( ^ω^)は綺麗な街に住んでいるようです
- 8: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/22(日) 23:57:14.99 ID:TkvYPpVd0
- 第10話
ミ,,゚Д゚彡「……っと、つまりラウン湖の水を、そのまま女神像の噴水に使用しているわけだ」
授業内容であるフーの、周辺地理等の話がどうにも頭に入らない。
それもそうだろう、まさか……
从'ー'从「………」
渡辺さんもスペシャル……この街の秘密を知る人とは、考えもしなかったからだ。
しかし、今は授業だ。生徒は黙り、フーの言葉をノートに書き留めなければならない。
考え事をしてしまったため、話を聞き逃しそうになって、少しばかり焦る。
確か、12時半からは昼休憩があるらしい。
そのときに、渡辺さんから話を聞いてみよう。
そう考えながら、僕は必死にノートを取った。
授業内容はやがて、ペルトンだとか、カプランだとか、水車の話へと移り変わっていった。
- 10: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/22(日) 23:59:01.26 ID:TkvYPpVd0
- ・・・ ・・・・
やがて12時半となり、昼休憩を迎えることになった。
時間になると同時にフーは資料室から姿を消し、
入れ替わるように割烹着を着た数人が、昼食を運びに給食用ワゴンを引き、部屋に入ってくる。
銀色のワゴンに乗せられている食器群は、
トン、トン、と僕たちの目の前の机の上に置かれていく。
きれいな飴色のオニオンスープ、
干乾びきった、硬いバケットのスライス。
オリーブオイルと塩胡椒で味付けされたレタスのサラダ。
あまり食欲をそそるラインナップではないが、、
パン切れをスープに浸しながら口に運んでいると、
渡辺さんから、僕に話しかけてきた。
从'ー'从「まさか、ブーン君たちもスペシャルだなんてね……」
スープで汚れた口元を拭いながら、少し驚いていた様子であった。
( ^ω^)「まさか、僕たちも渡辺さんが、だなんて驚いたお」
从'ー'从「えぇ〜? ふふふ……」
- 11: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:01:36.50 ID:k12P+wOm0
- ショボンは無言の状態で、硬いままのパンに齧りついている。
よく見ると目の焦点が合っていない。かなり驚いたのだろう。
ドクオは渡辺さんの話には、まるで興味がないようで、オニオンスープに舌鼓を打っていた。
ぶつ切りにされた玉葱が特に気に召したようで、
しきりに「うめー」「うめーよ」と呟いていた。
渡辺さんと会話が出来る状態の人間は、どうも僕だけのようだ。
( ^ω^)「どういう経緯で……なったんだお?」
从'ー'从「んん〜っと、スペシャルに?」
( ^ω^)「そうだお」
この街の秘密を知ることが出来た……というのなら、
もしかしたら渡辺さんは、ただのオトボケな女の子ではないのかもしれない。
(´・ω・`)「ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ」
('A`)「ショボンショボン、スープちょうだいよ」
从'ー'从「なんかね〜、散歩してるときに気付いたの」
- 13: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:03:43.96 ID:k12P+wOm0
- ( ^ω^)「気付いた……?」
从'ー'从「うん。清掃局のトラックのタイヤがね……」
( ^ω^)「え? タイヤかお??」
从'ー'从「ヴィップの街中を走るだけにしては、おかしいタイヤなの。
まるでここ、地下のような激しい砂利道を走るような感じなの」
ヘェ……ってことは……ええと、
清掃局とここ、CPの関係が根深いということか。
从'ー'从「それで考えてたら、何か捕まっちゃって〜
そのままスペシャルになっちゃったの」
(;^ω^)「はぁ……」
从'ー'从「6月頃からかなぁ……ブーン君たちはどうして?」
