( ^ω^)は綺麗な街に住んでいるようです
- 3: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 18:47:46.95 ID:TMLLrxKi0
- 第18話
(;´・ω・`)「…………」
進むべきか。進まぬべきか。どうするか。
今は、様子を見て立ち止まっておくことにしよう。
しかし……それでも、
左角の奥からの気配は、依然消えることは無かった。
どうするか。
肩に背負っていたバッグを胸元へ持っていく。
この中には救急箱からくすねて来たものや非常食、
加えて出来る限りの対策に為りえる道具を詰め込んだ。
しかし、残念ながら武器になるような物は
手に入れ損ねていた。攻撃には使えない。
それでも、飛び道具の防御には多少使える。安心出来る程ではないが。
(;´・ω・`)「(どうする……)」
息を潜めて、左の角を立ち尽くしながら
凝視していた。
- 7: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 18:49:42.12 ID:TMLLrxKi0
- (;´・ω・`)「…………!」
その左角からの気配が突如、
より一層色濃くなった。
隠れていた者が、こちらへと動き始めたようだ。
静かだが確実に、 衰弱した心臓のテンポのように
そいつは……
影から姿を現し、道の真ん中にユラリ、と立った。
漆黒基調に藍色の仄かなストライプの入ったスーツ。同色の黒のスラックス。
夜明けを連想させる深い橙色のネクタイ。
スーツのボタンは外されており、真っ白なシャツがよく見えた―――
(;´・ω・`)「あ……にじゃ……」
( ´_ゝ`)「ああ……私だ」
心の何処かでは、分かりきっていた相手だった。
驚きは、正直そこまで無かった。
兄者は片手に自動式拳銃を握り、 僕と 今、対峙している。
- 11: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 18:52:21.70 ID:TMLLrxKi0
- 兄者の様子は、どこか変わっていた。雰囲気が違う。
( ´_ゝ`)「…………ッフ……フフ……」
(´・ω・`)「………?」
( ´_ゝ`)「フハハッ…ハ……クック……フ……ハハハ…ハ」
すると兄者は何を思ったか
突然、高笑いを始めた。
タガの外れたように、大手を広げながら、ただただ笑い続けていた。
何かに憑かれたように、まるで狂ったように。自分を見失ったかのように。
やがて、兄者は笑い終えると
満足気な顔をこちらへ向けた。
思わず、恐怖を感じてしまう表情だった。
兄者は口端を歪めたかと思うと、 ふいに冷静な声で喋りだす。
- 13: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 18:55:31.53 ID:TMLLrxKi0
- ( ´_ゝ`)「運が良いな。私もお前も、それにお前の仲間達も……」
(´・ω・`)「運が……いいだって?」
いまいち理解出来ない言葉だった。
( ´_ゝ`)「私はお前と戦いたかった……そして、
お前は私以外の人間と遭遇すれば問答無用で撃ち殺されていたろう?」
言い返すことの出来ない内容だ。
( ´_ゝ`)「そして、私がお前達の仲間に遭ったのなら……同じく、
射殺していたよ、泣き言を聞いた後にな」
(´・ω・`)「そうかい」
( ´_ゝ`)「だから全く……"運が良い"……」
感慨深げにそう語ると突如、顔を変えて
僕をキっと睨みつけた。
( ´_ゝ`)「私の御託は並べ終えた。もう……後、は……分かるな?」
兄者はこれ見よがしに手にした自動式拳銃トカレフを揺らした。
- 16: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 18:58:24.34 ID:TMLLrxKi0
- (´・ω・`)「……分かるさ」
この男は前に言っていた。
自分といつか再戦したいと。
笑いながら、望んでいたんだ。
しかし今のこの男は、喜びと言い知れぬ"何か"が混ざりに混ざり……
自分自身をどこか……"何か"の、渦に巻き込まれているかのようだった。
( ´_ゝ`)「話が早い」
右側の腰のホルダーにトカレフを差すと、雰囲気を一変させた。
この場―――無人の地下通路の空気を
危ういものにさせた。
(´・ω・`)「………!」
僕は鞄を脇に投げ、地面をしっかり踏み締める。
乾いた砂と靴底の擦れ合う音が聞こえた。
兄者がこちらへ向かって歩きだした。
スーツをたなびかせ、
砂と小石を撒き、音を鳴らし、しっかりとした足取りで……
来る。
- 18: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 19:01:46.96 ID:TMLLrxKi0
- 兄者は段々と距離を縮める、威風堂々と闊歩する。
(´・ω・`)「(来い……)」
やがて、ある程度の距離となった。――ふと
兄者の右手が動いたのを見て、直感が働き
思わずバックステップを取った。
取り終えたと同時に、何かの動く風を感じた。
見れば既に、自分の鼻先に兄者の拳が存在していた。
( ´_ゝ`)「………」
兄者の突きを間一髪で避けるのに成功していた。
その状態から、少しの間 お互い動くことは無かった。
ありもしない一陣の風が、舞ったような気さえする。
"それ"が吹き終えた途端、再び動き出した。
僕はサっと身を屈めて兄者の懐に入り込んだ。
拳を握り締め、右手に力を込め
鳩尾を、水月を打つ。と、一発を放とうとするも
兄者は瞬時に左膝を繰り上げ、はじき、僕の拳を阻止する。
- 20: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 19:03:38.44 ID:TMLLrxKi0
- (;´・ω・`)「くそ……」
ならばもう一度、はじかれた拳で再び鳩尾を……!
