( ^ω^)は綺麗な街に住んでいるようです

5: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 21:44:38.61 ID:ajcmuSxL0
第11話

( ゚∀゚)「う〜ん……それはなぁ……」

ガタタン、と缶ジュースが取り出し口に落下する鈍い音が響く。
ジョルジュはそこからコーラの缶を取り出し、ショボンに渡すと
もう一度ボタンを押す。 再び、取り出し口に缶が落ちる音が鳴り、
同じくコーラを取り出し、今度は僕に手渡した。

( ゚∀゚)「俺としてもな、何とも言えねえっつうか……その……」

先ほどから手に持っていたブラックの缶コーヒーのプルタブを開き、ぼやいた。
首を反らし、豪快にコーヒーを一飲すると、
少し苦い顔をする。

( ゚∀゚)「ぶっちゃけなぁ……詳しく知らねぇんだわ」

(´・ω・`)「……そうですか」

ショボンがジョルジュに頼んだ内容とは、話が右往左往したものの、
結局のところ「CPの真の目的を教えてくれ」というものだった。

しかし、ジョルジュですら真の目的は分からないらしい。

( ゚∀゚)「……まあ、どんな目的にしろそれは町長の望むものであって……
     更に言うなら、CPはそこらの暴力団より遥かに性質が悪いしな……」

再びジョルジュはコーヒーを喉に流し込む。その後、缶を横に揺らし、量を確かめながら呟く。
どうも先ほどの2回の飲みでかなり減らしたらしく、チャプチャプと貧相な音を立てていた。



7: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 21:47:19.55 ID:ajcmuSxL0
その残りを一気に飲み干すと、傍の缶専用ゴミ箱へ捨てる。
僕はコーラの缶を開けて、同じく豪快に飲む。
喉が焼けるかと思うほど、炭酸が暴れだして目が思わず白黒してしまう。

( ゚ω゚)「ポイット!」

(´・ω・`)「確かに、随分根の深い組織ですよね」

僕に構わずショボンは、質問を続ける。
やはり最も地下帝国に興味があるという自負は、侮れない。

( ゚∀゚)「……まぁ、色々手を伸ばしてるしな……」

3人で表の正面玄関へ向かう。
さっきまで建物の裏側、日の当たらない場所に居たので
太陽の光がいきなり僕に襲い掛かり、思わず顔をしかめる。

突然、蝉の鳴き声が強くなったような気もする。
照りつく太陽でアスファルトから、透明の蒸気のようなモヤが噴出して空気を歪ませている。

集会所近くは閑静な住宅街で、騒音は蝉の鳴き声以外に、存在しなかった。

暑い。。。クーラーの効いた集会所内へ、早く戻りたい。



8: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 21:50:03.79 ID:ajcmuSxL0
( ゚∀゚)「バルケンさんにゃ、関わらん方がいーぜ」

バルケンとは、あの嫌な老人のことだったと思う。

( ^ω^)「そもそも、関わりたくないですお」

( ゚∀゚)「ははは。 まっ! 要するにインネンつけられねーようにってことな」

(´・ω・`)「何かもう、つけられてるんですけど」

うーん……と、ジョルジュは両手を組んで、首の裏に回す。

( ゚∀゚)「あの人は嫉妬してるからなあ」

( ^ω^)「嫉妬?」

( ゚∀゚)「なーんか、今まで人生に華がなかったつーか、そりゃーつまらん人生送ってきたらしくってさ、
     未来ある俺達若者に嫉妬してるんだよ。特にスペシャルとなりゃー、そりゃもう……」

「俺もあいつは嫌いだよ」と付け加え、ジョルジュは言い放つ。

(;^ω^)「そりゃ、やっかいだお」



10: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 21:52:27.58 ID:ajcmuSxL0
( ゚∀゚)「しかも粘着な性格だしなぁ……マジ厄介厄介!」

( ^ω^)「ほんと、困ってるお」

( ゚∀゚)「もはや性癖として成り立ってる部分もあるしな……
     おっ、そろそろ時間だ。中へ戻ろうぜ」

そう言うと、ジョルジュは駆け足で中へ戻っていった。
何だろうか、僕はふと考えてしまう。

ジョルジュとは会って、まだ1時間も経っていないというのに
彼と、こんなにも打ち解けてしまった。
彼の才能って奴だろうか? ……人見知りをする僕にとっては、羨ましい限りだ。

