( ^ω^)は綺麗な街に住んでいるようです
- 77: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 00:35:04.14 ID:owcfrzT20
- 第14話
( ^ω^)「う〜ん」
今日は不思議なことに、朝の4時半に起床した。
二度寝しようか、とだらけた考えをしていると、唐突にオレンジジュースが飲みたくなってきた。
朝は喉が渇く。30%程の濃度のオレンジジュースが欲しい。
それを喉に流し込むのを想像しただけで、居ても立っても居られなくなってしまい、
気がつけば財布片手に玄関を後にしていた。
寝巻きのままだったがパジャマではなくTシャツと短パン姿だったので、特に気にすることはなかった。
・・・ ・・・・
エレベーターのを経由して、1階エントランスに辿り着く。
暖色のライトが大理石の床を照らしている。
4時45分現在はどうやら"深夜"の扱いらしい。
自動ドアを潜り、外に出れば空を仰いで見る。
薄い黒に青が混じった、どこか硬さを感じさせる紫の色をしていた。
東へ向かうにつれ、それは薄くなり、白になり、やがて赤になっていく。
一日の変化の到来を予感させるかのような空だった。
( ^ω^)「コンビニにでも行くかお」
しかし、すぐ近くにあるコンビニよりも、少し離れた場所にある方へ行こう。
夜で適度に空気は冷やされて、歩くのが気持ちいい。
散歩をしたい、と思ったのは久々だった。
- 78: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 00:36:40.74 ID:owcfrzT20
- 道の脇には、きっちりと綺麗に刈り込まれた植え込み。
歩いて気付いたのだが、道路にはゴミはおろか落ち葉の一つも見当たらない。
雑草すら、抜き取られている。道路の白線も塗り直されていた。
まるで巨大なジオラマの中を歩き回っているかのような感覚だ。
そんな気分に陥るのは、この街を歩いているのもあるが、
今日が8月29日……
カウントダウンの決行日であり、
それを止める計画の決行日でもあるからだろう。
今日の深夜に始まるカウントダウンを塞き止める。
それが僕たちの、行わねばならないことだ。
- 79: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 00:38:27.19 ID:owcfrzT20
- 居心地の悪さを感じつつも、僕は歩みを止めることは無い。
しかし、"止める"計画が自分のすぐ近くに迫っているという事実。
(;^ω^)「…………」
足に震えが走り、肩もヒクつく。 僕は怯えてしまっている。
しかし、やらねばならない!
ヒクつく肩を奮い立たせて!
刀を振るうような気概が無ければならない!
カウントダウンという、おぞましい計画を思い出す。
そして、それを止めてみせるという
誇り……矜持……。僕にはそれを持つ"権利"がある。
腹は既に括った。今更怯えるなんて、馬鹿らしいことだ。 そう考える。
目を強く瞑り、両手に握り拳を作り上げる。
少し前屈みになり、精神統一に努めた。
そのまま叫びたい気分だったが今は早朝だ、近隣住宅に迷惑が掛かってしまうので、止めておく。
( ^ω^)「……よし!」
うん。
力強く頷き、目をカッと見開く。
肩を怒らせながら、
大道狭しと闊歩する。
恐れる必要なんか無い。
僕はそれを止めるのだから、 仲間達と。
- 80: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 00:41:11.26 ID:owcfrzT20
- ( ^ω^)「お?」
横目に「ガーデンスクエアVIP」という表札の入った垣が映った。
ここは、確か…… ヴィップでも特に家柄の良い人達が住む、優良住宅地だ。
( ^ω^)「…………」
入ってみたくなった。 いくら高級であっても、
ここはあくまで住宅地。入っていけないことは無いだろう。
「ガーデンスクエア」という名に相応しい、ロマネスク建築を思わせる入り口を潜り、
中に侵入してみる。
レンガを組み込んで作ってある地面、穹窿形の屋根の下にある洗礼されたデザインの水場があり、
それを取り囲むかのように可愛らしいベンチが置かれている。
家も、まるで童話に出てきそうな雰囲気の物が多く、正直住み心地が悪そうである。
その配置は噴水を中心にぐるりと取り囲むような形で、
家と家の間には、仕切りとして小洒落た壁があった。
その壁には小窓ほどの穴が開いていて、半球状の花瓶が置かれている。
それぞれの花瓶には鮮やかな花が在り、またも「ガーデンスクエア」の名に相応しい、と思わせた。
