( ^ω^)は綺麗な街に住んでいるようです

5: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 21:26:30.74 ID:QBMMwaVi0
第7話

親は深夜帰宅したこのバカ息子を叱り狂うかと思ったが、
どうも祭りのときに、飲んでいたお酒がまだ抜けていないようで、
意外にも僕はさっさと床に就くことが出来た。

くたくたに疲れていて、部屋の温度は適温。
心地よい布団とシーツに包まれている。

眠れない。

静かな暗闇をぼうっと眺めているだけで、恐怖が頭の中で絶叫する。
目を瞑ろうとすると、一気に悪寒が背筋を中心に流れ出し、びくっと体を仰け反らせてしまう。


だめだ……親に叱られるという、ちょっとした壁が在ったから
僕は地下の件の気を紛らわすことが出来た。。。

でも、今はそれは消えて、連れ去られるという運命が、剥き出しの状態で
僕の目の前に座り込んでいる。

暗闇の中、それは一層と輝き、照りついて僕を釘付けにする。



6: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 21:28:37.35 ID:QBMMwaVi0
怖い……怖い……死ぬのかな、殺されるのかな?

ショボンが言うには、流石は"招待"のつもりらしい。
しかし、スタンガンを持ち歩き、あまつさえ暴行を加えてまで連れ去るような奴だ。
まともな"招待"なワケがない………!

……そういえば。

そもそも、何故僕らが街の裏側について調べているのがバレたのだろう?
白いバンの運転手と目が合ったとき?
発信機をゴミ箱に捨てたときの、あの老人との対立のとき?
それとも……この街の人間は、奴らによって全て監視されているのだろうか……?

分からない。
だからこそ、怖い。

更に言えば、僕らはまだ到達していない。
何故、あの地下の者達はあそこまで街の美化に努めるのか。
ショボンの話によると、やはり流石も景観を汚すことには許せない性質のようらしい。

まだ、この2つがイコールで結ばれていない……。


結局僕は眠ることが出来ず、朝を迎えた。



10: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 21:29:47.87 ID:QBMMwaVi0
ふう、と溜息をつく。
今は……8時。

ドクオのプレゼントを買う、という名目のデート。

ツンとは11時に公民館前で待ち合わせの予定だった。

( ^ω^)「何で公民館なんだお?」

ヴィップ公民館は、確かに総合デパートから近いので
待ち合わせに使えないこともないけど、他にもっと使いやすい場所は幾らでもある。
やはり、奇妙な選択だった。

( ^ω^)「ま、いいかお」

僕にとって、この擬似デートは自分の人生最後の色モノなのかもしれないのだ。
だから、理屈抜きで楽しみたい。

楽しまなくちゃ、駄目だ……!

深呼吸をし、僕は涙を拭った。

外を窓から眺めると、今日は久しぶりに曇りのようだ。



13: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 21:32:06.44 ID:QBMMwaVi0
( ^ω^)「今日はツンの言うよう5分前集合したお!」

しかし、5分前集合するなら、その5分前集合もすべなんじゃないか、と思い
結局は10分前集合をしてしまった。

( ^ω^)「う〜ん。空が怪しいお……。最後なんだから、雨は……」

今にも雲は雨を降らしそうな印象を与えていた。
まさしく、雲は今、震えているような状況なんだろう。


ξ ゚听)ξ「あらブーン! 早いわね」

程なくしてツンが閉じた傘を手にやってきた。
小走りで僕の元へ駆け寄る。

( ^ω^)「おっおwwwツンを初めて待たせたおwwww」

ξ ゚听)ξ「それはおめでと」

( ^ω^)「そっけないお」



17: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 21:33:47.03 ID:QBMMwaVi0
ξ ゚听)ξ「……ブーン、どうかしたの?」

( ^ω^)「え? どうかしたんかお?」

ξ ゚听)ξ「態度は笑ってるけど、何か奥底では、暗いような感じがして……」

(;^ω^)「あ! い……いや、ただの思い過ごしだおツン!!」

僕は必死に取り繕う。本当に不思議だ。
よく女の人は心を見透かすっていうけど、本当にやられるとは思っていなかった。

(;^ω^)「そ、多分……昨日の祭りの片付けの手伝いがきつかったからだお!」

ξ ゚听)ξ「そう……ごめんなさいね」

(;^ω^)「いやいや! 今日は楽しむんだお! ツンは謝らなくてもいいお!!」

僕は必死に取り繕い、何もないってことを装う。



20: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 21:35:38.42 ID:QBMMwaVi0
僕は公民館の外観を眺め、ツンに問いかける。

( ^ω^)「何で集合場所がここなんだお? もっといい場所あるはずだお」

ξ ゚听)ξ「あ、やっぱり知らないのね……まあ、そんなことだとは思ってたけど」

( ^ω^)「 ? 」

ξ ゚听)ξ「今、ここの中で写真展が開かれてるのよ」

写真展? ツンの趣味とか興味は、イマイチ把握し切れない。

( ^ω^)「好きな写真家なのかお?」

ξ ゚听)ξ「シティーポリスマン町長の個展よ」

( ^ω^)「! そうなのかお! そんなのが開かれてるなんて……初めて知ったお」

ξ ゚听)ξ「あんた達、男集団じゃ思いつかない調べ方ってとこかしらね♪」

町長……おそらく、地下帝国を建設した大元 と、僕らは考えている。
その人間が開く個展……そういえば、母さんが「町長は芸術が好き」て言ってたっけ?