( ^ω^)「えっと……気付いたのはゴミ箱の回収についてで………」
渡辺さんに今までの経緯を話す。それが終わると同時に時間となり
割烹着の人間がまた現れ、食器を片付けてそして消えていく。
それから5分も経った頃であろうか、フーが再び部屋に気だるそうにやって来た。
ミ,,゚Д゚彡「よし。それでは授業を再開する」
- 15: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:07:16.76 ID:k12P+wOm0
- ・・・ ・・・・
フーの授業は4時まで続いたが、
所々に休憩時間が挟まれていたため、あまり苦痛には感じなかった。
ミ,,゚Д゚彡「今日の授業はこれで終了だ、ファイルはあの棚ん中へ仕舞え」
言われた通り、指差されたその棚へ、
使用したプリントとノートを挟み込んだファイルをしまう。
勉強スペースから離れ、
本棚が壁代わりと為っている 扉の見える、メインの場所へ移動する。
この部屋にはどれだけの本が、蔵書されているのだろうか―――
そう考えているとき、扉が外からノックされるのに気付いた。
そして「失礼します」の声と共に扉は開かれ、
少し怯え気味な、スーツ姿の男が小走り気味に、フーの近くへと歩み寄った。
その男は、部屋前にて僕達を案内した あの男だった。
(;´ー`)「すいません、フーさん! サージェントが予定時間より早く到着しまして……!」
ミ,,゚Д゚彡「あの軍曹か……予定より1時間近く早いな。……おう、今から行くわ」
開かれたままの扉から、フーはさっさと消えてしまった。
挨拶する一瞬もなく。
残されたスーツ姿の男は、くるりと僕達の方へと向いた。
- 16: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:09:51.90 ID:k12P+wOm0
- ( ´ー`)「お前達、外の道に白バンが停車してるからそれに乗れ。今日はもうええ」
それだけ言うと、その男も小走りで廊下へ向かい、やがて見えなくなった。
(´・ω・`)「………」
('A`)「んじゃ、けーるか」
ドクオが促し、全員は部屋の外へ出る。
ショボンはしきりに、資料室を見渡していたが、
やがてそれをやめて、僕達と一緒にバンへ乗り込んだ。
運転席の作業服の男は、スペシャル全員が乗っていることを確認した後
エンジンを掛け、車を揺らす。
助手席に居た男は相変わらず、アイマスクとヘッドホンを僕達に配る。
全員が装着したのを確認し、車は発進した。
この現状に慣れてきそうな自分が、怖い。
- 19: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:13:35.41 ID:k12P+wOm0
- ・・・ ・・・・
いつもの公園に戻された。
しかし、渡辺さんだけは降ろされずに、そのまま白いバンは消えてしまった。
降ろす位置が違うのだろう。
バンの走った方向を見つめながら、ドクオはあっけらかんに言う。
('A`)「そんじゃまー、今日もお開きにすっか」
(´・ω・`)「いや、帰りに僕の家に寄ってくれないかな?」
ショボンが、確信めいた何かを瞳に宿らせながら誘う。
なんだろう? 気になるな。。。
( ^ω^)「どうかしたのかお、ショボン?」
(´・ω・`)「ん? ちょっと見せたいものがあるんだよ」
('A`)「あんだよ〜……」
そう言うと、ショボンはさっさとヒルズへ向かって歩き出してしまう。
慌てて僕とドクオは、ショボンを追いかける。
ショボンの「見せたいもの」の内容が分かったのは、ショボンの家の前でのことだった。
- 20: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:14:58.35 ID:k12P+wOm0
- (´・ω・`)「仕掛けておいたんだ」
('A`)「 ? 」
( ^ω^)「えと……何をだお?」
ショボンは鍵を回し、そして扉を開ける。
……すると、何か、理解したような気がした。
家に入れる必要性を考えたら、多分……うん、あれだな。
(´・ω・`)「まぁ、待ってくれよ」
自分の部屋の中へ招くショボンは、どことなくノリノリだ。