すると居心地の悪さを覚えたので、僕はそこから立ち去った。
高貴なこの地にこんな僕が足を踏み入れてしまった……という後悔ではない。
唐突にシティーポリスマン町長の思惑、欲望を感じ取ってしまったからだった。
……気持ち悪い。
この「ガーデンスクエアVIP」という美しい住宅街を見ていると、ふいにそんな感想が沸き起こり、
やがては蓮コラを見てしまったかのような、ぞわぞわした感覚に陥ってしまった。
- 81: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 00:43:37.02 ID:owcfrzT20
- この街……ヴィップは、確かに"綺麗な街"だ。 それは否定のしようもない。
しかし、あまりにも"綺麗過ぎ"る。 街の息遣いが聞こえて来ないのだ。
本当に、芸術作品のようだ。
ぐるりと山に囲まれたベッドタウン"ヴィップ"は、その空間内で生み出されたアートのようだ。
だから僕は……いつも、息苦しさを覚えていた。
その作品の中を、壊さない程度に動き回らねばならないという義務感が無意識に生まれていて……。
いや、それどころか"この作品の一部"として
僕は、動かされていたのかもしれない。
僕だけじゃない。ドクオもショボンもツンも……皆、この街の人間、皆は、CPの
作り出す"作品"の枠に嵌められているんだ。
狂っている。
"綺麗な街"はある1人の人間のエゴによって生み出された、美しくもおぞましい"作品"だった。
製作者の感情が、この"綺麗な街"に蠢いているのがよく分かる。
狂っている。
その人間は……作品をとうとう、完成させる。
今までの"綺麗な街"は、まだ単なる粘土細工。
これをその人間は、とうとう彫像仕上げして、完成させる。
それこそがカウントダウン。
これを僕達は止めてみせる。
- 82: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 00:45:23.65 ID:owcfrzT20
- ( ^ω^)「……見てろお町長」
僕は目の前のガーデンスクエアへ宣戦布告する。
( ^ω^)「作品なんて……完成させないお。人間は、街は、芸術品じゃないんだお!」
啖呵を切ってみせた後、再び歩きだす。
そうそう、オレンジジュースが飲みたいんだった。
コンビニへ行かなくては――――
・・・ ・・・・
(-_-)「……158円になります……ちょうどお預かりします……ありがとうございました……」
やる気のないというか、もはや生きる気の無さそうな店員から
オレンジジュースを買い、コンビニを後にした。
( ^ω^)「空が明るいお……」
ヒルズへ戻る途中にも、空を見上げた。
東にあった赤色が、いつの間にか全ての空を染め上げようとしていた。
真珠のような白色も東から勢力を伸ばしており、柔らかな紫が西へと追い遣られて行く。
先程まではカラスが鳴いていたのだが、今や雀の鳴き声が音世界を支配している。
日は昇り始める。
昼を告げようと。
僕は眺め続けた。
今の時間は5時15分だろうか。 ヒルズ前の並木通りのことだった。
- 83: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 00:46:44.27 ID:owcfrzT20
- ξ゚听)ξ「あ……!」
( ^ω^)「なっ……!」
エントランス前にて、ツンと鉢合わせした。
僕も驚いたが、ツンも相当驚いていた。
「何故この時間に……?」という疑問が、ツンにもあったのだろうか。
ξ゚听)ξ「あ……は、は……」
(;^ω^)「はは……」
何故か笑ってしまう。
大笑いというほどではないが、遠慮笑いでもない。 発作的な笑いだった。
僕はツンに罪悪感があるはずなんだけど、それでも笑ってしまう。
ξ゚听)ξ「げ、元気?」
(;^ω^)「あ、あぁ…ぅん。 ツンは?」
なんて遠慮した会話なんだろうか。
ξ゚听)ξ「う、うん……げんき」
(;^ω^)「それは、あの……よかったお」
ξ゚听)ξ「…………あ、うん」
- 84: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 00:48:02.96 ID:owcfrzT20
- (;^ω^)「ええっと……ツンはなんでこんな時間に?」
ξ゚听)ξ「えっとね、最近バイト始めてね、今日研修なの」
格好を見ると、髪は地味な色のゴムで縛っており
飾りっ気の無いジーンズと無地のYシャツという質素なものだった。
なるほど、確かにバイトへ行くような出で立ちだ。
( ^ω^)「ほほぉ〜」