確かに、何か手掛かりが掴めるかもしれない。
明日、拉致されると分かってても、やはり調べられることは調べたい……。



25: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 21:38:25.94 ID:QBMMwaVi0
ツンと2人で公民館に入り、受付に資料を手渡される。
入場料は無料の上、話によると結構な数の写真が展示しているらしい。

ξ ゚听)ξ「あの扉の奥の廊下からスタートよ!」

( ^ω^)「ツン、いつのなく張り切ってるお」

扉を開ける。

まず目に入るのは、この国一番の水容量と深さを誇る湖、ラウン湖の水彩画だった。

巨大な金の額縁に入っているそれは、確かに美しい。
どこか古風な印象のタッチで、何故か懐かしさすら感じられる。
何故だろう? この作品の"アマチュア的な巧さ"が引き起こしてるのだろうか?

ξ ゚听)ξ「へぇ〜。町長って絵が巧いのね」

( ^ω^)「確かにこれは上手だお」

写真展じゃなかったのか? という疑問は置いておくとして、
僕は周りの壁を眺める。
    ラウン湖の写真ばかりだ。



30: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 21:41:31.08 ID:QBMMwaVi0

ラウン湖とは、vipを取り囲む山々の一つ、天国山の山腹に位置する巨大な湖だ。
そのため、子供の頃はラウン湖から水が流れ出し、ヴィップをダム化するのでは………
と、恐怖に怯えたこともある。

昔、ツンにその話を伝えたら、鼻で笑われたっけ―――

ξ ゚听)ξ「ブーンてさ、ラウン湖を嫌ってたよね〜」

(;^ω^)「し、しょうがないお! だってヴィップはダムっぽくなりやすい土地だし……」

ξ ゚听)ξ「はいはい。……それにしても町長って、本当にラウン湖のことが好きなのね」

( ^ω^)「そうらしいお。でも、この分じゃ手掛かりは掴めなさそうだお……」


ξ ゚听)ξ「手掛かり手掛かりって……本当にアンタって……」

それだけ呟くと、ツンは1人でさっさと廊下の角を曲がって、
僕の視界から消えてしまった。

(;^ω^)「あ! ま、待ってくれお! ツン!!」

ツンはいつも急かす上に、足は僕より速い。
いつも、僕は追いかけなければならなかった。



32: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 21:44:04.00 ID:QBMMwaVi0
ビルの廃墟が目に飛び込む。
まるで、ホラーゲームの舞台にでもなりそうな、強い悲壮感や無念が漂ってくる……

その廃墟……いや、正確に言えば、"廃墟の写真"を僕と同じように、
圧倒されながらも、その不気味なカリスマ性に魅入っている人間が居た。

( ^ω^)「ツンも、そのビルに圧倒されてるお」

ξ;゚听)ξ「え!? ……ってなんだ、ブーンじゃないのよ………」

( ^ω^)「ここは廃墟コーナーって感じかお?」

ラウン湖の写真ばかりだった廊下の角を曲がれば、
今度は廃墟のテーマのコーナーとなっていた。
どうやら、廊下を曲がる毎にテーマが変化する仕組みらしい。


写真は、閉鎖されたような遊園地、水没した海外の神殿……
廃墟と呼ばれるものが所狭しと飾ってある。

ξ ゚听)ξ「そうみたいね。これも趣味なのかしら」

( ^ω^)「ご大層な趣味だお」

と、粋がってみるも、自分がこの写真群により
自分を見失いかけたことは、忘れられなかった。



35: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 21:47:52.79 ID:QBMMwaVi0
更に奥の角を曲がれば、やっとまともらしい、
この街の日常風景を撮影したコーナーとなった。

先ほどの廃墟のせいか、どの写真写真も愛おしく見え、
この街が更に好きになりそうになる。

ラウン湖のコーナー、廃墟のコーナーは観客は全然居なかったのに
この一角だけはまばらだが、老人を中心に人が居る。
その人々の顔は、どれもまるで我が子を見るかのように
優しく、ウットリと光悦の表情を浮かべていた。

