( ^ω^)は綺麗な街に住んでいるようです

6: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 19:04:42.32 ID:M/8DDCov0
第21話

(;^ω^)「や、やったお……!」

今僕が立っているこの場所は、紛れもなくバルコニー・エリアだ。
進んで左の方の扉を跨げば「資料室」。
右の方の扉を跨げば「第8通路・喫煙室」へ行けるはずだ。
正面奥にある半円状のバルコニーからは、
更なる目的地「ホール・ロビー」が一望出来るだろう。

僕は頭の中で、目的をもう一度反復した。

これからは、「第8通路・喫煙室」の扉を潜り、
その先にずっと伸びるコンクリート製の整備された道"第8通路"を突っ切り、
奥にある階段を下りて今度はB8へと向かう。
そこからホール・ロビーに入り
黒いエレベーターに乗り込む。

そこから、町長の屋敷に侵入して町長と対峙する。

……まだまだ、先は長い。
しかし、何にしても第一関門をクリアしたようなものだ。

喜びが絶えることはなかった。



11: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 19:06:53.50 ID:M/8DDCov0
( ^ω^)「よし、いくお」

バットを景気づけに軽く一振りしてから、歩を進めた。
疲れは、バルコニー・エリアに着いたという喜びのお陰で消えている。

目線は、右の扉に固定されている。

一度、バルコニーに下りてホール・ロビーの全貌を確認しようかと迷ったけど
寄り道すると時間が大きく消費されそうだったので、それはしないことにした。
といっても実際に掛かるであろう時間は極僅かなものだろう。
しかし、"寄り道"という行為が生理的な不安をもたらす。

そのまま「第8通路・喫煙室」の扉に直進しよう。

そう決めてからは、少し速度を上げ
緊張を尖らせた。


ところが

後10mといったところで、異変を見てしまった。
釘付けにしていた右の扉の、異変である。


ドアノブが回ったのだ。



12: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 19:10:05.26 ID:M/8DDCov0
(;^ω^)「え!?」

ワケが分からず、無意識に身体を硬直させてしまう。
右手のバットを両手持ちに変えて胸の前に、
まるでお守りのように持っていった。

一方ドアノブの動きは180°回ったところで止まると、


扉はユックリと開かれて、
中の扉を引いた人間もまた、ユックリと姿を現していく。

扉を閉め、鍵を差し込んでロックを掛けた。そして。

のそり、のそり、

(;^ω^)「…………」

通路に降り立った人間……男の動きは、まさにそういう動きだった。

その動きに見合う姿を、男はしていた。

男の身体と服装はボロボロで、片腕が存在していなかったのだ。



14: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 19:13:37.16 ID:M/8DDCov0
本来なら高価なものであろう上等なスーツも、破れ目と焼け焦げた痕が
激しくて今ではもう、ぼろと言っても差し支えない。

顔は、ここからでは誰なのか判別出来なかった。
擦り傷や黒ずんだ汚れが表情を隠しきっている。

片腕は悪行の末に潰されたのか、
と思うほどの陰惨な雰囲気を男は醸し出していた。


(;^ω^)「(……この雰囲気、まさか……)」

予想したと同時に、男がこちらへ向かって歩きだした。
距離が縮めば縮むほど、その雰囲気はより一層濃度を増していく。

自分の心臓の音がよく聞こえた。
バットを握る両手の力をギュっと込めて、
立ち向かうべき現実を必死で受け止めようとした。

男が歩みを止めた。その頃にはもう、顔の判別はついていた。
おぞましい空気だ、この土気色の通路の照度が低くなったような気さえする。
僕が喉を鳴らしている間に、男は口を開いた。

ミメ,,メД゚彡「お前がここに来れるとはな、ブーン。え?」



15: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 19:16:29.41 ID:M/8DDCov0
ヨレヨレの満身創痍のこの男は、
CPナンバー2の座のフー、その人に違いなかった。

(;^ω^)「……フー……なのか……お」

ミメ,,メД゚彡「呼び捨てか。まぁいい」

一歩、フーは進んだ。

ミメ,,メД゚彡「他の2人はどうした、あのガキ共は、死んだのか、あ?」

(;^ω^)「え……う……」

ミメ,,メД゚彡「ジョルジュは死んだ、他の2人も消えたとなりゃ、
       後はお前1人だけだな。あぁ?」

馬鹿な、馬鹿な。
その3人が死ぬもんか、死ぬわけがない。

へたれなドクオだって、大人びたショボンだって、
リードしてくれるジョルj……

(;^ω^)「 え 」

あれ、今……
    フーは……ジョルジュがどうなった、と言った?