ドクオは頭の上に?を浮かべながらも、ズカズカと部屋に入り込む。
部屋の中。ショボンは自分のパソコンに電源をつけた。
(´・ω・`)「まぁ、ブーンは気付いてる顔って感じだけど……」
( ^ω^)「いやっほっほっほ」
('A`)「な、何の話だよ?」
(´・ω・`)「あのバルコニーエリアに、発信機を置かせて貰ったのさ」
- 22: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:17:16.56 ID:k12P+wOm0
- ( ^ω^)「おおー」
('A`)「え、あ……あぁ……そう……」
何故かドクオは、あまり乗り気ではない。元々やる気のある人間ではないのだが、
やはり少し気になってしまう。
( ^ω^)「どうかしたのかお、ドクオ?」
('A`)「ん、いや……」
そういえば、昨日の帰りもこんな風に、しどろもどろだった。
何か言い出したいけど、それが出来ないような……。
(´・ω・`)「どうしたんだドクオ、嫌だとか?」
ドクオは口をもごもごと動かし、視線も定まらない。
しかし、とうとう喋りだした。
('A`)「俺達は……さぁ……特に学校でも目立ってないし、勉強だってさ、
ショボン以外はダメダメじゃん………」
それは、卑下だった。
( ^ω^)「(……何を突然? それに僕はドクオ程、頭悪くないお!)」
- 23: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:18:41.40 ID:k12P+wOm0
- (´・ω・`)「……で?」
('A`)「だからさ……俺とかは、この先就職しても、ロクなとこにゃ就けないし
それに、あいつらにバカにされたまま、見返せなくってそのままさ……」
あいつらとは、学校で自分のことを馬鹿にしてくる連中のことだろう。
( ^ω^)「………」
('A`)「でもさ、この……スペシャルて、何ていうか……チャンスじゃん」
(´・ω・`)「チャンス?」
('A`)「あ……だからさ、この……このまんまの人生じゃ、クズみたいなもんだし……」
ドクオの言いたいこと、それは要するに……
スペシャルのままで居よう、というものだろう。。。
変に調べたりせず、このままスペシャルから幹部になろうという、 諦めの考え。
でも、それも完全に否定することは出来ない……
ドクオの言うことに、理がないワケではないのだから。
('A`)「だから……さ、スペシャルなら……人生が……」
- 24: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:19:59.15 ID:k12P+wOm0
- ( ^ω^)「ドクオ……」
ようやく糸口を見つけたようで、
少し口が滑らかになる。
('A`)「だからさ、もうやめよう!
調べるなんてよ、やったって意味がねえんだよ!!」
こんなタイミングで、ドクオが本音をぶちまけたのは
他でもない、現実が怖かったからだろう。
CPが本当に、悪行を犯しているかもしれないという、現実。
('A`)「なぁ! ブーン、ショボン!?」
ドクオは促す。
CPのことを調べれば、やがて殺されるかもしれない。
そんな恐怖も、ドクオの背景には存在しているように思う。
(´・ω・`)「……ふうん……じゃあ……」
- 25: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:21:34.57 ID:k12P+wOm0
- (´・ω・`)「それは、その考えは……CPがどんな悪行をしでかしてるか、
判明したとしても、揺ぎ無いものなのか?」
(;'A`)「そ、それは……だから……」
ドクオは狼狽する。
どこか心の底で、"そうであって欲しくない"と願っていたのだろうか。
(´・ω・`)「それでも君はCPにすがりつくのか?」
('A`)「まだ分かんないだろッ!?」
突然、大声を張り上げた。
( ^ω^)「……本気なのかお? ドクオ?」
('A`)「………」
ドクオは俯き、そして顔を上げる。
(;A;)「だ、だってさぁ……! CPブッ倒してもさぁ!!