その光景に何処か宗教的な病みを、僕は感じてしまいゾっとした。

ξ ゚听)ξ「なーんか、裏があるって感じ」

唐突にツンが喋りだす。

ξ ゚听)ξ「廃墟の怖い写真見せてから、この街の日常を出すなんて……
      嫌らしいっていうか……魂胆が丸見えね……」

この街の風景の廊下を抜けて、扉を開ければ
受付のある部屋に戻る。これで終わりだそうだ。

収穫があったのか、無かったのか……
よく分からないまま、僕らは公民館を後にした。



38: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 21:50:23.49 ID:QBMMwaVi0
公民館を出て、デパートへと向かう。
やはり空の雲は不穏な空気を醸し出している。今に雨を降らせても不思議では、ない。

いくら傘を持っているとは言えど、やはり雨の降る道を歩きたくはない。
僕らは早歩きで進み、デパートに辿り着いた。

ξ ゚听)ξ「ふぅ〜、助かったわ」

( ^ω^)「ちょっと急いだから、腹が減ったお」

ξ ゚听)ξ「そう言えばもう12時過ぎね。何処か入りましょ」

(;^ω^)「も、もう腹が減って動けないお……そ、そこのスガキヤで……」


久々に、ツンに対し強引なやり口で自分を意見を通してみる。
ツンも、しょうがない……と言った感じでしぶしぶ納得してくれた。

注文を決めた後は、渡されたコップの水を飲んで暇つぶしをしてると、
ツンが話しかけてきた。



40: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 21:52:58.57 ID:QBMMwaVi0
ξ ゚听)ξ「ねぇ。何にする?」

( ^ω^)「お? 注文は決めたじゃないかお。デザートの話しかお?」

ξ;゚听)ξ「違うわよ……」

( ^ω^)「じゃあ、これからの行き先かお? 僕は……」

ξ;゚听)ξ「ドクオの誕生日プレゼント買いに来たんでしょうが!!」

( ^ω^)「……お!」

完璧に忘れてた……そういえば、ドクオの遅れたプレゼントを買いに来たんだっけ。
何一つ案を考えてはいなかった。

( ^ω^)「そういえば、それ目的だったおね」

ξ;゚听)ξ「アンタって奴は……」

(*゚∀゚)「ご注文お待たせしましたー! タンタン麺とクリームぜんざいになりまーす!」

ξ ゚听)ξ「ありがとうございます。クリームぜんざいは、あたしに……」

( ^ω^)「タンタン麺は僕だお!」



43: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 21:54:54.42 ID:QBMMwaVi0
・・・・・・・

( ^ω^)「う〜ん。食ったお食ったお」

ξ ゚听)ξ「で、何買おうかしら?」

( ^ω^)「ゲームのソフトで良いと思うお」

ξ ゚听)ξ「残念ながら予算オーバーね。2000円以下でお願い」

( ^ω^)「ん〜………そういえば、"驚愕!UFOとムー大陸の真実!"て本を欲しがってたお」

ξ ゚听)ξ「たま出版の人が好きそうな本ね。それにしましょう」


買う品物を決定し、僕らは席を立った。
多分、ドクオにとってあの本はダイヤモンドよりも価値があるはず。



45: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 21:55:42.60 ID:QBMMwaVi0

2Fにある本屋へと向かうと、道中CD屋……道中と言っても本屋の隣にだが、
買いたいCDがあったので、僕はふらふらとその店へ入ろうとした。

ξ ゚听)ξ「ちょっと! 今から行くの本屋さんでしょ!?」

( ^ω^)「あ……僕買いたいCDがあるんで……」

ξ#゚听)ξ「デートのときくらい我慢しなさいッ!!」

ツンに怒られた……なんということだ。
デートのときは、自分の欲望は封印せねばならないなんて!
デート=つまんねえ、て式が完成しそうだ。
そしてツンは何故かまた赤面していた。

( ^ω^)「分かったお、ごめんだったお」

ξ///)ξ「じゃっさっさと行くわよ!」

ツンに強引に手を引かれ、僕は中へと入った。



47: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 21:57:58.26 ID:QBMMwaVi0
本屋の、わらわらとしている客を眺めていると、唐突に不安な気分になる。
僕は彼らとは違う。
明日には……死ぬのかも、しれないんだ……。
そう考えると、今のツンとのデートという状況が、堪らなく大切な一時となっていく。

はぁ……本当、明日の僕はどうなっているんだろう?
流石の言っていた"スカウト"という言葉を信じるしかないのか、な?

