( ^ω^)は綺麗な街に住んでいるようです

5: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 21:51:51.79 ID:GEg6qMGP0
第9話

……地響きが聞こえる。
更に遠くからは、喧騒らしきものも感じ取れる。

歩いた足の感覚によると、地面は何にも舗装されていないようだ。
乾いた砂と、小石の感触で満たされている。

「アイマスクを取れ」

その言葉に従い、視界を遮っていたマスクを外す。
ヘッドホンは車を降りた時点で外されていた。


( ´_ゝ`)「……右の部屋は、許可なく入ることは禁止されている」

兄者は僕とドクオ、ショボンに向けてこの場所の説明をしている。


ここは、「綺麗な街」ことヴィップの地下。
僕らは、地下の人間に連れ去られ、 今ここに居る。


「( ^ω^)は綺麗な街に住んでいるようです」



6: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 21:55:15.82 ID:GEg6qMGP0
僕は兄者の話を、耳に留める程度に聞きながら
この謎の空間、周囲の地形を把握する。

長い、一本道のような場所だが……5メートルほど先の正面にて、道は途切れている。
そこにはカーテンがたなびく、大よそこの殺風景な地には似合わない西洋風のガラス細工の戸がある。
カーテンでよく見えないが、どうやらこの先はバルコニーらしかった。

( ´_ゝ`)「左の部屋は、君達が勉学に励むところだ。基本は、ここで過ごすことになる」

その言葉を聞き、左の方を見れば「資料室」と書かれたプレートを掲げた扉が、目に映った。
さっき兄者の説明していた右の部屋は、「第8通路・喫煙室」となっていた。

僕はドクオとショボンの方を見た。
どうやら兄者の、まともらしい説明に安心しながらも、話を必死に聞いているようだった。

(´<_` )「おいブーン。聞いているのか?」

(;^ω^)「え!? あ、はい!!」

突然弟者に注意され、ついつい素っ頓狂な声で返事してしまった。
しかし、そんな僕を兄者は気にも留めていないようだった。

( ´_ゝ`)「さて、ここからの話が重要だ」

兄者が一呼吸置く。



9: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 21:58:15.66 ID:GEg6qMGP0
( ´_ゝ`)「後々予定表を配るが、君達は時間が来るたびに、
       先ほどの、バンが停車していた場所に来てくれ。無論、遅刻は許されない。
       8月7日10:00~19:00、とあったら10時までにそこへ行け。19時に解放する。
       それと、たまに泊まり込みの授業もあるからな」

(;'A`)「泊まり……遅刻……」

遅刻魔のドクオにとって、この説明は耳に痛いことだろう。

( ´_ゝ`)「だが、無理に君達に時間を割かせて勉強させる、など非道なことは我々はやらぬよ。
       手当ては出す。基本的に、一時間1200円だ。
もしも君達が模範的な候補生に為り得たのなら、更に手当ては良くなるぞ」

(;^ω^)(;'A`)「時給……せ、1200円!?」

アルバイトをやったことのない僕でも、その金額が凄まじいことは、よく分かる。
例えば先ほど兄者が例に出した、10:00から19;00なら、……えっと1万を超えるぞ。。。

( ´_ゝ`)「夏祭りの晩、私の言った"招待"の意味が分かるだろう?」

(;'A`)「凄い……」

確かに凄い……。が、兄者の言っていた「候補生」という単語が気になる。

(´・ω・`)「………」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/14(土) 22:02:15.61 ID:GEg6qMGP0
( ´_ゝ`)「更に言わせて貰うなら、食事なども出るが、それらの費用などは全て免除だ。
       ………我々が君達にどれほどの期待をしているか、分かるな?」

……飴と鞭、てワケなのだろうか。 

( ´_ゝ`)「君達がここで学ぶのは、このヴィップの歴史、地理……は勿論のこと、
       英語も話せるようにしなければならないし、経済や建築にも精通して貰う」

(;'A`)「そんなに……」

( ´_ゝ`)「君達の講師となる人 ――――これこそが、最も重要な話だ。 
       名はフーさん。 君達は彼に先ほど挙げた教科を学ぶ」

(;^ω^)「はぁ……」

最も重要な話? 講師のことが?