そう考えた瞬間、
頭頂部に堅い物を叩きつけられたかのような、深い衝撃が走った。
!? 何が起こったのか、拳を打ちつけられたのか……?
判断しようとしたとき
今度は兄者の上がった左膝が、
いや、スネが水平になるように突如上がり
それは見事、
僕の顎に命中し、
自我を忘却するようなダメージを僕に与えた。
(;´゚ω `)「ぐゥエっ!!」
そのまま、仰向けに倒れこんだ。
頭に、ぼんやりとした霧がかかる。
それは視界にすら、影響を及ぼしていた。
ぐわん――グワン――と音がこだまする。
頭が痺れている。
- 22: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 19:05:30.14 ID:TMLLrxKi0
- ボンヤリとした中、
「ザ、ザ」と一定間隔で聞こえる音があった。
兄者の、足音だ。
容赦なく、機械が進むような間隔のその足音に
僕は思わずハっとさせられて
身体を起こし立ち上がり、構えをとった。
( ´_ゝ`)「来い」
まだ回復しきっていない。
唇の血を手の甲で拭う。
兄者はもう立ち止まっていた。
いいだろう。よし、向かっていってやる。
腹を決め、駆けた。
兄者を観察し続けながら走った。
- 25: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 19:08:23.96 ID:TMLLrxKi0
- (;´・ω・`)「(このタイミングか)」
兄者は依然動かない。
距離が大体後3歩といったところで
移動方向を左側へ――兄者の右半身の方へ
転換し、間合いを詰めた。
( ´_ゝ`)「あ?」
そのまま勢いつけて肘打ちを
兄者の片腹に食らわせようとするも、
すんでの所で兄者は身体の向きを4分の1回転させて
僕と再び向かい合った。
(;´・ω・`)「くそ……」
肘打ちを諦め、バックステップを取り
距離を開けた。
勢い余って土の壁と激突しそうになったが
ギリギリで当たらずに済んだ。
( ´_ゝ`)「フン」
今度は兄者が僕へ向かっていった。
走りながら。 スーツとスラックスという出て立ちなのに、素早かった。
- 27: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 19:11:22.66 ID:TMLLrxKi0
- 僕も立ち向かう。
兄者は右腕を振り上げた。
同じく、走り出すことにした。
兄者が右を振り下ろすのを見計らいながら。
振り下ろすと同時に横へ避ける。
( ´_ゝ`)「……」
そのスキをつき
もう一度鳩尾を狙おうとするが
兄者は素早く後ろへ身体を動かし
それを避け、更に構えも取り直した。
ならば、ならば……
(´・ω・`)「(アレを狙うしかないな)」
思考し、結論を出した。
結果、僕は立ち止まることにした。
- 28: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 19:15:58.81 ID:TMLLrxKi0
- 兄者も動きを止めた。
やがて、互いに互いを観察する空気が流れた。
どうする……カウンター狙いだから
あまり動きたくはないけれど、
勘付かれるのは絶対にあってはならない。
守りを怠らずに
攻めるか―――
ゆっくりと左側へ歩く。
しかし、ある程度の距離になったところで
兄者は左脚で足払いをかけた、引っ掛かり身体がよろめいてしまう。
(;´・ω・`)「ぅッ……」
( ´_ゝ`)「ふ……」
払いを仕掛けたその左脚で続けて
ミドルキックを放つ。
胸に蹴りが炸裂し、今度は後ろへ倒れそうになった。
- 29: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 19:18:22.60 ID:TMLLrxKi0
- (;´・ω・`)「痛ッ!」
痛みを堪えて、体勢を整える。
身体を左側へと動かす。
そこに
兄者が追撃を仕掛けた。
(´・ω・`)「!!」
それは、
開始早々に放った、例の、
右の突きだ。
腕が完全に伸びきった、渾身の一撃だった。
- 30: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 19:22:27.58 ID:TMLLrxKi0
- しかし……
( ´_ゝ`)「……避けただと?」
(´・ω・`)「狙ってたからね」
言いながら、その伸びきった兄者の右腕をしっかりと両手で掴む。
そして、思いっきり……
地面へ叩き付ける勢いで下へと あらん限りに押した。
(;´_ゝ`)「ぅう!?」
兄者は前へと倒れこむ。
そこへ……そこに、そこで、
足に力を加え、バネのように地面を蹴って