16: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 19:18:56.87 ID:M/8DDCov0
(;^ω^)「今……なんだって……?」

ミメ,,メД゚彡「あ? ジョルジュが死んだのがショックなのか? あのクズのことが?」


(;^ω^)「……うそだ……」


ミメ,,メД゚彡「あの野郎……自爆なんかしやがって……お陰でこんなザマだ、クソが」


(;^ω^)「……自 爆……」


ミメ,,メД゚彡「てめぇも死ぬんだな」

言うや否や、フーがこちらに向かって走りだした。
今までの動きとは違う俊敏なものだった。


――ジョルジュが、爆死……自爆した……?
 何で、なんのため………だ。

 決まってる。
僕達を……僕達を……!


(# ω )「うわああああああああああ!!」



17: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 19:20:53.03 ID:M/8DDCov0
(#^ω^)「このヤロォぉおおおおおおおお!!!」

咆哮を上げて、僕もフーへ駆け出した。
バットのグリップに巻きついている黒テープの感触を、嫌というほど味わいながら。

――恐れるな! 恐れることはない。
いくら相手が、ここのナンバー2の男だったとしても
奴は全身を負傷している上に、右腕が無いのだ!
 恐れるな!! 行けるはずだ!!

充分にフーとの距離が縮まり、バットの射程圏内に入った頃
には既に、僕はそれを高々と上げていた。

いける! 冷静に鉄の棒を素早く振り下ろした。
威力は充分、狙いもフーの額だ。
 
 だが……


(;^ω^)「え……?」

バットは、フーに打撃を与えるまで後3cmも無いところで
ピタリと動きを止めてしまった。動かそうにも、硬直したようになってしまっている。
同時に気付く。
フーとの間合いが、いつのまにか直前よりかなり縮まっていた。半分以上である。
ここまで近づけば、逆にバットは使い辛いほどだろう。

(;^ω^)「なっ……?」

ミメ,,メД゚彡「アホウが」



21: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 19:22:46.92 ID:M/8DDCov0
その言葉が起爆点として
急にバットが何故か本来と逆の動き――つまり、僕に
向かって襲い掛かってきた。

目の前に銀の太い直線が現れたかと思うと、勢いよく、
僕の前頭部に向かっていったのだった。

鈍い音が響き、視界が黒くなっていく。

(;^ω^)「うぐっ!!」

バットが僕の前頭部に激突したが、
幸いなことに威力はそこまで無かった。

視界がぼやけたままだったが、
何となくフーの行いを理解した。
僕の握っていたグリップの、更に下の部分を
素早く掴み、バットを"引いた"のだろう。

がむしゃらにバットを振り回して
フーの手を引っ剥がそうと、やっきになる。

――やった、外れた! そう浮かれたときに



23: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 19:24:15.77 ID:M/8DDCov0
突然、腹に重々しい一撃がめり込んだのだった。

(;^ω゚)「!!??」

鳩尾を僅かに逸れた位置に与えられたその一撃、痛みに
僕は思わず面食らってしまい、少しの間立ちすくんでしまった。
その隙を突かれ
更に二発、三発。
片腕だけのフーがここまで速い殴打を繰り返せることに
驚きながら、思わず後ろにフラついてしまった。

フーはそこを更に追撃し、片腕でパンチを放ち続ける。

(;^ω^)「……ぅ…!」

戸惑いながら、僕は情けなく、攻撃に耐え忍ぶしかなく
たまに繰り出すバットの払いも難なく避けられてしまい、
再び追撃は開始されるのだった。

 何故片腕の身で、ここまで素早い連撃を行えるのか、
それが疑問で、フーという男の恐ろしさを垣間見た瞬間でもあったのだが
僕はただひたすら、フーの勢いに押されて



31: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 19:52:27.84 ID:M/8DDCov0
後ずさりをし続けていたため、既に
壁と背中は擦り合っていた。もう逃げる場所などない……そう悟ると、
ふと窮鼠猫を噛む、というような力が自分の内から込み上げてくるのが分かった。