( ´_ゝ`)「下手をすれば命に関わるのでな」

(´・ω・`)「命、ですか……」

( ´_ゝ`)「ああ。何と言うか……フーさんは、要するにそういう人間なのだよ」

(;^ω^)(;'A`)「 ? 」



13: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 22:05:59.10 ID:GEg6qMGP0
(´<_` )「我が組織の実質ナンバー2の御方だ。粗相のないようにしろってことだ」

( ´_ゝ`)「……そういうワケだ。ま、お前達が真面目に学べば良いだけの話だな」

粗相をすれば命に関わる……。 冗談とは、思えないのがこの状況、この男たちだ。

( ^ω^)「り、了解しましたお……」

( ´_ゝ`)「お前達は後にフーさんの挨拶へ向かう」

(;'A`)「そうですか……」

( ´_ゝ`)「……ふむ。……ああ、そうだ」

( ´_ゝ`)「言い忘れてたな。我々の所属する、この地下組織の具体的な内容についてを」

(´・ω・`)「……!」

とうとう、僕らの目的へと主題は移り変わった。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/14(土) 22:08:24.72 ID:GEg6qMGP0
(´<_` )「兄者。全てを教えることは、あるまいよ」

しかし、その説明の内容はどうやら簡単な内容らしい。。。

( ´_ゝ`)「ふむ。 うわべだけにしておくか」

兄者は目線を弟者から、僕達に移す。
そして皮肉っぽく鼻を鳴らした後に、話し始める。

( ´_ゝ`)「組織の名は、CP。 正式名称ではなく、勿論通称だ。
       そして……活動目的は、モララー・シティーポリスマン様の考えを実現させることであり」

頬を歪ませ笑う。

( ´_ゝ`)「今はさしづめ、……このヴィップのためこそと思い、街の美化に励んでいるのさ」

違う……それは、建前のようなものだ。嘘と言ってもいい。
確実に裏には、真の目的が存在するのに それを明かされない、予想出来ないのが歯痒かった。

( ´_ゝ`)「お前らは、そんな誇り高き組織の、何たることか……幹部候補生と為ったのだ。
       感謝されることはあってもな……恨まれる筋合いは何一つ、ないぞ」

その冷たい目線は、全てを丸く治めるつもりは毛頭ない。
力でねじ伏せ、無理に強引に納得させる。
この、CPという組織がどういう存在なのか 一瞬で理解出来たような気がした。



15: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 22:10:24.08 ID:GEg6qMGP0
('A`)「……そこまで、誇り高い組織なん……ですか?」

意外にも、ドクオが 挑発とも取れるような質問を投げかけた。
弟者はドクオを睨みつけるも、兄者はどこ吹く顔で問いを返す。

( ´_ゝ`)「ああ。震えるほどな」

('A`)「……そうですか」

突っぱねたような、まるで「当然」とでも言うかのような返答には
やはりあのドクオでも、次の言葉に迷ってしまうだろう。。。

ショボンも僕も、フォローのしようがない。
すると、意外な言葉を兄者は口にする。

( ´_ゝ`)「そう訝しげなのなら……証拠を見せてやろうか?」

( ^ω^)「え?」

( ´_ゝ`)「少し待て」

そういうと正面を歩き、そこに見えるカーテンを開き、突き当りのガラス細工の扉のロックを開ける。
観音扉が開かれた瞬間、ずっと聞こえていた喧騒やざわめきが、より一層強くなった。

( ^ω^)「(何があるんだお……?)」

そして奥は、やはりバルコニーらしかった。
足場は赤色のレンガで組み込まれた半円状で、
手すりはその半円に沿うよう、丁寧に整え、削られた樫だった。



17: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 22:14:23.26 ID:GEg6qMGP0
そして、その開けられた扉から見える景色は、
荒々しさを感じさせる、薄茶色の土の壁が劇場の段幕のようにどっしりと存在していた。
しかし、よく見るとその壁は研磨されてるかのようで、
硬そうな地盤も相まって、崩れる心配をまるで感じさせなかった。

(´・ω・`)「……ほんとに、地下なんだな……」

先ほどからこの土の壁に不思議な圧迫感を感じてしまっていた。
真正面が遠くに思えて、その両隣は少し狭く見える。
バルコニーと壁の間の巨大な空間には心底ゾっとさせられた。