僕らを痛めつけた人間の言葉を信じたがる、そんな自分に嫌気が差す。



ξ ゚听)ξ「ねえ……ねえ!!」

(;^ω^)「え!? う、あ!? 何だお??」

ξ#゚听)ξ「もう買ったわ! 行くわよ!!」

(;^ω^)「あ、なーんだ、そうなのかお」

ξ ゚听)ξ「こんな本、あたし1人に買わせるだなんて……」



49: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:01:58.60 ID:QBMMwaVi0
( ^ω^)「次はどこに行くんだお?」

ξ ゚听)ξ「う〜ん、どうしようかな……」

何か、良い場所はないかな…と周りをきょろきょろ見ると、
先ほどの本屋の店頭に並んでいる本のタイトルが、目に飛び込んできた。
「告白のススメ〜やらぬ後悔よりやる後悔」

……………

(;^ω^)「………」

ξ ゚听)ξ「そうねえ、一回ここ出る?」

(;^ω^)「え?!」

ξ ゚听)ξ「ここ、食事と買い物以外何も出来ないわよ」

(;^ω^)「あ、そうかお」

CD屋は?

いや……もう、どうでもいいや……CDなんて。



50: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:05:16.96 ID:QBMMwaVi0
しかしデパートを抜け出しても、特に遊べる場所はない。
付近にあった、シャナ公園で、僕達は何となく足を止めてしまった。

ぽた……ぽた……

雨粒が降ってきたと、考える間もなく一気に土砂降りと、化す。
幸い、僕らは既に屋根のあるベンチに座っていたので、さほど影響はなかった。

ξ ゚听)ξ「……降ってきちゃったね」

(;^ω^)「………うん」

僕は、告白をする、つもりだった。
やらぬ後悔よりやる後悔……時間のない、僕にとっては心に染みる、
この言葉に突き動かされて。


でも、……よく考えればそんなこと、出来やしない。
後悔するしないなんてのは、自分の話だ。他人を一切考慮していない。
所詮は単次元。自分勝手な、論。

告白。ツンに思いを告げて、僕は明日何処かへと行ってしまう?
そんな無責任なことは……出来ない。許されない。
考えれば考えるほど、悩めば悩むほど、倫理観が思いを押し込める。



52: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:11:03.87 ID:QBMMwaVi0
悩む僕の様子に、ツンは異変と感じ取ったようだ。

ξ ゚听)ξ「どうかしたの……?」

(;^ω^)「……ツン」

ξ ゚听)ξ「ん…?」

(;^ω^)「僕、いや………あの……」

ξ;゚听)ξ「 ? 」

いつの間にか僕は、ツンに
会話にならない会話を繰り広げていた。

(;^ω^)「僕は……僕は…………」

この先を言うことが、出来ない。
どうしても……喉に物が詰まったように、嗚咽以外何も口に出せない。

( ;ω;)

もう、僕は……勘の良いツンに、もう自分の状況を曝け出したようなものだった。



53: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:13:10.55 ID:QBMMwaVi0
ξ;゚听)ξ「ど、どうしたのよブーン……あんた、さっきから変だったし……
      何か……あったの?」

そうだよ! 僕は、僕は明日には消えているかもしれない人間なんだよ!!
そして、そんな奴が……残される人のことも考えず、告白なんて浅ましいマネを……
しようとしてしまった!! 愚かだろう!?  

ξ ゚听)ξ「それって、地下のこと……?」

( ;ω;)「………」

ξ ゚听)ξ「お祭りの後……何か、あったのね?」


( ;ω;)「……ち…」

やっと、声が出る。

( ;ω;)「違うお……何でもないお……」

ξ ゚听)ξ「……」

ツンを、突き放すのが、最善手なのだろう。



54: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:16:02.94 ID:QBMMwaVi0
( ;ω;)「本当に、なんでもないお」

突き放さないと……突き放さないと!

( ;ω;)「ちょっとっ……用事が出来たから……帰るお……」

突き放す、突き放……すって、どうすればいいんだ?
このまま僕は、逃げても……それは突き放したってことには、ならないんだろう。
じゃあ・・・・・・?

ξ ゚听)ξ「ちょっと……待ちなさいよ」

( ;ω;)「お?」

ξ ゚听)ξ「そんな意味不明な話で、あたしが納得するとでも?」

……ツンなら、やっぱツンなら納得しないんだろうなぁ……。


ξ ゚听)ξ「教えてよ……」

( ;ω;)「無理だお」

もし、僕が流石達に連れられて、帰ることが出来たとしたら、
僕の今やっていることは、途方も無いほど愚かなことなんだろうなぁ。

僕はベンチから腰を上げ、土砂降りの空を見つめる。



57: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:18:03.46 ID:QBMMwaVi0
溜息をつくと、同時に涙が加速して滴り落ちる。
ふいに横を見れば、ツンも僕と同じように・・・・・・
立ち上がり、涙を流していた。


ξ ;;)ξ「嘘とかさ……つかないでよ」

ごめん

ξ ;;)ξ「あの出校日のときだって……いつも、隠し事とか……」

本当に


謝罪の言葉を言おうとした瞬間、片頬に痛みが走り
雨空の中、その衝撃音が吸収される。

女の人からのビンタか……。。。
初めて食らったけど、これは相当痛いよ。



58: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:21:33.25 ID:QBMMwaVi0
ξ )ξ「勝手にすれば?」