バットを下から上へ振り上げて、フーにダメージを与えようとするも
サっと往なされてしまうばかりか、大振りのよろめきを見逃されることもなく
フーの回し蹴りを胸の辺りに食らってしまった。

(;^ω^)「うぐッ……!」


更に壁に激突し、身体全体がびりびりと痺れた。
そのままずり落ちるように尻餅をついてしまった。
ふと、左肘にだけ他と違う感覚があった。
……木だ。多分、「資料室」のドアだろう。
つまり、今の僕は「資料室」のドアと隣合わせになるような形のようだ。

そのまま上を見た。
通路の天井に括り付けられた電球が後光として
僕を見下ろすフーの存在感をより一層際立たせていた。


(;^ω^)「……フー……」

ミメ,,メД゚彡「相手は片腕を失くした満身創痍の人間……そいで
       こっちはバットを持った、怪我1つない身体。
       夢見るのも、ワケねぇ……"しょうがねぇ"……」



32: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 19:55:47.84 ID:M/8DDCov0
(;^ω^)「くそっ……」

迫力に気圧されて、掌を地面に着いた。
ザリっとした乾いた砂利と小石の感覚が両手に広がる、と思っていた。

(;^ω^)「(……ん?)」

何故か左手の一部分だけ、その感覚が欠如していた。
代わりにあるのは、カサカサとした、人工的な乾いた感触。

……紙? 位置からいって、「資料室」のドアの下の隙間に挟んであるのだろう。
フーはそのことに気付いていないようだった。咄嗟に拳を作りそれを握り隠すと
バっと立ち上がって、フーへ思い切り
頭突きを与えた。

ミメ,,メД゚彡「ぐぅっ!?」

もたれ込んで、倒れた。
片腕のフーは流石に起き上がるのに時間が掛かった。
僕はその隙をついて
早めに立つとバットを拾い、更に手にしていた紙の
内容をさっと確認した。


「バルコニーに奴を引きつけて」

それだけがこの紙、メモ帳の切れ端に殴り書きされてあった。



33: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 19:58:47.87 ID:M/8DDCov0
ミメ,,メД゚彡「この……カスが……」

(;^ω^)「!」

メモに気を取られていた間に、
フーは既に完全に立ち上がって僕を睨みつけていた。
奴独特の凄惨な瞳には、思わず震えてしまう。
しかし、怯えを無理矢理潰すと毅然とした態度で言い返す。


( ^ω^)「お前にカス呼ばわりなんてされたくないお!」

ミメ,,メД゚彡「ほざけ。ジョルジュなんぞを慕ってたお前も、その"程度"なんだよ」

(#^ω^)「ジョルジュをバカにするなお!!」

ミメ,,メД゚彡「"あれ"は相当の出来損ないだな」

(#^ω^)「………!」

この男にはもう、我慢がならなかった。
バットでフーの身体を指し、宣言をする。

(#^ω^)「ジョルジュはお前に殺されたようなものだお!!
       僕が、僕が敵を討ってやるお!!!」



37: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 20:01:21.42 ID:M/8DDCov0
ミメ,,メД゚彡「ハッハッハッハッハ!! じゃあ何だ?
       お前は俺に殺されちまえばもう、カス以下ってことだな!
       え! おい!?」

(#^ω^)「させるかお……!」

ミメ,,メД゚彡「あのカスが何をしたっていうんだ!
       お前に何が出来る!? 何を持っている!? ああ?」

(#^ω^)「………!」

ミメ,,メД゚彡「カスは何も残せないんだよ」

……。

カァ……と、一瞬で頭が熱くなるのを感じた。
動悸が激しくなり、手の汗が増えていくのがわかる。
そして、バットを握る手の力は、
一層強くなった。グリップの黒テープの感触が伝う。


( ω)「これは……このバットは……!」


(#゚ω゚)「これはジョルジュのバットだぁぁぁぁぁあああ!!!!!」



38: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 20:03:14.30 ID:M/8DDCov0
(#゚ω゚)「うわあああああああ!!!」