(´・ω・`)「それじゃ、行こうか」

ショボンに促される。 歩くついでに少し問いかけてみる。

( ^ω^)「でも、こうなった以上は、どうするんだお?」

(´・ω・`)「ん〜とだね、彼と僕達で暴くしかないね」

( ^ω^)「ジョルジュさん乗ってくれるかお?」

(´・ω・`)「乗ってくれないなら、アヌスにグリセリン塗りたくるまでさ」

時々ショボンの倫理観はブラックマンデーを引き起こす。
和室の中へ入る。 ドクオは相変わらず生気のない顔でこちらを眺めていた。



11: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 21:54:38.68 ID:ajcmuSxL0
(´<_` )「それでは会議を再開する」

流石兄弟が現れた。
部屋の中の、僕たち含む人間はささっと円陣を組み直す。
ジョルジュだけは立ち上がり、襖を開けて何処かへ行く。

( ´_ゝ`)「さて、最後の議題は"駆除レベルの基準の変更について"だが……」

やはり円陣の中心に兄者は立ち、A4用紙の束を手に話す。
そのうちにジョルジュが書類鞄ではなく、黒色の革の鞄を手に戻ってきた。
それを弟者に渡すと、さっさと座布団に座った。

( ´_ゝ`)「本部からの通達によれば、"駆除レベル基準は各地区での治安格差が大きい
       場合のみに変更を行うのが好ましい"とされている。つまり……」

会議はまるで理解出来ないまま、進んでいく。
ジョルジュも時折発言し、バルケンも駆除レベル(よく分からない)の変更には相当食らいついていたが、
どうも、却下されたようで、悔しそうな顔を思い切り浮かばせている。
それを見て少し"いい気"になったようで、ドクオに至っては嫌味な笑顔を振り撒いていた。

ジョルジュの話によれば、バルケンは想像以上に危険人物のようだ。
このことを、ドクオに伝えねばならない。


やがて会議の終了を弟者が伝える。 気がつけば、時間は相当過ぎていた。
休憩時間のときよりも、更に弛緩された空気が流れていた。

ああ、やっと帰れるのか。。。そう思ったときだった。



14: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 21:57:24.89 ID:ajcmuSxL0
( ´_ゝ`)「ブーン、ショボン、ドクオ、少し待て」

それだけ告げると流石兄弟は、襖を開けて何処かへ行ってしまった。

( ^ω^)「(少し待て……っつったて、どうすれば……?)」

僕はドクオとショボンを見る。
ドクオは相変わらず、ふて腐れた顔をしていて、ショボンはそんなドクオを気にしてるのか
気にしてないのか、ぼうっと眺めていた。

他の人間は、談笑しながらぞろぞろと退室している。

ドクオにバルケンについて教えようと思ったとき、
ふとジョルジュがお茶と椀を片付けている姿を目にした。

そこで僕は、ジョルジュの片付けを手伝うことにした。

( ゚∀゚)「……おっ! サンキュ」

( ^ω^)「いやいや……」

片付けを手伝ううちに、そのうちショボンも参加しだす。
ドクオは手伝うのか、迷っているようだったが、自分と、その隣接した人のお椀を片付ける。



15: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:00:07.22 ID:ajcmuSxL0
( ゚∀゚)「ほんと、サンキュサンキュ」

最後に座布団を一箇所にまとめながら、ジョルジュは言う。

( ^ω^)「いやいや大丈夫ですお」

何が「いやいや」だよ、と心の中でツッコミながらも返答する。
自分って本当、人見知りが激しいというか、緊張しやすいというか……
そう悶々してると、ショボンがジョルジュに問いかけた。

(´・ω・`)「ジョルジュさん、"カウントダウン"て知ってますか?」

( ゚∀゚)「ん……!?」

突然、表情が軽く強張った。
何か、知っているのかもしれない。

( ^ω^)「(カウントダウン……流石達がバーボンハウスで言っていた……)」

( ゚∀゚)「んっとなぁ………」

視線を落とし、ボリボリと頭を掻きだす。
言うべきだ、言わないべきか。どうやら迷っているようだ。

( ゚∀゚)「ンットに悪い! 俺もよく知らんのだわ……」

自分を卑下するかのような、暗い目の色をしながら、搾り出すように言った。



17: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:04:43.73 ID:ajcmuSxL0
(´・ω・`)「……そうですか」