ξ゚听)ξ「そうなの」
そこで区切られてしまい、またもや沈黙が覆う。
( ^ω^)「ええっと……じゃぁ、早く行かないと……」
言葉を口にした後、後悔してしまう。
どことなく、嫌悪を含ませているかのように捉えられても可笑しくない言葉だったからだ。
ξ゚听)ξ「うん……」
どうしたのか、朝だから元気がないのか、覇気の無い様子だ。
- 85: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 00:49:20.57 ID:owcfrzT20
- ( ^ω^)「あ、うん、どうかしたのかお……」
頷いたにも関わらず、ツンは動こうとしなかった。
まるで身体は凍りついたかのようで、ただ地面の一点を眺めていた。
どうかしたのか、どうかしたのか……
ξ゚听)ξ「うん……あの、その……変だけどさ……何ていうか」
たどたどしく、ぽつりぽつりと話しだす。
ξ゚听)ξ「いや、やっぱいいや……」
( ^ω^)「何だお?」
気になった。
ξ゚听)ξ「えっとさ……こんなこと言うの変だけど……」
ξ゚听)ξ「……ありがとう」
(;^ω^)「え!?」
ξ゚听)ξ「何だか最近ね……ブーンに感謝しなくっちゃぁってさ……」
- 86: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 00:50:12.76 ID:owcfrzT20
- ( ^ω^)「え……」
ξ;゚听)ξ「あ、いや本当にね! 何故かなんだけどさ……」
口調から推察するに、その"何故"を解明しきれていないようだ。
でも、何にしても、感謝されるというのは嬉しいことだった。
(*^ω^)「そ、そうかお……」
ξ゚听)ξ「でも、ウザいってのもあって……」
( ^ω^)「…………」
ξ゚听)ξ「ほんとに何だろう……」
それはこっちが聞きたいよ。
曖昧模糊な話の内容に、段々心配を覚えていった。
これからバイトらしいのに、動く気配は無い。
ξ゚听)ξ「あのね……」
( ^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「怖い……」
- 87: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 00:51:15.36 ID:owcfrzT20
- その声色は今までのものとは違い、緊迫性を幾分か増していた。
( ^ω^)「な、何が……だお」
ξ゚听)ξ「こんなこと言うと……バカに聞こえるかもだけど……」
グっ……とツンは息を飲み込んでから、
とうとう僕に話す決心がついたように、語る。
ξ゚听)ξ「明日全てが終わってしまいそうで……」
(;^ω^)「お……!?」
ξ゚听)ξ「だって……だって…… 何か、空気が違うし、それに……」
虫の知らせという奴だろうか。
ξ゚听)ξ「段々とこの街に生きることに息苦しく……なっていってって……」
(;^ω^)「……!」
ツンも、息苦しさを覚えていたのか……。
そして、ツンのその虫の知らせは的確であった。 心底驚かされた。
この纏わりつくようなジメジメとした、狂気に塗れた空気をツンも感じ取っていたのだ。
息苦しさを感じながら、不安をこの"綺麗な街"に覚えながら……
とうとう、今日がカウントダウンの日ということすら、心のどこかで理解してしまっていた。
- 88: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 00:52:19.69 ID:owcfrzT20
- そうか……そうか。
僕だけじゃないのか、この街に淀む悪を見出してしまったのは。
挙句、カウントダウンによりここの住民達は どうなってしまうのか。
明日には、この街はどうなってしまうのか。
"明日全てが終わってしまいそうで……"
ツンのこの言葉を、咀嚼するように反芻する。
僕がやらねば為らないこと……それは……
( ^ω^)「ツン……明日全てを終わりには……させないお」
ξ゚听)ξ「え?」
( ^ω^)「あいつらは確信してる。明日は全て自分らの思い通りだって……
僕達は不安を覚えてる。明日どうなってしまうのだろうって……
明日のことなんて、誰にも分かんないのに」
ツンに、男らしい所を見せたかった。
(;^ω^)「僕は……僕は明日なんて信じないお。終わるのか、生き残るかなんて……
だけど……自分達は信じるんだお。だから……だから」
( ^ω^)「ツン、明日が終わりなんて信じないでお」
- 90: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 00:55:03.47 ID:owcfrzT20