両腕を精一杯ねじ回してから、がむしゃらに横一線になぎ払った。

ミメ,,メД゚彡「!」

バットの腹が、見事フーの身体と接触し捉えたので
突然重みが増してきたが、構うことなく更に腕に力を込めて
振り切るようにして、バットを最後まで払った。

ぐわんとフーの身体は宙にほんの少し持ち上げられながら、
バルコニーの方へと吹っ飛んでいった。
その顔はどことなく達観としていて
少しゾっとしてしまったが、
構わず僕は追撃を仕掛けようと体勢を持ち直しながら
フーの行く先を眺めていた。

フーの身体はバルコニー前のカーテンに一瞬フワリ
と包み込まれたかと思うと、突然つんざくような
ガラスの弾け砕ける音が響き渡り、
カーテンも慌てふためきながら舞いだした。
そのため、フーの姿が見えなくなってしまい、
かろうじて"奴はバルコニーに飛ばされた"ということが
分かるだけとなってしまった。

(#^ω^)「………」

バットを片手に切り替えてバルコニーへ駆けた。
あのメモのことが頭から離れなかったが、今は
フーのことに専念しようと心を切り替えた。



41: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 20:05:57.86 ID:M/8DDCov0
暴れを少しずつ弱めていくカーテンには
ガラスの破片が無数にこびり付いていて、
動きと合わせてキラキラと輝いていた。

その下には大小様々な形の割れたガラスが飛び散っていて
突っ切るのに苦労しそうだな、と思ったが
構うことない、と考え直すとスニーカーのまま
走り出した。

バルコニーに続く洋風の開き戸は
見るも無残な姿となってしまっていたが、
それを強引に両肘で開かせると
僕はバルコニーに飛び出したのだった。

( ^ω^)「……フー」

ミメ,,メД゚彡「気分は最高か」

高欄に手と体重を乗せてこちらを見据えているフーは
随分と余裕そうな表情をしていた。
僕はバットを今度は両手に切り替えると
ジリジリとフーの元へ迫っていった。



45: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 20:08:25.28 ID:M/8DDCov0
ミメ,,メД゚彡「え? おい」

( ^ω^)「お前を……討つお!」

飛び掛る様に近づくとバットでフーの鳩尾目掛けて突いた。
しかし突いた先にフーの姿は無く、空振りしてしまったようで
手擦りと衝突したカンという無機質な音が響く。
気付いた頃には既にフーは僕の後ろに回っていた。

(;^ω^)「!!」

後頭部に痛みが迸り思わず手擦りに衝突する。
ホール・ロビーを取り囲む円の外壁が視界に一瞬映った。
しかし対峙しようと振り向いた瞬間、
フーの手が僕の首を締め付けていた。


(;^ω^)「うぐ……ぐぅ……!」

ミメ,,メД゚彡「このまま下に落としてやろうか」

更にフーの手に力が込められていく。
息が、息をするのが、困難になっていく。
必死にもがいても、どうすることも出来なかった。



50: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 20:10:36.84 ID:M/8DDCov0
バットを持った手を高々と上げていく。
しかし、力が入らない。
段々気が抜けていくような感覚が僕を貫いていき、
身体が小さく痙攣を始めていった。

(;;^ω^)「ぅう…ッ…!」

やがて握力も次第次第に底をついていき、
ポロっとバットをバルコニーの下に落としてしまった。

(;;^ω^)「しまっ……」

ミメ,,メД゚彡「終わったな」


……もう、ダメなのか。
両手を使って、僕の首を絞めているフーの片手を
取り剥がそうと躍起になっているのだが、
どうやっても外れそうになかった。
不可能だ。
もうダメなのか。もう、僕は終わりなのか。



55: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 20:14:21.09 ID:M/8DDCov0
いや……。
終わりたくない。
この男に、殺されたくはない。

僕にはやるべきことが残されているんだ!