また俺達はバカにされる生活に戻るんだぞ!!??」
- 27: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:23:53.21 ID:k12P+wOm0
- ドクオはそれだけ叫ぶと、腕で涙を拭う。
顔もまた伏せる。嗚咽が聞こえだした。
(´・ω・`)「ブっ倒すかなんて、まだ分かっていないだろう」
( A )「………」
( ^ω^)「そうだおドクオ、まだ……僕たちは調べてるんだお」
よく考えてみると、ドクオはその"調べる行為"を止めようと
言っているのだから、あまりこの発言は意味がないのかもしれない。
( ^ω^)「だから……」
( A )「ん……」
肯定とも否定とも取れるような生返事を、ドクオは発したかと思うと、
震える声でこう呟く。
( A )「……帰るな、俺……あとさ、それ降りるわ……」
ドクオは背を向け、玄関へ向かう。
- 28: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:25:23.98 ID:k12P+wOm0
- 玄関の扉が開き、キィィという音を立てる。
(´・ω・`)「……逃げるのかい?」
返事はなかった。
その代わり、扉の閉じる音だけが鳴り響いた。
( ^ω^)「……行っちゃったお」
(´・ω・`)「……んー」
ショボンはパソコンに向かいながら、キーボードを手馴れたように打ち込んでいる。
(´・ω・`)「……あいつは、あんな奴さ」
(´・ω・`)「現実を知るのが怖いくらい脆いくせに、誰かから認められたい、目立ちたい……
でも傷つきたくない……そんな考えがあいつの中に、渦巻いてるのさ」
パソコンを眺めるそのショボンの顔は、どこか真剣で、そして悲しそうだった。
(´・ω・`)「無理にでも現実を見せないと、ああいうのは行動を起こさないよ」
( ^ω^)「現実……かお」
- 30: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:27:04.33 ID:k12P+wOm0
- 現実を見せる。てことはつまり……
( ^ω^)「CPが何を目的をしているか、それをドクオに見せ付ければいいんだお!?」
(´・ω・`)「……んー」
変にやる気のない変事をしながら、まだパソコンに向かっている。
(´・ω・`)「あいつはさ、変なとこで調子乗りなクセしてチキンなんだよ」
( ^ω^)「お?」
唐突な話だ。
(´・ω・`)「まあ……CPの裏を暴いても、あいつが動くかは分かんないよ?」
( ^ω^)「むむう………」
それは、僕にとっては嫌な話だった。
僕が、この街の秘密を暴こうと動いたのは、偏にドクオとショボンが居たから。
この3人だからこそ、僕はここまで進めた気がする。
ドクオが離脱したことに、相当なショックを僕は受けていた。
ドクオが抜けただけで、僕はもう本当にCPの裏を暴けるのか不安になっていった。
どんよりとした、泥のような不安だ。
(´・ω・`)「………おや」
- 32: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:29:17.41 ID:k12P+wOm0
- ショボンはパソコンから目を離し、僕を見る。
(´・ω・`)「ブーン、あのバルコニーエリアが大体どこら辺にあるかが分かったよ」
( ^ω^)「……お!? ホントかお!? ショボン!」
ショボンは回転イスを揺らしながら、
ニヤリとほくそ笑んだ。
(´・ω・`)「シティーポリスマン町長の家の前、だ」
( ^ω^)「町長の家の前……」
町長の家……それは家という単語で片付けることが出来ない。
豪邸とか、屋敷とか、そんな形容をすべき代物だった。
大会社「ひぐらし」の前社長として、それは相応しい構えと気品を漂わせていた。
(´・ω・`)「ということは、だ。あのロビー・ホールの奥にあった、
あの黒いエレベーターは………」
( ^ω^)「 !! 町長の屋敷に通じてるかもしれないお!!」
(´・ω・`)「そういうこと」
- 35: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:33:22.91 ID:k12P+wOm0