- ξ゚听)ξ「……」
"あいつら"だとか、"生存"だとか思わず口走ってしまったが
ツンはそれを気にすることなく、僕の話に耳を傾けてくれた。
( ^ω^)「僕を信じてくれお」
ξ゚听)ξ「……うん。 でも……何をするつもりなの?」
( ^ω^)「それは……」
どうしようか、でも 今全てを言うわけにはいかない。
( ^ω^)「明日教えるお」
ξ゚听)ξ「……ふっふふ……ふ 分かった」
ツンは堪えきれず笑ってしまったが、大分緊張が解けたようだ。
良かった良かったと僕も笑顔を返すと
慌てたようなツンの顔が飛び込んできた。
ξ;゚听)ξ「い、いい加減バイト先行かないと!!」
(;^ω^)「い、今頃かお!」
ξ;゚听)ξ「い、一応余裕持って出てきたんだけど、やばいやばい!!」
- 93: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 01:06:49.25 ID:owcfrzT20
- (;^ω^)「じゃ、じゃあまた!」
ξ;゚听)ξ「う、うん……! それと、ちゃんと教えなさいよね!!」
(;^ω^)「うん、絶対教えるお!!」
ツンは駆け足で去っていったが、途中くるりと振り向いて僕に向かって
「また明日」と声を掛けた。そしてすぐさま駆け足でバイト先へと進んでいった。
僕も大手を振って、ツンのバイトを精一杯応援した。
やがて、姿が見えなくなる。
( ^ω^)「また明日だお」
エントランスに入り、自分の家へと向かうためエレベーターに乗り込む。
着いた先から家へと戻る際の廊下の窓から見た風景。
それは、空だった。
完全に白が青と融合し、清々しい色を作り出していた。
そうか、
もう……朝だ。
そして少し時間が経てば、とうとう昼になる。
とうとうだ、とうとう……。
- 94: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 01:10:28.13 ID:owcfrzT20
- ・・・ ・・・・
昼。
本来なら、僕達は12時からCPの授業だった。
更に、それは泊り込み授業だ。
全く僕達に知らせないまま、カウントダウンを進めるつもりだったのだろう。
僕達が文句を言ったり暴れるという可能性について、何か対処はあるのだろうか。
……おそらく、精神安定剤だとかそこら辺の薬剤で強制的にリラックスさせるのだろう。
心底、腐っていると思わずには居られない。
高まる気持ちを抑え、僕は扉の前に立ち、そして、開ける。
普段は深夜営業の「バーボンハウス」へ、特別入店した。
(´・ω・`)「やあ」
( ^ω^)「おはようだお」
(`・ω・´)「やあブーン君」
( ^ω^)「シャキンさんお久しぶりですお」
(´・ω・`)「2人はまだ来てないよ」
( ^ω^)「把握だお」
- 95: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 01:14:14.49 ID:owcfrzT20
- 集合場所は、ここ「バーボンハウス」となった。
いつもなら閉店時間なので、客が来る心配も無い上に
全員が来たら鍵を掛ける。 安心できる。
(`・ω・´)「しかし、大変なことになってるね……」
( ^ω^)「シャキンさん」
(`・ω・´)「私も、微力ながら手伝わせて貰うよ」
(´・ω・`)「ってわけだ」
( ^ω^)「シャキンさんなら頼もしいお」
ガチャ
玄関の開く音がした。
そして、ここへ向かう2つの足音。
(´・ω・`)「こいつは……意外」
( ゚∀゚)('A`)「おっくれってすっまねー♪!!」
- 96: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 01:17:00.71 ID:owcfrzT20
- (;^ω^)「一体何が……この2人は……」
( ゚∀゚)「いやー実はここのエントランスで会って意気投合しちゃってさぁ」
('A`)「まさかこの人もエロゲ使いだとはね!!」
(*'A`)「"乳首をアルファベットで責めてどこまでも果てるようです"初回限定版を持ってるとは!」
( ゚∀゚)「ククク……ネットオークションで掘り出したんだよ。信者が沸く前によ〜」
(´・ω・`)「バカじゃねーの、何そのエロゲ」
共通の趣味で意気投合したのか、意外だった。
ドクオとジョルジュはあまり合いそうでないタイプだったので
心配していたのだが、杞憂だったようだ。
( ^ω^)「まあ、2人が仲良くなって良かったお」
(`・ω・´)「ははは、元気のいい人じゃないか」