流石兄弟はそのバルコニーへ足を踏み入れ、手すりから下を見おろす。
喧騒の元がそこにあるのだろうか。

( ´_ゝ`)「3人とも。ここへ来い」

兄者が僕たちを招く。
まだ見てもいないのに、このバルコニーの下は奈落と考えてしまい、
高所恐怖症でもないのに、少し足がすくんでしまう。

しかし、命令された矢先、行くわけにはいかない。
ドクオとショボンは既にバルコニーの上だ。
肝を決めて、僕も進む。

バルコニーに入り、僕は 気付いた。



18: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 22:18:22.16 ID:GEg6qMGP0
この空間は、円筒状であった。
それも、グラウンド一つ余裕に入る程の広さ。
それを囲む、土の壁に圧迫感を感じた理由は、円状による遠近差だったのだろう。

つまり、このバルコニーはその円筒に食い込むような形をしていて、
その下の空間を余すことなく見渡せることになる。

(;'A`)「うわっ!!」

手すりから顔を出し、下を見たドクオが叫び、うろたえた。
そしてショボンまでも、驚いている様子だった。

何があるのだろうか……?
僕は手すりに手を掛け、下を覗く。

(;^ω^)「……! これは……」

下の地面までの距離は、30mほど。  
 理解を超えた場所だった。


そこは、まるでパンフレットに載る高級ホテルのロビーのようであり、
そして生気なき人間達が今、それを完成させようと黙々と働いていた。

その美しさと、働く人間の無気力加減が、恐ろしくアンバランスに思えた。



21: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 22:23:06.26 ID:GEg6qMGP0
( ´_ゝ`)「素晴らしいだろう」

兄者が下を眺め、感嘆しつつ言う。

( ´_ゝ`)「中央のラウンジは、ラバーソウル社の最高級ソファと
       WA社のオーダーメイドテーブルを採用しているのさ」

誰でも知っている、家具ブランドの名前だ。

( ´_ゝ`)「このホール・ロビーは8割ほど、完成している」

ホール・ロビーと呼ばれる、その場所に僕たちは釘付けになった。
ここで労働している人間は、地上から「連れ去られた」人間達なのだろうか?

( ´_ゝ`)「ラウンジ&バーに取り付ける業務用冷蔵庫の設置箇所に
       問題が発生したせいで、作業は遅れてしまっているがな」

主任らしき人間が労働者に指示をする以外、声はまるで聞こえない。
聞こえるのは、物を運ぶ際に聞こえる雑音ばかりだ。



24: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 22:28:04.21 ID:GEg6qMGP0
……狂っているとしか思えない。
魂の抜けたような作業員。このホール・ロビー。そしてCP。
ここがロビーならば、まだこんな施設が他にも点在するのだろうか。

地下帝国の異常性を、改めて思い知らされる。

( ´_ゝ`)「ここの真円率は95%だ。奥のエレベーターのせいで、3%下がってしまったがな」

ロビーの正面奥には、またも装飾の凝った黒色のエレベーターが構えてある。
あのエレベーターは、どこに続くのだろうか……?

(´<_` )「それはそうと、兄者。 ……そろそろ、時間だ」

弟者が自分の腕時計を指差す。
その身振りを見た後、兄者は深く頷く。

( ´_ゝ`)「うむ。分かっている……。で、どうだドクオ?
       これを見て素晴らしいと思わんか? 人生に彩りが生まれたろう?」

('A`)「あ……ぁ、ぅぅ……」

ドクオは、返答に困っているようだったが、兄者は気にせず話を続ける。

( ´_ゝ`)「まぁ、いい。今すぐでなくともいつかは気付く。
       それより、今からフーさんに挨拶しに行くぞ」

( ^ω^)「フー……さん」

( ´_ゝ`)「ああ。挨拶さ、……せずに帰ってみろ、この街を生きて過ごせないぞ」



28: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 22:32:06.91 ID:GEg6qMGP0
右の部屋……「第八通路・喫煙室」へ足を踏み入れた。
今までの塗装されていない巨大な道路とは違い、白塗りのコンクリートで出来た通路が伸びていた。
車も通れそうにないし、消火器も、喫煙スペースもある。まるで会社の通路のように思えた。

( ´_ゝ`)「ここだ」

一本通路を歩いてすぐ、「渉外室」と掲げられた部屋の前に立つ。
流石兄弟はネクタイを整え、扉をノックする。

(´<_` )「失礼します」

そして弟者が扉を開け、部屋の中を覗く。

部屋は、大量の繋げられたデスクと、スクラップ帖で埋め尽くされた本棚が印象的だった。
その奥、総ケヤキの机の上で書類を書き、肘掛のついた豪勢な革椅子に身を沈める男が1人、居る。

