( ^ω^)ブーンと('A`)は走りに生きるようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:05:41.85 ID:BD7sB6COO



(,,゚Д゚)yー~~~「ふぅー………」

6月2日、午後1時。俺は昼飯のタラコスパゲッティーを食いおわり、たばこをふかしていた。

(,,゚Д゚)yー~~~「暑いな。」

今の室温29度。まだ六月なのにこの暑さかよ。

俺は部屋の角にあった扇風機のスイッチをつける。扇風機の造りだす、無機質な風が俺の部屋に広がる。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:07:36.11 ID:BD7sB6COO
(,,゚Д゚)「暇だ。」

今日の仕事は夜の時間帯からだからまだ時間がある。まぁ大抵は夜なんだが。

ん?いやいや、ホストとかじゃねえよ。何て言えばいいかな…簡単にいえば地域の平和を守るお仕事さ。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:09:34.78 ID:BD7sB6COO
俺は一階に降りて冷蔵庫から紙パックのいちご牛乳と、テーブルに置いてあった新聞を持ってまた部屋に戻る。

(*,,゚Д゚)「いちご牛乳うめぇ……」

いちご牛乳をチューチュー飲みながら俺は新聞をめくり始めた。

お目当てはスポーツ欄。そこには長身の男と苦しそうなのか笑ってんだかよくわからない顔をした2人の写真があった。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:10:30.18 ID:BD7sB6COO
そこにはこう書いてある。
『欝田、内藤共に大会新。Vは欝田』

(,,゚Д゚)「大会新、ねぇ……」

(,,゚Д゚)「ついにあいつの記録も超されちまったんか」

そういやぁ、もうあれから4年たったんだな。ショボンが大会記録をつくってから。

(,,゚Д゚)「早いもんだぜ」
そう言って俺は昔のことを思い出し始めた。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:12:15.50 ID:BD7sB6COO
〜4年前〜


今日は高校生活最後の県総体だ。俺は今〇〇市営陸上競技場にいる。でもおそらく、このインターハイ路線が3年間の集大成になるだろう。大学にまで行って続ける気はねえな。

俺の種目は1500M。今日までの自己ベストは4分00秒だ。だけど、今日は調子がいい。すごく体が軽い。優勝できる。あいつに勝てそうな気がする。

俺はそう思いながらサブトラックの方でアップを始めていた。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:14:18.31 ID:BD7sB6COO
「調子はどうだい?」

後ろから聞き覚えのある声がした。

(´・ω・`)「やあ。」

ショボンだ。となり町の高校に通ってるやつで、陸上を始めて以来の陸上友達だ。そして、俺がマークする唯一のライバル。

(,,゚Д゚)「よお、久しぶり。まぁ、悪くはねぇな。」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:17:58.44 ID:BD7sB6COO

悪くないどころじゃねぇけど。ここはひかえめに言っといた。

(´・ω・`)「そうか。それはよかった。今日はなかなかいいレースが出来そうだよ。じゃあまた後で。」

そう言ってショボンはどこかへ消えていった。

(,,゚Д゚)「いいレース、ねぇ…」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:20:57.74 ID:BD7sB6COO
俺ら二人は毎回いいレースをしている。いっつもコンマ1秒の差だぜ。俺が勝ったり、向こうが勝ったり。

だけどわりぃな。今日は俺が勝たせてもらうよ。


そうしてレースの時間は近づいていき、召集も終わった。あとは移動してスタートを待つだけだ。

「はぃ、じゃあ準備ができた選手からスタート地点に移動してくださーい。」

役員からそう言われると1500の決勝に出るやつらは一斉に移動し始めた。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:22:35.18 ID:BD7sB6COO
俺は首をポキポキならしたりガン飛ばしたりとちょっと調子こき気味にスタート地点に移動し、荷物を広範囲に広げる。
なんたって俺は優勝候補だからな。周りのやつらからの視線がわかるぜ。

俺は待機所でストレッチをしながらショボンの方を見る。

やつはペットボトルに入った茶色いドリンクを飲みながら開脚していた。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:24:47.33 ID:BD7sB6COO


あれ?茶色?

なんだよ茶色って。あいつ何飲んでやがる!?あのにごり具合…まさか、

(;,,゚Д゚)「味噌汁、だと?」

ふざけんじゃねぇ!レース前に味噌汁とか頭いかれてんじゃねえのか?



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:26:32.76 ID:BD7sB6COO
(;,,゚Д゚)「おい、ショボン。なんだよその飲み物………?」

(´・ω・`)「あっ、これ?これはかみそしると言って、レース前に飲むと味噌の覚醒作用で記録がでるんだ。つい最近作り方を教えてもらったもんでね。」

いやいや、これは俺を集中させないための作戦だ。惑わされちゃいけねえ。集中だ!