( ゚∀゚)「本当に……」

ジョルジュは再び視線を落とし、自嘲気味に溜息を漏らした。

何だか僕は申し訳ない気分になり、僕も視線を落としてしまう。

('A`)「………」

ドクオのやる気のない、ボーっとした視線が痛かった。

( ゚∀゚)「あ……んっとさ……」

ふと思い出したような口調だった。

( ゚∀゚)「カウントダウンの内容はわかんねーけど……
     今、CPの目的は、全てそれなんさ」

(´・ω・`)「 ? 」

( ゚∀゚)「CPの目的は、カウントダウンを成功させることってわけさ……。
     まあ、カウントダウンの全貌は、まだ幹部以上の人間にしか分からねえな……」

その言葉を聞いた瞬間、僕は忽然と思ってしまった。
このまま続けてもいいのだろうか。 このまま真相に辿り着こうとして、いいのだろうか、と。

( ^ω^)「(でも僕は……もう、既に片足突っ込んじゃったんだお)」



19: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:07:22.98 ID:ajcmuSxL0
今更だが、恐怖が湧いてくる。だから、調べるだけ、と自分に言い聞かせた。
ドクオの言葉、考えが痛いほどに理解出来てしまう。

(;^ω^)「(で、でも……)」

僕は、そんなドクオをいっちょ前に諭してしまった。
それに、沸き起こる好奇心。でも、共に在る抑え切れない恐怖。

少し手を握り締めてみる。
すると、手のひらが汗で滲んでいるのが分かった。
僕はポケットからハンカチを取り出し、拭う。
そして、このハンカチを見つめる。。。


('A`)「……はぁ、ヒルズは近いんだから、もう帰らせろよな……」

毒づく。
確かに、このまま流石兄弟を待ち、女神像公園で降ろされるより、
このまま帰った方が確実に早い。

( ゚∀゚)「ん? そりゃあ、出来ないんだよ。規定位置に送り届けなきゃいけねえんだ」

( ^ω^)「規則なんですかお?」

( ゚∀゚)「まー、そんなもんだよ。まだお前らは未成年だからな」



21: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:10:38.47 ID:ajcmuSxL0
なるほど、だからわざわざ送り迎えがあるのか。


( ゚∀゚)「……っと、そろそろおいとますると、するかねぇ」

ジョルジュは立ち上がり、そして背伸びをする。

(;^ω^)「……っあ! ジョルジュさん!!」

僕は突然思い立って、近くにあったメモ帳とボールペンを引ったくり、
急いでペンを走らせた。

( ゚∀゚)「うん? ………おいおい、ラブレターかぁ?」

(;^ω^)「腐ってもそれはありえませんお」

僕は自分のメールアドレスを書いた紙を、ジョルジュに手渡した。

( ^ω^)「何かカウントダウンとか分かったら……連絡して欲しいですお」

( ゚∀゚)「…………」

ジョルジュはしばらくの間無言だったが、やがてその紙を受け取り
丁寧に四つ折りにして、ポケットに入れる。

( ゚∀゚)「おう!」



23: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:13:02.28 ID:ajcmuSxL0
ジョルジュは爽やかに笑うと、襖の方へ向かい、それを開く。

( ゚∀゚)「……あっとな。 俺に敬語はいらねーんだぜ!」

最後にそれだけ言い残し、颯爽と和室を出て行ってしまった。

(´・ω・`)「……大丈夫」

( ^ω^)「お?」

(´・ω・`)「あの人は助けてくれるさ」

(;^ω^)「……根拠は?」

(´・ω・`)「まあ予想だけどね。でも、確実さ」

またこれか。と、少しバカにした表情をとってみる。

(´・ω・`)「……。 ま、別に泣いてたのを見たからってわけじゃないよ」

('A`)「……?」

(´・ω・`)「何というか、同じ匂いみたいなのを感じるのさ」



24: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:14:19.77 ID:ajcmuSxL0
ショボンの発言が何故か、頭の中に響いている。
すると、襖が開き、流石兄弟の姿が現れた。