兄者の方へ、跳び……
頭突きを、兄者の鼻へ放った。
当たると同時に、陥没したかのような、重い音がこの道路に響いた。
(;゚_ゝ`)「っガァ……!!」
その攻撃を受けた兄者は脚をフラつかせ、身体も焦点の定まらないかのように
揺れていた。
- 32: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 19:26:21.39 ID:TMLLrxKi0
- ボタボタと鼻血が地面に落ち、そこを色づかせる。
地面だけではない。スーツも、ネクタイも、シャツにも、赤がついていた。
兄者の鼻からは尋常でない程の血が溢れていた。
左手で鼻を押さえ、呻いている。
身体の向きは僕と対峙しているが、
まるで逃げるようによろよろと少しずつ後退していった。
その兄者はやがて、ことの理由に気付いた。
(;´_ゝ`)「そう……か……ホルダー……か……」
(´・ω・`)「ああ」
重い自動式拳銃をしまい込んだホルダーを右の腰に装着させているのだ。
右脚を使い技を繰り出すのは
難しい。
だから、僕が兄者から見て右側に来たときは
方向を変えるか 右腕で攻めるか、 そのどちらかだ。
(´・ω・`)「いくぞ……」
再び駆けた。進撃する。
(;´_ゝ`)「クっ……ソ……!」
- 36: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 19:30:42.62 ID:TMLLrxKi0
- 当然のように、左側から――兄者から見て右側から、攻める。
(;´_ゝ`)「貴様ッ…!」
兄者は右脚で回し蹴りを放った。
しかしホルダーを着けている上、体勢不十分な状態での蹴りは
容易に回避することが出来た。
更に進行方向を変えて
猫背のようになっている兄者の……懐へ、入り込んだ。
……狙う。もう一度、鳩尾への突きを、狙う!
拳を固く握り、息を吸い込み
力を込めて、脚にふんばりを掛けて……
自分の、思いと怒りを加えるように……
拳を鳩尾に、突き放った。
(#;゚_ゝ゚)「あッ……ぁぐ……ぅ…!!」
鈍く重い感覚が
拳に伝わってくる。
- 37: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 19:34:19.14 ID:TMLLrxKi0
- 兄者はその衝撃に倒されることなく、
身体を強張らせ、痙攣していた。
……僕は、更に、
半歩進み、
拳を腹に当てたまま、腕を縮め、
再び、 拳を突き放った。
遊び目的のこの男へ、怒りをぶつけるように。
兄者の身体は、この一撃で飛ばされ
土の壁に勢いよく、音を立て衝突した。
(;´_ゝ`)「グぅァァッ!!」
喉を絞り切ったような呻きをあげて
吐血して……
力無く、人形のように壁に上半身が倒れ掛かった。
- 39: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 19:38:04.87 ID:TMLLrxKi0
- (´・ω・`)「ふう………」
今もジンジンと、痛みが響いている箇所を擦りながら
兄者の姿を、眺めた。
気絶したのだろうか。
俯いているためよく分からないが
身体はピクリとも動いていない。
血は垂れ続けている。腰の辺りにボタボタと落ちていた。
それが鼻血なのか吐血なのかは、判断出来なかった。
―――完全に、打ち勝った。
兄者を倒すことが出来た。
これでカウントダウンを止めるという計画が、
自分の中で現実味を帯びてきた。
(´・ω・`)「やった……!」
喜びが中から湧き起こる。
どうしようもない程の嬉しさ、矜持もある。
思わず浮き足立ってしまう。
しかし現状、この心理状態は危険だ。落ち着かせないといけない。
そう判断した。
- 41: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/03(月) 19:45:17.55 ID:TMLLrxKi0
- これから、どうするか……
遊び半分だったCPの連中もそろそろ、本気を出すかもしれない。
だとすれば、こちらには更なる助っ人……もしくは、
強力な武器が必要になる。
強力な、武器……か。 そうだ、
ちょうど兄者が持っているじゃあないか。トカレフを。
そう考えながら、僕は兄者の姿を再び見て、
凍りついてしまった。
(;´・ω・`)「なんだと……!」
兄者の手には、いつのまにか"その"トカレフが握られていた。
ゆっくりと。兄者は持ち上げる。
トカレフを取った腕が
そろそろと―――(第18話終)
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