、お決まりのアナウンスが流れる。
( ^ω^)「うちのは1500に出るんだお」
('A`)「奇遇だな。うちの選手も1500で来ているんだ」
たった4ヵ月で、ここまで上り詰めた荒巻学園の貰良。
知らないわけがない。
それに対抗するうちの診名(みるな)ってとこか。
- 60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 22:26:56.57 ID:2KKyPbW/O
( ^ω^)「うちのとこの選手は、なんか現役時代の僕に似てるお」
内藤がどこか悲しそうな目をしながら話す。
('A`)「あぁ、俺のだって昔を思い出させてくれるぜ」
実際、診名は高校時代の俺にそっくりだ。
他の部から来て、バカで、喧嘩っぱやくて………
だから、俺はこいつに昔の自分を重ね合わせている。
今度こそ、勝ってやるんだ、ってな。
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 22:29:19.87 ID:2KKyPbW/O
( ^ω^)「ドクオ、今日はいいレースになりそうだお」
('A`)「あぁ、そうだな。今日は熱くなりそうだぜ」
俺のアスリートとしての血が騒ぐ。
どうにも興奮は抑えられねぇな。
( ^ω^)「ドクオッ」
('A`)「わかってるよ」
言いたいことは決まってる。
きっと内藤も同じだ。
( ^ω^)「さぁ、勝負だ(お)!!」('A` )
スタートの号砲が鳴る。
どうやら、俺たちのレースはまだ終わってねぇみてぇだ。
( ^ω^)ブーンと('A`)ドクオは走りに生きるようです
〜終〜
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