- (´・ω・`)「……というよりは、まず繋がってると思うよ。あのエレベーター」
( ^ω^)「そうかお」
(´・ω・`)「まあ予想なんだけどね、ほぼ確実に繋がってるよ、うん」
矛盾した言葉だな、と思いつつ窓を見る。
もう、日は完全に暮れていて、夜となっていた。
そろそろ帰らないと怒られてしまう。
(;^ω^)「あー、ショボンっ 今日は帰るお!」
(´・ω・`)「ん? おお、もうこんな時間か」
僕は立ち上がり、整頓されたショボンの部屋を出て玄関に向かう。
ショボンは見送りとして付いてきてくれた。
(´・ω・`)「明日も少しだけど、授業あるしね。じゃあ、また明日」
( ^ω^)「また明日だおショボン!!」
僕は玄関の扉を開けて、ショボンに手を振り外に出る。
エレベーターへ向かいながら、ドクオのことを考えていた。。。。
- 36: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:35:58.91 ID:k12P+wOm0
- 家に帰り、親に「明日も昼御飯は、いらない」と告げる。
最近外出時間が長いのを、気にしていたみたいだけど、なんとか了承は貰った。
どうすれば、心配を掛けずに過ごせるんだろうか。
・・・ ・・・・
次の日。
いつも通りの女神像公園に、いつも通りの時間。
( ^ω^)「おはようだお!」
いつも通りの集合場所と、いつも通りの集合時間。
(´・ω・`)「やあ、おはよう」
今から白バンが来るのを待つ。
ドクオはまだ来ていない。
( ^ω^)「今日も勉強かお?」
(´・ω・`)「そうなんじゃないの?」
- 39: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:39:26.83 ID:k12P+wOm0
- ( ^ω^)「はぁ〜……。嫌になるお」
僕は公園内へ目を向ける。
乳母車をひき、笑顔で赤ちゃんに話しかける主婦。
ポコペンを本心で楽しんでいる小学生達。
そして相変わらず美しい女神像と、その噴水。
( ^ω^)「こーんな綺麗な街の地下で……無理矢理勉強させられるだなんてお」
(´・ω・`)「……まぁ、そう言うなよ」
前方から、1つの影が見える。
よろよろと歩きながら近づくその人間は、ドクオだった。
('A`)「………」
( ^ω^)「おはようだお、ドクオ」
('A`)「ん、あぁ……」
(´・ω・`)「………」
- 41: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:42:09.02 ID:k12P+wOm0
- その顔は青ざめていて、目も疲れきっていた。
髪の毛も妙に脂っぽい。夜更かしでもしたのだろうか?
('A`)「……ふぅ……」
ドクオは太陽の影になるよう茂みの近くに腰掛ける。
視線を僕たちに向けないよう、顔を伏せながら。
ショボンはそんなドクオを、ちらっと眺めるも
その後はそ知らぬ顔で、天を眺めていた。
(;^ω^)「…………」
(´・ω・`)「…………」
ドクオはドクオで、吐きそうな顔をしながら
地面をぼーっと見つめていた。
('A`)「…………」
- 43: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:46:24.81 ID:k12P+wOm0
- 誰も話をしない。
聞こえるのは公園内の遊び声と、蝉のなく声ばかり。
行動も起こさない。
動いているのは天に白い杖を伸ばしている飛行機のみ。
('A`)「…………」
(´・ω・`)「…………」
息の詰まりそうな、嫌な空気が流れていた。
(;^ω^)「(な、何か言うべきかお……)」
この空気、どうしよう……
どっちかに話しかけるべき? いや、う〜ん……。
それとも、全員が話を出来るよう、努めるべきか?
その打開策を考えているうちに、目の前に高級車が停まった。
(´・ω・`)「ん……?」
しかし、それはいつもの白いバンではなかった。
('A`)「メルセデスのS……?」
- 45: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:50:13.65 ID:k12P+wOm0