そう言うとシャキンさんはジョルジュに挨拶した。
ジョルジュもそれに応え、畏まったようなポーズを取った。
( ゚∀゚)「どうも。この計画の首謀者のジョルジュです」
(`・ω・´)「どうも、ここのマスターのシャキンです」
- 97: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 01:18:44.83 ID:owcfrzT20
- 2人は握手を交わした。
その後に僕達はスツールへ腰掛け、シャキンさんはバースペースへと入り
グラスを白い布で綺麗に拭く作業に入った。
( ゚∀゚)「さて、と。お前ら……今は何時だ?」
(´・ω・`)「13時半だね」
( ゚∀゚)「そうだ。お前達も……俺も、CPとの約束をスっぽかしてる。
つまり、もう後には引けねえぜ」
「ファイア」でも吸っていた、オレンジパッケージの煙草を取り出すと
ライターで火をつけ、口に咥える。
よく見るとその煙草、相当短い。
('A`)「エコーか……」
( ゚∀゚)「お、知ってんのかドクオ!?」
('A`)「いいパッケージだな、て」
またも意気投合を果たす。 もっと早くからこの2人は会うべきだったかもしれない。
( ゚∀゚)「ふふ……。それで、だ」
ジョルジュは話を続けた。
- 98: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 01:20:41.55 ID:owcfrzT20
- ( ゚∀゚)「具体的な方法……だな。 俺達はまずこれから、ガーデンスクエア近くにある
入り口へ向かう。 これは普段お前達が授業に行く際に使ってる道じゃねえぜ。
だから、バルコニーエリアからは長い」
僕は頷いた。
( ゚∀゚)「今日の地下通路は人がまるで居ない。更に下にある大部屋に殆どの構成員が集まってるからだ。
そこで、地下内を車パクってさっさとバルコニーエリアへ向かうんだ」
ショボンは頷いた。
( ゚∀゚)「そっから第8通路に向かうと、更に奥に巨大な階段があるから
B8まで下っていって、その先の扉を行くとホール・ロビーだ」
ドクオは頷いた。
( ゚∀゚)「そこの奥にある黒いエレベーター。そこはそのまま町長の家と繋がってる。
ご丁寧にも、奴の仕事部屋の目の前にだ!!
そこに殴りこみに行って、無理矢理脅しつけっぞ」
やはり、ラストが曖昧な計画だ。
だが、これしか道はない。
ジョルジュは背負っていた巨大なリュックサックから何かを取り出した。
野球のバットのグリップが飛び出ている。
その中からは、更に数点の小さなバッグが入っていた。
( ゚∀゚)「これをお前らに渡す。 地下内には倉庫がある。 物を補充すんのさ」
僕、ショボン、ドクオに配り、そして……
- 101: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 01:24:23.94 ID:owcfrzT20
- ( ゚∀゚)「シャキンさん……あんたは、どうだい」
シャキンさんを誘う。彼のグラスを拭く手がキュ…と止まった。
(`・ω・´)「と、言いますと?」
( ゚∀゚)「あんたも一緒に地下で暴れてくれないか? 人手が欲しい」
シャキンさんは熟考するかのように顎鬚を触りながら、シェイカーを奥の棚から取り出す。
水洗いしながら、ジョルジュと目を合わせる。
(`・ω・´)「ジョルジュさん……当然じゃないですか。私も行きましょう」
( ^ω^)「や、やったお!!」
この計画は人手が多ければ成功するだろう。
だからシャキンさんの加入は嬉しいことだった。
(´・ω・`)「親父あんま無理しないでよ」
(`・ω・´)「働き盛りの年頃に小童が何を言う?」
( ゚∀゚)「アッハッハ! そりゃそうだ、そうだ!!」
手を叩きジョルジュは大笑いした後に、
シャキンさんにカンパリソーダを注文した。
よく見るとドクオもニタニタと笑っていた。
- 103: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 01:26:45.79 ID:owcfrzT20
- ('A`)「ショボン涙目wwwwwwww」
(´・ω・`)「黙れ、ぶち殺すぞ」
いつになくムキになっているショボンを見て笑った後、
とあることを思い出したのでジョルジュに聞いてみる。
( ^ω^)「ジョルジュ……メスって何だお?」
( ゚∀゚)「メス……。何でお前がそんな言葉知ってんだ? 労働者関係は手付かずだろお前ら」
(´・ω・`)「とある発注書を見て……」
( ゚∀゚)「ふーん。ま、いいや。メスってのはメスカリンって言ってな。 労働者への褒美だ」