ξ ゚ー゚)ξ「ドクオへのプレゼントは、あんたから渡しといてね」

力なく、僕は頷いてみせる。
地面を眺め続けていた視界が、ツンの差し出した手によって遮られた。
「これで涙、拭きなさい」とツンの声が聞こえる。
差し出された手には、ハンカチが握られていた。
そっと、僕はそれを手に取り、顔を上げた。

ツンの笑顔を見るはずが、涙のせいでぼやけてよく見えない。
急いでハンカチで目を擦り、もう一度ツンの顔を見る。
今度は、笑顔ではなかった。


ξ )ξ「じゃあ…ね。傘を置いておくから、大丈夫でしょ」

それだけ言うと、ツンは屋根のあるこの場所から離れ、
ずぶ濡れのまま、歩いていく。

(;^ω^)「あ、待つおツン!」

ドクオへの渡し物を持ち、傘を差し急いで飛び出る。
しかしもう姿が見えない。

ツンはいつも急かす上に、足は僕より速い。

探しても、探しても、居ない。もう……帰ったのかな。



60: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:23:59.56 ID:QBMMwaVi0
ヒルズへ戻ろう……。
帰り道の中、僕は何度も何度も溜息をついた。
これで良かったのか? いや、良いと思うしかない。ないんだ。


エントランスに入り、傘を振るい水気を弾く。
エレベーターを待っている間、ケータイの着信音が鳴り響く。
ポケットから取り出し、開くとそれは、ショボンからのメールだった。


from ショボン
sub 重大な

重要な話がある。今すぐに、バーボンに来てくれ。
ドクオも誘っておいた。



62: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:27:17.89 ID:QBMMwaVi0
今の時刻は、15時過ぎ。
この時間に、わざわざバーボンに来い、というのはよっぽどの話なんだろう。

僕は了解、の返信を行い、
バーボンのある2番館へと進んでいった。

・・・・・・・・

(´・ω・`)「お! 来たね」

ショボンはバーボンハウスの前で待っていた。

( ^ω^)「何かあったのかお、ショボン?」

(´・ω・`)「ああ、切羽詰った状況だが、道が開いた」

そう言うとショボンは微笑む。
よっぽど重大な話なんだろう。

( ^ω^)「もっと教えてくれお!」

(´・ω・`)「まあまあ。ドクオが来るのを待ってから。
       "すぐ来る"て言ってたしね」

時間にルーズなドクオを待つハメになった。



63: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:30:49.69 ID:QBMMwaVi0
ドクオが来ない間に、ショボンと話す。

( ^ω^)「ショボンは……渡辺さんが好きなんだおね?」

(´・ω・`)「……! ははは。やっぱ皆気付いてるもんなんだね」

( ^ω^)「バレバレだお……告白とかは、しないのかお?」

(´・ω・`)「君は馬鹿か? そんな身勝手なマネ出来るわけないだろう?」

( ^ω^)「そう……だおね」

やはり、身勝手なんだ。

うん、そうさ。立つ鳥跡を濁さずって聞いたことがある。
話の真相を教えないどころか、突き放さないと、と考えている僕のことを、
ツンは……嫌っただろうか、
いや、嫌っておくれ。

もう、考えたくない。。。。
ツン、ツン、、ツン……。



66: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:33:44.63 ID:QBMMwaVi0


( ^ω^)「僕も、その通りだと思うお……」

(´・ω・`)「どうせ消えるなら、皆の記憶も消去したい、て僕は思ってるのさ」

(´・ω・`)「まぁ、流石達に連れてかれて、いきなり殺されることはないと思うけど、
       それでも、場合を考えたら身勝手なことは出来ないね」

その後、ショボンは懐から何かを取り出し、僕に見せる。

( ^ω^)「ケータイ? ショボンのとは違うタイプだけど……」

(´・ω・`)「ところでこれは、今日の早朝に拾ってきたんだ」

多少、傷のついているそのケータイを、僕はしげしげと見つめる。

( ^ω^)「へ〜、持ち主は分かったのかお?」

(´・ω・`)「更にところで、この携帯電話は流石の物なんだ」

(;^ω^)「ええっ!!」



70: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:39:51.55 ID:QBMMwaVi0
思わず大声を出した後は、息を呑んでしまう。

(;^ω^)「ど、どうしてそんなモノを……!」

(´・ω・`)「ふふふ。あの時、流石が落としていたんだよ」

(;^ω^)「こ、これが重大な話の中身かお……
       で、このケータイでなんか手掛かりは掴めたのかお!?」

(´・ω・`)「いや……電話帳以外、何の情報は得られなかったし、
       その電話帳も、カモフラージュしてあってお手上げさ」

( ^ω^)「カモフラージュ?」

ショボンは何も言わず、ケータイの電話帳を開き僕に見せる。
レノン……ハリスン……あれ、個人名ばかりだ。
しかも、それがダラダラと100件近く入っている。
確かにこれじゃ、手は打てない気がする。
警察ならともかく、身に危険のある僕らでは……。