- ドクオの言う通り、それはメルセデス・ベンツだった。
高級感漂わせる重厚な黒のボディーが、
空の青色と、息を呑むほどの対比を作り出していた。
でも、これはあのCPのものだろうか。
分からないことが、まず多すぎる。
僕たちとは、関係のないのかもしれない。。。
そう考えていると、車の扉が開き、見覚えのある顔が姿を現した。
( ´_ゝ`)「今日はこれに乗り込め」
運転席に座っているらしい兄者が、そう促す。
よく見ると助手席には弟者が座りながらノートパソコンに何かを打ち込んでいた。
言われたとおりに3人で後部座席に乗り込む。
何故かアイマスクとヘッドホンは渡されなかった。
('A`)「……今日は、つけないんですか? 耳と目に」
ドクオが目と耳に、手を当ててジェスチャーする。
( ´_ゝ`)「ああ。いつもとは別のトコなのでな」
- 51: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 00:55:40.09 ID:k12P+wOm0
- (;^ω^)「(違うところ?)」
( ´_ゝ`)「お前らも知っているはずだ」
兄者は手馴れた風にハンドルを回し、車をUターンさせる。
ミラー越しに僕たちの姿を確認しながら、兄者は呟く。
( ´_ゝ`)「中央集会所さ」
そして、車は目的地へと走り出した。
・・・ ・・・・
中央集会所。
僕たちが昔、遊び場として使っていたところだった。
卓球台、トランポリン、児童書が沢山入っている本棚。
小学校の頃は、帰りにランドセル抱えたまま、毎日遊びに行ってた気がする。
今は、全く違う目的で向かっている。
中央集会所は、そう遠くない。
流石兄弟と僕たちを乗せたこの車は、5分も掛からずに目的地に到着した。
- 53: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 01:00:36.37 ID:k12P+wOm0
- 中央集会所の正面玄関には、
「関係者以外立ち入り禁止」という看板が、掛けられていた。
駐車場には、お決まりの白いバン、それに農業用車や自家用車まで色々と停まっている。
(´<_` )「ついてこい」
流石兄弟は正面玄関を開け、集会所内へ ズカズカと入り込む。
僕たちはそれにそろそろと、くっついて進んでいく。
受付のオバさんは、流石兄弟の顔を見ると
「どうぞこちらへ」と、奥の廊下を指しながら、顔を伏せた。
そのオバさんは、子供の頃からここで働いていた人で、顔馴染みだった。
その光景に僕はショックを受けつつも、
流石兄弟の後を追い掛ける。
やがて、襖が目の前に見える。
兄者はそれを引き、中に入る。弟者も同様に、中に入る。
僕たちも、襖の向こうに行く。
そこは、広い和室だった。
ざっと20人近くの人間が座布団の上で正座をし、円を囲んでいた。
座布団は敷かれているが、人の座っていない円の一部分が存在している。
全部で、6つ。僕たち3人と流石兄弟で5人。
後の1人は……?
- 54: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 01:03:54.70 ID:k12P+wOm0
- この1つは誰だろうか―――そう考えながら、座布団の上に座る。
全員が座ったのを確認すると、兄者は立ち上がり、円の中心へ向かう。
( ´_ゝ`)「それでは、中央支部定例会議を始める」
その言葉が発せられると同時に、一斉に紙をめくる音が聞こえる。
よく見ると、僕たち以外の人間は資料らしきものを手に取り、それを眺めていた。
( ^ω^)「(説明不足だお……会議ってことくらい、事前に知らせて欲しいお)」
少し怒りを覚えながらも、円を囲んでいる人間達を観察する。
普通の人間……やや年寄り気味か、
CPの人間とはあまり思えないような人達だった。
('A`)「………」
( ^ω^)「( ん? )」
ドクオがある一点を見つめ、不快そうな表情を浮かべていた。
何かあるのだろうか、その方向を僕も見る。
( ,'3 )「………っち……」
1人の老人が、同じく苛々とした表情をしながら、ドクオを睨みつけていた。
それだけじゃない、僕とショボンのことにも