('A`)「へー褒美。いいとこあんじゃん」
( ゚∀゚)「ま、クスリだよ。麻薬だ麻薬」
その言葉を受け、場は凍りついた。
(;'A`)「ま、ま……麻薬を褒美に!?」
( ゚∀゚)「ああ。後は安酒だな。 メスカリンでイイ気持ちにさせて、無理に働かせんのさ」
- 105: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 01:29:26.65 ID:owcfrzT20
- (;^ω^)「…………」
奴隷のようにコキ扱い、与える褒美は安酒と麻薬。
どれだけ、奴らは人を道具扱いしているのか。
血の通っているとは、とても思えない所業だ。
その調子ならば、カウントダウンも本気で行うのだろう。
絶対に止めなければいけない。
( ゚∀゚)「俺達が戦うのはそんなコトを平気なツラで行ってる奴らだ。いいな……」
ジョルジュは更に、確認させるかのように言葉を押す。
弛緩していた空気はいつの間にか失せて
緊張感が何処となく漂い始める。
( ゚∀゚)「よし……そろそろ行くか……」
ジョルジュはスツールから腰を上げ、開始の宣言をした。
僕達も頷き、立ち上がった。
('A`)「ここは3階だから、すぐに行けるな……」
全員、真剣な目つきで、身体を動き出す。
いよいよだ。
- 107: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 01:30:59.09 ID:owcfrzT20
ガチャリ
- 109: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 01:34:10.10 ID:owcfrzT20
- え?
突然、玄関から扉の開いた音がした。
あれ、確かジョルジュが……
(;゚∀゚)「お……い、ドクオ。俺達、鍵閉めたよな? ちゃんと……」
('A`)「あ、ああ……確かに、鍵掛けた」
(;^ω^)「じゃ、じゃぁ……」
ここからはまだ見えないが、雰囲気からして5人、6人近くの大人達が
廊下を躊躇なく歩き、ここへ向かおうとしているのが分かる。
こ、こいつらは………
(´・ω・`)「 CP……!!」
(`・ω・´)「こっちだ皆!!」
シャキンさんがベランダの錠を開け、引き戸をスライドさせた。
ベランダへ行けということだ。
(`・ω・´)「下は茂みだから安全だ、飛び降りるんだ!」
(;゚∀゚)「おう!」
ジョルジュが僕達を無理矢理引っ掴み、ベランダへ押しやった。
しかし、何故かシャキンさんは動かない。
一点を見つめていた。 その先は、玄関からのドア。
ドアが、開いた。
- 112 名前: ◆tOPTGOuTpU [さるUZEEEEE] 投稿日: 2007/08/17(金) 01:46:28.62 ID:owcfrzT20
- (´<_` )「これはこれは……閉店時間なのにすまないな、マスター」
(`・ω・´)「……! 流石、弟者……!!」
弟者は4、5人ほどの構成員を引き連れて、
ここバーボンハウスに強引に侵入してきた。
シャキンさんはベランダを振り向くことなく、弟者を睨みつけたまま大声を上げる。
(`・ω・´)「さっさと行け!!」
(#`Д´)「生言ってんじゃねえぞ!!」
構成員の1人が手にした拳銃を放った。
サイレンサーをしてあるのか、銃声はあまり出なかったが
銃弾がシャキンさんの腕に、
直撃してしまったようだ。
(`・ω・´)「く……!」
(;´・ω・`)「父さん!!」
(`・ω・´)「行けと言ってるだろう!!」
その言葉と同時にジョルジュが引き戸を閉め、僕達を無理矢理下へ落とした。
(;^ω^)「シャ、シャキンさん……!」
落下しながらも、シャキンさんのことが心配になる。
ドサ、と柔らかな植え込みの上に着地に成功しても、心配でしょうがなかった。
- 115: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 01:49:24.05 ID:owcfrzT20
- (;゚∀゚)「く……行くぞ! ガーデンスクエアに走れ!!」
(´・ω・`)「……!」
('A`)「う、あぁ……!」
僕達は無我夢中でガーデンスクエアに向けて、走り出した。
でも……最悪な状況だ。
何故、弟者にバレてしまったのか?
ただでさえ、成功確率の低い
計画だというのに……! それに、シャキンさんは……!
(;^ω^)「くそっ……!」
ひたすら走る、走る、走る。
4人の男が必死で何処かへ走り去っていく姿は
子供の目に滑稽に映るのか、時々笑い声が聞こえる……
そんなのに構ってられない!