(´・ω・`)「何か隠語や、もじった名前は無いか、と探したんだが……ね」

何てこった……だとしても、これは凄い収穫だ。
そう考えていると、きゅっきゅ…と、濡れたスニーカーの放つ音が聞こえる。
ドクオが来たようだ。



71: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:42:27.07 ID:QBMMwaVi0
('A`)「うおっす」

( ^ω^)「やっと来たかお。もう重要な話は聞いてしまったお」

('A`)「ちょwww2人とも空気読めwwwwwwww!」

(´・ω・`)「君の"すぐ来る"って30分待たせるものなのかい?」

('A`)「バカ言え。返信して寝たのに、30分遅刻で済んだんだぜ? はえーだろうが」

(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」

( ^ω^)「ドクオ、実は流石のケータイをショボンが拾ったんだお」

(;'A`)「ま、マジで!? って……ここで突然言うなよ……結構ワクワクしてたのにさぁ」

はぁー、とショボンが長い溜息を吐いたので、僕とドクオはショボンの方を見た。
やれやれ、というニュアンスのあのお決まりのアメリカンポーズをしていた。
時々、何か大きなことがあるとショボンはキャラが壊れる。

(´・ω・`)「やれやれ……この携帯電話は、いわゆる前菜だよ。
       本当の話したい内容は……こんなもんじゃない」


(;^ω^)(;'A`)「な、何だってー!?」



74: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:45:10.43 ID:QBMMwaVi0
(´・ω・`)「そう……続きは、バーボンで話そう」

そう言うとショボンをバーボンの入り口を
まるでレストランの案内人のように扉を開き、僕らを招く。

僕とドクオはおずおずとハウスの中へ入っていく。

廊下を歩いている途中、ドクオに例のプレゼントを渡した。

(;'A`)「え!? あの本!!??」

どうかしたの、と聞くと 既に持っていたそうだった……。
これは……苦しい。

廊下を抜け、
スツールのあるメインのルームに入る。、
何と、既にシャキンさんがマスターの衣装をしていた。


やあ (`・ω・´)

ようこそ、バーボンハウスへ。

この衣装はサービスだから、まずは落ち着いて欲しい。



78: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:46:26.92 ID:QBMMwaVi0
僕らが唖然と立っているうちに、ショボンが後ろから、するりとやってきた。
あの2人がここまでノリノリとは、何処まで凄い情報なんだろうか……?


(´・ω・`)「父さんのバーのさ、常連なんだよ……」

( ^ω^)「え?」

(`・ω・´)「まさか…て感じさ。ショボンの話を聞いても信じ切れなかった」

(;'A`)「だ、だから、何の話ですか……?」


(´・ω・`)「流石の奴が、バーボンハウスの常連って話さ」


(;'A`)「な……な……」


(;^ω^)(;'A`)「な、何だってえええええええええええ!!!???」



82: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:48:45.13 ID:QBMMwaVi0
(`・ω・´)「本当さ……流石、兄者さんは。いつも弟さんと来ている」

(;'A`)「お、弟……? あんな化け物が、2人も居るのかよ……」

(´・ω・`)「双子だってさ」

し、信じられない……これこそ、僥倖というのだろうか。

(`・ω・´)「いつも週2、3感覚で来るが……水曜の夜、厳密に言えば木曜だが、
       つまり今日の夜に、あの2人が来るのさ」

(´・ω・`)「これこそ、僕らのチャンス。 こっそり隠れて、話を盗み聞きするのさ」

(;^ω^)「………!」

僕とドクオは、親に「今日はショボンの家に泊まる」と告げて、そして……


ガチャリ

客が玄関を開けたようだ、そして廊下を渡る足音が複数回聞こえた後に


カランコロン。

営業時間には取り付ける、バー・ルームの扉の鈴が鳴る。


(`・ω・´)「いらっしゃいませ。流石様」



85: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:51:50.22 ID:QBMMwaVi0
深夜1時。

(  )「おや……今日もかな?」

(`・ω・´)「はい。本日も、お客様はあなた方だけです」

(  )「ふむ……水曜の深夜はいつも我々しか居ないものだな」

聞き覚えのある、この声は……

(  )「そのようだな、兄者。この時間帯は我々しか訪れない」

そして、声の似ているこの男……

(`・ω・´)「本日もごゆるりとお寛ぎくださいませ」

間違いない……こいつらは……

( ´_ゝ`)「ではいつものスコッチを頂こうか」

(´<_` )「テネシーを」

流石兄弟。今、僕らはこいつらと同じ部屋で、同じ空気を吸っている……。



88: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:53:03.90 ID:QBMMwaVi0
(;^ω^)「………」