時折「殺すぞ」と言いたげな視線を送っている。
- 64: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 01:33:12.93 ID:k12P+wOm0
- この老人には、見覚えがある。
この集会所脇のゴミ箱に、発信機を捨てた(正確には送り込んだ)際に、
因縁をつけて邪魔をしてきた人だ。
それだけじゃない。 公園にただ居るだけで、
怒鳴りつけるような真似も、平気で行うような人間でもある。
苦手……いや、大嫌いな人種だ。
そして今も、この老人は僕たちに因縁をつけていた。
( ´_ゝ`)「……そして、このスペシャル3人はここ、中央支部所属となるのだ」
兄者の説明で、ハっと我に返る。
内容は僕たちについて、だった。
視線も急に集まり、突然緊張しだす。
( ´_ゝ`)「ブーン・ホライゾン、ドクオ・モイタン、ショボン・オンザロックの3人だ」
円陣を囲んでいる数人が、ぱらぱらと拍手を僕たちに送る。
嬉しいやら恥ずかしいやら。そんな感情に包まれている中、
襖が開き1人の若い男が、分厚い書類鞄を持ちながら飛び込んできた。
( ゚∀゚)「失礼します。追加資料を持ってきました」
- 68: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 01:37:48.88 ID:k12P+wOm0
- その男は1人ずつに資料を手渡し、それが終わると今度はお茶を差し出す。
秘書か何かだろうか? そう思いながら、男からお茶を受け取った。
その男は全員にお茶を渡し終えると、1つ空いていた座布団……僕の隣に座り、
持っていた資料を熟読し始めた。
兄者の説明は僕たちの話を終えて、レベル3とか、よく分からない話へと移っていった。
すると、あの秘書らしき男が、ひそひそと話し掛けてきた。
( ゚∀゚)「なあ、君達が新しいスペシャルの3人なのかい?」
( ^ω^)「あ……はい、そうですお」
( ゚∀゚)「そうか。まぁ……頑張れよ、負けんなよ」
それだけ言うと、男は目線を再び資料に戻す。
僕は返答代わりに軽く頷き、兄者の話に耳を傾けた。
ふと気付く。
あの老人が、僕に話し掛けてきてくれたこの男の人を
まるで馬鹿にするかのような、勝ち誇ったかのような顔をしながら睨みつけていたのを。
- 69: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 01:42:26.92 ID:k12P+wOm0
- (´<_` )「……それでは、休憩時間に入る」
弟者は時計を一瞥してから、そう宣言する。
円を組んでいた人達は、姿勢を崩しながら、にこやかに談笑し始めた。
ドクオは部屋の隅に縮こまり、眠りだす。
( ^ω^)「(どうしよっかお)」
そんなことを考えてると、ショボンが立ち上がり襖の方へ向かっていく。
そして僕の方を見て、「来て」と誘う。
何だろうな、そう考えながら僕はショボンに誘われたまま、襖を開け廊下へ
そして、集会所の玄関を通り、外に出てしまった。
(´・ω・`)「う〜ん……」
ショボンは周りをキョロキョロと見渡していた。
( ^ω^)「どうしたんだお? ショボン」
(´・ω・`)「ん? ここでなら、言えるからさ……!」
( ^ω^)「ま、まさか! 僕への愛の告白かお!?」
(´・ω・`)「ふふふ……いわゆる御名答、て奴だね」
(;^ω^)「な、なんと!?」
- 71: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 01:44:57.00 ID:k12P+wOm0
- (´・ω・`)「……って、んなわけあるか。探してるの」
突然ノリをブチ切られる。
(´・ω・`)「君がさっき話していた、あの秘書っぽい人……」
( ^ω^)「……を、探してるのかお? 何でだお?」
(´・ω・`)「ひそひそ声が聞こえたんだけどね。あの人スペシャルらしいよ」
( ^ω^)「お!?」
ショボンは少し頬を上げ、得意気に話を再開する。
(´・ω・`)「あの人は、ジョルジュって人らしい。最古のスペシャルだよ。
でも、今はもう幹部候補生ではないらしい………」
んん? 何で幹部候補生ではないのか??