( ´_ゝ`)「すまなかったな。では、行くぞ」


・・・ ・・・・

(;^ω^)「……」

流石兄弟はどうやら煙草を車内では吸わないようで、
この黒のメルセデスの内部は、新車独特のあの匂いで埋め尽くされている。

その匂いが、僕に緊張感を増幅させる。
この車はもう3分もしないうちに女神像公園に到着する。

苦手だ……その僅か3分間は、気が重くて、厳しい。
俯いて喉を鳴らしているとき、ふいに兄者が口を開いた。

( ´_ゝ`)「ジョルジュを見たか?」

(;^ω^)「……え!? あ、はい」

( ´_ゝ`)「奴のようにはなるなよ?」



26: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:16:32.74 ID:ajcmuSxL0
(;^ω^)「………」

( ´_ゝ`)「奴は無能故に、雑用に降格された。フーさんも、大変失望されていた」

フーとの初対面の際、彼が、とあるスペシャルの1人を貶していたを思い出した。
そうか、ジョルジュのことだったのか。。。


( ´_ゝ`)「お前達は、我々の期待に応えろよ? 時間もない」

(´・ω・`)「……時間?」

( ´_ゝ`)「ああ……時間は、もうない」

時間がない。
それはまるで僕たちが足掻いている、この今を指しているように聞こえる。
カウントダウンは近いのだろうか。
近いのならば、その詳細を知りうるチャンスは増えるだろう。
しかし、最悪の事態となった場合の対応が出来やしない。

タイミングが判らないまま、時間は過ぎて行く。
今更ながら、それを再度確認してしまった。。。

決して平穏ではない今から逃避するかのように、僕は不意に窓の外へ目をやってしまう。

今、車が走っているこの道の右には、ヒルズが聳え立っている。
全5号館全てが、他の建物と比べ物にならない程の高さを有していた。
そう考えながら、それを眺めてみると、とてもではないが自分の家とは考えられなかった。



27: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:18:52.72 ID:ajcmuSxL0
そろそろ、女神像公園の姿が見え始めてきた。
生い茂った緑が増えだす。

そのままヒルズへ送ってもらいたい……
そう考えていたとき、
擦れ違った。


( ^ω^)「ツン……!?」

小声で無意識に呟いてしまう。
その声にショボンが反応し、え? と振り向いた。

今、擦れ違った。
友達と一緒に歩いているその姿を、確かに僕は見た。
その姿は、幸せそうだった。

幸せそうで、僕は嬉しくなり、その後に少し、
寂しく感じた。


もうそろそろ、メルセデスは公園前に停車する。



28: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:20:03.61 ID:ajcmuSxL0
・・・ ・・・・

ξ゚听)ξ「え?」

今、目の前を通り過ぎた黒ベンツに、ブーンが乗っていた……?

そんなバカな。
一般人とは大凡無縁の、あんな車に、まさかブーンが乗ってるだなんて……。

ξ゚听)ξ「まさかね……」

(*゚ー゚)「ど〜したの、ツン!?」

しぃが、振り向き様に問い掛ける。

ξ゚听)ξ「なんか、さっきのベンツにブーンが乗ってたような……」

(*゚ー゚)「そんなこと、ありえないじゃん!」

そういってしぃはカラカラと大笑いした、
その姿を見て、自分の単なる勘違いなんだろう、と思えてきた。

ξ゚听)ξ「あはは、そうよね。ないよね」

(*゚ー゚)「てゆーか、早く行かないとチーク売り切れちゃうし!
     ツンも、あそこのグロスとファンデ欲しいってたじゃん!」



29: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:21:15.01 ID:ajcmuSxL0
ξ゚听)ξ「あ、そうそう!」

(*゚ー゚)「行こ行こ! ミッシェルて最高だよね〜」

从'ー'从「もう〜何やってんの? 遅いよ〜!」

(*゚ー゚)「ごめんごめん! だってツンがぁ〜」

ξ゚听)ξ「ホンットにごめんて!!」

(*゚ー゚)「あ! ミッシェルのあと、しろばん行かない!?
     赤フレのデカサンが欲しいんだけどさ〜」

ξ゚听)ξ「あ、いいね! ちょうどマリンもののアクセ欲しかったし!!」

从'ー'从「うん、でも隣町にしかないのって不便だよね〜」

(*゚ー゚)「ウザいね! しかも電車、トンネル作らないで
     山の上通るって、ありえなくない!? 何でこんな不便なの!?」

しぃの不満、愚痴に同調し、3人で駅へ向かって歩き始めた。



31: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:22:12.52 ID:ajcmuSxL0
(*゚ー゚)「何かさ、ワタちゃん最近忙しいの!? なんか全然遊べないし!」