ヒルズを抜けた。
後はこの並木通りを、そのまま前進していけば……!
(;'A`)「ヒィっハァっ……ひぃ…!」
ドクオは息切れが激しかった。
普段運動らしい運動をしていないドクオにとって
この移動作業は辛いものだろう。
僕も、辛い……。
- 118: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 01:52:17.12 ID:owcfrzT20
- (;゚∀゚)「何で……なんで弟者にバレたんだ!?」
ジョルジュにもその疑問は分からないらしい。
ショボンは、暗い顔で走っている。
そして、後 半分という所だった。
(´<_` )「中々マスターは頑張ってくれたぞ? ん?」
前方に、弟者と 構成員が立っていた。
速い、車で先回りをしたのか。移動方向すら読まれている。
ん、よく見ると、構成員の半分は怪我をしていた。 シャキンさんの努力の跡なのだろう……。
(;゚∀゚)「弟者ァ……!」
全員立ち止まる。
背負ってたリュックからバットを手際良く取り出し、先を振り回しながら
ジョルジュは牽制した。
(メ`Д´)「はん! 俺らにそんなモノで対抗しようってのか!?」
構成員が笑う。確かに奴らは拳銃を持っている。
たった1人のバットでは勝ち目が無い。
(;゚∀゚)「お前ら、そのゴミ箱の近くに"寄れ"……」
少し後ろにある、通りの脇にあるゴミ箱へ僕達は後ずさりしながら向かっていく。
- 120: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 01:55:07.64 ID:owcfrzT20
- (´・ω・`)「1人で戦わせるわけには……」
ショボンが悲しそうに呻く。 ジョルジュ単身で弟者達に立ち向かうのは無謀だ。
どうするのか……。
まだ弟者達は余裕あるのか、拳銃を出さずに距離をジリジリと詰めていた。
(´<_` )「どうしたどうした? ジョルジュ……果敢に向かって来るがよい」
(メ`Д´)「弟者さん、こんなカスが向かうわけないじゃないスかwwww」
( `Д´)「そうッスよ! こいつにそんな勇気、ないですよ!!」
構成員達は高笑いした。
ここは並木通りと言っても普段人の通らない場所だった。
廃校となった小学校と、こじんまりとした教会に挟まれている。
挙句その並木も鬱蒼と生い茂っており、ここでなら
高笑いしても他人に聞かれることは無いだろう。
(;゚∀゚)「っく……!」
ジョルジュも少し、ゴミ箱と僕達の居る方向へと後ずさる。
へっぴり腰になったその姿を見て、またも構成員が爆笑した。
- 122: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 01:57:43.00 ID:owcfrzT20
- (メ`Д´)「アッハッハッハッハ!! ほらコイツ、チキンじゃないっすか!!」
(1`Д´)「やっぱカスだカス!! 何たって候補生から雑用下がりだぜ!? ハハハハハっ!!!」
( `Д´)「クズの極みじゃないかwwwwwww」
ギリ…とジョルジュは歯軋りした。
よほど悔しいのだろうか。しかし、それでも後ずさりは止まらず、
とうとう僕達のすぐ前へと来てしまった。
僕達を庇うかのような形になった。
(´<_` )「どうしたどうした? 反乱したのならせめて潔く向かえばいいものを……」
( `Д´)「無理ですよ、こんなカスにはwwwww」
(;゚∀゚)「…………ぬぅ……!!」
踏ん切りがついたのか、ジョルジュのグリップを握る手に、力が一段と篭った。
(#゚∀゚)「うおぉおぉおぉぉおおぉおおおおお!!!!!」
雄叫びを上げ、バットを高々と持ち上げた。
構成員達もその剣幕に笑いを止め、少し距離を開けた。
(#゚∀゚)「うらぁッ!!!」
- 124: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 02:00:42.72 ID:owcfrzT20
- そして、そのままバットを 何を思ったか
……ゴミ箱に叩き付けた!