声は当然出せない。僕らはシャキンさんの立つ、キッチン側の影に隠れている。
流石から見えることはまずないが、息も音を立てずに行わないと、まず怪しまれるだろう。
バーのスツールに腰を掛ける音が聞こえ、続けるように流石が言葉する。

( ´_ゝ`)「ふぅ……。マスター、あなたに子供はいるかい?」

(;^ω^)(;'A`)(;´・ω・`)「 ! 」

唐突に流石が危険な質問を放つ。
ショボンの顔とシャキンさんの顔は、確かに似ている……。

(`・ω・´)「まだ赤子のような奴しかおりませんが、どうしてまた?」

( ´_ゝ`)「いやなに。先日マスターとよく似た少年を見たのでね」

(´・ω・`)「………」

(`・ω・´)「人違いでしょう。この顔はブルボン方面では典型的なものですから」

( ´_ゝ`)「そうかね」

疑っているのか、納得したのか、僕からではよく分からない。

(´<_` )「それは例の子供か? 兄者」

( ´_ゝ`)「ああ。見事に私の携帯電話を紛失させてしまった彼だ」



93: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:55:00.72 ID:QBMMwaVi0
(`・ω・´)「それは災難でしたね」

( ´_ゝ`)「全くだ。ただでさえ、今日は仕事が多かったというのに……」

(´<_` )「ふむ……。ま、今日の仕事では特に不要だったのは幸いだったな」

(;'A`)「………」

あのケータイのことを話している。この様子だと、奴にとっては大した出来事ではないらしかった。

(`・ω・´)「それではこちらを、どうぞ」

( ´_ゝ`)「ありがたい」

(´<_` )「頂こう」

氷がカランと、グラスと衝突する軽快な音が聞こえだす。
その後は、溜息。

しばらく、表の3人は言葉を発さなかった。



97: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:57:24.35 ID:QBMMwaVi0
僕らの目的は、流石兄弟の重大な会話を盗み聞きすること。
そのためショボンは何気なく、シャキンさんに決めておいた合図を送った。

(`・ω・´)「ん……おや……?」

(´<_` )「何か?」

(`・ω・´)「いえ……ただ、申し訳ございません。少し別室にて探し物をしてきます。
       10分も取らせませんので」

( ´_ゝ`)「いやなに。構わない」

(´<_` )「よしなに」

(`・ω・´)「失礼します」

そういうとシャキンさんはキッチンから出ると別室へと向かった。

これで……この部屋を、隠れている僕ら除いて流石兄弟だけに残す。
何か、重大なことを喋ってくれないか、と期待が高まる。
ふいに、煙草の匂いがし、いよいよ緊張は極限に達しだした。



100: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 22:59:47.95 ID:QBMMwaVi0
( ´_ゝ`)「フゥー……。どう思う?」

(´<_` )「む? 何がだ?」

( ´_ゝ`)「あの3人はスペシャルとして、ちゃんと機能するのか、てな」

(´<_` )「それは3人の身分しか知らぬ私には分からぬ、兄は間近で会ったのだろう?」

僕らのことだ……無意識のうちに体が強張り、金縛りのようになる。


( ´_ゝ`)「ショボンという子は……骨があり、素質はある。
       後の2人は、教育次第といったところか………」

(´<_` )「そうか」

(;'A`)「………!」

やばい、息が激しくなる、どうしよう流石に気付かれたら……
そう考えるだけで更に混乱する。



105: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 23:01:50.79 ID:QBMMwaVi0
( ´_ゝ`)「それより、カウントダウンはちゃんと進んでいるんだろうな?
       他域の管轄のことは、私はよく知らないからな」

カウントダウン……? 
鋭く、僕らは奴らの情報を知り始めていく。あのショボンも脂汗を垂らし、聞き入っている。

(´<_` )「それは問題ない。あのサージェント・ペパーズが指示を出しているからな」

( ´_ゝ`)「ふむ…。あのSgtペパーズなら、問題ないな……」

ペパーズ。

(´<_` )「あのペパーズすら、我々は雇うことが出来る……」

( ´_ゝ`)「誇りの身震いが起こる」

とりあえず、僕らへの"招待"は、まともではないにしても、その言葉通りの意味らしかった。
だが、……

('A`)「ッ……」

(;´・ω・`)「………!!」

(;^ω^)「(な、ドクオ!!)」



109: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 23:03:38.25 ID:QBMMwaVi0
ドクオが少し抑え気味だが、咳払いをしてしまった。
おそらく、先ほどから漂ってくる煙草の煙のせいだろう。

ドクオは泣きそうな顔で震え、バレていないよう手を硬く握る。
僕とショボンも同様だが、何故か心の中に諦めのようなものが疼いていた。
咳払いをしたときから、グラスのカラン、という音が一つも聴こえなかったからだ。


心臓が生きてきた中で、最も激しく鳴り続ける。流石に聞こえるのでは、と焦るほどに。


バレたのか、バレたのか、バレたのか!?