从'ー'从「予備校みたいなのに通っててね〜」

ξ゚听)ξ「へえ、大変だね」


今日は、本当に暑い……特に日差しが、いつもより強い気がする。
胸元のつけた、リンゴ形の赤いガラスのアクセサリーが、
キラッキラッと光を何度も反射して、鬱陶しかった。


私はふと、ブーンのことを思い出してみた。
今でも、考えると、体が火照るような感覚が走る。

ただでさえ暑いのに、と心の中でブーンに愚痴る。


ブーンのことを考えると、無意識に握り拳を作ってしまう。


・・・ ・・・・



33: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:24:43.80 ID:ajcmuSxL0
僕は握った拳を開き、手の平に収まっているハンカチを見つめた。
少し皺が寄ってしまっていたが、綺麗に折り畳んだ姿であった。

( ^ω^)「これ、どーみても男物だお……」

まーいいや、とツンから貰ったハンカチから目を離し、窓の外へ向ける。
キラッキラッと星々がはっきりと存在を主張するように、
闇夜の中、煌めいていた。

僕はそれを、どうやら10分ほど放心して眺めていたようで、
テレビの深夜バラエティのオープニングの、けたたましい音楽で
ハッと我に返った。

そしてふと、ドクオを思い出してみる。
帰り道、僕はドクオにバルケンという老人への注意を促した。
しかし、ドクオはそれを特に真剣に受け止めておらず、
生返事しか返さなかった。

あの状態では、例えしつこく言ったって
届きはしない。むしろ反感を買ってしまいそうだ。

大丈夫だろうか、と心配しつつ、
今度は携帯電話に目をやる。

ジョルジュから、連絡が来れば
何か進展が生まれる。



34: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:26:27.83 ID:ajcmuSxL0
勿論、今日渡したのだから、
直ぐに来るとは思っていない。

けれど、どうしても焦燥感が生まれてしまう。

いや、その前に、覚悟を決めないといけないな…………。

調べるだけ、調べるだけ、と自分に言い聞かせながら

( ^ω^)「部屋の掃除でもするかお」

深夜を回っているというのに、僕は自分の部屋を掃除し始めた。

早速、ベッドを動かして、その下に落ちた漫画本を取り出そうとするも、
そこに潜んでいた多量の埃が、ぶわっと部屋を覆いつくした。


(;゚ω゚)「ナーフ!」

目を白黒させて、咳き込んだ。

・・・ ・・・・・



37: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:30:27.64 ID:ajcmuSxL0
('A`)「………」

ダイニングルームの、木製の巨大な机に乗っかっている
多量の洗濯物と煙草の箱、片付けられていない新聞紙とビールの空き缶を見つめる。

('A`)「……はぁー」

今度は、ワケもなく煙草の箱を手に取った。

この大きさと、形。

好きだった。煙草は嫌いだけど、この箱の形にはいつも心惹かれる。
正面の下半分を支配する「喫煙は、あなたにとって心筋梗塞の危険性を高めます」という
馬鹿馬鹿しい文さえなければ、このパッケージも好きなんだけどな。

何となく、箱の角部分に指を当ててみる。
チクリとした痛みが、この箱の四角形を証明するようだった。

今度はそのまま指を下へ這わせてみる。

ボックスタイプのため存在する開閉部分の溝が引っ掛かるも、
そこ以外は難なく下へ、指はすすうっと通りきった。

長方形で、手に収まるこの煙草の箱は、いい。
少し頷いてみせる。



38: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:33:22.82 ID:ajcmuSxL0
今度は、箱を開けてみる。
銀紙が全く破けておらず、内部の奥三辺を綺麗に覆っていた。
本数は、数えるのが面倒なほど入っている。まだ、新品だ。