一撃でゴミ箱は無残な程、拉げてしまう。
更に今度はバットを思い切りゴルフのようにスイングさせ、
ゴミ箱を吹き飛ばした。
僕達も構成員も唖然としていた。
弟者だけはこの行動を理解したようで、
(´<_`;)「チッ!」
拳銃を素早く懐から取り出した。
サっ、とジョルジュは弟者の前に詰め寄り、銃弾の壁になってくれた。
( ゚∀゚)「中に入れェ!!」
ジョルジュは僕達へ叫んだ。
- 127: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 02:03:35.00 ID:owcfrzT20
- 真っ先に言葉の意味を理解したのはショボンだった。
素早く"ゴミ箱のあった場所"へ駆け込み、
そして、姿を消した。
(;^ω^)「そうか……ダストシュートのように地下に繋がってんだお」
ドクオを引っ張りながら僕も"あった場所"へ向かう。
そこは落とし穴のような2つ戸を持つ構造をしていて、大人1人入れる程の太さだった。
(;^ω^)「フン!」
中へ入った。その状態のままジョルジュの方向を見る。
バットを振り回しながら、牽制していたが
右腿に血がだらだらと溢れ、垂れていた。
撃たれたのか……。
助かってくれ、皆! そう願いながら
スライダーのようなゴミ箱からの穴を滑り下っていく。
いよいよ! 僕達は立ち向かう。
CPに。カウントダウンに。
明日にはこの街がどうなっているか……
それは誰にも分からないことだった。
明日は知らない。
- 130: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 02:06:53.37 ID:owcfrzT20
- ・・・ ・・・・
( ´_ゝ`)「それは……本当か?」
(´<_` )「真実だ兄者。ジョルジュはブーン達を引き連れ、裏切ろうとしている」
渉外室の前、まるで本社のような、コンクリート製の通路にて
俺は兄者と話していた。
既にフーさんにも、この事……ジョルジュの裏切りを伝えておいた。
数人ほど手配する、だそうだ。
( ´_ゝ`)「…………」
(´<_` )「何。心配する程ではない。 あんな奴らに何が出来る?
私達とフーさんの兵。 これでお釣りが返ってくる程充分だぞ」
( ´_ゝ`)「だろうな……」
(´<_` )「なら、何故そう黙り込む?」
兄者に尋ねる。 いつの間にか、兄者はスタンガンを片手に持ち、
憎々しげに握り締めていた。
何をする気だ……? どうも、様子がおかしい。
( ´_ゝ`)「ブーンやドクオ……ショボンが、反乱とはな……」
- 133: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 02:08:54.65 ID:owcfrzT20
- やっと俺は理解した。 そうだ、兄者はあの幹部候補生3人に期待していたのだった。
それを反乱という形で返されたから、か……。
(´<_` )「だから言ったろう……。あの3人なんかに期待するな、と……」
( ´_ゝ`)「……ふ」
カシャン。兄者はスタンガンを下に投げ捨てるようにして落とし、
更に右足で、荒々しく踏みつけた。
部品は飛び散り、砕けるような音や電流音が廊下に響いた。
(´<_`;)「あ、兄者……?」
( ´_ゝ`)「トカレフを取りに行くぞ」
兄者は愛用している拳銃を取りに、下の武器庫へと向かおうと足を進めた。
俺も急いで同行し、
共に階段を下りた。
歩みは止めず、兄者はぼやくように言う。
( ´_ゝ`)「13時になったら……ジョルジュをひっ捕らえて来い」
(´<_`;)「わ、分かった」
- 135: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 02:11:00.82 ID:owcfrzT20
- 階段の下りを終え、再び廊下を歩き出す。
すぐ右手に存在する重厚なゴシック様式の扉の前に立ち、
鍵を差して、兄者は扉を開けた。
中は電気を点けていないため真っ暗だが、
まるで気にする様子も無く兄者は進んでいく。
( ´_ゝ`)「あぁ……そうだ」
思い出したような口ぶりだ。
ピタリと足を止め、くるりと俺の方向へ身体を向けた。
暗闇を背景にしたせいかもしれないが、心なしか顔に"陰"が滲み出ている。
(´<_` )「何だ?」
( ´_ゝ`)「"アレ"を使おう。まだ動けるはずだろう?」
その口ぶりの皮肉っぽさを感じ取り、
ようやく意味を理解した。
(´<_` )「あ、あぁ……まだ"使える"はずだ」
( ´_ゝ`)「使ってやろうじゃないか……くっくっく……」
兄者は含み笑いしたまま、煙草を取り出し火を点ける。
この武器庫は火気厳禁のはずだ……。やはり、兄者らしくない。
どうやら兄者は3人とジョルジュへ、深い怒りを燃やしているようだ……。(第14話終)
- 137: ◆tOPTGOuTpU :2007/08/17(金) 02:12:40.91 ID:owcfrzT20
第2章「Now Here Man」終
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