( ^ω^)「何でだお……?」
ショボンは少し、表情を変える。
(´・ω・`)「……どうも、実力がそぐわなかったらしい。
今では、この中央支部の秘書とか、地下で少し働いているって……」
(;^ω^)「はぁ……」
- 73: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 01:49:43.76 ID:k12P+wOm0
- 何と言うか、聞いてるだけで気まずくなるような、居心地の悪い話だった。
しかし、本当に居心地が悪いのはそのジョルジュという人だろう。
どんどん降格されていく身は、さぞ辛いだろう。。。
(´・ω・`)「ん……!?」
ショボンは集会所の裏を覗き込む。
そして、僕に「こっちに来い」と手招きをする。
(;^ω^)「なんだおなんだお……」
僕のその集会所の裏に、顔を覗かせてみる。
そこに広がる光景は、水場と並木通り、そして自動販売機。
その自動販売機により掛かっている人間が見えた。
ジョルジュ、あの人であった。
疲労でもたれ掛かっているのだろうか、と
僕はよく観察して、彼を見る。そして気付いた。
彼は、すすり泣いていた。体を震わせ、歯を食いしばりながら。。。
- 81: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 02:13:27.73 ID:k12P+wOm0
- その光景に気付いたとき、僕とショボンは思わず
覗き込み行為を止めて、正面玄関前まで無言で走り出してしまった。
見てはいけないものを、見てしまった。
知ってはならない人の心を、覗き込んでしまったのだった。
罪悪感がどうしようもなく襲い掛かる。
それはショボンも同様で、少し後悔したような顔をしている。
お互い、無言に為らざるをえない状況だった。
そのとき後ろから声が鳴り響いた。
「おい、クソガキっ!!」
その怒声に、僕とショボンは振り返る。
あの……例の老人だった。
( ,'3 )「お前らもな! ああなるんじゃッ!! 分かったか!?」
悪意のこもった声は、唾とともに老人の口から飛び出していく。
入り口へその体は向かいながらも、その言葉は止むことがない。
( ,'3 )「無能モンはいつか堕ちるんじゃ!!
調子に乗るんやないぞッガキ!!分かったか!?」
そして老人は、集会所の中へ入っていった。
- 82: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 02:17:19.30 ID:k12P+wOm0
- 呆然とその入り口を眺めていると、更に後ろから声が聞こえた。
「おーい、おいおい! 何かやっちゃったの!?」
おどけた調子で、爽やかな声。
振り向く、その声の主はジョルジュだった。
( ゚∀゚)「バルケンさんが、まーた火山噴かせてたからさ」
(;^ω^)「あ……いや、その」
( ゚∀゚)「なんだなんだ? インネンつけられちまったってか!?」
(;^ω^)「たはは………」
( ゚∀゚)「まったくなぁ……困ったもんだよ」
屈託のない笑みを浮かべながら、ジョルジュは僕との会話に興じていた。
すると、ショボンが突然変わったことを言い出す。
(´・ω・`)「ジョルジュさん……実はちょっと、
来て欲しいんですよ、いいですか?」
( ^ω^)( ゚∀゚)「え……?」
- 84: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 02:19:50.58 ID:k12P+wOm0
- ―――……、、ザザァ……
ラウン湖は、今日も美しく飛沫を上げながら波を打っていた。
彼女、クー・イノセントと出会った、僕の運命の場所でもある。
彼女は言った、僕のことが好きだと。
僕も言った、「僕もあなたが好きだ」と。
どれほど語り合ったろう、ヴィップの未来や芸術について。
廃墟の退廃的な美しさを、彼女も理解してくれたんだ。
( ・∀・)「ふふふ……」
そして今。彼女は僕の目の前に居る。
押せば、湖の中に入るような、距離。
僕は彼女の首を締め上げて、光悦の表情を浮かべているんだ。
- 85: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/23(月) 02:22:10.41 ID:k12P+wOm0
- 川 - )「うッ……!ぐぁ……っ」
( ・∀・)「まさか、君の父親が、ヴィップを汚す、癌の正体だったとはねぇ」
川 - )「そっ……それは私も……!」
( ・∀・)「………」
僕は彼女の首に掛けた手に、力を思い切り込める。
ぎうぅ、という嫌な音が聞こえる程に。
川 - )「っ………」
やがて、彼女はグッタリとして、動かなくなった。
僕はそのまま彼女の体を突き落とし、湖の中へ落とし込んだ。
ここはラウン湖の中でも深い部分だ。
ま、浮かんだら何か対策を立てるか………。
彼女の死体が見えなくなった。
さて、これから僕はどうすればいいのだろう?
後悔をするのか? それとも、涙を流すか?
違う。そんなことをしても、意味はない。
彼女を愛していた、それは確かだ。 だが、
彼女を殺すのは、必要でもあったのだ。 しょうがない。
殺してしまったのはしょうがない。しょうがないから、もう問題はない。
でも、彼女のことは、心の底から愛していたんだ。(第10話終)
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