俺はそう自分に言い聞かせレース集中することにした。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:29:43.58 ID:BD7sB6COO
「はい、選手のみなさん、最終点呼をしますので呼ばれたらゼッケンと腰ナンバーを見せてくださーい。」

おっと、もうスタートだな。ジャージ脱いで準備しねぇと。

俺は3レーンだったからすぐに点呼が終わり、靴をアップシューズからアシックスのスパイクに履き替える。

「はい、じゃあレーンに入ってくださーい。」

そう役員に言われ、俺らはスタートラインに並んだ。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:33:50.75 ID:BD7sB6COO
俺はショボンの隣だ。あいつはこっちを向いてねぇけど、殺気がひしひしと感じられる。いや、こんなとこでびびってたら俺はこいつに勝てねえ。

「まもなく、男子1500Mの決勝が行われます。1レーンを除きます、15人の出場です。」

アナウンスが流れる。

(,,゚Д゚)(ぜってーに勝ってやるぜ…)



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:35:33.88 ID:BD7sB6COO
「位置について」

会場が静まり返る。

パンッ!

ピストルの音と共に俺は飛だした。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:38:25.18 ID:BD7sB6COO
まず先頭に立ったのはショボンの野郎だ。腰の位置の高い、美しいフォーム。地面の接地もフラットで柔らかな感じ。俺はその後ろに着く。いつものパターンだ。

一周目、61秒。なかなかいいペースだ。

だがまだ前に出てはダメだ。ここで前に出てしまうと後半に精神的余裕がなくなっちまう。まだ我慢だ。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:40:32.29 ID:BD7sB6COO
そう考えてるうちに1000M通過。あっという間に感じられるのは調子がいい証拠。タイムは2分38秒。普段なら苦しくなっちまうタイムだけどまだまだいける。

そのままホームストレートを抜けてラスト一周の鐘が鳴る。

まだだ。まだついてかないと。ショボンは持久タイプのランナーだけど、俺はスピードタイプのランナーだ。俺が仕掛けるのは今じゃない。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:44:31.72 ID:BD7sB6COO
そのまま俺はついていき、第三コーナーに差しかかる。

(,,゚Д゚)(いまだ!)

そう思って俺は一気にスパートをかけ、強引にもショボンをアウトレーンから抜き去った。ラスト100M。俺は勝利を確信した。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:45:38.88 ID:BD7sB6COO
だが、俺の視界に一瞬脚が見えた。まさかとは思ったがそのまさか。ショボンが最後の最後でしかけてきやがった。

(;,,゚Д゚)(くそっ!!)

俺はもうがむしゃらになって走る。フォームなんて関係ねぇ。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:46:40.49 ID:BD7sB6COO
だけど、ショボンの体が前に出てきた。勝てねぇ。もうだめぽ。

結局そのかたちで俺たちはゴール。タイマーは3分56秒01となってるが、これはショボンのタイムだろう。俺はこれよりコンマ何秒遅いはず。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:47:41.40 ID:BD7sB6COO
(´・ω・`)「いやー、とってもいいレースができたよ。」

ショボンが息を切らせながら俺に握手を求めてきた。

でも俺はそれを無視する。だってスピードが売りの俺がラストで負けたんだぜ?もう、何も考えられなかった。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:49:32.41 ID:BD7sB6COO
〜今〜


(,,゚Д゚)「ふぅー……」

結局ショボンは大会記録を1秒更新して優勝。俺は屈辱の2位だった。

その後の北関東で今度こそショボンに勝とうと大会に挑んだが、調整がうまくいかず悲惨な結果に終わっちまった。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:50:33.51 ID:BD7sB6COO
ショボンも標準を県に合わせすぎて北関東ではいい走りができなかったみたい。

(,,゚Д゚)「あいつ、今ごろ元気にやってんかな……」

聞いた話によるとショボンは高校卒業後、父親の後を継いで飲食店の店長やってるらしい。

でも行くつもりはないね。いまさらあいつと話すことなんてないだろう。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:52:32.61 ID:BD7sB6COO
俺はというと、部活が終わったあとはなんか、どうでもよくなっちまって好き勝手やらせてもらったぜ。

たばこは吸うし、喧嘩はするし、親の金盗んでパチンコに行くし……

その勢いで高校卒業した後、俺はラウンジっていう族の関東連合団に入って毎日暴れた。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/02(土) 21:53:58.26 ID:BD7sB6COO

でも今は本当に後悔してる。家族とか周りのやつらに迷惑かけちまったからな。

だから、今はここいらの地域の平和を守ってんだ。わりいことしてるやつらは焼き入れてやんねえと言うこと聞かねーからな。まぁこっちが派手にやっちまう時もあるけど…

('A`)「ただいまー」

おっと、どうやら昨日のMVPがお帰りのようだ。さぁて、疲れてるとこわりぃけど、今日は仕事を手伝ってもらうとするか…



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