( ´_ゝ`)「……ショボン君が……」

唐突に語りだす。

( ´_ゝ`)「ここのマスターの息子ってのは、とうに知っているさ」

驚いたが、よく考えたら弟者は僕達のことを調べていた、と言っていた。
だが、恐怖であることには間違いない。

(´<_` )「そして、君は……そこに隠れているのかな」



112: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 23:06:06.30 ID:QBMMwaVi0
(;´・ω・`)「………」

( ´_ゝ`)「詮索する気はないが、君がそこに居るのなら、一つ言っておこう」

(;'A`)「………」

( ´_ゝ`)「我々は、君達を……"手厚く"歓迎するよ。全く、君達は運が良い!」

君達……? いや、ショボンを代表に言ったのだろう、僕は自分に言い聞かせる。

(´<_` )「その通りだ。己を誇りにしろ……。とな」

(;^ω^)「………」

それだけ言うと、兄弟はまたも沈黙し、グラスの音を立てながらウイスキーを嗜む。
心臓の鼓動が少し落ち着きの兆しを見せかけた頃、シャキンさんが戻ってきた。

(`・ω・´)「申し訳ない」

( ´_ゝ`)「いやなに。我々もそろそろ帰らねばならないのでね」

(`・ω・´)「今日は早いですね」

(´<_` )「この日だけは、仕事が残っているのでしてね」

流石が会計を済ませている間、僕らは深く、静かに深呼吸をする。初めての息のように。

( ´_ゝ`)「では、な。マスター。  あんたは良い父親だね」



116: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 23:08:13.92 ID:QBMMwaVi0
(`・ω・´)「またのお越しをお待ちしております。流石様」

もう一度、来たときと同じよう鈴を鳴らし廊下に出ると、
玄関から流石兄弟は出て行く。

(`・ω・´)「……よし。もういいぞ」

(;'A`)(;´・ω・`)(;^ω^)「はあー!」

僕らは立ち上がることもままならず、そのまま床にずるずると寝る体制で砕け落ちていった。

(;^ω^)「ドクオが咳払いしたとき、死ぬかと思ったお」

(;´・ω・`)「全くだね。本当、ぶち殺すぞ?」

(;'A`)「すまんすまん。キャビンの匂いだけは、受け付けねーっくてさ……」

(;^ω^)「何だその言い訳」

それだけ言うと、僕は天井を見上げて今回のことを反芻する。
スペシャル、カウントダウン、Sgtペパーズ。
よく分からない単語ばかりだったが、それでも今回は相当な収穫だった。
流石のショボンへの言葉は……鎌をかけたのか、本当に見つけたのか、僕にはよく分からない。

(´・ω・`)「ブーンこのまま寝そうな雰囲気だね」

('A`)「今日は久しぶりに疲れた……寝たい」

(;^ω^)「……本当に、眠いお」



121: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 23:10:29.76 ID:QBMMwaVi0
―――……、、ザザァ……

波の音。
地平線には、向こう側の大地は映らない。
何も知らぬ人間に、これは海、と言えば通じるような広さだ。
それだけじゃない。この湖は、この国の中で最も深く、水の量も一番存在する。
息の詰まるような日々は、ここラウン湖に出掛けて波を見て落ち着く……

それが僕の日課だ。

段々と確実に、苦しむ街、汚くなっていく街とそれを守れぬ自分を何処かで癒したい。
何年も続いていた蟠りは、やがて芸術への欲求へと変化していった。

ラウン湖の風景を水彩紙に描いていく。
何日も、何日も掛けて丁寧に描く。
絶えず変化する波を絵に収め、そして少しずつ形にするのが堪らなく快感だった。

現実逃避に夢中になっている僕は、ある日。
僕と同じように湖を眺めている少女を見かけた。



125: ◆tOPTGOuTpU :2007/06/19(火) 23:14:12.09 ID:QBMMwaVi0
その日から、僕は毎日彼女を見かけた。
最初は気にしなかったが、
最近になると、この絵の中に彼女を描きたくなってきた。

とうとう、僕は声を掛けた。

( ・∀・)「あ、あの……!」

川 ゚ -゚)「ん? 君は、いつもの絵描きさんか」

( ・∀・)「え、は…はは。 ……あの、いつもここで何をなさっているんですか?」

川 ゚ -゚)「君と同じように、この風景を心に留めていたんだ」

思えば、僕はこの瞬間から彼女のことが好きだったのかもしれない。

( ・∀・)「お名前は、……何ですか?」

川 ゚ -゚)「クー・イノセントだ。 君の名は……? 実は前から、気になっていたんだ」

「気になっていた」この言葉に、僕は顔を多少赤らめ、
畏まりながらも、自己紹介をした。

( ・∀・)「モ、モララー……。モララー・シティーポリスマンです」(第7話終)



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