メンソールタイプのため、鼻にスーとした匂いが突き抜けた。
それと、煙草独特の匂いもやって来て、鼻がひくついてしまう。
箱を戻しテーブルに置き、長く溜息をつく。

('A`)「……旅行にでも、行こうかな……」

ショボンとブーンは、俺にまるで賛同はしてくれない。
心の底では判りきっていたけど、でも、寂しかった。
あの2人が居ないと、俺はひとりぼっちだ。
母親とは、滅多に顔を合わせない。

椅子の上で、膝を抱え込んだ。
今更、戻るだなんて言えない。
それ以前に、もう調べたくない。

旅行にでも行って、心を晴らしてみたいな。
エロゲのような、出会いがあったりして……
お土産で、2人との仲が解消された……り………。

吐き出す息が震える。

目立ちたい、認められたいだなんて、常に考えてる自分が馬鹿だった。
だって俺が駄々をこねたって、誰もあやしもしない、無視するだけなんだから。。。



39: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:35:46.35 ID:ajcmuSxL0
・・・ ・・・・

(`・ω・´)「ほお、カウントダウン……」

(´・ω・`)「そうなんだ。流石兄弟から、聞いてない?」

(`・ω・´)「すまんが全く聞いていないな。私が居ると、そういう踏み込んだ話はしないのでな」

白い布でグラスを拭き、父さんの手伝いをしながら、
2人で話し合った。

客の出入りが全然無いため、話は途切れることなく進んだ。


(`・ω・´)「だがショボン、これ以上踏み込めば、危険が訪れるぞ?」

(´・ω・`)「好奇心を抑えられない」

(`・ω・´)「ま、お前は隠したゲーム機を、空き巣ばりに家を荒らしまくって探すような奴だからな」

そう言うと、父さんがワハハと豪快に笑った。
昔のことだ。 大人はやたら昔のことをぶり返すな、と思う。

(`・ω・´)「シェイカー取ってくれ」

(´・ω・`)「はいよ」



42: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:39:16.30 ID:ajcmuSxL0
シェイカーを手渡す。
すると、父さんがふと思い出したように

(`・ω・´)「グレープフルーツジュースが切れてるかもしれん」

と言ったので、僕は家に戻り、巨大な冷蔵庫から
グレープフルーツジュースのパックを取り出した。

冷蔵庫が吐き出す冷気に顔をしかめる。
さっさと閉めて、バーボンハウスへ向かった。

カウントダウンが何だろうと、とにかく知りたい。
この街がどうなってしまうのか、
それを知らずにこのまま、この街に生きるなんて、嫌だ。

そのためなら、何だってやろう。
好奇心の強い僕だ、誰にも止められはしない。


・・・ ・・・・



45: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:42:19.16 ID:ajcmuSxL0
( ゚∀゚)「お待ちしておりました、サージェント」

( ФωФ)「ふん」

ペパーズという名を持つ、この軍曹には
俺は常々、不信感を持っていた。

しかし、仕事だ。
俺は応接室に丁寧に案内する。

ミ,,゚Д゚彡「これはどうも。夜分遅くにすみません」

( ФωФ)「うむ。用件とは、例の数変更かな?」

………

ガラス製の長テーブルを挟んで、
2人の、鬼とも言うべき男達が話し合っていた。
俺は、お茶と菓子を持ってこなくてはならない。
踵を返し、給湯室へ向かおうとする。

ミ,,゚Д゚彡「では、弾薬の数は………」

え?

( ФωФ)「ああ、例の新兵器も準備は……」

な、何を……この2人は……?



47: ◆tOPTGOuTpU :2007/07/30(月) 22:44:47.90 ID:ajcmuSxL0
その後の話も僅かに聞いた後、
部屋の外に出て、長い廊下を放心するように見つめる。
あの2人が話していた内容……
それは、カウントダウンに、ついてだった。

息が震え、肩も揺さぶられたようになる。
歯も、ガチガチと鳴り響く。

(;゚∀゚)「そんな……そんなことって……」

カウントダウンの全貌、
それは、俺の想像を遥かに超えた代物であった。

ありえない……出来るもんか……常識を考えろ……
しかし、あの2人の話していた内容から考えるとしたら、
もはや、この結論しか出ない。。。

(;゚∀゚)「な、何でだよ……CPは、ヴィップを滅ぼすってのかよ……」

住民を虐殺、拉致。
そしてヴィップには選ばれた人間のみが、住む。

これが、

(;゚∀゚)「カウントダウンだってのかよ……!」(第11話終)



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