この男が、フーという男なのだろうか。
筆を止め、顔を上げる。
堅気とはとても思えない、陰惨な凄みがハッキリと感じ取れる。

ミ,,゚Д゚彡「……おう、流石共かい」

( ´_ゝ`)「ご無沙汰しております」

(´<_` )「今日は、スペシャルの3人を連れてきました」

僕、ドクオ、ショボン。 緊張は一瞬にして急上昇する。



32: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 22:38:20.21 ID:GEg6qMGP0
フーは僕らを見る。
まるで物を選別するかのようで、思わず萎縮してしまう。

ミ,,゚Д゚彡「ふん……。ま、"あれ"よかはマシなんだろな?」

( ´_ゝ`)「見込みはあると思っています。全力で彼らの育成に励むつもりです」

ミ,,゚Д゚彡「実際教育せんと判らんとこもあるしな。ま、木偶があれ一つだけでよかったわ」

(´<_` )「……そうですね」

体が石のように硬直する。
どんなに肝の据わった人だって、この状況では縮こまるしかない。

ミ,,゚Д゚彡「おう……、今から俺は会議があるし、……挨拶もまぁ、仕舞いだ」

フーが切り上げる。どうやら、僕達は解放されるようだ。

( ´_ゝ`)「お疲れ様です。……では失礼します」

(´<_` )「失礼します」

慌てて僕たちも3人で「失礼します」と、威勢よく言葉を発する。
そうでもしないと、本当に殺されるような気がした。。。



45: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 23:17:46.72 ID:GEg6qMGP0
・・・ ・・・

( ´_ゝ`)「明日から早速授業が始まる。いいな」

フーへの挨拶が終わると、今日は帰宅を許された。
白いバン。相変わらずアイマスクはさせられているが、ヘッドホンは外すのを許可された。

(´・ω・`)「……はい」

会話が許可されているのか分からないが、疑問のあまり堪らず僕は問いかける。

( ^ω^)「あのっ……幹部候補生とか、スペシャルって……どういうことですかお……?」

( ´_ゝ`)「言葉の通りだ」

言葉の通り? 本当に僕らが、幹部の候補に?

( ´_ゝ`)「エリートコースだ、エリートコース」

('A`)「エ、エリート……!?」

( ´_ゝ`)「そうだ。 スペシャルというのは、ふむ……そういう制度があってだな」

(´<_` )「本来の候補生とはルートが違う」

真実のようだ。 だとしても、高揚感だとか、喜びは全然生まれない。



51: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 23:22:04.77 ID:GEg6qMGP0
(´・ω・`)「……フーさんは、どんな人なんですか」

ショボンが唐突に、失礼と取られかねない質問をした。

(´<_` )「その質問は? フーさんへの侮辱か?」
       
(´・ω・`)「いえ……理解を深めたいので、この質問をしました」

( ´_ゝ`)「あの人のことはあまり口には出したくないんだがな」

幾分、車の速度が増したような気がする。

( ´_ゝ`)「何をしてもトップに立てるような人だな。
       ……あの人のことを、天才……だとか、怪物というのだろうな」

すると、突然体に強い重力が掛かる。
どうやら地下から地上へ戻る坂に、差し掛かったようだ。



( ´_ゝ`)「お前達は、その御方から授業を受けるのだ。覚悟は、いいだろうな?」



54: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 23:25:58.49 ID:GEg6qMGP0
・・・ ・・・

女神像公園の前で降ろされた。
白いバンがやっと見えなくなった辺りで、僕たちは「はぁ〜」と息を漏らし、
路上でブッ倒れるかの如く、疲れがドっと溢れ出す。自転車に乗るのも、難しいほどに。

('A`)「つ、疲れたぁ〜!!」

(;^ω^)「緊張で死ぬかと思ったお!」

(´・ω・`)「……思ったよりは、て感じだったけど……」

膝に手をつき、思い思いを語る。 日はもう暮れ始めている。

('A`)「んまぁ、そうだよな。フッツーに頑張れそーだし」

(;^ω^)「頑張る……か……お」

何となく、その言葉に違和感を覚えた。

(´・ω・`)「それじゃ、当面の目標でも再確認しようか」

( ^ω^)「そうだお。まずは、CPの本当の目的を探るんだお!!」

('A`)「あ……あの、そのことなんだけどよ……」



58: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 23:28:44.01 ID:GEg6qMGP0
(´・ω・`)「ん? どうしたドクオ。ブーンの言う通りでよくないかい?」