(#^ω^)「ぬぅうう……!」

ミメ,,メД゚彡「こいつッ……」

歯を食いしばって、最後の最後まで
力を出し続けて、抵抗をした。
フーの手が、
まだ外れそうにはなかったが、決してやめはしなかった。

(#^ω^)「ぅうぅうぅううう……!」

汗が物凄い。疲労も全身に広がっている。
それでも、僕は外すのを止めなかった。すると、
フーの手の力が少しずつ抜けていくのが分かった。
苦しみが、段々と弱まっていった。



57: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 20:18:03.40 ID:M/8DDCov0
(#^ω^)「うぅう……!」

ミメ,,メД゚彡「……!」


そのときだった。
突然、変な音が廊下の方からしたかと思ったら
何者かがこちらへ向かって走り抜けていくのが見えたのだった。

(#^ω^)「……?」

フーは気付いていないようだった。
僕は抵抗の力を弱めてしまいつつも、
その者の正体が気になった。

謎の人間の影が、蠢くカーテンから飛び出て、
バルコニーに姿を現したのが分かった。
しかしその人間はフーの影となってしまっていて、
姿を確認することが出来ない。



60: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 20:21:18.38 ID:M/8DDCov0
その人はフーの首に手を掛けて
後ろへ無理矢理反らした。

ミメ,,メД゚彡「!?」

急にフーの手が僕の首から外れた。助かった。
僕はゲホゲホと咳き込みながらも、自由を手にしたことを実感すると
フーの腹に渾身の蹴りを浴びせた。

ミメ,,メД゚彡「ぐっ……ぐぁア!」

怒りを露にしながら、身体を暴れさせ続けた。
その間に僕は、
フーの後ろに居る、助け人の正体を見た。


(;^ω^)「渡…辺さん?」

从;'ー'从「えへ…へ……」

驚いた。何故渡辺さんが、今ここで? なんで、僕を助けたのだ。



64: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 20:24:43.92 ID:M/8DDCov0
だが、よくよく考えればそれは不思議なことでは無いことだった。
渡辺さんはスペシャルの一員だ。
つまり、この日は強制的にカウントダウンから避難させられるはずなのだ。
ここ地下に。そうして……そして……。

多分、メモをくれたのも……

(;^ω^)「渡辺さん……!」

フーの身体をガッシリと掴むと僕は
ふらつきながらもバルコニーの手擦りの方に向かっていった。

狙いは当然、フーをここから落とすことだ。

ミメ,,メД゚彡「貴様ッ……」

渡辺さんも後押しする風にして手伝ってくれた。
フーの身体は僕達によって、手擦りから乗り出す形になった。

ミメ,,メД゚彡「お前らッ…!」

いける! 確信した。
もうあと僅かに力を込めれば、フーの重心が傾くはずだ。



66: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 20:27:36.80 ID:M/8DDCov0
僕は渡辺さんに並ぶようにして、共に
フーを突き落とそうと力を加え続けた。
渡辺さんは汗を垂らしながらも、こちらを
見て微笑んでくれたので、
ああ、本物の渡辺さんなんだな、と少し失礼な安堵を覚えたのだった。

やがて、フーを押し続けていた手に
フワリとした不思議な感触が走った。
まるでやり遂げたような、力を加える対象が消えたような感覚。
それはつまり、フーの身体が、とうとう
バルコニーから落下したのを意味した。

(;^ω^)「ぁ……!」

从;'ー'从「やったね!」

フーの上半身は、宙に曝け出されていた。
でも、僕は決して安心することなんか出来なかった。

何故ならフーは、「してやったり」という表情を浮かべていたからだ。



68: ◆tOPTGOuTpU :2007/09/24(月) 20:30:59.46 ID:M/8DDCov0
ミメ,,メД゚彡「ハ……ハッ……ハッ!」

(;^ω^)「!?」

突然、脇に強い感触が走った。見るとそれは
脚だった。フーの脚が、ガッチリと力強く僕の脇に宛がっていた。

从;'ー'从「え?」

その次に、渡辺さんと僕の身体が衝突した。呻く間もなく
フーの脚の力が、キリキリと増していくのが分かった。
挟み込まれていた。僕達は、
僕達は……まさか。

ミメ,,メД゚彡「ハ……アハ……ハッ!」

フーは掌を手擦りに着き、力を込めて、虚空へ解き放った。
加速しながら、
僕と渡辺さんを道連れにしながら、
フーの身体は、空中を舞っていった。

唖然とする中、僕は……バルコニーから落ちたのだった。
そして ホール・ロビーに激突しようとしていた。(第21話終)



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