('A`)「あ〜……。そういうことじゃなくってさ。何つうか……」

ドクオが狼狽しながら、何かを説明しようとしていた。

('A`)「……やっぱ、何でもねぇや……。今日はもう、帰ろうぜ」

( ^ω^)「………」

何だろうか、嫌な予感がする……。
とは言っても、この状態からではもうドクオから詮索出来ない。

(´・ω・`)「そうだね。今日はもう帰ろうか」


明日から、その「授業」とやらが始まる。
確かに、もう休息は取っておきたい。


カラスが鳴いても不思議ではない、影の伸びるオレンジ色の地面を
3人で自転車を引きながら、ヒルズへと向かった。



62: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 23:31:51.75 ID:GEg6qMGP0
・・・
・・・・・・

次の日。 朝の9時50分。ドクオは遅刻せず、10時前にはこの女神像公園前に集合出来た。

何故この時間、集合をしたかと言えば 「授業」のせいに、他ならない。

(´・ω・`)「まさかドクオが一番早く来るとはね……」

('A`)「へっ! おめぇらがチキってるからさ♪」

( ^ω^)「(早く来た方がビビってるってことじゃねーのかお?)」

(*'A`)「チッチッチキチ、チキってるぅ! ヘイッ!!」

(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」

('A`)「すんまへん、正直調子に乗りました」

すると、道路の彼方から例の白バンが見えてくる。
お迎え、だ。



65: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 23:34:58.70 ID:GEg6qMGP0
目の前でそれは止まり、ドアがタクシーのように自動で開く。
車内には、やはり作業服の男達が数人乗っている。
どうやら今日は、流石兄弟は居ないようだった。

僕たちは黙って乗り込み、配られるアイマスクとヘッドホンを装着し
シートに腰を掛ける。

(=゚ω゚)「出発だ」

エンジンが噴く。


あぁ、あの地下帝国に
またも僕たちは   連れて行かされるのか……。

そしてそれが、日常化してしまうのだろう。。。



69: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 23:39:09.52 ID:GEg6qMGP0
例のバルコニーが正面にあり、右と左に扉のある、あの道に降ろされた。

昨日の流石の話によれば、ここは「バルコニーエリア」と呼ばれる場所らしい。
そして僕たちは基本、このエリア内でしか自由な移動は認められていない。

( ´ー`)「ご苦労。左の部屋の、資料室にフーさんが既にいらっしゃる。
      ノックをしてから、入るがいい」

このエリアに立っていた、案内役らしきこのスーツ姿の男に催促され、
僕たちはノックをし、資料室に入る。

( ^ω^)「失礼しますお……」

扉を開ける。 資料室の中は壁の代わりに本棚となっており、
無数のデスクが並び、観葉植物と金庫が印象的な、書斎のような部屋だ。

そしてその正面奥の壁……いや、本棚から資料を吟味している
フーの姿が、そこにあった。


ミ,,゚Д゚彡「おう、待っとったぞ。この本棚の裏が勉強場所だ」

どうやら、この本棚の裏に、まだ場所があるらしい。
よく見ると、左の方に少しスペースが開いていた。あそこから行くのだろう。



73: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 23:42:03.86 ID:GEg6qMGP0
3人で、その勉強場所に行こうとすると、フーが思い出したように話しかけた。

ミ,,゚Д゚彡「そこには1人、お前らと同じスペシャルのが居るからな」

ということは、僕たち以外にもこの街の真実を知った人間が存在したわけだ。
そう言えば……フーとの挨拶のとき、木偶扱いされていた人がいたけど……。

まぁいいや。本棚の少し開いたスペースを通り、勉強場所に踏み入れた。
ホワイトボードに、長い机……どこかの予備校の印象だ。
そして……

(;^ω^)「えぇぇえ!!??」

('A`)「 ! 」

(;´・ω・`)「……! そんな……」

その、机にて本とノートを開いている1人の少女……。


从'ー'从「あ、はじめま……あれれぇ〜!?」

渡辺さん、想像もつかない人物が スペシャルだった。



78: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/14(土) 23:48:16.96 ID:GEg6qMGP




今宵も、あなたの知らぬ、知りえぬ裏にて
チクタクと不思議に針が進みます。


その針の名はカウントダウン。
取り返しの絶対につかぬ、狂気の演目。


あなたの眠る、その姿の影にて、針は止むことを知らず。
チクタク チクタク。 今日の分の針は進んだぞ。


  
                        (第9話終)



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